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金融庁が、「生産性向上特別措置法施行令の一部を改正する政令(案)等の公表」というタイトルで、いわゆるP2P保険・ソーシャル保険関係について意見を募っているので考えてみました。(パブコメは2月23日まで)

・生産性向上特別措置法施行令の一部を改正する政令(案)等の公表|金融庁

1.提出意見
いわゆるP2P保険・ソーシャル保険に関する生産性向上特別措置法施行令の一部を改正する政令(案)は、つぎの理由のとおり、公正で適切な保険制度を規定する保険業法の趣旨からさまざまな問題があると考えられる。慎重な検討が必要であると考えられる。

2.理由
(1)だれがこのP2P保険(ソーシャル保険)の保険者としての主体となるのであろうか。このP2P保険制度において、保険者(保険会社)と個々の保険契約者・加入者との間を仲介するP2P業者(以下「P2P業者」とする)が、保険募集を行うだけでなく、保険会社のP2P保険の保険商品の設計(約款・事業方法書・算方書などの基礎書類の設計)も行うとしたら、当該P2P業者は、内閣総理大臣(金融庁)の免許を受けずに事実上、「保険の引受」(保険業法97条1項、3条)に深く関与する業務を行っていることになり、保険業法に抵触しているのではないか。

P2P保険のイメージ図表

(2)本パブコメによると、このP2P保険制度においては、P2P業者および保険契約者において、「保険事故の発生の抑制に資する一定の人的関係を構築する」取り組みが行われるとのことであるが、P2P保険の保険契約者の集団内部において、「当該集団の保険料を安いままにしたい」との思いから、集団内部である被保険者について保険事故が発生しているのに、当該集団の構成員達が当該被保険者・保険契約者に保険金請求をさせないなどの圧力を加えるなどの不適切な事象が発生しないであろうか。被保険者団体が職場の構成員などである場合はある程度の公正性が期待できるであろうが、被保険者団体が友人・同好会の構成員・家族・親族などの場合に、保険制度の公平性(保険業法1条)が担保されるのであろうか。あるいは、顧客を集めたP2P業者が保険会社に対して逆選択を行うリスクなどはないのであろうか。加えて、若くて健康な被保険者集団が既存の保険会社各社の保険商品から離脱し、P2P保険に集中するなどの逆選択が発生するのではないか。さらに、同一の保険商品に対して、保険料が安い被保険者集団と保険料が高い被保険者集団が発生した場合、保険料が安い集団については特別利益の提供が発生してしまうのではないか(保険業法300条1項5号)。

(3)このP2P保険を行っている株式会社ジャストインケースのサイトによると、例えば同社のがん保険は、保険料が一般の保険会社のがん保険の半分であることをPRしている。しかし、おなじ保険商品のなかで保険料が安価となる被保険者集団と保険料が高くなる被保険者集団が現れることは、「保険募集の公正」と「業務の健全かつ適切な運営」を規定する保険業法1条に抵触するのではないか。幅広い被保険者集団を集め、広く浅く負担をし合い、相互扶助を行うという保険制度の趣旨に反するのではないか。

(4)P2P業者から加入者・顧客に対して十分な情報提供(保険業法294条)、意向把握(294条の2)などを行うことができるのであろうか。“ソーシャル保険”であることを奇禍として、P2P事業者から十分な説明が顧客に対してなされないおそれがあるのではないか。(現に、株式会社ジャストインケースのサイトにおいては、保険約款や注意喚起情報・契約概要等が掲示されておらず、商品のしくみなども抽象的なイメージ図的なものしか掲載されていない。)同様に、P2P業者が保険募集に係る体制整備義務(294条の3)を構築できるのか、情報管理の体制を構築できるのか、あるいは保険募集や情報管理に関する事故が発生した際に適切な対応をとれるのか疑問である。


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