なか2656のblog

とある会社の社員が、法律などをできるだけわかりやすく書いたブログです

2018年05月

コインハイブ

1.はじめに
最近、SNSにて、「Coinhiveはウイルス作成罪などが成立するのか?」という話題につきやや盛り上がっているため、私も少し調べてみました。

■関連するブログ記事
・サイト等にCoinhive(仮想通貨マイニングのプログラム)を設置した被疑者16名を警察がウイルス作成罪で摘発

2.Coinhiveとは
Coinhive(コインハイブ)とは、サイトの運営者がサイトの閲覧者のPC等に仮想通貨を採掘(マイニング)させその収益を受け取るサービスです(マイニングツール、仮想通貨マイニング)。

サイト運営者がCoinhiveのJavaScriptコードをサイトに埋め込むと、そのサイトを閲覧した人のPCのCPUパワーを使い、仮想通貨「Monero」を採掘し、採掘益の7割がサイト運営者に、3割がCoinhiveの運営者に分配される仕組みであるそうです。

「多くのウェブサイトには邪魔な広告が表示されている。その代替手段を提供することが我々の目的だ」とCoinhiveの運営者は同サービスの趣旨を示しているそうです(「話題のCoinhiveとは?仮想通貨の新たな可能性か、迷惑なマルウェアか」ITmedia2017年10月11日付)。

・話題の「Coinhive」とは? 仮想通貨の新たな可能性か、迷惑なマルウェアか|ITmedia

この点、トレンドマイクロは同社のサイトでCoinhiveについて、つぎのように説明しています。

「Coinhive の公式サイトによると、1 日に 10~20 人の訪問者がいる Web サイトで、1 カ月に約 0.3 XMR(2018 年 3 月 7 日時点で約 1 万 1,100 円)の利益を上げることが可能とされています。つまり、少ないリソースでも十分な発掘が期待できる Monero は、インターネット利用者のリソースを盗用して発掘を行うサイバー犯罪者たちにとって、収益可能性の高い仮想通貨の 1 つと言えます。」(「2018 年にサイバー犯罪者が狙う最大の標的は「仮想通貨の発掘」?」トレンドマイクロ)

・2018 年にサイバー犯罪者が狙う最大の標的は「仮想通貨の発掘」?|トレンドマイクロ

3.ウイルス作成罪(不正指令電磁的記録作成罪)とは
(1)ウイルス作成罪(不正指令電磁的記録作成罪)の概要
ウイルス作成罪(不正指令電磁的記録作成罪)とは、刑法の一部改正により平成23年に新設された刑罰です(刑法168条の2、168条の3)。

刑法

(不正指令電磁的記録作成等)
第百六十八条の二 正当な理由がないのに、人の電子計算機における実行の用に供する目的で、次に掲げる電磁的記録その他の記録を作成し、又は提供した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
一 人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録
二 前号に掲げるもののほか、同号の不正な指令を記述した電磁的記録その他の記録
2 正当な理由がないのに、前項第一号に掲げる電磁的記録を人の電子計算機における実行の用に供した者も、同項と同様とする。
3 前項の罪の未遂は、罰する。

(2)保護法益・構成要件など
不正指令電磁的記録作成等罪は、「コンピュータ・プログラムに対する社会一般の信頼」という社会的な法益を保護しようとする刑罰です。

そして、不正指令電磁的記録作成等罪の構成要件はつぎのとおりです。

①「正当な理由がないのに」
②「人の電子計算機における実行の用に供する目的で」(目的)
③「「人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録その他の記録を(同条同項1号)」(客体)
④「作成し、又は提供」(行為)

(3)「正当な理由がないのに」
ここで、まずやや分かりにくいのは、①「正当な理由がないのに」ですが、法務省の立案担当者は、「「正当な理由がないのに」とは「違法に」という意味である」と解説しています。

そして具体例として、「ウイルス対策ソフトの開発・試験等を行う場合…コンピュータ・ウイルスを作成・提供することがあり得る…このような場合には、「人の電子計算機における実行の用に供する目的」が欠ける」と解説しています。

・「いわゆるコンピュータ・ウイルスに関する罪について」法務省サイト

(4)「不正な指令」
つぎに、Coinhiveと不正指令電磁的記録作成等罪との関係で一番悩ましいのは、③「「人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録その他の記録を」のなかの「不正な指令」をどのように解釈すべきかです。

この点、上述の法務省の立案担当者の解説ペーパーは、「プログラムによる指令が「不正」なものに当たるか否かは、その機能を踏まえ、社会的に許容し得るものであるか否かという観点から判断することになる。不正指令電磁的記録作成等罪の処罰対象となるのは、このような意味での不正指令電子的記録であり、これに該当するか否かの判断において核となるのは、そのプログラムが使用者の「意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える」か否かである。」としています。

(5)裁判例
ところで、不正指令電磁的記録作成等罪が成立するとされた裁判例をみると、①ネット上の有料アダルト動画サイトの運営者が、被害者らに利用料金の支払いを心理的に強制するために被害者のPCに女性の半裸画像を表示し続けるプログラムをダウンロードさせ実行させた事案(京都地裁平成24年7月3日)や、②被告人の掲示板に脅迫文言を書き込ませるウイルスを被害者(被告人の民事訴訟の相手方)のPCに感染させ書き込ませ虚偽の被害申告を行った事案(大阪地裁堺支部平成25年8月27日)などがある一方で、③市販のオンラインストレージ(=クラウドサービス)等を使用者の了解なくインストールして設定した事案においても不正指令電磁的記録作成等罪の成立が認められています。 (①②について、東京弁護士会『Q&Aインターネットの法的論点と実務対応』337頁、③について、浅田和茂・井田良『新基本法コンメンタール刑法 第2版』365頁)

個人的には、③の裁判例については、「その意図に反する動作をさせるべき不正な指令」に当てはまるとして、市販のドロップボックスなどのようなプログラムをインストールしたことが、「その機能を踏まえ、社会的に許容し」えないと判断されるのは疑問なものがあります。

(6)学説
学説も、「「不正」という概念が多義的であり、その判断基準が規範的に理解された意図に依存していることからすれば、これらの要件によって具体的な基準が明示されるとはいえない」と批判的です(浅田・井田・前掲365頁)

4.まとめ
このように裁判例をみると、裁判所は「不正な指令」を広範に解釈できると考えているようです。一般人からみてもこれはアウトだろと思う悪質なプログラムだけでなく、無断とはいえ市販のプログラムをインストールしただけでも不正指令電磁的記録作成等罪が成立する可能性があるようです。

そのため、サイトやブログ運営者は、Coinhiveなどの仮想通貨マイニング・マイニングツールに係わるプログラムをサイトなどに設置することには慎重であるべきと思われます。

■参考文献
・大塚裕史・十河太朗・塩谷穀・豊田兼彦『基本刑法Ⅱ各論 第2版』450頁
・浅田和茂・井田良『新基本法コンメンタール刑法 第2版』365頁
・東京弁護士会『Q&Aインターネットの法的論点と実務対応 第2版』337頁

基本刑法II 各論 第2版

Q&A インターネットの法的論点と実務対応 第2版

新基本法コンメンタール刑法[第2版] (新基本法コンメンタール(別冊法学セミナー))

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金融庁プレート

1.民法に「定型約款」の条項が新設される
民法(債権法)改正により、「定型約款」が条文化されました(改正法548条の2~548条の4)。改正民法(改正債権法)(以下「改正法」とする)の生命保険実務に与える影響は多岐にわたりますが、ここでは、定型約款について取り上げたいと思います。

2.定型約款とは
定型約款について定める改正法548条の2第1項は、①「定型取引」とは、特定の者が「不特定多数の者」を相手方として行う取引であって、取引の内容の全部または一部が「画一的」であることが契約当事者双方にとって合理的な取引であると定義します。

そして、同条同項は、②「定型約款」とは、「定型取引」に用いられるものであって、契約内容となることを目的として、当該定型取引の当事者の一方により作成された条項の総体であると定義しています。(筒井健夫・村松秀樹『一問一答 民法(債権法)改正』241頁)。

3.生命保険の普通保険約款は「定型約款」に該当するか
生命保険の保険取引は、契約加入段階で引受審査があるとしても保険契約者の個性に着目せずに行われる「不特定多数の者」との取引であり、また、大数の法則や収支相当原則などの保険数理上の要請から、「画一的」な契約内容の策定が行われ、さらに保険取引の当事者の一方である保険会社(保険者)により普通保険約款が作成されているので、生命保険の普通保険約款は改正法の「定型約款」に該当するといえます(吉田哲郎「生命保険会社における改正債権法への実務対応」『金融法務事情』2088号6頁)。

ただし、生命保険の実務においては、企業などを保険契約者とする団体保険(総合福祉団体定期保険、従業員が任意加入の団体定期保険Bグループ、従業員が任意加入の団体年金など)は、保険契約者となる企業と個別に折衝を行い、保険約款に加え協定書を締結して保険契約を締結しています。この協定書はいわゆる個別合意条項(個別交渉条項)であるため、定型約款には該当しないとされています(吉田・前掲7頁)。

4.普通保険約款は合意擬制(組み入れ)要件を満たしているか
つぎに、保険約款が定型約款に該当するとして、現行の保険実務において、保険約款が当該保険契約の内容となっているか、つまり定型約款の合意擬制(組み入れ)の要件を満たしているかが問題となります(改正法548条の2第1項1号・2号)。

この点、生命保険業界においては、旧大蔵省の保険審議会の昭和52年の答申を受け、普通保険約款と契約内容の概要と注意事項を説明した「しおり」を合本とした「ご契約のしおり-定款・約款」を契約締結までに(遅くとも申込書をいただくまでに)保険契約者に交付することと生命保険各社の社内規則(基準、マニュアル等)で定めています(保険業法300条1項1号、294条1項、100条の2、保険業法施行規則53条の7)。

また、近年の生命保険各社は、自社ウェブサイトに保険約款等を掲載し、保険契約者などがいつでも保険約款をみることができるように対応を行っています。

このような実務をみると、保険契約に加入する保険契約者は、保険約款が契約内容になることに合意したものと考えられ、改正法548条の2第1項1号による合意擬制があると考えられます。この点は、契約締結までに「ご契約のしおり-定款・約款」を手交することなど、現行の実務がルールどおり励行されている限りは、改正法との関係では問題は少ないように思われます(長谷川仁彦・竹山拓・岡田洋介『生命・傷害疾病保険法の基礎知識』13頁)。

5.信義則に反する約款条項の問題(改正法548条の2第2項)
改正法548条の2第2項は、定型約款の条項が「相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項であって、その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして第1条第2項(=信義則)に規定する基本原則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものについては、合意をしなかったものとみなす」と規定しています。つまり、信義則に反して相手方の利益を一方的に侵害する条項は無効と規定しています。

この改正法548条の2第2項に趣旨が似た法律として、消費者契約法8条から10条までの、消費者側の権利を不当に制限する約款条項は無効とするものがあります。この消費者契約法10条との関係で、生命保険の保険約款のいわゆる無催告失効条項が無効か否かが争われた著名な事件の最高裁平成24年3月16日判決は、保険会社側は保険契約者の権利保護を図るための運用を行っている等の理由により、当該無催告失効条項は有効であると判示しました。

このような判例に照らすと、一般論としては、生命保険の普通保険約款は、改正法548条の2第2項により無効とされる危険性は低いと思われますが、各保険会社は自社の保険約款の総チェックが必要であると思われます。

6.保険約款の変更は可能か
(1)改正法548条の4について
改正法548条の4は、定型約款作成者側が、一定の要件のもとで個別に相手方の同意を得ることなしに定型約款の条項を変更できると規定しています。すなわち、①定型約款の変更が相手方の一般の利益に適合するとき(改正法548条の4第1項1号)、または、②定型約款の変更が、契約をした目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、定型約款の変更をすることがある旨の条項の有無及びその内容その他の変更に係る事項に照らして合理的なとき(同条同項2号)、のいずれかです。つまり、改正法は、顧客側に有利な約款の条項変更を認めるだけでなく、顧客側に不利な約款変更も、必要性、相当性、合理性の要件を認めれば許されると規定しています。

(2)保険契約者等側に有利な約款変更
この点、たとえば保険約款上の、保険金の支払いのための要件をより明確化・平明化することや、保険金支払いの免責条項をより明確化・平明化、あるいは自殺免責条項の免責期間を短縮することなどは、保険契約者保護に資する、保険契約者側に有利な約款変更であるので、金融庁の認可を得たうえで、改正法の1号で認められる可能性は高いと思われます。

たとえば多くの生命保険会社の疾病関係特約や介護特約などは、保険金・給付金の支払い要件の傷病などを、厚生省大臣官房統計情報部「疾病、傷害および死因統計分類提要(昭和54年版)」(いわゆる「分類提要」、「E分類」など)に基づいており、批判が多いところです。これを官庁の統計資料に依存するのではなく、保険会社の約款のなかで支払い要件や定義を完結させることは、約款の平明化につながり、消費者保護に資するものと思われ、もしそのような方向性の保険約款変更が行われるなら、それは改正法548条の4第1項1号に適合するものであると思われます。

(3)保険契約者等側に不利な約款変更
一方、たとえば継続する「逆ざや」状態により会社の財政が悪化したと、保険会社が保険料・保険金の基礎率の変更のために約款変更を行うことの是非が問題になります。

この点、そもそも損害保険契約と異なり、生命保険契約は30年、40年と長期にわたり継続することを前提とする保険契約であること、そのために保険会社は保険数理の専門部門による保険の設計を行い、保険新商品の金融庁への認可申請の際に提出しなければならない基礎書類の一つには、保険数理に関する「保険料及び責任準備金の算出方法書」(保険業法4条2項4号)が含まれています。また、さらに生命保険業においては、保険金の支払いをより確実ならしめるために、ソルベンシー・マージン制度が用意され、万一、生命保険会社が倒産した場合にも、セーフティーネットとして、生命保険契約者保護機構が準備されています。

(くわえて、生命保険各社の災害割増特約など災害関係特約には、「地震、噴火または津波」・「戦争その他の変乱」が発生し「保険会社の計算の基礎に大きな影響をおよぼす場合」には、災害保険金を削減して支払うことができる旨の約款条項がありますが、この約款条項は阪神淡路大震災や東日本大震災などでも発動されていないことにも注意が必要です。)

このように、財政上の理由による既存の保険契約の保険料率変更は、まず金融庁の約款変更の認可がおりないように思われますし、また、改正民法548条の4第1項2号の要件に照らしても、少なくとも相当性、合理性に欠けていると思われます。(保険業法は金融庁が基礎書類を審査するにあたっては、公平性、差別的対応がないこと等の基準を明示しています。)

したがって、改正法548条の4に基づく保険料の基礎率の変更に関しては、各保険会社が慎重に考えるべきであると思われます(北澤哲郎「当社の対応 日本生命保険相互会社-商品の特性をふまえた検討・対応を」『ビジネス法務』2018年7月号38頁)。

■関連するブログ記事
・民法改正案 約款/約款の拘束力‐普通保険約款に関連して

■参考文献
・長谷川仁彦・竹山拓・岡田洋介『生命・傷害疾病保険法の基礎知識』13頁
・筒井健夫・村松秀樹『一問一答 民法(債権法)改正』241頁
・吉田哲郎「生命保険会社における改正債権法への実務対応」『金融法務事情』2088号6頁
・北澤哲郎「当社の対応 日本生命保険相互会社-商品の特性をふまえた検討・対応を」『ビジネス法務』2018年7月号38頁
・生命保険文化センター『生命保険・相談マニュアル』55頁


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一問一答 民法(債権関係)改正 (一問一答シリーズ)

ビジネス法務 2018年 07 月号 [雑誌]

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1.NTT社長、海賊版サイトへのブロッキング実施について「無法地帯放置しない」
最近の日経新聞によると、NTT持株会社の鵜浦博夫社長は、2017年度決算説明会で漫画の海賊版ブロッキングの実施について記者からの質問に答えたそうです。

それによると、2017年秋に世論を喚起することを目的とし、ある出版社からNTTを被告とする民事訴訟を起こしてよいか?との相談を受け、社内でブロッキングの検討を始めたそうです。

また、鵜浦社長は、「ネット社会の自由やオープン性を守り、ネットの無法地帯を放置しないとの強い思いがあった」「(海賊版サイトが)サイトを閉じたから不法行為が清算できたわけではない。今後、同じ行為が繰り返されるのを防止するため(にブロックングを実施した)」等と語ったそうです。

・NTT社長「無法地帯放置しない」 ブロッキング決断 :日本経済新聞

つまり、鵜浦社長は、「ネット社会の自由やオープン性を守る」という崇高な理想を掲げた悪と戦う正義のヒーローのようです。

しかし、通信事業者であるNTTコミュニケーションズ、NTTドコモなどのNTTグループは、そのような行動を行うことは法的に許されるのでしょうか。

2.NTT脅迫電報事件(大阪地裁平成16年7月7日判決)
この点、つぎの、NTT西日本・東日本がヤミ金融業者らの送信した脅迫的内容の電報を配信したことが違法であると、受信者の多重債務者らが求めた損害賠償の請求訴訟が棄却された裁判例(大阪地裁平成16年7月7日判決、『判例時報』1882号87頁)が参考になると思われます。本地裁判決はおおむねつぎのように判示しました。

■判旨(大阪地裁平成16年7月7日判決)
(1)原告ら(=多重債務者ら、以下「X」とする)の主張は、(電文の内容が)公序良俗(民法90条)に反することや、電気通信事業という公共事業に携わる被告ら(= NTT西日本およびNTT東日本、以下「Y」とする)には一般人にもまして他人に対する権利侵害を防止すべき条理上の注意義務があることを根拠として、Yらに電報の受付ないし配達を差し止めるべき作為義務があるというものである。

(2)(しかし)民法90条は、そもそも公序良俗違反の法律行為を無効とする規定に止まるのであり、それを超えて何らかの法的作為義務を根拠づけるものと解することはできない。

また、Xらが条理として主張するところは、他者に対して危害を加えてはならないという観念的、抽象的なものに過ぎず、(略)法的作為義務の発生原因とはなしえないものというべきである。(略)

(3)(略)Xらの求める行為の内容は、通信事業者に求めることが適当でないのみならず、かえって公共的通信事業者としての職務の性質からして許されない。(略)その理由は、以下のとおりである。

ア (XらがYに求めている行為は)、Yらが受付ないし配達を行おうとする電報の電文が脅迫を内容とすることを覚知した場合に、当該電報の受付ないし配達を差し止めるべきものとするものであるが、仮にそのような作為義務を認めるとすれば、Yらがそのような電報全てにつき、事前にその内容を個別的に審査せざるを得ないことになる。(略)

イ ところで、(略)電気通信事業者は、利用者間で通信が行われるに際し、あくまでも物理的な通信伝達の媒介ないし手段として、発信者から発信された通信内容をそのまま受信者に伝達することが、その提供する役務の内容として予定されているものである。

そうすると、電気通信事業者ないしその従業者が電気通信役務を提供するに際し、その取扱いの過程において通信内容を事実上覚知することがありえるとしても、その通信に係る情報の内容面については全く関知せず、受信者にそのまま伝達することが当然に求められているものである。(略)

ウ しかるに、Xらが主張するような作為義務を電気通信事業者であるYらに課すとすれば、Yらとしては、前示アのとおり、取り扱う全ての電報についてその内容を個別的に把握し、審査しなければならないことになるところ、このことによる社会的な悪影響は極めて重大であり、ひいては電報、葉書といった社会的に有用な通信手段の存立を危うくするものとすらいい得るものである。

なぜなら、(略)人が通信を利用して社会的生活を営むに際し、通信の内容が逐一吟味されるものとすると、これら通信による情報伝達の委縮効果をもたらし、自由な表現活動ないし情報の流通が阻害されることになるからである(憲法が保障する基本的人権としての通信の秘密の保護の核心は、通信内容が第三者に把握ないし審査されない点にあるのであり、結果として通信がそのまま受信者に伝達されればそれで良いというものではないことは当然である)。

このことは、憲法21条が通信の秘密を保障し、これを受けた電気通信事業法3条、4条が電気通信事業者の取扱中に係る通信につき検閲及び通信の秘密の侵害を禁止する趣旨に鑑みても明らかである。(略)

(5)なお、(本件の脅迫的内容の電報は、)少なからざる恐怖感、不快感を与え、精神史的苦痛を与えたものと推測するに難くな(い)。しかしながら、これにより本件各電報を発信した者(略)の不法行為責任を追及するのであれば別格、公共的通信事業を担うYらを非難し、その不法行為責任を追及するのはおよそ筋違いといわざるを得ない。(略)

3.検討
(1)本判決について
以上のように判示して、本地裁判決は、X側の電気通信事業者は通信全てを個別に審査・検閲し、その通信内容が公序良俗違反であるときは条理上、当該通信を差し止め(ブロック)すべきであるとの主張を退けました。

また、違法・不当とXらが主張する通信に関し、当該通信を発信した者に対して損害賠償責任を追及する訴訟を提起するなら別格、そのまま通信の媒介を行っている電気通信事業者たるYらを訴えることは「筋違い」であるともこの判決は述べています。

なお、本地裁判決はXらにより控訴されましたが、高裁でも棄却され確定しています(大阪高裁平成17年6月3日判決)。

このように、本地裁判決は、①ある電報が違法・不当な内容であるか否かを把握するためには、全電報を審査の対象としなければならず、結局、多くの電報利用者の通信の秘密を侵害することになり、このことによる社会的な悪影響はきわめて重大である、②通信の内容が逐一吟味されるものとすると、萎縮効果をもたらし、自由な表現活動ないし情報の流通が阻害されること、をとくに重視しているものと思われます。

(2)NTTグループによる海賊版サイトのブロッキング実施を考える
このNTT脅迫電報事件を今回のNTTグループのブロッキングにあてはめて考えると、やはりNTTグループはブロッキングを実施したことは違法となりそうです。

ユーザーが違法な海賊版サイトを閲覧することをISPがブロッキングするためには、あらかじめブロックするサイトのリストを作成しておき、あるユーザーが海賊版サイトのURLに接続しようとしたら、リストの情報に基づいて、その接続を遮断(ブロック)することになります。

つまり、ブロッキングを実施するためには、NTTグループは常時、全ユーザーのPCやスマホなどの電子媒体における挙動を監視・監督していることになります。ISPがすべてのユーザーのネット上の動向や、どんな通信を誰といつ行っているかを常時監視しているということは、NTTの多くのユーザーにとって、通信や表現の自由を侵害し、大きな委縮効果をもたらすでしょう。

なお、NTTなどISPが監視しているのはヘッダー情報などであり、それは通信内容そのものではないから、NTTのブロッキングには問題がないという主張があります。

しかし、憲法21条2項、電気通信事業法4条における「通信の秘密」とは、通信内容そのものだけでなく、ヘッダー情報、アドレス、住所、通信日時、通信個数など、通信の外形的事項も含むとされています。これは、誰といつ通信をしたかという情報が漏洩しただけで、本人の通信の内容が推知されてしまうおそれがあるからです(曽我部真裕・林秀弥・栗田昌裕『情報法概説』51頁)。裁判例も同様に考えています(東京地裁平成14年4月30 日判決)。そのため、この主張は正しくありません。

やはり、現行法下においては、違法な海賊版サイトを法律の根拠なくNTTなどのISPがブロッキングすることは、「電気通信事業者に求めることが適当でないのみならず、かえって公共的通信事業者としての職務の性質からして許されない」と考えるべきです。

多くの専門家の方々が指摘されているとおり、国会における議論をして、通信傍受法などのような立法の是非を検討すべきです。

鵜浦社長自身は崇高な理想と使命感に基づいて「ネット社会の無法地帯を許さない」と考え、ご自身をハリウッド映画にでてくるヒーローと考えているのかもしれませんが、実際には、法律なんかどうでもいいと公言する西部劇にでてくる無法者の賞金稼ぎ程度にしか見えません。個人事業主程度ならそれも許されるのかもしれませんが、鵜浦社長は日本を代表するIT企業の社長であり、法令をはじめ、さまざまな面に考察が必要なはずです。

なお、さらに最近の日経新聞記事によると、NTTの鵜浦社長に「世論を喚起するために訴えていいか」ともちかけたのは、カドカワの川上社長だそうですが、ユーザー・国民不在で、こういう談合のようなやり口で、裁判所を使いっ走りのように使おうというNTTとカドカワの傲慢不遜でモラルのない態度・コンプライアンス意識のなさには、呆れるというか、驚いてしまいます。

■関連するブログ記事
・漫画の海賊版サイトのブロッキングに関する福井弁護士の論考を読んでー通信の秘密

■参考文献
・『判例時報』1882号87頁
・曽我部真裕・林秀弥・栗田昌裕『情報法概説』51頁

情報法概説

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1.はじめに
2014年6月に、さいたま市立三橋公民館が、憲法9条のデモを詠んだ住民の俳句を公民館だよりに掲載拒否した事件は、当時の各新聞紙において大きく取り上げられました。この事件にかかわる判決(さいたま地裁平成29年10月13日判決)が『法学セミナー』757号、758号などで取り上げられていました。

■追記
2018年5月18日の新聞各紙の報道によると、この事件の二審の同日の東京高裁も、原審を支持し、住民側勝訴の判決を出したとのことです。

・「九条守れ」の俳句掲載拒否、市に賠償命令 東京高裁|朝日新聞

2.さいたま地裁平成29年10月13日判決
(1)事案の概要
原告Xが所属する句会(俳句サークル、以下「本件句会」という)は、さいたま市立三橋公民館(以下「本件公民館」という)で活動を行い、本件公民館の主幹との合意により、2010年11月から3年以上にわたり、本件句会が秀句として提出した俳句を「公民館だより」(以下「本件たより」とする)に掲載してきた。

しかし、2014年6月にXが詠んだ「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」の俳句が秀句として本件公民館に提出されたところ、館長は、「世論を二分するテーマであり、中立であるべき公民館の刊行物にふさわしくない」として掲載を拒否した。

そこで、本件句会は、以後、秀句の提出を取りやめた。そして、Xは、さいたま市(Y)を被告とし、①本件俳句の本件たよりへの掲載請求、②掲載拒否による学習権・表現の自由・人格権等の侵害を理由とする国家賠償法に基づく損害賠償(慰謝料)請求の訴訟を提起した。

さいたま地裁は、①については棄却したが、②について5万円の損害賠償を認めた。

(2)争点
公民館だよりへの俳句掲載拒否が、Xの①学習権、②表現の自由、③人格権侵害を構成するか。

(3)判旨
一部認容。
① 「大人についても、憲法上、学習権が保障される」。しかし「学習成果の発表の自由は、学習権の一部として」ではなく「表現の自由として保障されるものと解するのが相当である」。

② Xには「本件たより」における俳句の掲載請求権はなく、「本件たより」がパプリック・フォーラムに該当するともいえない。「本件たより」が、句会会員らに表現の場を提供する助成であったということもできない。以上によれば、本件俳句の不掲載がXの表現の自由を侵害したとはいえない。

③ 会での秀句が継続して「本件たより」に掲載されてきたことからすると、Xの俳句も掲載されると期待するのは当然である。この「期待は、著作者の思想の自由、表現の自由が憲法により保障された基本的人権であることにもかんがみると、法的保護に値する人格的利益であると解するのが相当であり、公務員である・・・公民館の職員らが、著作者である原告の思想や信条を理由とするなど不公正な取扱いをした場合、同取扱いは、国家賠償法上違法となる」(船橋市立図書館事件最一小判平成17・7・14民集59巻6号1569頁参照)。

④ 「本件たより」に掲載される俳句に句会の名称・作者名が明示されることからすれば、本件俳句の掲載が公民館の中立性、公平性・公正性を直ちに害するとはいえず、むしろ、本件不掲載により公民館が集団的自衛権許容の立場と捉えられる可能性もあるが、これについて公民館職員らは何ら検討していない。「九条守れ」の文言が直ちに世論をニ分するものといえるかにも疑問の余地があり、公民館職員らがこの点を検討した形跡はない。以上によれば、本件不掲載に正当な理由はなく、公民館職員らは、Xが「憲法9条は集団的自衛権の行使を許容するものと解釈すべきでないという思想や信条を有しているものと認識し、これを理由として不公平な取扱いをしたというべきである。」

このように判示し、裁判所は本件俳句の「本件たより」への掲載は認めませんでしたが、Xの慰謝料請求(5万円)を認めました。

3.検討
(1)船橋市立図書館事件最高裁判決
本判決は、船橋市立図書館事件の最高裁判決(最高裁平成17年7月14日判決)を参照し、公民館だよりへの俳句掲載の期待を著作者の「人格的利益」ととらえ、本件公民館による本件俳句の掲載拒否を国賠法上の違法と判断しました。

この結論を出すにあたり、本判決は、本件公民館の判断過程において、Xの思想・信条を理由として俳句掲載の可否につき十分な検討が行われていなかったと認定し、これが不公平な取り扱いに該当するとしました(判旨③)。

しかし、船橋市立図書館事件は、すでに全国で販売され、船橋市立図書館を含む全国の公立図書館ですでに閲覧に供されていた図書を、図書館職員が自分の信条に合わないと勝手に廃棄していた事案であり、本判決のようにこれから本件たよりに掲載され、世に出ようとする表現物を公権力が掲載拒否した事案に援用してよいのかという疑問が残ります。

本事件は、端的に憲法19条(思想・信条の自由)、14条(平等原則)が公権力により侵害された事案として判断されるべきであったとも思われます(濱口晶子「公民館だよりへの俳句掲載拒否と学習権・表現の自由」『法学セミナー』757号118頁)。

あるいは、公民館などが館内での特定の集会や表現行為の使用を拒否した事案に関する泉佐野市民会館事件(最高裁平成7年3月7日判決)、上尾市福祉会館事件(最高裁平成8年3月15日判決)、プリンスホテル事件(東京高裁平成22年11月25日判決)などのような、集会の自由・表現の自由の観点から本事件を検討することも可能だったのではないかと思われます。

(2)公民館など公の施設における「政治的に中立でない」集会や表現行為
また、本判決が、「公務員である(略)公民館の職員らが、著作者である原告の思想や信条を理由とするなど不公正な取扱いをした場合、同取扱いは、国家賠償法上違法となる」と判示したことは非常に重要であると思われます。つまり、近年、日本の多くの自治体で「政治的に中立でない集会や表現は、公民館など自治体の公の施設の「中立性」を侵害するので、そのような集会や表現は拒否する」という実務が急速に広まっていますが、そのような自治体・公の施設の実務は国賠法上違法であり、国・自治体は損害賠償責任を負うことを本判決は明らかにしたものです。

(なおこの点、川崎市などは、ヘイトスピーチの問題に関し、ヘイトスピーチ団体による川崎市の公民館などの公の施設の使用をより拒否しやすくするため、泉佐野市民会館事件の基準より大幅にレベルを下げたガイドラインを策定しているようですが、本判決は川崎市などの一部自治体の行為に警鐘を鳴らしていると思われます。)

(3)社会教育法20条、22条、12条
また、公民館は、「住民のために、実際生活に即する教育、学術及び文化に関する各種の事業を行」う施設であり(社会教育法20条)、その事業の一環として、「討論会、講習会、講演会、実習会、展示会等を開催すること」が規定されています(同22条2号)。本件句会の活動は、「教育、学術及び文化」に関する活動であり、本件たよりが、その成果として の意味を持つなら、法令に反しない限り、本件のXの掲載請求は認められるべきだったのではないかと思われます。本判決は、本件俳句が違法ではないと判断しておりますので。

さらに、本判決ではあまり争われていないものの、本件公民館が本件俳句を掲載拒否したことは、本件句会に対する、社会教育法12条が禁止する「社会教育関係団体に対する」「不当(な)統制的支配」又は「その事業に干渉を加えてはならない」にも抵触しており、これも国賠法上違法と思われます(人見剛「憲法9条やデモに関する俳句の公民館だよりへの掲載拒否が違法とされた事例」『法学セミナー』758号95頁)。そして、公民館・自治体が本件俳句を政治的であることを理由に掲載拒否を行うことは、本件句会およびXに対する、事実上の表現の自由の侵害に該当すると思われます(濱口・前掲118頁)。

■参考文献
・濱口晶子「公民館だよりへの俳句掲載拒否と学習権・表現の自由」『法学セミナー』757号118頁
・人見剛「憲法9条やデモに関する俳句の公民館だよりへの掲載拒否が違法とされた事例」『法学セミナー』758号95頁
・野中俊彦・中村睦男・高橋和之・高見勝利『憲法1 第5版』354頁
・中村暁生『憲法判例百選Ⅰ 第6版』158頁
・荒牧重人・小川正人・窪田眞二・西原博史『新基本法コンメンタール教育関係法』378頁、384頁

憲法1 第5版

新基本法コンメンタール 教育関係法 (別冊法学セミナー)

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個人情報保護委員会

1.森永乳業で12万件の個人情報流出事故が発覚
毎日新聞などによると、森永乳業は5月9日、同社の健康食品通販サイトで、クレジットカードや銀行振り込みなどで商品を購入した、最大約12万人分のカード情報や個人情報が流出した恐れがあると発表しました。カード会社からサイトの複数の利用者に不正使用の被害が生じていると連絡を受けてこの個人情報流出事故が発覚したそうです。

・健康食品通販サイトにおけるお客さま情報の流出懸念に関するお知らせ|森永乳業

・森永乳業 顧客情報流出の恐れ 通販サイト 最大12万人|毎日新聞

2.個人情報保護委員会の個人データ漏えい事案発生時の対応に関する告示
個人情報保護委員会が平成28年に制定した、「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」(以下「ガイドライン(通則編)」という)の「4 漏えい等の事案が発生した場合等の対応」は、「漏えい等の事案が発生した場合等において、二次被害の防止、類似事案の発生防止等の観点から、個人情報取扱事業者が実施することが望まれる対応については、別に定める」と規定しており、それを受けて、同委員会は平成29年に告示「個人データの漏えい等の事案が発生した場合等の対応について」を策定しました(以下「個人データ漏えい事案発生時の対応に関する告示」とする)。

・個人データの漏えい等の事案が発生した場合等の対応について(平成 29 年個人情報保護委員会告示第1号)|個人情報保護委員会

この「個人データ漏えい事案発生時の対応に関する告示」は、個人情報流出事故が発覚した場合の民間企業等がとるべき対応をつぎのように規定しています。

①事業者内部における報告及び被害の拡大防止のための措置の実施
②事実関係の調査及び原因の究明
③影響範囲の特定
④再発防止策の検討及び速やかな実施
⑤影響を受ける可能性のある本人への連絡
⑥事実関係及び再発防止策等の公表
⑦個人情報保護委員会や監督官庁への速やかな報告

3.個人情報保護委員会や監督官庁への速やかな報告
⑦の、「個人情報保護委員会や監督官庁への速やかな報告」については、個人情報保護法改正前の金融庁や総務省の個人情報ガイドラインが監督官庁に「直ちに」報告することを規定していたため、個人情報漏洩事故が発生した企業は、迅速な報告が求められます。そのため金融業界などは、②の事実関係の調査及び原因究明である程度の事実が判明した段階で、監督官庁には第一報を報告すべきです。

なお、EU一般データ保護規則(GDPR)33条は、個人情報流出事故が発生してから72時間以内に監督官庁に報告することを要求しています。例えば欧州のユーザーにスマホアプリなどを提供している事業者などは、迅速な対応が要求されます。

また、不正アクセスなどが原因の場合は、警察への報告も必要です。

4.事実関係及び再発防止策等の公表
⑥の「事実関係及び再発防止策等の公表」については、できれば経営陣が公表したくないと悩むところでしょう。しかし、「ガイドライン(通則)」が、「二次被害の防止、類似事案の発生防止等」の観点から上の①から⑦までの対応を求めていることを考えると、やはり個人情報流出事故により、顧客に二次被害の発生するおそれがあったり、類似の個人情報流出事故の発生のおそれがあるような場合は、事業者は速やかに記者会見やウェブサイトへのプレスリリースの掲載などの公表を実施すべきです。

今回の雪印乳業の事案のように、すでにクレジットカード情報が流出し、その不正利用が発生している状況では、さらなる二次被害を防止するため、公表はやむを得ないでしょう。

5.報告を要しない場合
なお、「個人データ漏えい事案発生時の対応に関する告示」は後半で、例外として「報告を要しない場合」をいくつか列挙しています。

ただし、たとえば「漏えい等事案に係る個人データについて高度な暗号化等の秘匿化がされている場合」という規定について、個人情報保護法ガイドラインQ&Aをみると、「適切な評価機関等により安全性が確認されている電子政府推奨暗号リストや ISO/IEC18033 等に掲載されている暗号技術が用いられ、それが適切に実装されていること」(Q&A12-10)と解説されており、必ずしも公表しなくてよいハードルが下がったとはいえないように思われます。

・「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」及び「個人データの漏えい等の事案が発生した場合等の対応について」に関するQ&A|個人情報保護委員会

■参考文献
・岡村久道『個人情報保護法 第3版』235頁
・竹内朗・鶴巻暁など『個人情報流出対応における実践的リスクマネジメント』17頁、19頁

個人情報保護法〔第3版〕

個人情報流出対応にみる実践的リスクマネジメント (別冊NBL (No.107))

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