なか2656のblog

とある会社の社員が、法律などをできるだけわかりやすく書いたブログです

2019年12月

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1.はじめに
公正取引委員会は、本年12月17日付で、デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用規制の考え方を明確化するために、「デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」(以下「考え方」)を公表しました。

これは、デジタル・プラットフォーム事業者が提供するデジタル・プラットフォームにおける個人情報等の取得又は当該取得した個人情報等の利用における行為に、独占禁止法の優越的地位の濫用条項を適用するというものです(2条9項5号)。

・(令和元年12月17日)「デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」の公表について|公正取引委員会

公取委は、この優越的地位の濫用に該当する行為類型をつぎのようにしています。

<優越的地位の濫用となる行為類型>
⑴ 個人情報等の不当な取得
ア 利用目的を消費者に知らせずに個人情報を取得すること
イ 利用目的の達成に必要な範囲を超えて,消費者の意に反して個人情報を取得すること
ウ 個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じずに,個人情報を取得すること
エ 自己の提供するサービスを継続して利用する消費者に対して,消費者がサービスを利用するための対価として提供している個人情報等とは別に,個人情報等その他の経済上の利益を提供させること

⑵ 個人情報等の不当な利用
ア 利用目的の達成に必要な範囲を超えて,消費者の意に反して個人情報を利用すること
イ 個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じずに,個人情報を利用すること

※ 上記に限らず,消費者に対して優越した地位にあるデジタル・プラットフォーム事業者による個人情報等の取得又は利用に関する行為が,正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなる場合には,優越的地位の濫用として問題となる。

2.独禁法上、個人情報の目的外利用が違法とならない場合があるのか?
ところで、この公取委の「考え方」について、12月29付で企業法務系の弁護士の方が書かれたYahoo!の解説記事「GAFAはどうなる?独禁法適用、巨大IT企業の個人情報利用」(Wedge・河本秀介)の、公取委の行為類型(2)アに関するつぎの部分は興味深いものがあります。

・GAFAはどうなる?独禁法適用、巨大IT企業の個人情報利用

『例えば、(略)プラットフォーマーが、(略)サービスに全く無関係な第三者に個人情報を提供することを認めさせるような場合には、独占禁止法に違反する可能性があります。

ただし、公正取引委員会の「考え方」は、プラットフォーマーによる個人情報活用の有用性も認めていますので、たとえ利用目的を超えた個人情報の取得・利用があっても、ユーザに個人情報を提供するかどうかの選択肢が与えられているような場合には、独占禁止法違反の問題にはならないと考えられます。』

つまり、このYahoo!の解説記事によれば、個人情報の目的外利用であっても、プラットフォーマー事業者による個人情報の利用・活用の有用性が認められる場合であって、本人(ユーザー)に個人情報の提供について同意をする機会が与えられている場合には、当該プラットフォーマー事業者による個人情報の目的外利用は優越的地位の濫用行為とはならず、「考え方」および独禁法2条9項5号との関係で違法とならないということになるようです。

しかしこの点、公取委の「考え方」は、個人情報の目的外利用について、つぎのように説明しています(9頁)。

【想定例⑥】
デジタル・プラットフォーム事業者F社が,サービスを利用する消費者から取得した個人情報を,消費者の同意を得ることなく第三者に提供した(注19)。

(注19)個人情報を第三者に提供することについて,例えば,電子メールによって個々の消費者に連絡し,自社のウェブサイトにおいて,消費者から取得した個人情報を第三者に提供することに同意する旨の確認欄へのチェックを得た上で提供する場合には,通常,問題とならない。ただし,消費者が,サービスを利用せざるを得ないことから,個人情報の第三者への提供にやむを得ず同意した場合には,当該同意は消費者の意に反するものと判断される場合がある。(以下略)』

公取委の「デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」のポイント」15頁も同様です。

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つまり、公取委の「考え方」は、個人情報の取得において、プラットフォーマー事業者は個人情報の利用目的を特定しなければならないことを前提にしており、また、もしプラットフォーマー事業者がその利用目的を超えて個人情報を利用する場合には本人の同意が必要であることを前提にしています(個人情報保護法15条、16条)。

その上で、「考え方」は、プラットフォーマー事業者が利用目的を超えて個人情報を利用できる要件として、個人情報保護法16条と同様に「本人の同意」をあげ、ただし、さらにプラットフォーマー事業者の優越的な地位による本人の「やむを得ない同意」は無効であるとしているのです。

3.まとめ
この点、Yahoo!の解説記事は、プラットフォーマー事業者の事業に「有用性」がある場合で、本人に個人情報を提供することに同意するか否かを選択する場面さえあれば、個人情報の利用目的を超えた取得・利用・第三者提供なども可能であるとしています。しかし上でみたように、公取委の「考え方」や同「ポイント」はそのような考え方は採用していないように思われます。

例えば、本年発覚し大きな社会問題となったリクナビ事件においては、「リクナビ」サイトの有用性は否定できないとしても、利用目的を超え就活生本人が同意していない個人情報の収集・利用・分析や採用企業への提供などが大きく社会的非難を受け、リクルートグループは行政処分を受けています。漠然とした「有用性」、「公共性」などの抽象的な概念によって法令解釈を行うことには慎重であるべきです。


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1.はじめに
2019年12月16日付の新聞各紙によると、高齢者などの顧客に対して不正な保険販売(保険募集)を行い、空前の規模の不祥事(18万件以上)を起こしていたかんぽ生命とその保険代理店の日本郵便(郵便局)に対して、年内にも保険業法に基づく業務停止命令・業務改善命令をだす方針であるそうです(保険業法132条1項、同133条)。

■関連
・かんぽ生命・日本郵便の不正な乗換契約・「乗換潜脱」を保険業法的に考える

・かんぽ・日本郵便に保険販売で業務停止命令へ 金融庁|日経新聞

2.行政処分で想定される法令違反事項(保険業法)
かんぽ・郵便局の現場では、営業職員が保険契約の不正な乗換を行っていました。不利益となる事実(保険料が上がる、新しい保険に加入できないかもしれない等)を十分に説明しないまま行う契約乗換の保険募集は保険業法違反です(法300条1項4号)。

また、かんぽ等の営業職員は既に保険契約に加入している顧客に対して、「更新の時期です」などと虚偽のことを言って、新しい保険契約を締結させ、約半年間、「この期間は解約できません」と嘘をついて保険料の二重払いや無保険状態を発生させています。これは、「「保険契約者又は被保険者に対して、虚偽のことを告げる行為」なので保険業法違反です(法300条1項1号)。

さらに、平成28年の保険業法改正により新設された意向把握義務は、顧客本位の保険商品の購入を目指す制度ですが、かんぽ生命はひたすら営業職員都合・会社都合の商品をゴリ押ししているだけのようであり、この点も保険業法に違反しています(法294条の2)。

加えて、保険業法は法人としての保険会社、保険代理店に対して体制整備義務を課しています(法100条の2など)。保険業法施行規則53条以下は、保険会社たるかんぽや、募集代理店たる日本郵便は、全国のかんぽ支店や郵便局を定期的あるいは随時に臨検し、不正がないかどうかチェックが行われることを要求していますが、これをかんぽ生命・日本郵便はどの程度真面目に履行していたのでしょうか。

3.まとめ
平成17年には多くの生命保険・損害保険が、会社の利益を上げるなどの目的のために、顧客からの保険金請求について、保険約款の条文を不正に解釈したり、あるいは保険約款上の「詐欺無効」条項を濫用して保険金不払いを行ったことが、大きな社会問題となりました。この事件に対しては、最終的には平成17年10月28日付で金融庁が明治安田生命などに、重大な保険業法違反、コンプライアンス態勢およびガバナンス体制に根本的な問題があるとして、業務停止命令・業務改善命令が発出されました。

・明治安田生命保険相互会社等に対する行政処分について|金融庁

何万件、何十万件もの保険業法違反の保険募集による保険契約の事実が発覚した以上、かんぽ生命・日本郵便の違法は重大であり、社内にそれを防止するためのガバナンス体制・コンプライアンス態勢が整備されていなかったのですから、かんぽ・日本郵便・日本郵政などが厳しい行政処分を受けるのは当然のことと思われます。

*なお、政治的な事情からかんぽ生命の倒産等はないと思われますが、万が一かんぽ生命が倒産等しても、生命保険契約者保護機構により加入者の方々は保護されます。原則として、責任準備金の90%が保障の対象となります。

・生命保険契約者保護機構サイト


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保険業法の読み方 三訂版: 実務上の主要論点 一問一答

保険業務のコンプライアンス(第3版)

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2019年の9月30日から10月30日まで実施された、海賊版サイトについての「侵害コンテンツのダウンロード違法化等に関するパブコメ」の結果などの資料を、文化庁がこっそりとようやく、「侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計等に関する検討会(第1回・11月27日)」の資料の一部として公開しています。
・侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計等に関する検討会(第1回)|文化庁

資料3-1のパブコメ結果全体像によると、団体の提出意見は約50件となっています。個人の提出意見は実に約4300件となっています。
そして、個人の意見のうち、「侵害コンテンツのダウンロード違法化について」は、回答した個人4274人のうち、約89%にあたる3792名が「反対またはどちらかといえば反対」との意見を表明しているとのことです。(団体は、連名の個人を含む。)

文化庁は、3-1以下の資料において、個人の意見を分析した内容、代表的な意見を要約して引用していますが、4000件という多さか、あるいは国民の提出意見に価値を見出していないのか、要約などがやや雑に思われます。

その一方で、出版社や映画会社、漫画家などの提出意見については、おそらく全文をそっくりそのまま会議の資料としてコピペした分厚いものを検討会に持ち込んでおり、文化庁の姿勢は漫画家や出版業界・映画業界などに偏りすぎているのではないかと思われます。

ただ、団体の提出意見についての資料をみると、知財法の重鎮である明治大の中山信弘教授らの提出意見も掲載されていました。さすがの文化庁も中山先生を無視するわけにはいかなかったのでしょうか。

ところで、このパブコメ結果などは、パブコメ募集や結果公表などの際に中央官庁に利用されている、総務省の電子政府窓口(e-Gov)に公開されていません。

また、今回のパブコメは、官庁の施行令・施行規則・通達などを定める場合ではなく法案に関するものであるため、パブコメ手続きを定める行政手続法は直接適用ではなく準用のレベルではありますが、文化庁はパブコメ募集の際に、前回没になった著作権法改正法案等の資料をそのまま添付するのみであり、今回の著作権法改正案はまったく示しておらず、「具体的かつ明確な内容の案」をあらかじめ明示してパブコメを行わなければならないと規定する行政手続法39条2項に反しています。

なお、行政手続法は、行政はパブコメ手続を行った場合は、国民の提出意見を「十分に考慮」しなければならないと規定していますが、本検討会の第一回の議事録を読むと、本検討会のメンバーは、「漫画家・出版社・映画会社のエラい人々とそのお友達の御用学者・弁護士」ばかりのようであり心配です。

漫画家や出版社などの経済的利益の保護も重要ではありますが、しかしそれは、国民の知る権利・表現の自由(憲法21条1項)の規制と裏腹の関係にあります。本検討会や文化庁は、国民の基本的人権に十分配慮した慎重な議論を行っていただきたいと、一国民としては思います。

■関連するブログ記事
・文化庁の海賊版サイトに係る侵害コンテンツのダウンロード違法化等に関するパブコメへの提出意見-ダウンロード違法化・リーチサイト


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