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とある会社の社員が、法律などをできるだけわかりやすく書いたブログです

カテゴリ: 保険業法

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1.生命保険会社の保険(災害割増特約・傷害保険・災害入院特約など)
新型肺炎・新型コロナウイルス(COVID-19)も疾病・病気の一つであるため、被保険者の方が新型肺炎で病院に入院したり、死亡された場合は、免責条項に抵触していない限り、疾病入院給付金や一般の死亡保険金は支払いとなると思われます。

一方、少し前までの生命保険各社の終身保険などには、交通事故など事故を原因とした被保険者の方の死亡に対して割増の保障を提供する災害割増特約を販売されていました。また、傷害特約、災害入院特約なども、事故を原因とした入院などに対して保険金・給付金を支払う保険は現在も広く販売されています。

ところで、これらの災害割増特約など災害系の保険は、新型肺炎を原因とした入院・死亡などにおいて保険金・給付金が支払われるのかが問題となります。

2.災害系の保険・特約の支払事由・「対象となる感染症」
この点、例えば日本生命保険の「新傷害特約(H11)」の約款をみると、災害死亡保険金の支払事由は、「つぎのいずれかを直接の原因として(略)被保険者(略)がこの特約の保険期間中に死亡したとき」とされ、「②責任開始時以後に発病した感染症(別表11)」と規定されています。

そして、「別表11」はつぎのようになっています。

疾病傷害死亡分類提要
(日本生命保険サイトより)

つまり、感染症を原因とする死亡であっても、一定のものは災害保険金の支払い対象となるが、その感染症は、別表に掲げられている疾病のどれかである必要があります(厚労省の「疾病、傷害および死因統計分類提要ICD-10」により限定列挙されている)。

そして、別表11の感染症には、今回の新型肺炎に関連しそうなものとしては、「重症急性呼吸器症候群(SARS) U04」が含まれていますが、「(ただし、病原体がコロナウイルス属SARSコロナウイルスであるものに限ります。)」とのただし書があります。

また、厚労省はWHOが新型肺炎のICD-10上の分類等を、「2019 年新型コロナウイルス急性呼吸器疾患 U07.1」としたことを周知する通達をだしています。これを読むと、今回の新型肺炎と以前のSARSとは、感染症として別のものとなっています。

・世界保健機関(WHO)による新型コロナウイルスに関する「疾病、傷害及び死因の統計分類第10版(ICD-10)」における対応について|日本神経学会

3.まとめ
したがって、新型肺炎は生命保険各社の災害割増特約・傷害特約・災害入院特約などにおいては、保険金・給付金の支払い対象外となるように思われます。

*なお、保険会社各社で約款などの規定が異なることや、社内規定などが異なりますので、保険契約者・被保険者等の方は、加入なさっておられる保険会社にご相談をお願いいたします。

■関連するブログ記事
・傷害保険/ダニにかまれてダニ媒介性脳炎で死亡した場合に保険金は支払われるか?

■参考文献
・日本生命保険『生命保険の法務と実務 第3版』238頁、245頁

生命保険の法務と実務 【第3版】

生命・傷害疾病保険法の基礎知識

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1.はじめに
2019年12月16日付の新聞各紙によると、高齢者などの顧客に対して不正な保険販売(保険募集)を行い、空前の規模の不祥事(18万件以上)を起こしていたかんぽ生命とその保険代理店の日本郵便(郵便局)に対して、年内にも保険業法に基づく業務停止命令・業務改善命令をだす方針であるそうです(保険業法132条1項、同133条)。

■関連
・かんぽ生命・日本郵便の不正な乗換契約・「乗換潜脱」を保険業法的に考える

・かんぽ・日本郵便に保険販売で業務停止命令へ 金融庁|日経新聞

2.行政処分で想定される法令違反事項(保険業法)
かんぽ・郵便局の現場では、営業職員が保険契約の不正な乗換を行っていました。不利益となる事実(保険料が上がる、新しい保険に加入できないかもしれない等)を十分に説明しないまま行う契約乗換の保険募集は保険業法違反です(法300条1項4号)。

また、かんぽ等の営業職員は既に保険契約に加入している顧客に対して、「更新の時期です」などと虚偽のことを言って、新しい保険契約を締結させ、約半年間、「この期間は解約できません」と嘘をついて保険料の二重払いや無保険状態を発生させています。これは、「「保険契約者又は被保険者に対して、虚偽のことを告げる行為」なので保険業法違反です(法300条1項1号)。

さらに、平成28年の保険業法改正により新設された意向把握義務は、顧客本位の保険商品の購入を目指す制度ですが、かんぽ生命はひたすら営業職員都合・会社都合の商品をゴリ押ししているだけのようであり、この点も保険業法に違反しています(法294条の2)。

加えて、保険業法は法人としての保険会社、保険代理店に対して体制整備義務を課しています(法100条の2など)。保険業法施行規則53条以下は、保険会社たるかんぽや、募集代理店たる日本郵便は、全国のかんぽ支店や郵便局を定期的あるいは随時に臨検し、不正がないかどうかチェックが行われることを要求していますが、これをかんぽ生命・日本郵便はどの程度真面目に履行していたのでしょうか。

3.まとめ
平成17年には多くの生命保険・損害保険が、会社の利益を上げるなどの目的のために、顧客からの保険金請求について、保険約款の条文を不正に解釈したり、あるいは保険約款上の「詐欺無効」条項を濫用して保険金不払いを行ったことが、大きな社会問題となりました。この事件に対しては、最終的には平成17年10月28日付で金融庁が明治安田生命などに、重大な保険業法違反、コンプライアンス態勢およびガバナンス体制に根本的な問題があるとして、業務停止命令・業務改善命令が発出されました。

・明治安田生命保険相互会社等に対する行政処分について|金融庁

何万件、何十万件もの保険業法違反の保険募集による保険契約の事実が発覚した以上、かんぽ生命・日本郵便の違法は重大であり、社内にそれを防止するためのガバナンス体制・コンプライアンス態勢が整備されていなかったのですから、かんぽ・日本郵便・日本郵政などが厳しい行政処分を受けるのは当然のことと思われます。

*なお、政治的な事情からかんぽ生命の倒産等はないと思われますが、万が一かんぽ生命が倒産等しても、生命保険契約者保護機構により加入者の方々は保護されます。原則として、責任準備金の90%が保障の対象となります。

・生命保険契約者保護機構サイト


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保険業法の読み方 三訂版: 実務上の主要論点 一問一答

保険業務のコンプライアンス(第3版)

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1.はじめに
日本郵政グループのかんぽ生命保険は6月27日に、サンプル調査により顧客に不利益となる不正な生命保険の乗換契約が過去5年間に約2万3900件発覚したと発表しました。

・保障の見直し時等におけるお客さま本位の業務運営のさらなる向上について|かんぽ生命

かんぽ不祥事図
(かんぽ生命プレスリリースより)

続いて、7月上旬には、かんぽ生命および保険代理店業務を行っている日本郵便(郵便局)において、これも乗換契約について営業職員の手当やノルマのアップのために顧客に新契約・旧契約双方の保険料を不正に二重払いさせていた事例が2016年4月から約2万2000件発覚しました(日本郵政グループ内では「乗換潜脱」と呼ばれる)。

これを受けてかんぽ生命および日本郵便は7月10日に謝罪の記者会見を行い、顧客に不利益が生じた保険契約は少なくとも約10万件を超える等と説明しました。

・契約乗換に係る今後の取り組みについて|かんぽ生命
・かんぽ生命、ノルマ偏重を見直しへ 植平社長が謝罪|日経新聞

2.不正な乗換契約に対する法規制
保険業法は、営業職員等による保険募集における禁止行為の一つとして不正な乗換契約を規制しています(保険業法300条1項4号)。

保険業法300条1項4号
「保険契約者又は被保険者に対して、不利益となるべき事実を告げずに、既に成立している保険契約を消滅させて新たな保険契約の申込みをさせ、又は新たな保険契約の申込みをさせて既に成立している保険契約を消滅させる行為」

つまり、現在の保険契約を中途で解約させて新しい保険契約に加入させる乗換契約(乗換募集)は、顧客である保険契約者等にとって生活の変化等に応じて保障内容を見直すことができるメリットがある一方で、新しい保険契約に加入することによる予定利率の低下(保険料の上昇)や、被保険者の年齢が上がることによる保険料の増加、被保険者の健康状態によっては新しい保険契約に加入できないおそれなどの大きなデメリットが存在します。

そのため、保険業法は、これらのデメリットすなわち「不利益となるべき事実」を営業職員等が保険契約者等に十分に説明することを求めているのです。

この営業職員等が説明すべき「不利益となるべき事実」に関しては、金融庁のガイドラインである監督指針が例示していますが、そのなかには「被保険者の健康状態の悪化等のため新たな保険契約を締結できないこととなる場合があること」が含まれています(監督指針Ⅱ-4-2-2(7))。

そして営業職員等は、保険契約者等に「不利益となるべき事実」を説明し、顧客が不利益となる事実を理解したことを十分確認しなければならないとされており(監督指針Ⅱ-4-2-2(7))、民間生命保険各社の実務は、契約申込の際に交付する注意喚起情報に不利益となる事実を記載し、証拠として顧客から確認印をいただくことが通常です。

そしてこの保険業法300条1項4号に違反した場合、営業職員等は保険募集人の資格の取消などの行政処分を受ける可能性があります(保険業法307条1項3号)。

この点、6月27日付のかんぽ生命等のプレスリリース「保障の見直し時等におけるお客さま本位の業務運営のさらなる向上について」においては、

「この契約乗換により新しい契約にご加入いただく際は、「新旧比較表」を活用して既契 約と新規契約の保障内容や保険料額、予定利率などを比較説明するとともに、「ご留意事 項」、「注意喚起情報」などの書面により、解約等にともなう不利益事項についてもお客 さまに丁寧にご説明し、十分にご理解いただいた上で、お申し込みいただくこととして おります。」


と説明され、一見、「不利益となるべき事実」がしっかりと営業職員等から説明されていたようにみえます。しかし、民間の一般生命保険会社各社が実務取扱いで行っている確認印の取り付けの記述がないことは、かんぽ生命および代理店の日本郵便の営業職員の実務取扱いにおいては、「新旧比較表」、「ご留意事項」、「注意喚起情報」などの書面を漫然と顧客に手渡しているだけなのではないかとの疑問が生じます。

3.乗換契約の保険料の二重払い(「乗換潜脱」)
つぎに7月上旬には、かんぽ生命および日本郵便において、これも乗換契約について顧客に6か月間、新契約・旧契約双方の保険料を不正に二重払いさせていた事例が2016年4月から約2万2000件発覚しました(「乗換潜脱」)。

この不正な取り扱いは、営業職員の営業手当アップやノルマ達成のために行われたものであって、営業職員は顧客に対して、「新契約の申込後6か月間は、旧契約を解約できない」と虚偽の説明を行っていたそうです(「かんぽ保険料、二重払い2.2万件 手当金や営業実績目当て 解約時期遅らせる 不適切販売問題」西日本新聞2019年7月8日付)。

この点、保険業法は営業職員等の保険募集上の禁止行為の一つとして、虚偽説明の禁止を規定しています(保険業法300条1項1号前段)。すなわち、営業職員等が、「保険契約者又は被保険者に対して、虚偽のことを告げる行為」が禁止されています。

この保険業法300条1項1号違反の者に対しては、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金が科されます(保険業法317条の2第7号)。また、当該違反者は、保険募集人の登録の取消などの行政処分が科されます。さらに、この違反は不祥事件に該当するので、かんぽ生命および日本郵便は総務省および金融庁に対して不祥事件報告書を会社が事実を知ったときから30日以内に提出しなければなりません(保険業法127条)。

4.意向把握義務
現在の一部改正された保険業法は平成28年4月から施行されました。そして、この改正は、金融庁「保険商品・サービスの提供等の在り方に関するワーキング・グループ」での議論を踏まえて作成された報告書「新しい保険商品・サービス及び募集ルールのあり方について」をベースとしています。

同報告書は、「国民が自身のニーズに合った保険を選択し、それぞれが備えるべきリスクに的確に対応することができるためには、保険会社・保険募集人が顧客のニーズを的確に把握し、そのニーズに合った保険商品を勧めるとともに、その保険商品の内容等を適切に説明し顧客が内容について理解・納得をした上で当該保険に加入することが望ましい。」としています。

つまり、従来からの保険会社や営業職員などによる顧客への保険の押し売り販売ではなく、保険に加入しようとしている顧客の意思やニーズを主役とした保険商品の販売という基本的な方針が掲げられているのです。この方針に基づいて、平成28年の保険業法改正においては、営業職員等が顧客に初めてアクセスした段階から、営業職員に顧客のニーズなどを把握させる意向把握義務などが新設されました(保険業法294条の2)。

ひるがえってかんぽ生命・日本郵便の今回の不祥事をみると、乗換契約はゼロからの新規契約に比べて楽だからその分野で営業ノルマ達成や募集手当アップを図るという営業職員側の都合により、既存契約を持つ顧客の意向などどうでもよいと、強引に転換契約が繰り返されたように思われます。これは押し付け営業ではなく顧客のニーズを主役としようとする平成28年の保険業法改正の趣旨に明らかに反しています。

挙句に営業職員の手当の出方がよいからと乗換契約をさせられた顧客に対して6か月分も二重で保険料を支払わせる行為などは、金銭を扱う金融機関としてはあってはならないモラルハザードです。

とくに、強引に顧客に乗換契約をさせたのに新契約の引受審査で健康上の理由で新契約が謝絶となってしまうというケースは、顧客あるいはその遺族に万が一の際の保障を提供することを社会的使命とする生命保険会社としては最悪の、あってはならない不祥事です。そのようなケースが少なくとも1万8千件も発生していることには、正直怒りを感じます。2万2千件も「無保険状態」を発生させていたことも同様です。

このような不自然な数字を前に、かんぽ生命の引受審査部門・保険金支払査定部門や事務企画部門は、経営陣に疑問の声などを上げることはできなかったのでしょうか。かんぽ生命や日本郵便などの社内には内部告発制度(公益通報者保護制度)などは存在しないのでしょうか。

かんぽ生命および日本郵便の経営陣や募集管理統括部門、法務・コンプライアンス部門、内部監査部門は、今一度、平成28年の保険業法改正の趣旨を一から勉強すべきなのではないでしょうか。

5.保険会社の体制整備義務・保険代理店の体制整備義務
(1)保険会社の体制整備義務
上でみたように、保険業法は300条、307条などにおいて、主に営業職員等が保険募集上行ってはならない行為を禁止規範として規定しています。しかしそれだけでなく、同法は100条の2において、保険会社が保険募集において遵守すべき規範を規定しています。これが保険会社全体の体制整備義務(業務運営に関する措置)です。

この保険会社の体制義務は、主に、つぎの3点を確保するための措置です。
①業務に係る重要事項の顧客への説明
②業務に関して取得した顧客に関する情報の適正な取扱
③業務を第三者に委託する場合における当該業務の的確な遂行

そして保険業法施行規則53条の7などがより詳細な規定を置いていますが、今回のかんぽ生命の事件では、情報提供義務に関する体制整備義務につき詳細を規定した監督指針Ⅱ-4-2-2(2)⑩、および、意向把握義務に関する体制整備義務につき詳細を規定した監督指針Ⅱ-4-2-2(3)④のそれぞれが問題となると思われます。

また、「業務を第三者に委託する場合における当該業務の的確な遂行」については、保険業法施行規則53条の11が詳細な規定を置いていますが、そのなかには、「当該業務の委託を受けた者における当該業務の実施状況を、定期的に又は必要に応じて確認すること等により、受託者が当該業務を的確に遂行しているかを検証し、必要に応じて改善させる等、受託者に対する必要かつ適切な監督等を行うための措置」が含まれています(施行規則53条の11第2号)。

(2)保険代理店の体制整備義務
大型乗合代理店の出現などにより、平成28年の保険業法改正において、保険代理店に対しても保険会社と同様の体制整備義務が課せられました(保険業法294条の3)。この保険代理店の体制整備義務は上の①から③までは同様です。

(3)不祥事の規模
この点、今回のかんぽ生命および日本郵便の不祥事においては、不正な乗換契約が過去5年間に約2万3900件発覚し、乗換契約で保険料を不正に二重払いさせていた事例が2016年4月から約2万2000件発覚し、顧客に不利益を与えた契約が約10万件にのぼるというのです。

不正な乗換契約を年ベースにすると、1年間におよそ5000件の新契約が不正な乗換契約により水増しされていたことになります。

1年におよそ5000件の乗換契約に関する不祥事が一つの生命保険会社とその傘下の代理店で発生してきたということは、大変な異常事態です。

かんぽ生命のディスクロージャー資料によると、同社の1年間の新契約の件数の合計は約173万件(18年3月期)であり、およそ1000件に2件の新契約が不正であったことになります。

また、顧客に不利益を与えた契約が約10万件とのことですが、これもディスクロージャー資料によると、かんぽ生命の保有契約件数は約2900万件とのことであり、かんぽ生命の全保有契約のうち、およそ1000件に3件の不正があったことになります。

近年の生命保険業界における不祥事を振り返ると、平成17年頃に大きな社会問題となった、「保険金の不払い問題」においては、明治安田生命が保険金支払において保険約款の「詐欺無効」条項を濫用し、1053件の不正な保険金不払を行ったとして金融庁から業務停止命令・業務改善命令の発出を受けています。過去の保険業界の不祥事の規模と比較しても、かんぽ生命および日本郵便の今回の不祥事は大規模であり悪質です。

このように、全国2万5千か所の日本郵便の郵便局では、少なくとも過去5年以上にわたり顧客への意向把握義務が尽くされておらず、情報提供義務も果たされておらず、本社部門による全国の郵便局の監督は不十分であり、日本郵便の保険代理店の体制整備義務は尽くされていませんでした。

そして、日本郵便に保険募集を委託しているかんぽ生命は、日本郵便の全国の郵便局を監督し、必要に応じて臨検するなどの措置を講じておらず、かんぽ生命も保険会社の体制整備義務を尽くしていません。

今回の日本郵政の不祥事は、上でみた「保険金の不払い問題」を上回る大規模・悪質な不祥事であるように思われます。金融庁および総務省からかんぽ生命・日本郵便に対して、業務停止命令・業務改善命令(保険業法132条)などの厳しい処分が発出されるのではないかと予想されます。

■追記
7月30日の日経新聞などの報道によると、かんぽ生命は顧客に不利益を与えた過去5年間の保険契約の件数を約10万件から18万3千件に修正したとのことです。

・かんぽ、不適切契約の疑い18.3万件に倍増 過去5年分|日経新聞

うえでもふれたとおり、10万件、18万件の不正という数字は、食品や自動車などのメーカー業界のものとしてはままあると思われますが、保険業界、金融業界の不祥事としては空前の、最悪レベルの事故であると思われます。かんぽ生命、日本郵便、日本郵政の経営陣の経営責任が厳しく追及されることは必至です。

あるいは、金融庁および総務省は、従来より郵政民営化により日本郵政グループにおける銀行・保険の業務範囲を徐々に「規制緩和」しつつありましたが、今回発覚したこの不祥事により、その流れは逆転するかもしれません。

■参考文献
・中原健夫・山本啓太・関秀忠・岡本大毅『保険業務のコンプライアンス  第3版』156頁、160頁
・錦野裕宗・稲田行祐『三訂版 保険業法の読み方』65頁


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保険業務のコンプライアンス(第3版)

保険業法の読み方 三訂版: 実務上の主要論点 一問一答

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1.契約内容登録制度
保険金・入院給付金の不正請求などモラルリスク対策のため、生命保険協会に契約内容登録制度が設けられています。この制度は、生命保険協会の登録センターに各保険会社が自社の保険契約に関する情報をオンラインで登録するとともに、顧客から保険契約の申込があった場合には、各保険会社はセンターの登録情報にアクセスして保険の引受けの判断や保険金等の支払の判断に用いるというものです。

この契約内容登録制度で登録される情報はつぎのとおりです。

①保険契約者および被保険者の氏名・住所・生年月日・性別・住所
②死亡保険金額・災害死亡保険金額
③入院給付金の種類・日額
④契約日
⑤取扱保険会社

これらの情報は契約日から5年間登録されます(被保険者が満15歳未満の保険契約については、契約日から5年間と契約日から被保険者が15歳となる期間までのいずれか長い期間)。

保険契約者および被保険者は、自身の登録情報に間違い等があった場合、その訂正等を申し出ることができます。また、個人情報保護法に基づく開示・訂正等の請求も可能です。

なお、登録される保険契約はすべてではなく、一定の保険金額を上回る場合ですが、モラルリスク事案の社会問題化を受けて、この金額はしだいに引き下げが行われています。

また、本制度への情報の登録は、現在では契約の成立ではなく申込の段階で行われるようになったため、短期集中的に多数の保険会社の保険に加入する事案(いわゆる「他社集中加入事案」)に対してかなりの程度、防止ができるようになっているとされています(山下友信『保険法(上)』326頁)。

さらに、2002年より、生命保険協会と全国共済農業協同組合連合会(全共連、JA共済)との間で情報の相互照会を行う契約内容照会制度が設置されています。

加えて、2001年より日本損害保険協会においても傷害保険契約等に関して契約内容登録制度が創設されましたが、生命保険協会との相互照会はいまだ実施されていません(2018年現在、山下・前掲326頁。)

2.支払査定時照会制度
モラルリスク対策のために、生命保険協会は、保険会社各社が保険金・給付金の支払査定の際に判断の参考とするために、保険加入者の保険金支払状況について相互照会を行う支払査定時照会制度を設置しています。

この支払査定時照会制度においては、生命保険協会は契約内容照会制度とは異なり、全国共済農業協同組合連合会だけでなく、全国労働者共済生活協同組合連合会(全労災)および日本コープ共済生活協同組合連合会(コープ共済)とも情報の相互照会を行っています(山下・前掲139頁)。

契約者、被保険者および保険金受取人は、自身の情報に誤りなどがあった場合は訂正などを申し出できます。また、個人情報保護法に基づく開示・訂正等の請求も可能です。

■参考文献
・山下友信『保険法(上)』326頁
・長谷川仁彦『生命・傷害疾病保険法の基礎知識』79頁
・契約内容登録制度・契約内容照会制度について|生命保険協会
・「支払査定時照会制度」について|生命保険協会

保険法(上)

生命・傷害疾病保険法の基礎知識

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1.米国法FATCA(外国口座税務コンプライアンス法)
2008年のスイス大手銀行における脱税事件を受けて、アメリカで「FATCA(外国口座税務コンプライアンス法、Foreign Account Tax Compliance Act、ファトカ)」が制定され、2014年から同法による確認手続きが始まりました。

FATCAとは、米国納税者による米国外の金融機関等を利用した租税回避を防ぐ目的で、米国外の金融機関に対して、顧客が米国納税義務者であるかどうかを確認すること等を求める米国法です。

そのため、日本の生命保険会社等は、顧客と保険取引等をする際には、顧客が米国納税義務者であるか否かを確認し、それに該当する場合には、米国の内国歳入庁に保険契約の情報等を報告しなければなりません。(法人契約を含む。)

このFATCAによる確認手続きが生命保険会社に求められるのは主につぎの場合です。

生命保険契約の締結、保険契約者の変更、満期保険金など保険金の支払等の取引発生時
米国への移住など、保険契約者の状況が変化した時

顧客が確認手続きに応じない場合、あるいは米国内国歳入庁への報告に同意しない場合、保険会社は保険契約の締結を行わないこととしています。また、契約締結後に顧客が確認手続きに応じない場合は、米国内国歳入庁の要請に基づき、当該保険契約情報を日米当局間で交換することとされています。

なお、実務上、生命保険各社は、FATCAの確認手続きについて、取引時に保険会社所定の書面等により、顧客自身により所定の米国納税義務者であるか否かについて申告を求める方法をとっています。

2.日本版CRS(共通報告基準)
このFATCA成立を受け、OECDにおいても国際的な脱税回避のために、非居住者に関する金融口座情報を税務当局間で自動的に交換するための国際基準である「共通報告基準(CRS、Common Reporting Standard)」が制定・公表されました。

これを受けて日本では、「租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律(実特法)」の改正により、2017年1月より新たに金融機関等に口座開設等を行う者等は、金融機関等へ居住地国名等を記載した届出書の提出が必要となりました(「日本版CRS」)。

日本版CRSでは、預金口座の開設、証券口座の開設、年金保険契約の締結の際に顧客から届出書の提出を求めることが必要となります。(法人契約を含む。)

■参考文献
・経済法令研究会『保険コンプライアンスの実務』79頁、81頁
・国税庁サイト「共通報告基準(CRS)に基づく自動的情報交換に関する情報」
・生命保険協会サイト「「FATCA(外国口座税務コンプライアンス法)」に関するお客さまへのお願い」

保険コンプライアンスの実務

保険業務のコンプライアンス(第3版)

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