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カテゴリ: 知的財産権法

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2019年の9月30日から10月30日まで実施された、海賊版サイトについての「侵害コンテンツのダウンロード違法化等に関するパブコメ」の結果などの資料を、文化庁がこっそりとようやく、「侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計等に関する検討会(第1回・11月27日)」の資料の一部として公開しています。
・侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計等に関する検討会(第1回)|文化庁

資料3-1のパブコメ結果全体像によると、団体の提出意見は約50件となっています。個人の提出意見は実に約4300件となっています。
そして、個人の意見のうち、「侵害コンテンツのダウンロード違法化について」は、回答した個人4274人のうち、約89%にあたる3792名が「反対またはどちらかといえば反対」との意見を表明しているとのことです。(団体は、連名の個人を含む。)

文化庁は、3-1以下の資料において、個人の意見を分析した内容、代表的な意見を要約して引用していますが、4000件という多さか、あるいは国民の提出意見に価値を見出していないのか、要約などがやや雑に思われます。

その一方で、出版社や映画会社、漫画家などの提出意見については、おそらく全文をそっくりそのまま会議の資料としてコピペした分厚いものを検討会に持ち込んでおり、文化庁の姿勢は漫画家や出版業界・映画業界などに偏りすぎているのではないかと思われます。

ただ、団体の提出意見についての資料をみると、知財法の重鎮である明治大の中山信弘教授らの提出意見も掲載されていました。さすがの文化庁も中山先生を無視するわけにはいかなかったのでしょうか。

ところで、このパブコメ結果などは、パブコメ募集や結果公表などの際に中央官庁に利用されている、総務省の電子政府窓口(e-Gov)に公開されていません。

また、今回のパブコメは、官庁の施行令・施行規則・通達などを定める場合ではなく法案に関するものであるため、パブコメ手続きを定める行政手続法は直接適用ではなく準用のレベルではありますが、文化庁はパブコメ募集の際に、前回没になった著作権法改正法案等の資料をそのまま添付するのみであり、今回の著作権法改正案はまったく示しておらず、「具体的かつ明確な内容の案」をあらかじめ明示してパブコメを行わなければならないと規定する行政手続法39条2項に反しています。

なお、行政手続法は、行政はパブコメ手続を行った場合は、国民の提出意見を「十分に考慮」しなければならないと規定していますが、本検討会の第一回の議事録を読むと、本検討会のメンバーは、「漫画家・出版社・映画会社のエラい人々とそのお友達の御用学者・弁護士」ばかりのようであり心配です。

漫画家や出版社などの経済的利益の保護も重要ではありますが、しかしそれは、国民の知る権利・表現の自由(憲法21条1項)の規制と裏腹の関係にあります。本検討会や文化庁は、国民の基本的人権に十分配慮した慎重な議論を行っていただきたいと、一国民としては思います。

■関連するブログ記事
・文化庁の海賊版サイトに係る侵害コンテンツのダウンロード違法化等に関するパブコメへの提出意見-ダウンロード違法化・リーチサイト


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著作権法 第2版

情報法概説 第2版

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Ⅰ.はじめに
「漫画村」などの海賊版サイトへの対策のため、現在、文化庁がパブリックコメント(意見公募手続)を実施しています(2019年10月30日まで)。

・侵害コンテンツのダウンロード違法化等に関するパブリックコメント|文化庁

私も一般人ながら、少し意見を提出しました。

(以下、①ダウンロード違法化の範囲拡大における要件について、②リーチサイト規制について、③海賊版サイトのブロッキングについて、④アクセス警告方式について、の4点について本パブコメの記述式の提出意見として提出したものです。趣旨・内容は、これまでのブログ記事とだいたい同じです。)

(なお、本パブコメが募集している論点は、①②についてですが、文化庁の検討委員会などの資料をみると、政府は数年内に①②③④をできるのもから随時実施する方針のようであり、つぎのパブコメがあるかも不明であるため、③④も提出しました。)

Ⅱ.提出意見
A.ダウンロード違法化の範囲拡大における要件について

〇著作権法30条1項3号の条文の、「著作権を侵害する自動公衆送信」の後に、「(原作のまま公衆送信されるものに限る。)」との文言を追記すべきである。

〇「著作権者の利益が不当に害される場合」という文言も追加すべきである。

(一般財団法人情報法制研究所「ダウンロード違法化の全著作物への拡大に対する懸念表明と提言」(平成31年2月8日)より)

B.リーチサイト規制について
1.リンクをはる行為の法的性質
ウェブサイトの作成・運営において、ハイパーリンク(リンク)をはる(設定する)行為は、リンク元からそのまますぐにリンク先のウェブサイトに移行し当該ウェブサイトを閲覧できるなど、従来の紙媒体にはない大きな利便性のある機能を有しており、リンクをはる行為は国内外の官民・個人のウェブサイト等において、広く日常的に行われている。

つまり、リンクをはる行為ないし機能は、ウェブサイト等を作成し公表する個人・法人の表現行為に資するものであり、表現の自由(憲法21条1項)の保障の下にある。(また、リンクをはって、ウェブサイト等を作成等する個人・法人が営利・営業を目的として表現行為を行うのであれば、それは表現の自由だけでなく、これも憲法の保障の下にもあることになる(憲法22条、29条)。さらに、ウェブサイト等を閲覧等する個人・法人の側からみれば、これは国民の知る権利に資するものであり、これも表現の自由の保障の下にある。

表現の自由は、個人の自己実現の価値と国民の自己統治の価値の二つの面を有するが、とくに後者はわが国の政治体制である民主主義の土台をなすものであり、この意味で、表現の自由は基本的人権のなかでも極めて重要な基本権である。そのため、表現の自由の一つである、リンクをはる行為への法律等による規制・制約は厳格に検討する必要がある。

2.違法サイトにリンクをはった時点でリーチサイトは違法となるのではないか?
(1)リンクをはる行為と名誉棄損など
従来、リンクをはる行為は、裁判例上、著作権法侵害とならないとされてきた(ロケットニュース24事件判決・大阪地裁平成25年6月29日)。 しかし近年、リンクをはる行為による名誉棄損が争われた裁判例においては、リンクをはる行為の違法性を名誉棄損などから認める事案が現れている(2ちゃんねる事件・東京高裁平成24年4月18日判決、プロバイダ責任制限法実務研究会『最新プロバイダ責任制限法判例集』125頁)

そして同様の趣旨の裁判例として、東京地裁平成16年6月18日判決、東京地裁平成27年12月21日判決、東京地裁平成27年1月29日判決などが存在する(プロバイダ責任制限法実務研究会・前掲126頁、また最高裁平成24年7月9日参照)。

これらの裁判例は、リンク先の記事・投稿をリンクをはった記事・投稿が「取り込んだ」「引用した」として、リンク先の投稿内容がリンク元の投稿の一部となり、リンク元がリンク先の違法を承継して取得するといったニュアンスが読み取れる。

また、昨年4月の知財高裁は、ツイッターのリツイート(いわゆる公式リツイート)について、著作者人格権(氏名表示権、同一性保持権)の侵害を認定する判断を示している(知財高裁平成30年4月25日)。

(2)結論
このように、一般論としてはリンクをはる行為は違法ではないとしても、リンク先のウェブサイトが違法であり、リンクをはった者がそれを認識していた場合は、当該リンクをはる行為は違法と近時の裁判所に判断される可能性が高いと思われる。

違法なリーチサイトに対しては、影響の大きい著作権法改正ではなく、漫画家や出版社などの権利者が損害賠償請求などの訴訟を提起すべきなのではないかと思われる。

3.著作権者などはリーチサイトに対して差止請求を行うことが可能なのではないか?
著作権法112条は、著作権者などは著作権を侵害する者または侵害するおそれのある者に対して差止めを請求することができると規定している。この差止請求の対象となる者は直接の侵害主体(違法アップロードサイト、海賊版サイトなど)に限られるのか、あるいは幇助者などの間接侵害者をも含むのかについては論点として争いがある。

この点、裁判例は、肯定する裁判例も複数存在している(ヒットワン事件・大阪地裁平成15年2月13日、選撮見撮事件・大阪地裁平成17年10月24日、『エンターテインメント法務Q&A』258頁)。

4.まとめ
以上のように、現行法下においても、①違法サイトにリンクをはった時点でリーチサイトは違法となり、②著作権者などはリーチサイトに対して差止請求を行うことが可能であると考えられる。

そのため、表現の自由や知る権利の制約となるおそれのある影響の大きな著作権法改正に対して、政府・国会は慎重であるべきと考える。

C.海賊版サイトのブロッキングについて
1.海賊版サイトのブロッキングと児童ポルノのブロッキング
今回の海賊版サイトの議論に先行する事例として、インターネット上の児童ポルノのブロッキングがある。この児童ポルノのブロッキングに関する、安心ネットづくり促進協議会は、2010年に「法的問題検討サブワーキング 報告書」を公表しているが、その中で、同協議会は、「マンガ等の違法な海賊版サイトによる著作権侵害とそのブロッキングについても、児童ポルノのブロッキングの考え方が妥当し得るか」という論点を検討し、結論として次のように、これを否定している(同報告書20頁)。

・「法的問題検討サブワーキング 報告書」|安心ネットづくり促進協議会

『【児童ポルノ以外の違法情報についても妥当し得るか】
インターネット上には、児童ポルノのほか、成人のわいせつ画像、著作権侵害情報、誹謗中傷やプライバシー侵害等様々な違法情報が存在する。これら児童ポルノ以外の違法情報についても同様に緊急避難としてブロッキングすることができるかどうかが問題となる。

(略)

著作権侵害との関係では、著作権という財産に対する現在の危難が認められる可能性はあるものの、児童ポルノと同様に当該サイトを閲覧され得る状態に置かれることによって直ちに重大かつ深刻な人格権侵害の蓋然性を生じるとは言い難いこと、補充性との関係でも、基本的に削除(差止め請求)や検挙の可能性があり、削除までの間に生じる損害も損害賠償によって填補可能であること、法益権衡の要件との関係でも財産権であり被害回復の可能性のある著作権を一度インターネット上で流通すれば被害回復が不可能となる児童の権利等と同様に考えることはできないことなどから、本構成を応用することは不可能である。

ブロッキングは、適切な内容を含む通信全般を監視し、不適当な内容の通信を遮断するというものであり、事実上の私的検閲行為であり、その実施対象については、児童ポルノに限定し、他に拡大することがあってはならないと考える。』
(安心ネットづくり促進協議会 「法的問題検討サブワーキング報告書」20頁より)

この 「法的問題検討サブワーキング報告書」20頁が述べるように、児童ポルノがインターネット上のアップロードされると、被害者の児童にとって直ちに重大かつ深刻な人格権侵害が発生するのに対して、マンガ等が海賊版サイトにアップロードされることは、著作権という財産権の現在の危難が認められるにとどまる。

そのため、著作権侵害という財産権侵害にとどまる海賊版サイトについては、ネット上の児童ポルノに対するブロッキングを支えている考え方は応用・援用できないと考えるべきである。

すなわち、人格権の侵害は被害者(児童)において事後的には回復困難な重大な被害を発生させるのに対して、財産権の侵害は、それが金銭で計算できる以上、事後に金銭的に回復できる損害であるからである。

また、著作権侵害に対しては、被害者は加害者側に対して差止請求や損害賠償請求などの法的手段を行使することで、問題を解決することが可能である。少し前まで出版社・漫画家側は、「海賊版サイトの運営者やそのサーバーは海外に存在するのが通常であり、日本の警察・裁判所が対応できない」と主張してきた。しかし、2019年9月24日には「漫画村」の運営者が逮捕されたことを忘れてはならない。

このように各論点を検討すると、海賊版サイト対策としてブロッキングを行うことは法的に違法・不当である。

2.海賊版サイトのブロッキングと緊急避難
ブロッキングは、表現の自由(憲法21条1項)、知る権利(同21条1項)との関係で問題となるが、とくに通信の秘密(同21条2項)との関係で問題となる。つまり、ブロッキングは、プロバイダがあらかじめ用意したブロックするサイトのリストに基づき、利用者・国民がインターネット上でどのようなサイトにアクセスするかすべての挙動を24時間365日監視し、リストに該当するサイトに利用者がアクセスしようとしたら、それを遮断(ブロック)する手法であるからである(曽我部真裕・林秀弥・栗田昌裕『情報法概説 第2版』56頁)。

通信の秘密は、憲法に規定があるだけでなく、プロバイダなどを規制する電気通信事業法も規定を置いている。すなわち、同法4条は通信の秘密の不可侵を定め、同4条違反には罰則があり(同179条・通信の秘密侵害罪)、また、総務省による業務改善命令の規定も置かれている(同29条1項1号)。

ここで、通信の秘密侵害について考えると、ブロッキングは利用者・国民のアクセス先を「知得」し、アクセスを遮断する目的でアクセスのデータを「窃用」しているので、通信の秘密侵害罪の構成要件に該当する。その上で、ブロッキングは違法性阻却事由との関係で、緊急避難(刑法37条1項)に該当するとされている。

緊急避難は、①現在の危険の存在、②補充性(「やむを得ずにした行為」)、③法益均衡、の3要件を満たしてはじめて該当する。

ここで、海賊版サイトのブロッキングを考えると、上でみたように海外にサーバーなどがあったとしても、漫画村の運営者を逮捕することは可能であった。つまり警察・裁判所などは漫画村に対して有効な防御であった。(受益者負担の原則からは、出版社・漫画家等はこれまで以上に海賊版サイトに対して差止請求・損害賠償請求、警察への相談・協力などを国任せでなく自己の問題として行うことが期待される。)すなわち、出版社・漫画家などには問題解決のための有効な法的手段が数多く存在するのであるから、②補充性の要件は満たされていないと考えるべきである。

また、これも上でみたとおり、海賊版サイトで侵害されているのはあくまでも著作権、つまり財産権にすぎないのであるから、これは後日、金銭的に解決可能であるので、①現在の危機の存在、の要件も満たしていない。

さらに、ブロッキングは表現の自由・知る権利や通信の秘密など、人権のなかでもとくに重要な基本的人権と衝突するものである。出版社・漫画家等の著作権上の経済的な損害と、わが国の多数のインターネットを利用する国民の知る権利・表現の自由・通信の秘密という極めて重要な精神的自由(人権)とを比較考量(法益均衡)し、慎重にも慎重な検討が必要であるが、精神的人権が一度破壊されてしまうと民主制の過程で回復が困難であること等を考えると、出版社・漫画家等の経済的人権よりも、多くの国民の精神的人権のほうが重要であると考えられる。

したがって、③法益均衡、の要件も満たされていない。そのため、海賊版のブロッキングという手法は、緊急避難に該当せず、違法性は阻却されない。つまり、海賊版サイトに対するブロッキングには、通信の秘密侵害罪(電気通信事業法4条、179条、憲法21条2項)が成立することになる。

このように、海賊版サイトにブロッキングを行うことは違法であるので、政府・国会(あるいは政府から要請を受けたプロバイダ等)はこれを行うべきではない。

D.アクセス警告方式について
1.アクセス警告方式
通信の秘密は基本的人権ではあるものの無制約ではなく、その規制の適法性は「必要最小限度」の制約であるか否かにより判断される(長谷部恭男『註釈日本国憲法(2)』435頁〔阪口正二郎〕)。

この点、2018年8月に総務省の検討委員会において、海賊版サイト対策にアクセス警告方式の転用を提案された宍戸常寿教授が、その前提条件の一つとして「静止画ダウンロードが違法化されること」をあげているのは、この必要最小限度の要件をクリアするためであろうと思われる。

宍戸教授は、2018年8月30日付「アクセス警告方式(補足)」において、この静止画ダウンロード違法化がなされないままアクセス警告方式が行われることの問題をつぎのように説明している。

・「アクセス警告方式(補足)」|宍戸常寿教授

「一般的・類型的に見て通常の利用者による許諾を想定できるといえる典型的な状況が利用者本人にとっての不利益を回避する場合であり、利用者に違法行為をさせないという点で明確である。仮に、海賊版サイトの閲覧行為が利用者本人にとって法的に消極的に評価されることを明確化できないのであれば、海賊版サイトの閲覧行為がマルウェア感染等別の形で利用者本人の不利益になるおそれが一般的にあるかどうかによることになる(あるいは、そのようなおそれのある海賊版サイトに警告表示を限定する等の工夫が必要になる)。特段そのような事情がないにもかかわらず警告方式を用いようとすることは、約款による同意が通信の秘密の放棄と評価できないおそれがあるとともに、利用者に対する警告の感銘力も低下し、対策の実効性も低下する点にも注意が必要である。」

このように、アクセス警告方式の提案者ご本人である宍戸教授ですら、静止画ダウンロード違法がなされないままのアクセス警告方式の導入は困難としているのであるから、現段階でのアクセス警告方式の導入は通信の秘密に対する必要最小限度の制約を超えたものであり、法的に無理であるといえる。

また、かりに海賊版サイト対策のためにアクセス警告方式を導入すると、プロバイダ(ISP)はすべてのユーザー・国民のすべてのウェブサイトのアクセス先を24時間365日チェックし続けることになるが、これも「必要最小限度」の度合いを明らかに超えており、通信の秘密の侵害となる。

総務省は、通信の秘密のうちアクセス先・URLなどの通信データ・メタデータを取得しているだけだから通信の秘密侵害にならないと主張するようだが、アクセス先・URLなどの通信データ・メタデータなどの外形的事項も通信の秘密の保障の範囲内であることは、憲法・情報法の判例・通説・実務がこれまで認めてきたところである( 大阪高裁昭和41年2月26日判決、長谷部恭男『註釈日本国憲法(2)』435頁〔阪口正二郎〕、曽我部真裕・林秀弥・栗田昌裕『情報法概説』51頁)。

同時に、電気通信事業法3条は、電気通信事業者による検閲を禁止しているが、ISPによる24時間365日のユーザーのネット上の挙動のモニタリングは、この検閲に抵触しないのかも問題になるであろう。

2.約款論
さらに、宍戸教授および総務省は、「アクセス警告方式は、つぎの3要件を満たせば、通常の利用者であれば許諾すると想定されるので、約款に基づく事前の包括的同意であっても有効である」と主張している。これは民法・商法の分野で議論されてきた、約款という制度を説明するための民法学者のとる意思推定理論にたっているものと思われる。

意思推定理論とは、「約款の開示とその内容に合理性があるならば、契約としての意思の合致を擬制してもよい」という理論である(近江幸治『民法講義Ⅴ契約法[第3版]』24頁)。

この点、意思推定理論によると、約款には「合理性」が必要となる。しかし、静止画ダウンロードが違法化されていない現時点においては、海賊版サイトへのアクセスが別に違法でもなんでもないにもかかわらず、ISPが24時間365日、ユーザー・国民のネット上の挙動をモニタリングしつづけるという「約款」は、あまりにも国民の通信の秘密を侵害しており、当該約款には合理性が無く違法ということになるのではないか。

むしろ海賊版サイト対策のためにISPが24時間365日、ユーザー・国民のネット上の挙動をモニタリングしつづけることは、ユーザー・国民の法令上の権利を不当に制限する「不当条項」に該当するとして、消費者契約法10条、改正民法548条の2第2項に照らして無効と裁判所等に判断される可能性がある。

3.サイバー攻撃対策のアクセス警告方式を海賊版サイト対策に持ってくることの違和感
最後に、そもそも宍戸教授や総務省などが、サイバー攻撃対策のためのACTIVEのアクセス警告方式を海賊版サイト対策に持ってくることに、強い違和感あるいは法的バランスの悪さを感じる。

ACTIVEのアクセス警告方式も24時間365日すべてのユーザーのすべてのネット上の挙動をモニタリングするという通信の秘密という基本的人権を侵害する制度なのだから、本来は通信傍受法などのように、国会での審議を経て立法手当をした上で行うべきである。

ただし、ACTIVEのアクセス警告方式は、サイバー攻撃から日本の個人・法人・国など社会全体のサイバーセキュリティを守るためという、刑法的にいえば社会的保護法益を守るという趣旨の制度であるがゆえに、かろうじて「アクセス警告方式=民間企業の約款」制度が不問にふされているだけであろうと思われる。

一方、今回問題となっている、海賊版サイトの件は、はっきり言ってしまえば、たかだか出版社と漫画家達の個人的・個社的な財産的法益の侵害が問題となっているに過ぎない。社会全体のサイバーセキュリティの保護という社会的法益に比べれば非常に軽い保護法益である。

そもそもこの財産的な損失は、受益者負担の原則の観点から、出版社などが民事訴訟を海賊版サイトに提起するなどして自助努力、自己責任で何とかすべき筋の話である。国がこうも出版業界のために手取り足取りと様々な政策案を検討してあげているのも、国民からみて何らかの薄ら暗いものを感じさせる。国が出版社・漫画家等という特定の業界の援助にばかり時間・予算・人材を割くことは、公務員および国・行政は「全体の奉仕者であって一部の奉仕者ではない」(憲法15条2項、国家公務員法96条1項等)という国の大原則にすら抵触しているように考えられる。

秤にかけられている対立利益が国民の重要な精神的利益である通信の秘密・プライバシー権であることをも考えると、ACTIVEのアクセス警告方式をそのままマンガ海賊版サイト対策にもってくることは法的に無理筋すぎと考えられる。

4.まとめ
このように、海賊版サイト対策でアクセス警告方式を導入することは違法・不当であると考えられる。政府・国会は海賊版サイト対策でアクセス警告方式を導入することを止めるべきである。


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1.政府がリーチサイト規制を法制化する方針を示す
新聞報道などによると、政府・文化庁はいわゆるリーチサイトを規制するために著作権法の一部改正を行う方針を固めたとのことです。

・<海賊版誘導>「リーチサイト」規制へ 運営者らに罰則|毎日新聞

たしかに海賊版サイトなどとともにリーチサイトによって著作者や出版社などが多額の経済的損失を負っていることは事実です。

しかし、ウェブサイトの作成などにおいて、「リンク(ハイパーリンク)をはる(設定する)」行為は、従来の紙媒体にはない大きな利便性を有するものであり、ネットの普及以来、国内外で一般に広く行われているところです。それは少し大きくいえば、ウェブサイトを読む国民の「知る権利」に奉仕し、またネット上の表現者による表現の自由に資するところが大きいと思われ(憲法21条)、リンクをはる行為を国が安易に規制してよいのかという疑問があります。

また、政府の方針は、リーチサイト運営者を規制するようでありますが、それらの条文の定義のあり方によっては、過大な負担をウェブサイト運営者やプロバイダなどに課すことになりかねず、影響が大きすぎるのではないかと思われます。

そこで、本ブログ記事では、現行法下においても、①違法サイトにリンクをはった時点でリーチサイトは違法となるのではないか、②リーチサイトは違法サイトの違法行為の共犯として責任を負うのではないか、③著作権者などはリーチサイトに対して差止請求を行うことが可能なのではないか、という3点から、リーチサイト規制の法制化に対して疑問を示したいと思います。

2.違法サイトにリンクをはった時点でリーチサイトは違法となるのではないか?
(1)リンク
ウェブサイト運営者が自身のサイトにリンク(ハイパーリンク)をはる(設定する)行為は、リンク先サイトのURLの文字列をサイトに掲載しているだけにすぎないため、一般的にはそれだけでは複製権(著作権法21条)および自動公衆送信権(23条)との関係で違法とはならないと解されています。

この点が争点となったロケットニュース24事件判決(大阪地裁平成25年6月29日)は、動画共有サービス上で行われたライブストリーミング配信された動画を第三者が無断で動画共有サイトにアップロードしたところ、被告(ロケットニュース24)が当該アップロード先にリンクをはった事案において、

『本件動画は、著作権者の明示又は黙示の許諾なしにアップロードされていることが、その内容や体裁上明らかでない著作物である』

として、リンクをはった者の責任を否定しています(エンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワーク『エンターテインメント法務Q&A』257頁)。

(2)リンクをはる行為と名誉棄損など
しかし近年、リンクをはる行為による名誉棄損が争われた裁判例においては、リンクをはる行為の違法性を認める事案が現れています。

例えば、2ちゃんねる(現5ちゃんねる)の掲示板に、「僧侶Xのセクハラ」との記載に続き、別の電子掲示板のXの社会的信用を低下させる記事(「本件記事3」)のURLが記載された投稿(「本件各記事」)について、Xが当該投稿が名誉棄損にあたるとして発信者情報の開示を求めて訴訟を提起したところ、第一審はこれを棄却したものの、第二審の東京高裁はつぎのように判示して、リンクをはる行為による名誉棄損を認定し、発信者情報の開示を命じています。

『本件各記事が社会通念上許される限度を超える名誉棄損又は侮辱行為であるか否かを判断するためには、本件各記事のみならず本件各記事を書き込んだ経緯等も考慮する必要がある。』『本件各記事を見る者がハイパーリンクをクリックして本件記事3を読むに至るであろうことは容易に想像できる。そして、本件各記事を書き込んだ者は、意図的に本件記事3に移行できるようにハイパーリンクを設定しているのであるから、本件記事3を本件各記事に取り込んでいると認めることができる。』『本件各記事は本件記事3を内容とするものと認められる。』(東京高裁平成24年4月18日判決、プロバイダ責任制限法実務研究会『最新プロバイダ責任制限法判例集』125頁)


そして同様の趣旨の裁判例として、東京地裁平成16年6月18日判決、東京地裁平成27年12月21日判決、東京地裁平成27年1月29日判決などが存在します(プロバイダ責任制限法実務研究会・前掲126頁、また最高裁平成24年7月9日参照)。

これらの裁判例は、リンク先の記事・投稿をリンクをはった記事・投稿が「取り込んだ」「引用した」として、リンク先の投稿内容がリンク元の投稿の一部となり、リンク元がリンク先の違法を承継して取得するといったニュアンスが読み取れます。

さらに、名誉権侵害のウェブサイトに対するリンク設定について、端的に「抗告人の人格権が侵害されていることは明らかである」として発信者情報開示請求を認容した裁判例も存在します(東京高裁平成27年5月27日決定、プロバイダ責任制限法実務研究会・前掲127頁))。

加えて、本年4月の知財高裁は、ツイッターのリツイート(いわゆる公式リツイート)について、著作者人格権(氏名表示権、同一性保持権)の侵害を認定する判断を示しています(知財高裁平成30年4月25日・上告中)。この知財高裁も、上であげたリンクをはる行為と同様の考え方をとっているものと考えられます。

(3)小括
このように、一般論としてはリンクをはる行為は違法ではないとしても、リンク先のウェブサイトが違法であり、リンクをはった者がそれを認識していた場合は、当該リンクをはる行為は違法と近時の裁判所に判断される可能性が高いと思われます。

違法なリーチサイトに対しては、著作権法の改正ではなく、漫画家や出版社などの権利者が訴訟を提起すべきなのではないかと思われます。

3.リーチサイトは違法サイトの違法行為の共犯として責任を負うのではないか?
つぎに、リーチサイト運営者のように、海賊版サイトなどの違法サイトにリンクをはっている者は、違法にアップロードされた漫画等が違法に配信されるのを助けているといえます。

そのため、違法アップロードを知りながらリンクをはった者の行為が「幇助」であるとして、刑事上、著作権侵害罪の共犯であると評価される可能性があります(著作権法119条1項、刑法62条)。また、民事上も同様に、著作権侵害という不法行為を助けたとして、当該リンクをはった者は、これも不法行為責任を負う可能性があります。

さらに、リンクをはった者が実質的に違法な配信を行っている者と同一であると評価される場合には、当該リンクをはっている者は共犯ではなく正犯として刑事上・民事上の責任を負う可能性があります(雪丸真吾・福市航介・宮澤真志『コンテンツ別 ウェブサイトの著作権Q&A』109頁)。

したがって、この面でも、リーチサイトに大しては、わざわざ立法化をするまでもなく、端的に漫画家・出版社や音楽家などの権利者が警察当局と連携し、刑事・民事の訴訟を提起するなどして対応すべきではないかと思われます。

4.著作権者などはリーチサイトに対して差止請求を行うことが可能なのではないか?
著作権法112条は、著作権者などは著作権を侵害する者または侵害するおそれのある者に対して差止めを請求することができると規定しています。この差止請求の対象となる者は直接の侵害主体(違法アップロードサイト、海賊版サイトなど)に限られるのか、あるいは幇助者などの間接侵害者をも含むのかについては論点として争いがあります。

この点、裁判例は、否定するもの(2ちゃんねる事件第一審・東京地裁平成16年3月11日)がある一方、肯定する裁判例も複数存在します(ヒットワン事件・大阪地裁平成15年2月13日、選撮見撮事件・大阪地裁平成17年10月24日、『エンターテインメント法務Q&A』258頁)。

そのため、この面においても、漫画家・出版社や音楽家などの権利者は、刑事告訴をするとともに民事でリーチサイトに対して損害賠償請求とセットで差止請求を行うべきなのではないかと思われます。

5.まとめ
以上のように、現行法下においても、①違法サイトにリンクをはった時点でリーチサイトは違法となり、②リーチサイトは違法サイトの違法行為の共犯として責任を負い、③著作権者などはリーチサイトに対して差止請求を行うことが可能であると考えられます。

そのため、表現の自由や知る権利の制約となるおそれのある著作権法改正に対して、政府は慎重であるべきです。また、漫画家や出版社などの権利者は、政府にロビー活動をする前に、海賊版サイトやリーチサイトなどに対して刑事・民事の法的措置をとるなど、それ相応の努力を行うべきです。民事法の「権利の上に眠る者は、これを保護せず」という法諺は、出版社などの権利者にあてはまるように思われます。

■関連するブログ記事
・漫画の海賊版サイトのブロッキングに関する福井弁護士の論考を読んで-通信の秘密

■参考文献
・曽我部真裕・林秀弥・柴田昌裕『情報法概説』227頁
・エンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワーク『エンターテインメント法務Q&A』257頁
・プロバイダ責任制限法実務研究会『最新プロバイダ責任制限法判例集』125頁
・雪丸真吾・福市航介・宮澤真志『コンテンツ別 ウェブサイトの著作権Q&A』109頁

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最新 プロバイダ責任制限法判例集

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1.東京地裁が米クラウドフレア(Cloudflare)へのファイル削除等を認める判断を示す
本日付の弁護士ドットコムニュースによると、

『東京地裁は10月9日、CDN(コンテンツ配信ネットワーク)などのサービスを提供する米クラウドフレア(Cloudflare, Inc.)に対して、キャッシュファイル削除と発信者情報開示を命じる仮処分を決定した。』


と東京地裁が画期的な判断を示したとのことです。

弁護士ドットコムニュースは、

『クラフドフレアが裁判外での削除や開示をもとめる請求に応じない中、(本件事件を担当する)山岡裕明弁護士は今年7月、クラウドフレアの配信設備が国内にあることに着目して、東京地裁に仮処分を申し立てた。』


とも解説しています。

・クラウドフレアに「発信者情報開示」命令、海賊版サイト「ブロッキング」に影響も|弁護士ドットコムニュース

2.インターネット上の著作権の準拠法と裁判管轄
(1)準拠法と裁判管轄
国をまたぐ法的紛争が発生した場合、どの国の法律が適用されるのか(準拠法の問題)、また、どの国の裁判所で争うことができるのか(裁判管轄の問題)の2点が問題となります。

(2)準拠法
著作権など知的財産権侵害という権利侵害に基づく損害賠償請求の法的性質は不法行為であり、これについては通則法(「法の適用に関する通則法)17条により、原則として、「加害行為の結果が発生した地」の法律が準拠法になるとされています。

この「加害行為の結果が発生した地」について、裁判例はP2Pファイル交換サービスにおける著作権侵害が争われた事案において、サーバー自体はカナダにあったものの、ウェブサイトなどが日本語で書かれ、当該サービスによるファイルの送受信のほとんどが日本国内で行われていたとして、旧通則法11条(現17条)および条理により、不法行為および差止請求権は日本の著作権法が準拠法となると判断したものがあります(ファイルローグ事件・東京高裁平成17年3月31日判決)。(TMI総合法律事務所『IT・インターネットの法律相談』568頁(佐藤力哉))

(3)裁判管轄
つぎに、インターネット上で著作権が侵害されている場面など、当事者間が契約関係になく、当事者間に裁判に関する管轄の合意がない場合の裁判管轄について、民事訴訟法はつぎのように規定しています。

①被告の住所等による管轄
被告が法人である場合、その主たる事務所または営業所が日本にある場合、日本の裁判管轄が認められます。(民事訴訟法3条の2第3項)

②日本で事業を営む外国法人
日本で事業を営む外国法人に対する訴訟においては、当該訴えが「その者の日本における業務に関するものであるとき」は日本の裁判管轄が認められると規定されています。(同3条の3第5号)

③不法行為
不法行為については、「不法行為地が日本国内にあるとき」には、日本の裁判管轄が認められると規定されています(同3条の3第8号)。この「不法行為地が日本国内にあるとき」については、不法行為の行為地または結果発生地が日本国内にある場合を含むとされています。(TMI・前掲571頁(太田知成))


(4)クラウドフレアの事案について
本日、弁護士ドットコムで報道された内容によると、本件訴訟の山岡弁護士は「クラウドフレアの配信設備が国内にあることに着目」して申立てを裁判所に行ったとされており、本件東京地裁もファイルローグ事件同様に、準拠法を日本の著作権と認め、また、(3)の①から③までのいずれかの条文を適用して日本の裁判管轄を認めたものと思われます。

3.海賊版サイトのブロッキングの議論への影響
「漫画村」などの漫画の違法な海賊版サイトは、クラウドフレア社のようなCDNサービスを利用しているものが多いとされています。そして同社などが日本の権利者などからの権利侵害解消のための申し出に応じないことから、カドカワの川上量生氏など海賊版サイトのブロッキングに賛成する論者は、ブロッキングの立法化は不可欠であると主張してきたところです。

■参考
・カドカワ川上量生氏、クラウドフレア社は法的措置では対応できないという見解を示す|Yahoo!(山本一郎)

しかし、本日の東京地裁はクラウドフレアへのキャッシュファイルの削除、発信者情報の開示などを認め、日本の法令と日本の裁判所がインターネット上での著作権などの紛争に有効であることを示しました。これはファイルローグ事件などとともに、海賊版サイトのブロッキングの推進派の主張の前提を覆すものです。

今回の東京地裁の判断は、現在、国の知的財産戦略本部の審議会で議論が行われている、海賊版のブロッキングの立法化の是非の議論に影響するところが大きいと思われます。

■参考文献
・TMI総合法律事務所『IT・インターネットの法律相談』568頁、571頁
・清水陽平・神田知宏・中澤佑一『ケーススタディ ネット権利侵害対応の実務』83頁、44頁

IT・インターネットの法律相談 (最新青林法律相談)

ケース・スタディ ネット権利侵害対応の実務-発信者情報開示請求と削除請求-

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1.大阪地裁がフラダンスの振り付けの著作権性を認める判断
9月20日の新聞各紙に、本日(20日)の大阪地裁が、フラダンスの振り付けについて振り付け師の原告の著作権を認め、被告の九州ハワイアン協会に対して、当該振り付け師による振り付けの使用の差止などを認める判決を出したという興味深い記事が載っていました。従来、ダンス等の振り付けを著作権として認めることはエンタメ業界等の実務において抑制的であったようであり、その意味で興味深い判決です。

・「フラダンス振り付けは著作物」判決 動作の独自性認定|朝日新聞

2.舞踏の著作物
著作権法において、身振り・手振り等の体の動きを通し、振付によって思想・感情を表現した著作物は「舞踏の著作物」とされ、著作権の客体とされています(著作権法2条1項3号)。舞踏の著作物というとき、振付自体が著作物(=著作権の客体)であって、踊る行為(舞踏行為)自体は著作物ではなく、「実演」に該当し、著作隣接権の対象です(同2条1項3号、7条等、中山信弘『著作権法 第2版』88頁)。

3.社交ダンス
ここで、例えば社交ダンスのように、既存のステップの組み合わせが多いようなジャンルの舞踏については、著作権を認めると他の者の行動を縛ることになりかねないので、著作物と認めにくいとされています。

この点、社交ダンスに関する裁判例も、“社交ダンスは原則として既存のごく短くかつ一般的に用いられるステップを自由に組み合わせて踊られるものであり、それにアレンジを加えることも一般的に行われており、特定の者にその独占を認めることは、本来自由であるべき人の身体の動きを過度に制約することになり妥当ではない”として、社交ダンスにおける振付けの著作権性を否定しています(東京地裁平成25年7月19日判決・「Shall we ダンス?」事件、中山・前掲89頁)。

このような学説・裁判例を受けて、エンターテイメント業界の実務においては、「ダンス等は一般的に基本の振り付けを組み合わせたものが多いことから、著作物性が認められるのは例外的な場合である」と考えられているようです(エンターテイメント・ロイヤーズ・ネットワーク『エンターテイメント法務Q&A』130頁)。

4.ダンス等の振り付けが著作物と認められる場合
しかし、著作権法上、「思想又は感情を創作的に表現したもの」が著作物となるので(2条1項1号)、ダンス等の振り付けであっても、それが「思想又は感情を創作的に表現したもの」といえるものであるなら、舞踏の著作物として保護の対象となります。

つまり、「創作者の個性が現れていること」、または、「ありふれた表現ではないこと」がその要件になるものと思われます。

この点、ダンス・舞踏の分野においても、振付の創作性を認め著作物性を認定した裁判例があるようです(福岡高裁平成14年12月26日・日本舞踊家元事件など)。

本日、大阪地裁で出された判決も、記事によると「他にない独自の動作が含まれ、全体として個性が表現されている」と判断し、原告の振り付けの著作物性を認め、原告側の主張を認めたようです。

5.「〇〇を踊ってみた動画」について
なお、数年おきくらいのタイミングで、TV番組などのダンス等を一般人が真似て「踊ってみて」、その様子の動画(「〇〇を踊ってみた動画」)をSNSなどに投稿することの当否が話題となります。

うえでみたことをまとめてみると、学説・裁判例やエンタメ業界の実務に照らして考えると、ダンス等の振り付けを真似してその動画をアップロード等することは、その元となるダンス等の振り付けが、基本の振り付けやステップなどを組み合わせたものにすぎないといえるものは、そもそも舞踏の著作物に該当せず、著作権性がないので、違法とならないと思われます。

一方、当該元となるダンス等の振り付けが、基本のステップなどの組み合わせのレベルを超えて、ありふれた表現ではなく、創作者の個性が現れていると評価できるものについては、舞踏の著作物に該当するので、一般人が著作者の許諾等なしにそれを真似る等することは違法となるでしょう。ただし、エンタメ業界の実務は、ダンス等の振り付けに舞踏の著作物が成立することは例外的であると考えているようです。

■参考文献
・中山信弘『著作権法 第2版』88頁
・エンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワーク『エンターテインメント法務Q&A』130頁

著作権法 第2版

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