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2019年の9月30日から10月30日まで実施された、海賊版サイトについての「侵害コンテンツのダウンロード違法化等に関するパブコメ」の結果などの資料を、文化庁がこっそりとようやく、「侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計等に関する検討会(第1回・11月27日)」の資料の一部として公開しています。
・侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計等に関する検討会(第1回)|文化庁

資料3-1のパブコメ結果全体像によると、団体の提出意見は約50件となっています。個人の提出意見は実に約4300件となっています。
そして、個人の意見のうち、「侵害コンテンツのダウンロード違法化について」は、回答した個人4274人のうち、約89%にあたる3792名が「反対またはどちらかといえば反対」との意見を表明しているとのことです。(団体は、連名の個人を含む。)

文化庁は、3-1以下の資料において、個人の意見を分析した内容、代表的な意見を要約して引用していますが、4000件という多さか、あるいは国民の提出意見に価値を見出していないのか、要約などがやや雑に思われます。

その一方で、出版社や映画会社、漫画家などの提出意見については、おそらく全文をそっくりそのまま会議の資料としてコピペした分厚いものを検討会に持ち込んでおり、文化庁の姿勢は漫画家や出版業界・映画業界などに偏りすぎているのではないかと思われます。

ただ、団体の提出意見についての資料をみると、知財法の重鎮である明治大の中山信弘教授らの提出意見も掲載されていました。さすがの文化庁も中山先生を無視するわけにはいかなかったのでしょうか。

ところで、このパブコメ結果などは、パブコメ募集や結果公表などの際に中央官庁に利用されている、総務省の電子政府窓口(e-Gov)に公開されていません。

また、今回のパブコメは、官庁の施行令・施行規則・通達などを定める場合ではなく法案に関するものであるため、パブコメ手続きを定める行政手続法は直接適用ではなく準用のレベルではありますが、文化庁はパブコメ募集の際に、前回没になった著作権法改正法案等の資料をそのまま添付するのみであり、今回の著作権法改正案はまったく示しておらず、「具体的かつ明確な内容の案」をあらかじめ明示してパブコメを行わなければならないと規定する行政手続法39条2項に反しています。

なお、行政手続法は、行政はパブコメ手続を行った場合は、国民の提出意見を「十分に考慮」しなければならないと規定していますが、本検討会の第一回の議事録を読むと、本検討会のメンバーは、「漫画家・出版社・映画会社のエラい人々とそのお友達の御用学者・弁護士」ばかりのようであり心配です。

漫画家や出版社などの経済的利益の保護も重要ではありますが、しかしそれは、国民の知る権利・表現の自由(憲法21条1項)の規制と裏腹の関係にあります。本検討会や文化庁は、国民の基本的人権に十分配慮した慎重な議論を行っていただきたいと、一国民としては思います。

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