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とある会社の社員が、法律などをできるだけわかりやすく書いたブログです

タグ:憲法

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NHKなどの報道によると、政府(総務省)は、マイナンバーカード未取得者約8000万人に対して、マイナンバーカード発行の申請手続き書類を再度郵送する方針だそうです。

・マイナンバーカード未取得者 約8000万人に申請書発送へ 総務省|NHK

かりに三つ折りハガキで郵送するとしても、郵送料だけでも単純計算で約48億円もの出費ですが、この莫大な行政コストは一体誰が負担するのでしょうか?

そもそもマイナンバー制度とは、国民一人一人にマイナンバー(個人番号)を付番した情報システムを行政が整備・運営することにより、「行政運営の効率化及び行政分野におけるより公正な給付と負担の確保」を図る制度です(番号法1条)。

つまり、従来は多くの人員と書類でやっていた行政の事務処理を、各官庁をまたいだ名寄せのためのマスターキーであるマイナンバー(個人番号)を付番した情報システムで行うことにより、行政を効率化・迅速化しコストダウンを図ろうという制度です。

マイナンバー制度概要図総務省
(総務省サイトのマイナンバー制度の解説より)


そのため、マイナンバー制度開始の平成27年に、国が国民全員にマイナンバーを情報システム上で付番した段階で、「行政の効率化とコストダウン」というマイナンバー制度の立法目的の本丸は達成されているのです。

なのに、なぜ政府・与党は制度のオマケのはずのマイナンバーカードに偏執的にこだわるのでしょうか?

制度の検討段階で「マイナンバーカードを国民に広く普及させたい」「住民基本台帳カードの二の舞にはならない」という目標を政府与党は掲げたようですが、その目標にこだわるあまり、オマケの目的が自己目的化して政府与党が暴走しているようにも思えます。(「行政の効率化やコストダウン」が制度目的のはずなのに、今回の政府方針だけでも約48億円もの行政の税金の無駄づかいに思えてなりません。)

政府与党は、「これからの日本はIT社会デジタル化を目指さなくてはならない。マイナンバーカードには本人認証機能があるから、日本のデジタル化の基盤である。だから国民は全員、マイナンバーカードを持たねばならない」と主張しているようです。

「日本はデジタル化を目指さなくてはならない」という理念を政府与党や国会が掲げるのはある意味自由です。しかし、わが国が「個人の尊重」「個人の基本的人権の尊重」を掲げる自由主義国家である以上は、それぞれの国民がどのような国家像や行政を望むか、そしてその国家に対して国民個人がなにをどの程度するかについては、原則として、国民一人一人の自由意思に委ねられています。わが国の主人公は国民であり、行政・国はその使用人(サービス機関)にすぎないのですから。

とくにマイナンバー(個人番号)は各官庁が持つ国民の個人情報・プライバシー情報を簡易・迅速にシステム的に名寄せする仕組みですから、その使い方を誤れば、いわば「国家の前に国民が丸裸となる状態」(金沢地裁平成17年5月30日判決)の危険をはらんでおり、マイナンバー制度は国民個人のプライバシー権(憲法13条)に隣接する制度です。

番号法17条1項が、マイナンバーカードの取得や所持を国民の義務とするのではなく、国民の任意による自治体への申請を踏まえて発行される建付けとしている趣旨は、このようにマイナンバー制度が国民のプライバシーに隣接する制度であることや、オマケとしてのマイナンバーカード(やそれに随伴する本人認証機能)を利用するか否かは国民個人の自由意思にゆだねているからであろうと思われます。

番号法
(個人番号カードの交付等)
第17条
   市町村長は、政令で定めるところにより、当該市町村が備える住民基本台帳に記録されている者に対し、その者の申請により、その者に係る個人番号カードを交付するものとする。この場合において、当該市町村長は、前条の政令で定める措置をとらなければならない。

この点、情報法や行政法の第一人者である学者にして最高裁判事の宇賀克也・東大教授の番号法の解説書は、番号法17条1項に関してつぎのように解説しています。

個人番号カードの取得を強制することは、(略)個人番号カードの取得を希望しない者や必要としない者に(市区町村の事務所への)出頭を強制してまで取得を義務づけることは適切でないと考えられたため、申請により取得することとしている。』(宇賀克也『番号法の逐条解説』78頁)

また、マイナンバーカードがICチップ部分に本人認証機能を有しながらも、本来はいわば「実印」のように慎重にも慎重に保管すべきマイナンバー(個人番号)が表面にでかでかと印刷されてしまっていること等など、マイナンバーカードの制度設計上の「おそまつさ」もマイナンバーカードの問題を難解なものにしています。先般の「10万円給付金」の電子申請の件で露呈したように、政府の運用する情報システムのレベルが非常に低いものであること等も、国民の心を冷やしています。

少なくとも今回の政府方針のように、マイナンバーカード普及というお役所が勝手に立てた目標のために、国の予算を大量に使い、本来、国の主人公である国民に、その使用人であるはずの国・行政が無理やりにでもマイナンバーカードを取得させようというのは、番号法17条1項違反であり、もっといえば国民の自由意思(憲法13条)や国民主権原理(憲法1条など)の侵害であるようにすら思われます。

番号法の逐条解説 第2版

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1.茨城県のコロナ接触確認システムに県民の登録が法的義務化!?
新聞報道などによると、茨城県は新型コロナに関する県独自の感染確認システム(「いばらきアマビエちゃん」)において、同県の事業者・店舗だけでなく、県民に対しても条例を制定し同システムへの登録を法的義務とする方針であるとのことです。住民・国民への法的義務付けはわが国初だそうです。
・【8月18日発表】「茨城県新型コロナウイルス感染症の発生の予防又はまん延の防止と社会経済活動との両立を図るための措置を定める条例」案について|茨城県
・「いばらきアマビエちゃん」について|茨城県

そこで、茨城県サイトをみると、同システムは個人のスマホ側でなく茨城県のシステム側に個人のメルアドを集めて管理する中央集権型システムのようです。

ところで、県サイトのQAをみると、「氏名、住所などは収集しない。」「位置情報は収集しない」となっています。

しかし、◯月◯日に登録した個人がどの企業・店舗にいたかとの位置情報は県システムは把握してるはずだが…?そうでないと通知のメールを登録をした県民に送れなくなってしまいます。

また、県サイト上の同条例案の説明資料を読むと、県民側の権利利益としては、「コロナ差別が問題となるが、それは本条例案で『コロナ差別禁止』条項を盛り込むので問題ない」、という整理になっているようです。県民の個人情報保護やプライバシー権・自己決定権などはスルーなのでしょうか…?

この点はまさか、茨城県としては、「氏名、住所などを県民に入力させていないから『個人情報』は収集していない。」という化石のような理解なのでしょうか!?もしそうなら唖然としてしまいますが。

世界の自由主義諸国の18世紀以降の近代憲法は、自由主義つまり国民の自由を最大限尊重することを理念とするものです。そして、国民の個人情報保護やプライバシー権・自己決定権は国民の精神的な人権の根本にかかわる基本的人権の問題です。とくに傷病に係る情報はセンシティブな個人情報です。

とはいえコロナの感染拡大は世界的に非常に深刻な問題です。そのため、両者のバランスをとるために、WHOなどは、”原則、コロナの接触確認アプリ等は、国が開発・運営し、インストールや利用はそれぞれの国民の任意に委ねるべき”との見解を出しており、また、それを受ける形で、GoogleやAppleもほぼ同様の考え方のもとに接触確認アプリのプラットフォームを提供しています。

県独自の取り組みとはいえ、茨城県も接触確認アプリ類似の制度として本システムを開発・運用しているのですから、本システムを開発・運用する上では、県民の個人情報やプライバシーについて十分検討を行った上で開発・運用を実施すべきです。

にもかかわらず、少なくとも県サイトに掲載されている資料上からは、そのような検討がまったくないままに県民への本システムへの強制が条例化されることには、大きな違和感があります。

2.県民の協力義務
また、本条例案は、「県民の協力義務」という条項がギラギラしています。感染や濃厚接触が県にばれたら、県職員などが県民の居宅や勤務先に乗り込んできて、身柄確保の上での取り調べや捜査・押収を始めるのでしょうか?

それはさすがに、憲法の定める令状主義(憲法31条、35条)や強制処分法定主義などの刑事訴訟法等に反してないかと不安になります。

戦前の治安維持法のようなノリと空気を感じますが、茨城県はいろいろと大丈夫なのでしょうか?


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2020年個人情報保護法改正と実務対応

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1.はじめに
最近の日経新聞によると、日立の子会社「ハピネスプラネット」は、新しい「ハピネス事業」において、従業員の「幸福」度を向上させ、職場・会社の業務の改善を行うという目的のために、日立は従業員にスマホの各種センサー類を活用するスマホアプリを導入させて、常時、広範な個人データを網羅的に取得し、それらの個人データをコンピュータ等で分析し、従業員の幸福度のモニタリングを実施しているようです。

・日立、幸福度を測るアプリ提供で新会社|日経新聞
・幸せの見える化技術で新たな産業創生をめざす「出島」としての新会社を設立|日立製作所

この日立の取り組みに対しては、そもそもの「幸福度」、「ハピネス度」などの概念への疑問や、そもそも会社が従業員に会社が考える「ハピネス」「幸福」を押し付けてよいのかという問題や、会社が従業員をスマホアプリにより常時網羅的にモニタリングするというやり方に手段に相当性があるのかなど多くの疑問がSNSなどのネット上に投稿されています。

2.プライバシー権・自己決定権・人格権と指揮命令権
何が自分にとって「幸福」かについては、従業員(国民)個人個人の内心の自由の問題(憲法19条)であり、第三者や使用者たる企業等や国が安易に介入を許されない、従業員・国民の私的領域のプライバシーや自己決定権・人格権の問題です(憲法13条)。

しかしその一方で、会社等で働く従業員は使用者たる会社と労働契約を締結している関係にあり、この労働契約に付随して使用者たる会社は条業員に対する指揮命令権をもっています。そのため、一般的に会社の上司などが、従業員に対して指示・監督などを行うために観察などを行うことは、原則としては許容されるとされています。

3.日立・ハピネスプラネットの業務は法的に問題はないのか
とはいえ、日立の新しい「ハピネス事業」においては、従業員の「幸福」度を向上させ、職場・会社の業務の改善を行うという目的のために、日立は従業員に本件スマホアプリにより、スマホのセンサーを使って常時、広範な個人データを取得を網羅的に取得し、それらの個人データをコンピュータ等で分析し、従業員の幸福度のモニタリングを実施しているようです。このような日立の従業員に対する新しいモニタリング手法は法令上問題がないのでしょうか。

4.使用者は従業員の私的領域にどこまで侵入できるか
(1)西日本鉄道事件
この点に関しては、従業員が退社する際に会社が所持品検査を行うことが許されるかどうかが争われた事件において、最高裁(西日本鉄道事件・最高裁昭和43年8月2日判決)は、「使用者が従業員に対して行う所持品検査は、これは被検査者の基本的人権に関する問題であって、その性質上、常に人権侵害のおそれを伴うものであるから、たとえそれが企業の経営・維持にとって必要かつ効果的な措置(略)であったとしても、そのことをもって当然に適法視されるものではない」とのスタンスを示した上で、所持品検査が適法となるための要件として、

①検査を必要とする合理的な理由のあること
②一般的に妥当な方法と程度であること
③職場従業員に画一的に実施されていること
④就業規則その他の規定に明示の根拠があること
の4要件をあげています。

(2)検討
ここで日立とハピネスプラネットの新事業をみると、①冒頭でもみたように、「なにが自分にとっての幸福か」とは、国民個人個人が自己の内面(私的領域)において考えるべき事柄であり、企業(あるいは国)が安易に介入すべきものではありません。そのため、合理的理由があるとはいえません。また、②本記事などを読む限り、本アプリは従業員のごく微細な動きなどのデータから本人の内心を読み取るなど、性格検査あるいはうそ発見器など装置・アプリであり、そのような機微な個人データを大量に常時モニタリングを行うことは、社会一般から見て妥当な方法と程度であるとはとてもいえません。

(3)結論
このように上の最高裁判決が示した4要件のうち、少なくとも2つを満たしていないので、日立とハピネスプラネットのこの新ビジネスは違法のおそれがあると思われます。

5.個人情報保護法の観点から
なおNHKの記事によると、日立は従業員のプライバシー・個人情報について、「計測されるのはあくまで本人も気付かないような体の細かな動きで、プライバシーに関わるようなものが取得されるわけではありません。」と主張しているようです。

・幸せって測れるの?サクサク経済Q&A|NHK

しかし、本人も気づかないような細かな体の動きも「動作」であり、個人情報保護法2条1項1号は「動作」も個人情報の一類型と例示しているので、日立がこれをデータとして収集したものは個人データです。



したがって、日立などは「動作」の個人データを収集・利用などしてこの新事業を行うためには、本人たる従業員に、個人情報の利用目的などを定めて(15条)、通知し(18条)、利用目的の範囲内でしか原則として利用できません。当然、それらの個人データには安全管理措置を講じなければなりません(20条)し、第三者提供も原則として従業員本人の同意が必要となります(23条)。日立がこのような各法的義務を履行しているのか気になるところです。

*注
はてなブックマークのコメント欄で、ごくわずかな「動作」は個人情報ではないとのご意見をいただいたようです。この点、個人情報保護法2条1項1号は、

個人情報を「氏名、生年月日その他の記述等(文書、図画もしくは電磁的記録(略))に記載され、若しくは記録され、又は音声、動作その他の方法を用いて表された一切の事項(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)

と定義しています。つまり、氏名、住所、生年月日などだけにとどまらず、「特定の個人を識別」できる一切の事項が個人情報です。日立の新事業においても、ある従業員・被験者個人個人の「幸福度」「ハピネス度」を測定するためにスマホやウェアラブル端末を利用して当該従業員・被験者個人個人の「ごくわずかな動作」などを測定しているので、この動作も特定の個人を識別できる情報であるため、やはり個人情報となります。


6.GDPRと旧労働省の個人情報保護に関する行動指針
EU憲法(EU基本権憲章)8条は、「すべての者は、それぞれ自らに関する個人データの保護の権利を有する」と個人データ保護が基本的人権(基本権)であることを明示しています。これを受け、2018年5月に欧州では、GDPR(一般データ保護規則)が施行されています。そしてGDPR22条は、「コンピュータ等による個人データの自動処理の結果のみによる評価に服さない権利」を定めています。

スマホとスマホアプリで個人データを収集して自動処理を行う日立の「ハピネス」事業は、もろにDGPR22条の適用範囲に入っているように思われます。日本に対して十分性認定を行ったEUの個人データ保護当局がこの日立の取り組みをどう考えているのかは非常に興味があるところです。また、これまで日立が実施した本事業の被検査者に、EU国籍の人間がいなかったのかどうかも気になるところです。

なお、日本も欧米の個人情報保護法制の動きを参考にしつつ立法等を行ってきた経緯から、例えば2000年の旧・労働省の「労働者に関する個人情報の保護に関する行動指針」6(6)は、「使用者は、原則として、個人情報のコンピュータ等による自動処理又はビデオ等によるモニタリングの結果のみに基づいて労働者に対する評価又は雇用上の決定を行ってはならない。」と、GDPR22条を先取りしたような規定が置かれていました。

このような個人データ・プライバシーの保護により国民の基本的人権や幸せを守ろうとする世界的な流れに対して、日立の新事業は真っ向から逆行しているように思われます。

■参考文献
・菅野和夫「労働法 第12版」262頁
・労務行政研究所「新・労働法実務相談 第2版」549頁
・堀部政男「プライバシー・個人情報保護の新課題」163頁(高野一彦)


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内閣府(CIO)の新型コロナ感染追跡アプリ(COCOA・以下「感染追跡アプリ」)のシステム仕様書をざっと読んでみました(「接触確認アプリ及び関連システム仕様書(案)[概要])」)。
・接触確認アプリ及び関連システム仕様書(案)[概要]|内閣府 CIO

接触感染アプリの仕組み
(内閣府の仕様書より)

仕様書において、内閣府は一生懸命「個人情報やプライバシー的に問題ない!」と力説していますが、コロナ感染発覚の時点で保健所が「コロナ感染者把握・管理支援システム」に感染者の個人データを登録するから、はなから国民にプライバシーないのではないでしょうか?

コロナアプリ情報の流れ
(内閣府の仕様書より)

また仕様書によると、内閣府は「本アプリから生成され発信される識別符号は毎日変更されるから、個人情報上の問題はない!」などと主張しています。

しかし、生成したスマホアプリ自身からは当該識別符号から本人を特定できるはずです。つまり、それは、本人を容易に識別できるのから個人情報そのものです(個人情報保護法2条1項)。なのに、どこが個人情報保護法上あるいはプライバシー(憲法13条)上問題ないといえるのでしょうか。

政府は「個人情報保護法上あるいはプライバシー上の問題」を、「セキュリティ上の安全性がある程度高い」という問題にすり替えてるだけに思えます。

一方国民側は、建前上は「任意」といいつつ、微妙なアプリをスマホにインストールさせられて、何かあると自らの医療データに関するセンシティブな個人データをアプリに入力する手間が増えるだけで、国民側にはそれほどメリットがあるとは思えません。

結局、コロナ感染追跡アプリのメリットは、保健所のデータ入力の事務負荷が少し下がる程度なのではないでしょうか。

スマホアプリの新技術でこんなことできるたらいいなと漠然と官民が考えて、効果の過多もわからないまま、国民のセンシティブな個人情報を取得したり、プライバシー上妙なことをするのは、OECD8原則の「個人情報の必要最小限度の取得」の原則や、「個人情報の利用目的をできるだけ厳格化して国民本人の個人情報・プライバシーを守る」という個人情報保護法15条の趣旨に反するのではないでしょうか。

新聞記事などを読むと、このアプリおよびシステムが有効な効果をあげるためには、国民のおよそ3分の2がアプリをインストールする必要があるそうですが、先行事例のあの強権的国家のシンガポールでも、国民はプライバシー侵害をおそれてそのほんの数分の1程度しかアプリをインストールしていないといいます。この感染追跡アプリが日本で成功するとはとても思えません。

内閣府CIOの資料をみていると、官民のITオタク達が、「ボクたちの考えた最強のインターネット」を国の予算で作ってドヤ顔したいだけに見えます。

コロナ対策として効果が漠然としているのなら、日本は中国やシンガポールなどと違い、国民主権の自由主義国なのだから、そんなアプリよりも国はもっと国民個人のプライバシー権や個人情報を守るべきではないでしょうか。国民の個人情報やプライバシー侵害のおそれがあるにもかかわらず、本アプリの企画・開発に、通信傍受法などのような国会の立法手当てがないことには不安を感じます。

コロナ対策としては、妙なITに頼るのではなく、今までどおり、地域や拠点の病院での治療や物資・人員を充実させること、国民はマスクや手洗いの徹底などの取り組みを地道に行うのが早道なのではないでしょうか。

■追記(6月18日)
なお、内閣府CIOサイトの5月26日付の感染確認アプリに関する有識者検討会合「感染確認アプリ及び仕様書に対するプライバシーおよびセキュリティ上の評価およびシステム運用上の留意事項」2頁、3頁は、①厚労省の感染者システムから国民のスマホの本アプリに発行される「処理番号」と、②陽性者と紐付けられた本アプリが作成する識別符号である「診断キー」は、行政機関個人情報保護法および個人情報保護法における要配慮個人情報、つまりセンシティブな個人情報であると明記しています。
・資料2: 「接触確認アプリ及び関連システム仕様書」に対するプライバシー及びセキュリティ上の評価及びシステム運用留意事項|政府CIOポータルサイト

この点、本アプリについては、首相やコロナ担当大臣などが記者会見などで繰り返し「本アプリは個人情報をまったく収集しない安全なものなので、安心して利用してもらいたい」旨の説明を行っています。

しかし個人情報保護法17条などは、「偽りその他不正の手段」による個人情報の取得などを禁止しています。国は、国民・利用者を「偽り」、本アプリで傷病データや行動履歴、利用者の友人・知人とのつながりなどの個人情報を違法に取得しているのではないでしょうか。

国が本当に本アプリの目的・手段などが正当であると考えるなら、国民・利用者に対して、「本アプリは利用者の個人情報を取得・利用するが、それは目的のために必要最低限のものである」等と偽りでない正確な情報開示を行い、その上で本アプリをリリースして運用すべきではないでしょうか。


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個人情報保護法の逐条解説--個人情報保護法・行政機関個人情報保護法・独立行政法人等個人情報保護法 第6版

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1.香川県ネット・ゲーム依存症対策(規制)条例素案
社会的に大きな批判を集めている、香川県議会の、県の子どもをネット・ゲーム依存症から守るためにネット・ゲームに大幅な規制を行おうとする、「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例素案」が、1月23日よりパブリックコメントが開始されています。(2月6日まで)

・香川県ネット・ゲーム依存症対策条例(仮称)素案(pdf)|香川県サイト

2.公権力の家庭への介入?
この香川県議会ネット・ゲーム依存症対策条例案(以下「本条例案」とする)、ざっと読んだだけでもなかなかすごいものがあります。

香川県親01
(香川県サイトより)
本条例案は、幼児を育てる保護者(親など)に対して、時間をとって幼児の親への「安定した愛着」を育む義務や屋外で遊ばせる努力義務を課しています(本条例案6条2項)。

また、本条例案は、保護者が子ども対してスマホ等の利用にあたって、フィルタリンソフトなどを設定し、子どものスマホ利用を管理することを法的義務としています(本条例案6条3項)。

わが国が自由主義国家である以上、子どもを含む個人がプライベートな私的領域における時間・場所に何をするかについては、本人の判断の判断にゆだねられるべきものです。親などの保護者が家庭内において子どもにどのような指導や教育を行うかについても、保護者の家族に関する自己決定権にゆだねられるべきものです(自己決定権・憲法13条)。国や自治体が法律や条例で介入するべきものとは思われません。

発育の途中であり判断能力が十分でない子どもに対して、国などが例えば、飲酒・喫煙などを一定の範囲で規制する「パターナリスティックな制約」という子どもの自己決定権への介入を行うことはあります。しかし、香川県の本条例案のように、子どもの年齢や社会的属性などをまったく考慮せず一律に「ゲームは1日60分、スマホは午後9時まで」と規制するやり方は、規制が一律かつ広範囲すぎるものであり、パターナリスティックな制約では説明がつかない違法・不当なものと思われます。

3.国・病院・IT企業・学校の協力義務
また、本条例案11条の事業者の責務の条文をみると、ゲームソフト会社・プロバイダ・キャリア・携帯代理店などの事業者に対して、子どもがゲーム依存症にならないようにする責務規定であるとか、あるいは、「エロ」・「暴力」表現を自主規制しろという表現の自由(憲法21条1項)を規制する内容の条文も盛り込まれています。香川県議会やりたい放題です。

香川県11条
(香川県サイトより)

香川県はゲーム依存症について正確な情報に基づいて指導・啓発してやるから子ども・保護者・学校は従えとの上から目線的な考え方も目につきます。病院・医療機関・ゲーム会社・IT企業・プロバイダ等は県への「協力義務」をおうとも強調されています。さらに、県や市に協力する「県民の義務」などの文言もあちこちに散見されます。加えて、「香川県は国に対して、ゲーム依存症対策のための立法措置や指針の制定を求める」という趣旨の条文も存在します。

香川県は国民・住民主権の自由主義・民主主義の国ではなく、戦前の日本のような国家主権国家なのでしょうか?

4.ネット依存症・ゲーム依存症とは-国立久里浜病院のネット依存症治療部門
そもそも、ゲーム依存症・ネット依存症などは新しい疾病ですが、香川県は正確な情報を持ったうえで本条例案を制定しようとしているのでしょうか。

この点、わが国の依存症治療の先駆的な拠点の一つである、国立久里浜病院(久里浜医療センター)のネット依存・オンラインゲーム依存に対応するインターネット依存症治療部門 (TIAR)のウェブサイトによると、ネット依存について、

「インターネットに過度に没入してしまうあまり、コンピューターや携帯が使用できないと何らかの情緒的苛立ちを感じること、また実生活における人間関係を煩わしく感じたり、通常の対人関係や日常生活の心身状態に弊害が生じているにも関わらず、インターネットに精神的に嗜癖してしまう状態」との定義が紹介されています。

・インターネット依存症治療部門 (TIAR)|久里浜医療センター

そして、同サイトはネット依存症・ゲーム依存症の治療について、「インターネット嗜癖そのものには確立された治療法はありません。また、重症の嗜癖の場合には、背景に躁鬱病や発達障害といった精神疾患がある場合や、実生活において人間関係上や経済上深刻な問題を抱えており、そこからの逃避の場合もあります。」と解説しています。

そして、同病院では、
ネット依存症・ゲーム依存症の患者に対して、

1.バトミントンや卓球などの運動、美術等、インターネットや機械を使用せず、みんなで行うゲーム
2.医師や看護師、栄養士、作業療法士等による睡眠、運動、栄養、依存、健康問題等についてのレクチャー
3.ネット依存を様々な角度から話し合う小ミーティング
4.希望者には、臨床心理士による対人関係に関する訓練

などの医療プログラムが提供されているそうです。

このように久里浜病院によると、ネット依存症・ゲーム依存症は、背景に躁鬱病や発達障害といった精神疾患がある場合や、実生活において人間関係上や経済上深刻な問題が背景となっている場合が多いのであり、同病院の治療は、スポーツで体を動かすトレーニングから、病気の授業、当事者のミーティング、心理的なカウンセリングなど多岐にわたっています。

それに対して、香川県の本条例案は、ネット・ゲーム依存症への対策として「子どもはゲーム60分、スマホは午後9時まで」と一律の禁止規定をおき、「屋外で遊ぶこと」を奨励するのみです。本条例案の目的・趣旨がネット・ゲーム依存症対策であるとしても、香川県議会がネット・ゲーム依存症に関する正しい知識・理解に基づいて条例案を作成しているとは思われません。

5.条例の限界-景表法・青少年ネット条例・憲法94条
1月27日付の「ねとらぼ」は、香川県の本条例案の作成者の一人である社民党系の高田よしのり議員の記事を掲載しています。

・香川のゲーム依存症対策条例、本当の狙いは「ガチャ規制」? 検討委員が「理解してもらえない。残念」とブログで語る|ねとらぼ

同記事によると、本条例案の真のねらい・目的は、スマホゲームのなかでもとくに「ガチャ規制」であるそうです。

しかし、本条例案には、「ガチャを規制する」などの文言は存在しません。とはいえ、かりに本当に本条例案の目的が「ガチャ規制」であるならば、すでに国がガチャ規制の条文を盛り込んでいる景品表示法と本条例案との関係が問題となります。

憲法は、「地方公共団体は、(略)法律の範囲内で条例を制定することができる。」(94条)と規定しており、この「法律の範囲内」の意味が問題となります。

この点について裁判所は、
『条例が国の法令に違反するかどうかは、両者の対象事項と規定文言を対比するのみでなく、それぞれの趣旨、目的、内容及び効果を比較し、両者の間に矛盾牴触があるかどうかによってこれを決しなければならない。

例えば、(略)両者が同一の目的に出たものであっても、国の法令が必ずしもその規定によつて全国的に一律に同一内容の規制を施す趣旨ではなく、それぞれの普通地方公共団体において、その地方の実情に応じて、別段の規制を施すことを容認する趣旨であると解されるときは、国の法令と条例との間にはなんらの矛盾牴触はな(い)』(徳島市公安条例事件・最高裁昭和50年9月10日判決)

と判断しています。

ここでガチャ規制に関する景表法2条・4条と同告示をみると、法規制の対象はあくまでもゲーム事業者であり、利用者・ユーザー側の子ども等は対象となっていません。これは、景表法はガチャを規制するにあたり、ゲーム会社など事業者側を規制すれば十分であり、利用者の子どもなど国民のゲーム時間など私的領域には踏み込むべきではないと考えたものと思われます。それに対して、香川県の本条例案は、ガチャ規制という目的のために、事業者への義務を課すと同時に利用者である子どもやその親にも私的領域に係る法的義務を課しており、これは「法律の範囲内」を超えるものであり、違憲・違法のおそれがあります(憲法94条)。

(なお、青少年ネット規制法も本条例案との関係で問題となると思われますが、青少年ネット規制法はネット上の有害な情報から子どもを守るために、主にフィルタリングを利用することを子ども等に奨励する法律であり、「ゲームは60分、スマホは午後9時まで」と子どもの権利利益を厳しく規制する本条例案は、この法律との関係でも「法律の範囲内」を踏み越えており、違法と考えられます。)

あるいは、私的領域のプライベートな時間・場所におけるネットやゲームという精神的活動や、親の子育ての在り方に自治体が規制を行うという本条例案は、県民の権利利益への規制というよりは、日本全体の全国民の基本的人権への公権力からの規制の在り方として検討が行われるべきです(憲法41条、芦部信喜『憲法[第6版]』371頁)。つまり、県議会で条例として審議するだけでは足りず、国会で慎重に審議を行い、必要であれば法律を作って対応すべきです。

香川県議会の本条例案の制定の動きは、非常に前のめりで軽率であるといえます。


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情報法概説 第2版

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