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とある会社の社員が、法律などをできるだけわかりやすく書いたブログです

タグ:職業安定法

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1.ネット版ハローワークがバージョンアップ
厚労省サイトによると、ハローワークのネット版(ウェブサイト)が1月6日より大幅にバージョンアップしたとのことです。そこで見てみたのですが、ログイン画面のプライバシーポリシーが非常に残念な出来栄えで驚きました。

・ハローワーク・インターネットサービス利用規約・プライバシーポリシー|厚労省

2.求職情報公開サービス
(1)個人を特定できない情報
このプライバシーポリシーによると、求職者がこのハローワークのネットサービス(「求職者マイページ 」)を申込む際に、ハローワーク窓口に「求職情報公開」および「求職情報公開サービス」を拒否(オプトアウト)しないと、 求職者の個人情報・個人データが求人企業、自治体および民間人材ビジネス企業提供・第三者提供されるとさらっと書かれており、ぎょっとします。

ここで、求人企業や民間人材ビジネス起業などに提供される個人情報について、このプライバシーポリシーは、「(個人を特定できない情報)」とかっこ書きをつけています。

しかし、このネット版ハローワークや現実のハローワークで登録され取り扱われている求職者の氏名・住所・生年月日・学歴・職歴・資格などのデータは、どう考えても厚労省職安局(あるいは委託されたIT企業)のサーバーの求職者個人DBの一部の個人データのはずです。

行政機関個人情報保護法2条2項1号は、個人情報とは、「特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。) 」と定めています。

このかっこ書きの部分(「他の情報と照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む」)に照らすと、ハローワークの求職者データベースの一部のデータを民間企業に提供する際にそれを「個人を特定できないから個人情報ではない」というこのプライバシーポリシーは間違っています。

厚労省職業安定局は、これは非識別情報(匿名加工情報)なのだと主張するのかもしれませんが、それならそれでプライバシーポリシーにしっかりと明示するべきです。(統計データについては明文化されていますが、ここで明示されていないので、統計データでもないようです。)

(2)「民間人材ビジネス企業」に個人データを第三者提供?
また、第三者提供先が「民間人材ビジネス企業」としか書かれておらず、求職者本人からみてあまりにも漠然・広範囲であり、第三者提供の同意のための透明性がまったく保たれていません。これでは求職者は、自分の個人情報がどこのどんな事業者まで転々と流通してしまうのかまったく分かりません。

ハロワPP
(厚労省サイトのネット版ハローワークのプライバシーポリシーより)

なお、ハローワークや民間人材ビジネス会社を規制する職業安定法も、個人情報の定義につき行政機関個人情報保護法と同様の規定を置いており(4条11号)、またハローワーク等に対して利用目的を特定しその範囲内で個人情報を収集・利用するよう規定し(5条の4第1項)、さらにハローワークなどに対して安全管理措置を講じることを義務づけています(5条の4第2項)。加えて、ハローワークなどの職員には求職者の個人情報などについて守秘義務が課せられています(51条、51条の2、国家公務員法100条参照)。 にもかかわらず、職業安定法の所管である厚労省職業安定局・ハローワーク自身が、職業安定法の各規定に抵触しているおそれがあります。

このような状態でプライバシーポリシーに「企業などからメールなどが送信されることがあります」とあるのは、CCCのTポイントなのか、リクナビのような民間サービスを目指しているのかと目が点になってしまいします。

医療データほどセンシティブではないものの、学歴・職歴などがまとまったハローワークの求職者の個人情報・個人データは非常にデリケートな情報のはずですが、厚労省職業安定局は、そのような認識を持っていないのでしょうか?

ちょっと前に大量の就活生の個人データを不正に利用・加工・第三者提供するなどして大炎上したリクナビ事件で、リクルートグループやトヨタ等に対し、職安法に基づき行政指導などを行ったのは厚労省職業安定局・東京労働局ですが、その厚労省職安局がリクナビの真似してどうするのかと思います。

3.その他
その他にも、このプライバシーポリシーは、

・利用目的が「ハローワーク業務に使う」と漠然としておりまったく特定されていない
・開示・訂正等請求の手続きに関する条文が存在しない
・安全管理措置について組織的・人的・物理的安全管理措置の規定がない
・そもそも条文構成になっていない

等などざっと見ただけでもツッコミどころ満載です。

利用規約を読むと、このネット版ハローワークはマイナンバー(個人番号)も利用可能のようで、つまり個人情報保護委員会の管轄に含まれるようであり、同委員会はぜひ、厚労省職業安定局・ハローワークに対して助言・指導などを行っていただきたいと思われます。

■関連するブログ記事
・リクルートなどの就活生の内定辞退予測データの販売を個人情報保護法・職安法的に考える
・厚労省の障害者向け「就労パスポート」を法的に考える-個人情報保護法・プライバシー・憲法

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個人情報保護法〔第3版〕

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1.はじめに
NHKの報道番組「クローズアップ現代+」が、「人事・転職ここまで!? AIがあなたを点数化」という番組を10月29日に放送しました。そのなかで、”AI人材紹介会社”のLAPRAS(ラプラス)が取り上げられ、その恐ろしさがネット上で反響を呼んでいます。

・人事・転職ここまで!? AIがあなたを点数化|NHK

LAPRASは、インターネット上のウェブサイト、ブログ、SNSなどの記載、書き込みなどをAIプログラムが収集し、データベータ化し、プロフィールなどを作成して人材紹介を行う会社であるようです。同社は、同事業を行っていたscoutyの後継会社です。

2.オプトアウト手続き
scoutyがLAPRASになって、大きく変わったのは、LAPRASからの求人企業への個人情報の第三者提供などについてオプトアウト制度を採用することとしています(個人情報保護法23条2項)。

つまり、"当社から求人企業に個人情報(データ)を第三者提供されたくないお客様は、当社にお申し出ください。”とする制度を明示したことであると思われます。

このように、個人情報の第三者提供という、“出口”の部分についてオプトアウト手続きが明確化されたことは大きな一歩前進ですが、”入口”にあたる、個人情報の収集・管理・利用などについてはどうなっているのでしょうか。

3.職業安定法5条の4
この点、個人情報の取得については、職業安定法5条の4、厚労省通達平成11年141号第4は、「本人から直接取得」することを原則とし、つぎに「本人の同意」を得た上で紹介会社等が本人以外のものから情報を収集することができるという仕組みになっています。

にもかかわらずLAPRASは、本人から直接個人情報を取得するのではなく、また、本人からあらかじめ同意も得ず、勝手にこっそり本人のネット上の書き込み等から個人データ取得して人材紹介業を行っていますが、これは職業安定法5条の4等に抵触しているのではないでしょうか。

4.個人情報保護法18条2項
また、個人情報保護法18条2項は、事業者が本人から「書面(電磁的記録を含む)」により個人情報(データ)を取得するときは、「あらかじめ本人に利用目的を明示」せよと規定しています。

(取得に際しての利用目的の通知等)
第十八条
    (略)
 個人情報取扱事業者は、前項の規定にかかわらず、本人との間で契約を締結することに伴って契約書その他の書面(電磁的記録を含む。以下この項において同じ。)に記載された当該本人の個人情報を取得する場合その他本人から直接書面に記載された当該本人の個人情報を取得する場合は、あらかじめ、本人に対し、その利用目的を明示しなければならない。ただし、人の生命、身体又は財産の保護のために緊急に必要がある場合は、この限りでない。

この点、ラプラスは、AIプログラム等が、個人・本人のネット上の書き込み等から個人データの収集を始める段階では本人への利用目的の明示を行ってないようです。(NHKのクロ現+や数年前のニュース記事等によると。)これは明らかに個人情報保護法18条2項に反しているのではないかと懸念されます。

5.正確性・安全管理措置
さらに、もしLAPRASのAIプログラムにバグなどの瑕疵があり、ネット上の他人の書き込み等を間違えて本人のものとしていること等があるとしたら、個人データの正確性の確保(19条)や、個人データの安全管理措置(20条)にも違反してるのではないかと懸念されます。

LAPRASサイトをみると、同社のAIプログラムはネット上のさまざまな個人データを収集、分析、突合し、自動で本人のプロフィールなどを作成するそうですが、このプロフィールが本人からみて本当に正しいのか等の問題も発生するものと思われます。

6.守秘義務
加えて、職業安定法51条は人材紹介会社等に守秘義務を課しています。この義務違反には罰則があります(66条9号)。

本人にとって、例えば大学・大学院研究室サイトなどに掲載された本人の業績などはあまり問題がないかもしれませんが、その一方でネット上の過去のツイッターなどのSNSにおける書き込みや、過去に本人が匿名で書いたブログ記事などは、一般論としては本人にとって「黒歴史」であり、本人が求人企業などに見せたいとは思わない「秘密」であろうと思われます。

このようなさまざまな「黒歴史」で「秘密」な個人データをLAPRASはコンピュータプログラムを使って自動的に突合・分析し、個人データベースを作成し、本人のプロフィールを作成し、求人企業に対してそれらのデータをみせた上で「こんな人いますよ」と営業を行っているわけですが、もし安易に求人企業にこれらの「秘密」を元にした個人データベースやプロフィール等を見せているとしたら、それは守秘義務違反となるのではないでしょうか。

7.厚労省職業安定局の通達
この点、リクナビ事件について厚労省職業安定局は9月6日に、「本人の同意なく…あるいは十分な同意がない…内定辞退予測の…本人のあずかり知らぬ形での募集企業への提供は…学生本人の立場を弱め…学生の不安感を惹起するもの…職安法51条に照らし違法のおそれがある」との趣旨の通達を出しています。

厚労省通知リクナビ事件
(厚労省サイトより)

・募集情報等提供事業等の適切な運営について|厚労省職業安定局(令和元年9月6日)

本人の同意を得ていない内定辞退予測の募集企業への提供が、本人の秘密侵害であるとして人材紹介会社の守秘義務違反となるのなら、本人の同意を得ずに勝手にさまざまなネット上から情報を収集し、それを分析・加工した個人データも同様に本人の秘密であるとして、その本人のあずかり知らぬところでの募集企業などへの提供は、守秘義務違反となるのではないでしょうか。

8.人材会社「の判断による選別または加工」の禁止
くわえて、本通知は、本人の個人データを、「人材会社の判断による選別または加工」を行うことも禁止しています。LAPRASは、ネット上の本人のツイッターなどのSNSやブログ記事などの個人データを収集し、LAPRASの判断により選別・加工を行い、プロフィールなどDBを運営して事業を行っていますが、この本人のさまざまな個人データを収集したうえで選別・加工を行うビジネスモデルは職業安定法に反し、個人情報保護法制の趣旨に反するものであると思われます。

(なお、「コンピュータによる個人データの自動処理」については、1996年にILOが「労働者の個人データの保護に関する行動準則」を制定し、そのなかには、「一般原則 5.6 電子的な監視で収集された個人データを、労働者の成績を評価する唯一の要素とすべきではない。」との条文があります。この考え方は欧州では、EU指令からGDPRに引き継がれています。日本においても、2000年の労働省「労働者の個人情報保護に関する行動指針」などに表れています。(堀部政男『プライバシー・個人情報保護の新課題』163頁))

9.まとめ
このように職業安定法や厚労省通達、個人情報保護法などに照らすと、さまざまな面でLAPRASの業務は、ビジネスモデルの根幹の部分で法令に抵触しているように思われます。


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プライバシー・個人情報保護の新課題

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1.はじめに
2月27日付の日経新聞に、「人事は見ている?就活生のSNS」という興味深い記事が掲載されていました。

・人事は見ている? 就活生のSNS|日経新聞

同記事によると、日経新聞記者の取材に対して、大半の大手企業の採用担当は、就活生のSNSは見ていないとはっきり否定したそうです。ただしあるベンチャー企業は、「日常の「素」の姿が見たいので、SNSは必ずチェックする」と回答したそうです。さらに、同記事は、ある金融機関のリクルーターとの面談の際に、そのリクルーターから、自分がSNSで書き込んでいたあるミュージシャンの話題をふられたという元就活生の生々しい事例を取り上げています。

結論を先取りすると、就活生のSNSなどを企業の人事部が勝手に見て就活生の情報を取得することは、職業安定法およびそれに関連する厚労省の指針に違反しています。

2.職安法・指針・厚労省サイトなど
この点、職業安定法5条の4(求職者等の個人情報の取り扱い)は、1項で、求人者、公共職業安定所、職業紹介事業者などは、『求職者等(略)の個人情報を収集し、保管し、又は使用するに当たつては、その業務の目的の達成に必要な範囲内で求職者等の個人情報を収集し、並びに当該収集の目的の範囲内でこれを保管し、及び使用しなければならない。』と規定し、同2項は、求人者等は、『求職者等の個人情報を適正に管理するために必要な措置を講じなければならない。』と規定しています。

そして、厚労省の指針(平成11年労働省告示第141号)は、この職安法5条の4についてさらにつぎのとおり詳細を規定しています。

厚労省告示141号
・指針(平成11年労働省告示第141号)|厚生労働省

さらに厚労省の企業の採用について解説するサイトの「公正な採用選考の基本」の「(3)採用選考時に配慮すべき事項」はつぎのように注意をうながしています。

採用の基本
・公正な採用選考の基本|厚生労働省

3.本記事の事例などの検討
(1)企業の採用担当は就活生等のSNSを見ることができるか
うえでみたように、平成11年労働省告示第141号の第4の1(2)は、企業等が就活生等から個人情報を取得する際には、就活生から直接取得または就活生の同意が必要であるとしています。また厚労省サイト「公正な採用選考の基本」の「(3)採用選考時に配慮すべき事項」の「c」は、「身元調査など」を行うべきでない採用選考の方法としています。

したがって、企業の採用担当者等が、就活生本人の同意を得ないで当該就活生のSNSを見て個人情報を取得することは、平成11年労働省告示第141号の第4の1(2)に反し、つまり職業安定法5条の4違反となります。この場合、企業等は職業安定法に基づく改善命令を受ける場合があります(法48条の3)。また、当該企業が改善命令に違反した場合は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金の罰則を科せられる場合があります(法65条7号)。加えて法人たる企業も罰則を科される場合があります(法67条)。

さらに、就活生など求職者は、面接などで違法な事柄があった場合は、厚生労働大臣に申告を行い、厚生労働大臣に必要な調査や措置を行わせることができます(法48条の4)。

なお、少し前に、AIを使いSNSなどネット上の情報を勝手に収集しスカウトを行う人材紹介会社であるスカウティ社がネット上で話題となりましたが、職業安定法5条の4およびその指針との関係で、この人材紹介会社の業務も違法のおそれが強いと思われます。

(2)リクルーターからSNSに書き込んでいたミュージシャンの話題をふられた
うえでみたように、企業の採用担当者等は、就活生本人から直接取得する場合、あるいは本人の同意を得た場合にしか個人情報を取得できず、そうでなければ就活生のSNSをみて個人情報を取得することができません。

そしてさらに、職業安定法5条の4は、企業の採用の「業務の目的の達成に必要な範囲内で」しか、企業は求職者の個人情報を取得できないとしています。あるミュージシャンを好きか否かが、一般企業の採用業務の目的達成に必要とは通常考えられません。

また、平成11年労働省告示第141号は、「思想・信条」に関する個人情報の取得を禁止しており、厚労省サイト「公正な採用選考の基本」の「(3)採用選考時に配慮すべき事項」の「b」は、「購読新聞・雑誌・愛読書・尊敬する人物・人生観・生活信条」などの情報を企業が就活生から取得することを禁止しています。

音楽をどの程度愛好するかは人により異なると思われますが、しかしある人にとってはある音楽が、人生観・生活信条や尊敬する人物に関連することもあり得ると思われ、本記事に掲載されている、音楽の話題を出してきたリクルーターは、勝手に本人のSNSをみているだけでなく、思想・信条に関連しうるセンシティブな話題をリクルーター面接の場に出しているという点で、二重に法的に問題であると思われます。

(3)デモなどへの参加の有無を面接等で問うこと
なお、この季節になるとしばしばネット上で話題になるのが、デモなどへの参加の有無を面接等で問うことの当否です。

これも、平成11年労働省告示第141号および厚労省サイト「公正な採用選考の基本」の「(3)採用選考時に配慮すべき事項」の「b」が、「労働組合への加入状況、学生運動、社会運動など」に関する個人情報の取得を禁止していることから許されません。

■関連するブログ記事
・SNSなどネットで個人情報を収集する”AIスカウト”人材紹介会社について考える

■参考文献
・菅野和夫『労働法 第9版』161頁
・大矢息生・岩出誠・外井浩志『会社と社員の法律相談』53頁
・安西愈『トップ・ミドルのための 採用から退職までの法律知識〔十四訂〕』18頁

労働法 第11版補正版 (法律学講座双書)

トップ・ミドルのための 採用から退職までの法律知識〔十四訂〕

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