本日のネット上のニュースによると、本日17日付で、ツイッターでのツイートに関して最高裁大法廷で分限裁判が行われていた岡口基一裁判官に対して戒告処分が科されたとのことです。これは非常に残念な判断です。
・岡口判事を戒告=不適切ツイートで初の懲戒-最高裁|時事
■以前のブログ記事
・裁判官はツイッターの投稿内容で懲戒処分を受けるのか?-岡口基一裁判官の分限裁判
まず、裁判官の独立(憲法76条3項)はどうしたのかという問題があります。公平な裁判、少数者の人権に配慮した裁判を行うために、憲法は明文規定を置いているのですが、それは、「裁判の一方当事者が感情を害されたというクレーム」によりあっさりと侵害されてしまうような軽々しい価値なのでしょうか?
それでは今後は、裁判所は政府や政治家や暴力団などを一方当事者とする裁判においては、政府や首相などのご意向を忖度するあまり、公平な裁判を行えなくなってしまうのではないでしょうか。しかしそれでは裁判所・最高裁の職務放棄です。大津事件の大審院長とやっていることが同じです。公平で迅速な裁判を受ける権利は国民の基本的人権であるのにです(34条、37条)。
また、例えば最高裁の調査官(裁判官)は、今後の裁判のために、いわゆる「調査官解説」という判例評釈を執筆しています。同時に、学者・研究者や弁護士等は、法律学の研究・学問活動の重要な活動の一環として、裁判所の出す判決を研究し、判例評釈などを法律雑誌や大学などの紀要に発表しています。
しかし、裁判官の裁判に関するツイートが、「当事者の感情を傷つけた」という理由により当該裁判官が懲戒処分を受けるということは、明治時代より脈々と行われてきたこれらの裁判官や研究者等による判例評釈などの研究活動が今後、違法とされるリスクがあるという信じられない展開をもたらしかねません。研究者が「裁判の当事者のご意向に忖度した学問研究しかできない」ということは、学問の自由・表現の自由の侵害に直結します(憲法23条、21条)。
さらに、今回の懲戒処分は最高裁大法廷が出したものとして重大な先例としての意味を持ちます。民間企業や官庁などの従業員・職員のネット上での表現活動が委縮するおそれがあります。
このように、さまざまな面で、今回の最高裁大法廷の懲戒処分には大いに疑問を感じます。