dai_byouin2
1.茨城県のコロナ接触確認システムに県民の登録が法的義務化!?
新聞報道などによると、茨城県は新型コロナに関する県独自の感染確認システム(「いばらきアマビエちゃん」)において、同県の事業者・店舗だけでなく、県民に対しても条例を制定し同システムへの登録を法的義務とする方針であるとのことです。住民・国民への法的義務付けはわが国初だそうです。
・【8月18日発表】「茨城県新型コロナウイルス感染症の発生の予防又はまん延の防止と社会経済活動との両立を図るための措置を定める条例」案について|茨城県
・「いばらきアマビエちゃん」について|茨城県

そこで、茨城県サイトをみると、同システムは個人のスマホ側でなく茨城県のシステム側に個人のメルアドを集めて管理する中央集権型システムのようです。

ところで、県サイトのQAをみると、「氏名、住所などは収集しない。」「位置情報は収集しない」となっています。

しかし、◯月◯日に登録した個人がどの企業・店舗にいたかとの位置情報は県システムは把握してるはずだが…?そうでないと通知のメールを登録をした県民に送れなくなってしまいます。

また、県サイト上の同条例案の説明資料を読むと、県民側の権利利益としては、「コロナ差別が問題となるが、それは本条例案で『コロナ差別禁止』条項を盛り込むので問題ない」、という整理になっているようです。県民の個人情報保護やプライバシー権・自己決定権などはスルーなのでしょうか…?

この点はまさか、茨城県としては、「氏名、住所などを県民に入力させていないから『個人情報』は収集していない。」という化石のような理解なのでしょうか!?もしそうなら唖然としてしまいますが。

世界の自由主義諸国の18世紀以降の近代憲法は、自由主義つまり国民の自由を最大限尊重することを理念とするものです。そして、国民の個人情報保護やプライバシー権・自己決定権は国民の精神的な人権の根本にかかわる基本的人権の問題です。とくに傷病に係る情報はセンシティブな個人情報です。

とはいえコロナの感染拡大は世界的に非常に深刻な問題です。そのため、両者のバランスをとるために、WHOなどは、”原則、コロナの接触確認アプリ等は、国が開発・運営し、インストールや利用はそれぞれの国民の任意に委ねるべき”との見解を出しており、また、それを受ける形で、GoogleやAppleもほぼ同様の考え方のもとに接触確認アプリのプラットフォームを提供しています。

県独自の取り組みとはいえ、茨城県も接触確認アプリ類似の制度として本システムを開発・運用しているのですから、本システムを開発・運用する上では、県民の個人情報やプライバシーについて十分検討を行った上で開発・運用を実施すべきです。

にもかかわらず、少なくとも県サイトに掲載されている資料上からは、そのような検討がまったくないままに県民への本システムへの強制が条例化されることには、大きな違和感があります。

2.県民の協力義務
また、本条例案は、「県民の協力義務」という条項がギラギラしています。感染や濃厚接触が県にばれたら、県職員などが県民の居宅や勤務先に乗り込んできて、身柄確保の上での取り調べや捜査・押収を始めるのでしょうか?

それはさすがに、憲法の定める令状主義(憲法31条、35条)や強制処分法定主義などの刑事訴訟法等に反してないかと不安になります。

戦前の治安維持法のようなノリと空気を感じますが、茨城県はいろいろと大丈夫なのでしょうか?


人気ブログランキング

2020年個人情報保護法改正と実務対応

ニッポンの個人情報 「個人を特定する情報が個人情報である」と信じているすべての方へ