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2020年12月22日のメディア各社の報道によると、営業職員の顧客の金銭の詐欺・横領などに関連し、第一生命保険の稲垣精二社長は謝罪の記者会見を行ったそうです。報道や同社サイト上で公表された報告書によると、新たに3件の営業職員による不祥事とともに、本社の保険事務部門(契約サービス部)の不祥事も1件発覚したとのことです。

・「元社員による金銭の不正取得」事案に関するご報告 (PDF)|第一生命保険

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(第一生命保険サイトより)

報告書によると、山口県の特別調査役については、高い営業成績をもつ特別調査役が社内で”女帝”扱いされ、本来、指揮監督する立場にあったはずの西日本マーケット統括部が監督を行っていなかったなどの、組織的な、ガバナンス上の問題が多かったように感じられます。

多くの保険会社は、社内に法務部門・コンプライアンス部門があり、また業務監査部や検査部門が社内の不正のチェックを多重的に行っています。そのような法務・コンプラ部門や監査・検査部門も有効に機能していなかったのでしょうか。コンプライアンスだけでなくガバナンスが機能不全であったということは、取締役ら経営幹部の法的責任が厳しく問われる問題であると思われます。

たしか第一生命は、生保業界では最初に法務部門を設置した会社であり、法務・コンプライアンスを重視しようという社風があったような気がするのですが、それも株式会社化などの時代の流れとともに変容してしまったのでしょうか。

ところで、この報告書をみると、営業部門だけでなく本社の保険事務部門(契約サービス部)でも不祥事があったようで、これも深刻な問題です。年金保険の取扱について、契約サービス部の社員が不正を行って数千万円の金銭を横領したとのことですが、事務手続き上も、情報システム上も、そのような不正が簡単にできたとは考えにくく、大いに気になるところです。

報道などによると、数年前より、第一生命は保険契約の保全に関する業務の大半を情報システム会社(NTTデータ)に外部委託していたそうです。この外部委託により何らかの不正のつけいる隙が生まれていたのだとしたら、由々しきことです。保険の引受業務や資産運用業務、保険金の支払い業務と並んで、保険契約の保全業務も、保険会社のコア業務なのですから。

稲垣社長は代替わりしたばかりですが、今回の一連の不祥事の再発防止策の実施が一区切りしたら、引責辞任は待ったなしの状況と思われます。今回の不祥事を受け、企業ブランドは大きく傷つき、この一年、大手生保の中で第一生命だけ営業成績が大きく低迷している状況です。金融庁だけでなく、"物言う株主"を含め多くの株主が黙っていないものと思われます。

なお、生命保険業界にとっては、この1年は第一生命やかんぽ生命の不祥事が大きく報道される一年だったように思われます。しかし、顧客の金銭の詐欺・横領でここ数年、毎年のように不祥事を起こしているソニー生命保険については、マスコミがほとんど報道を行わなかったのは不思議なことに思われます。

・当社の社員や代理店・グループ企業等を名乗る者が金員を詐取する事案にご注意ください。|ソニー生命

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