6月7日の報道によると、菅首相は国会で五輪開催について「東京オリンピックの主催は私ではない」と発言したとのことです。これを受けてネット上では、「主催者はIOCであり、全ての権限はIOCにしかない」という意見も見受けられます。しかし、これは正しいのでしょうか?

・五輪判断を問われた菅首相「私は主催者でない」|朝日デジタル

そもそも東京オリンピック・パラリンピックは、日本に大きな経済効果があるとして、菅首相の前任者である、当時の安倍首相が国をあげて誘致活動を行い、2013年に開催が決定したものです。また、2016年のリオデジャネイロ・オリンピック閉会式でマリオの恰好をして登場し、世界に東京オリンピックをPRしたのもやはり安倍さんです。にもかかわらず、日本政府は東京オリンピックに関係ないというのはちょっと無理ではないでしょうか? E3RgWxrVcAI4piV (1)
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また、スポーツ基本法は2条6項で、「オリンピック等で優秀な成績をあげること」を目標の一つに掲げ、同3条は国に対して「スポーツに関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する」と規定しています。また国は五輪担当大臣も設置しています。そのためやはり国は無関係というのは無理筋でないでしょうか?
https://www.mext.go.jp/a_menu/sports/kihonhou/attach/1307658.htm

さらに、最近はIOC幹部のディック・パウンド氏「菅首相がNOと言っても東京オリンピックは開催される」と発言しました。
・IOC重鎮委員が独占告白「菅首相が中止を求めても、大会は開催される」|文春オンライン

しかし、東京五輪では選手・五輪関係者・メディア関係者等約9万人来日するそうですが、それに伴い新型コロナウイルスが日本に入ってくるおそれがあるのではないでしょうか。これは日本の公衆衛生上の大問題です。

この点、厚生労働省設置法4条職掌事務には、「感染症の発生、蔓延の防止、検疫」(19号)、「原因の明らかでない公衆衛生上重大な危害が生じ、又は生じるおそれがある緊急の事態への対処」(4号)等と明記されています。

厚労省設置法4条

つまり、新型コロナなどの感染症の発生の防止・検疫などはやはり国の仕事であり、公衆衛生の問題は日本という国家主権大問題です。そのため、日本という国がコロナのリスクの高い東京オリンピックの開催の判断に関与できない、「菅首相がNOと言っても東京五輪は開催される」というのは、やはり日本主権重大な侵害です。つまりこれは菅首相などが判断すべき重大な政治問題です。(もしそれが本当なら、IOCのオリンピック憲章や、IOCとJOCや組織委員会などとの契約書などの国際法的な問題はさておいて、日本は場合によっては警察や自衛隊などによって、まるでGHQマッカーサーのように振る舞うIOCやバッハ氏から、日本を防衛する必要があるのではないでしょうか?)

このように少し考えてみても、菅首相の「東京オリンピックの主催は私ではない」という発言は、まったくの責任逃れの発言といえます。

菅首相は、日本の最高責任者として、東京オリンピックについて「夢と希望」を語るのではなく、新型コロナの世界と日本における大流行などの現実をみて、日本と世界における新型コロナの蔓延防止を行い、それにより日本と世界の国民の命と健康を守るために、東京オリンピックの中止決断すべきです。

■追記
弁護士で政治家の宇都宮健児氏が、東京オリンピック中止のネット署名を行っています。
・東京五輪の開催中止を求める署名はこちら | 宇都宮けんじ公式サイト

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