共産党サイト
(日本共産党サイトより)

1.日本共産党の「非実在児童ポルノ」に関する選挙公約
日本共産党の2021年衆議院選挙の各政策の「7、女性とジェンダー」「非実在児童ポルノ」に関する記述を読みました。
・「7、女性とジェンダー」|日本共産党

私はマンガ・アニメ・ゲームなどの表現規制に反対の立場であるので、「非実在児童ポルノ」の法規制のために「社会的合意」を作ってゆくという日本共産党のこの政策に反対であり、この政策の撤回を求めます。

日本共産党の2021年衆議院選挙の各政策の「7、女性とジェンダー」の「非実在児童ポルノ」に関する政策はつぎのように記述しています。

現行法は、漫画やアニメ、ゲームなどのいわゆる「非実在児童ポルノ」については規制の対象としていませんが、日本は、極端に暴力的な子どもポルノを描いた漫画やアニメ、CG、ビデオ、オンライン・ゲーム等の主要な制作国として国際的にも名指しされており、これらを適切に規制するためのより踏み込んだ対策を国連人権理事会の特別報告者などから勧告されています(2016年)。

非実在児童ポルノは、現実・生身の子どもを誰も害していないとしても、子どもを性欲や暴力の対象、はけ口としても良いのだとする誤った社会的観念を広め、子どもの尊厳を傷つけることにつながります。「表現の自由」やプライバシー権を守りながら、子どもを性虐待・性的搾取の対象とすることを許さない社会的な合意をつくっていくために、幅広い関係者と力をあわせて取り組みます。

この政策を読むと、「日本は、極端に暴力的な子どもポルノを描いた漫画やアニメ、CG、ビデオ、オンライン・ゲーム等の主要な制作国として国際的にも名指しされており」、国連人権理事会からも勧告を受けているとした上で、「非実在児童ポルノは、現実・生身の子どもを誰も害していないとしても、子どもを性欲や暴力の対象、はけ口としても良いのだとする誤った社会的観念を広め、子どもの尊厳を傷つけることにつながります。」とし、「子どもを性虐待・性的搾取の対象とすることを許さない社会的な合意をつくっていく」としています。

この記述を素直に読むと、「子どもポルノを描いた漫画やアニメ、CG、ビデオ、オンライン・ゲーム等」の「非実在児童ポルト」は「子どもを性欲や暴力の対象、はけ口としても良いのだとする誤った社会的観念を広め、子どもの尊厳を傷つける」ので、「非実在児童ポルノ」を法規制するための「社会的合意」を作ってゆく、つまり、日本共産党は、マンガ・アニメ・ゲームなどにおける「非実在児童ポルノ」法規制するために「社会的合意」を作ってゆくとなっています。

2.日本共産党の10月18日付の釈明文書
この点、ネット上で日本共産党が「非実在児童ポルノ」の法規制、つまり表現の自由の規制推進に舵を切ったとの大きな批判を受け、日本共産党は10月18日付で「「共産党は表現規制の容認に舵を切ったのですか」とのご質問に答えて」との釈明文書を公表しました。
・「共産党は表現規制の容認に舵を切ったのですか」とのご質問に答えて|日本共産党

しかしこの釈明文書も、「日本の現状への国際的な指摘があることを踏まえ、幅広い関係者で大いに議論し、子どもを性虐待・性的搾取の対象とすることを許さないための社会的な合意をつくっていくことを呼びかけたものです。」と記しているとおり、「子どもポルノを描いた漫画やアニメ、CG、ビデオ、オンライン・ゲーム等」の「非実在児童ポルト」は「子どもを性欲や暴力の対象、はけ口としても良いのだとする誤った社会的観念を広め、子どもの尊厳を傷つける」ので、「非実在児童ポルノ」を法規制するための「社会的合意」を「呼びかけてゆく」と書かれているので、つまり、「「非実在児童ポルト」は「子どもを性欲や暴力の対象、はけ口としても良いのだとする誤った社会的観念を広め、子どもの尊厳を傷つける」ので、法規制するための「社会的合意」を作ってゆくとされており、結局、日本共産党が「非実在児童ポルノ」を法規制するための「社会的合意」を形成する方針、つまり日本共産党は表現規制推進派に舵を切ったことに変わりはありません。

私はマンガ・アニメ・ゲームなどの表現規制に反対の立場であるので、「非実在児童ポルノ」の法規制のために「社会的合意」を作ってゆくという日本共産党のこの政策に反対です。

2.表現の自由について憲法から考える
(1)表現の自由(憲法21条1項)

言うまでもないことながら、18世紀のフランス革命やアメリカ独立戦争以降の西側近代社会においては、表現の自由は、国民が自らの表現行為を行うことにより自らの人格を成長させるという自己実現の価値があるとともに、国民がさまざまな意見や見解を授受して議論を行い、民主政治に参加するための前提の人権という民主主義の価値(自己統治の価値)という二つの価値があります。そして特に後者の民主主義の価値のため、民主主義国家においては表現の自由はとりわけ重要な基本的人権です(芦部信喜・高橋和之補訂『憲法 第7版』180頁)。

日本国憲法
第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

そのため、かりに表現規制をするとしてもできるだけ表現内容には踏み込まず、時・場所などの面から規制したり(表現内容中立規制)、表現規制の基準はあいまい・漠然としたものであってはならない(明確性の原則)とするのが憲法学の基本的な考え方です。

にもかかわらず、ネット上でのある方の日本共産党への電話での問い合わせによると、日本共産党は「手塚治虫は法規制しない」等と回答しているとのことで、マンガ・アニメなどの表現内容に踏み込んで自分達の好き嫌いや恣意的な判断でマンガ・アニメなどを表現内容から規制する意図を隠そうともしていないとのことであり、これは2010年に「非実在青少年」なる概念を掲げてマンガ・アニメなどの表現規制を行おうとした東京都自民党などと何ら変わるところはありません。

・『日本共産党中央委員会への電凸記』|ヒトシンカ
・問い合わせの結果、共産党は表現規制派に転向したことが確定。共産党は”議論なしの法規制”に反対なだけで、”議論の上での法規制”には反対しない。|togetter
・【表現規制】日本共産党・吉良よし子参議院議員「“こういう表現は本当にまずいよね”“儲からないよね”という合意ができれば、クリエイターの皆さんも作らなくなると思う」|togetter
・共産党が規制対象としてコミケを名指し。”規制を求めるべき、子供を性的に虐待したり搾取したりする漫画やアニメがコミックマーケットで沢山売られている”|togetter

共産党吉良よし子
(「こういう表現は本当にまずいよね”“儲からないよね”という合意ができれば、クリエイターの皆さんも作らなくなると思う」等と「非実在児童ポルノ」政策を説明する共産党の吉良よし子議員。ABEMA NEWSより)

共産党手塚治虫は法規制しない
(松田未来氏のTwitterより)
https://twitter.com/macchiMC72/status/1450651084377055238

しかもその表現規制の理由が、「非実在児童ポルト」は「子どもを性欲や暴力の対象、はけ口としても良いのだとする誤った社会的観念を広める」という真偽不明な、あいまいで漠然としたものであり、その規制の基準も「手塚治虫は法規制しない」等という日本共産党の恣意的な判断で規制を行おうということも非常に漠然としてあいまいなものであり、表現の自由など精神的人権はその重要性から、その法規制は明確でなければならないという明確性の原則「漠然性ゆえに無効」「過度の広範性ゆえに無効」)に反しているので、日本共産党の「非実在児童ポルノ」政策憲法21条1項に反して違法・違憲で無効なものです(最高裁昭和50年9月10日判決・徳島市公安条例事件、芦部・高橋・前掲213頁)。

さらに、いったん表現の規制立法ができてしまうと、その表現規制立法について公権力による濫用のおそれの危険が発生します。つまり表現の規制法ができてしまうと、政府に規制対象の認定権をゆだねることになり、その恣意的な適用が懸念されることになります(渋谷秀樹『憲法 第2版』380頁)。

例えば最初はマンガ・アニメなどの「非実在児童ポルノ」だけが法規制の対象だったものが、いつのまにか同性愛などの内容をも禁止の対象が拡大するであるとか、国・政府や政治政党等を批判することが禁止の対象にされるなど、政府の恣意的な判断で表現の自由の規制の対象範囲がどんどん拡大してしまう危険があります。

実際にも、2014年8月には、国会でヘイトスピーチ規制法の議論が行われた際に、自民党の高市早苗政調会長(当時)は、「ヘイトスピーチとセットで国会前デモも規制する立法を検討する」との見解を公表しました(「国会周辺の大音量デモ規制も検討 自民ヘイトスピーチPT」産経ニュース2014年8月28日付より)。表現の自由規制立法の公権力による濫用の危険は机上の空論ではないのです。

(2)検閲・事前抑制の禁止(憲法21条2項)
憲法21条2項は「検閲」を禁止しています。これは戦前の日本の政府や軍部、特高警察などのファシズムによる表現弾圧・思想弾圧・学問弾圧への反省を踏まえたものです。

検閲とは、「公権力が外に発表されるべき思想の内容をあらかじめ審査し、不適当と認めるときには、その発表を禁止する行為」です。この「公権力」とは行政権のことであり、国や自治体などが該当します。また、検閲の対象広く表現内容を指します。さらに検閲の時期については思想・情報の発表前とするのが判例ですが、憲法学の通説は、現代社会では表現の自由について国民の「知る権利」が重要であることから、思想・情報の国民の受領時を基準として、思想・情報の発表に重大な抑止効果をおよぼすような規制も検閲に該当するとしています(最高裁昭和59年12月12日判決・税関検査事件、最高裁平成元年9月19日判決・岐阜県青少年保護条例事件、芦部・高橋・前掲207頁)。

そのため、もし日本共産党の主張する「非実在児童ポルノ」を規制するとの「社会的合意」が社会に形成され、それに基づいて国会で「非実在児童ポルノ規制法」などが制定され、当該法律に基づいて法務省などの行政機関や自治体、あるいは立憲民主党の主張する「人権機関」などの行政権が「非実在児童ポルノ」を公表前に審査し発表を禁止すると憲法の禁止する「検閲」に該当し憲法21条2項違反となります(判例)。

あるいは「非実在児童ポルノ」が書店やコミケ(コミックマーケット)等で書店の顧客やコミケ参加者が当該図書等を手にとる前に国・自治体などが当該図書の販売を禁止したり、ネットやSNS上で「非実在児童ポルノ」が公表された後に国・自治体などが当該表現物の公表をSNS等の運営会社に停止させること等は、憲法学の通説の「検閲」に該当し憲法21条2項違反となります。

3.憲法の基本構造から考える
また、日本共産党は国連人権委員会の意見を錦の御旗のように掲げていますが、戦後の欧州がナチズムへの反省から、自由主義・民主主義に反する者には表現の自由や集会の自由などの基本的人権を与えないと憲法に明記し(ドイツ基本法18条など)、特別刑法で民衆扇動罪などを準備する「闘う民主主義」という「国家による人権保障」「ポスト近代憲法」のスタンスをとるのに対して、アメリカの憲法や、アメリカの憲法をもとに現行憲法を制定した日本は、戦前の言論弾圧・表現弾圧・思想弾圧が戦争を招いた反省を踏まえ、「さまざまな意見を自由に発言させて議論させれば、よりよい結論を得られるだろう」という「思想の自由市場論」(野中俊彦・中村睦男・高橋和之・高見勝利『憲法Ⅰ 第5版』352頁)を基本とする、表現の自由などの国民の精神的自由に関して「国家からの自由」を重視する、伝統的な「近代憲法」の国です。

このような欧州のポスト近代憲法と日米の近代憲法との違いの検討を欠いたままで、欧州の「国家による人権保障」「法律による人権保障」を安易に志向することには大きな問題があります(辻村みよ子『比較憲法 新版』126頁)。

国連人権委員会は、「国家による人権保障」を重視する欧州型の「ポスト近代憲法」のスタンスに立って「非実在児童ポルノの禁止」を日本に要求していると思われますが、そもそも日本は思想の自由市場論や「国家からの自由」を重視する伝統的な「近代憲法」を国の基盤とする国家なので、憲法的な基盤の異なる国連人権委員会の主張を唯々諾々と受け入れる日本共産党の姿勢は憲法学的に間違っています。日本共産党はフェミニストや社会学者、反差別活動家、人権活動家などに乗っ取られ、憲法学や法律学に詳しい人材がいなくなってしまったのでしょうか?

4.思想・良心の自由(憲法19条)
さらに、日本共産党は、「非実在児童ポルノ」は「子どもを性欲や暴力の対象、はけ口としても良いのだとする誤った社会的観念を広める」と主張していますが、それは日本共産党の高齢の女性幹部達の恣意的な思想や判断、決めつけの国民への押し付けなのではないでしょうか。

「非実在児童ポルノ」を見た国民が「「子どもを性欲や暴力の対象、はけ口としても良いのだとする誤った社会的観念」を持つということについて、日本共産党は何らかの科学的・医学的なエビデンスを持っているのでしょうか?

日本共産党の高齢の女性幹部の方々が、「こういうわいせつなアニメ・マンガ・ゲームを見たら、日本の若い男性は、子どもを性欲や暴力の対象、はけ口としても良いのだとする誤った社会的観念を持つ」と考えたとしても、現実の日本の若い国民がそう思わないことのほうが多いように思われます。

例えば、本年9月には、日本共産党や社民党の女性政治家達の全国フェミニスト議員連盟が、千葉県警の交通安全を啓発するための動画に千葉県松戸市の女性VTuber「戸定梨香」氏を起用したところ、戸定梨香氏の3Dのキャラクターが「女性を性的に搾取している」と、全国フェミニスト議連が千葉県警に当該交通安全啓発の動画を削除させた事件が起こりました。

vtuberアベマニュース
(ABEMA NEWSより)
・「女性の権利や社会進出を訴えたいという思いは同じだと思う」松戸市のVTuber「戸定梨香」の動画削除で、運営会社社長が全国フェミニスト議員連盟に呼びかけ|ABEMA TIMES

この事件で問題となった戸定梨香氏の3Dキャラクターを私も見ましたが、ごく普通のキャラクターでした。日本共産党などの全国フェミニスト議員連盟は、単に「自分達、高齢女性にはよく分からない表現で何だか気にくわないから、「性的搾取」という理由で弾圧してやれ」と思っているとしか思えませんでした。全国フェミニスト議員連盟のやっていることは、「焚書」や、中国の文化大革命などと同様の文化・文明を破壊する表現弾圧や思想弾圧の蛮行であると思われます。

同様に、今回の「非実在児童ポルノ」についても、日本共産党の幹部達は、「自分達にはよく理解できない表現だから若者がそういう表現を好むことはけしからん、このような表現は「子どもを性欲や暴力の対象、はけ口としても良いのだとする誤った社会的観念」を招くとして法規制のための「社会的合意」を形成しようと考えていると思われます。

それは、国家が国民の言論を監視・検閲し、国民に特定の思想を強制し、国家が特定の思想や表現を弾圧する中国北朝鮮ロシアジョージ・オーウェルの小説「1984」のようなファシズム国家、監視国家などと同じです。

さらに、そもそも国民が心のなかで何を思うか、どのような思想や良心を持つか自体は、憲法が思想・信条や良心、内心の自由として絶対的に保障しているところです(憲法19条)。個人の思想や良心がその個人の内心にとどまっている限りは、他人の人権と衝突しないので、それは絶対的に保障されます。政治政党として公権力の一部である日本共産党が、国民の思想や良心に介入することは憲法19条に違反する違法・違憲な行為です。

日本国憲法

第19条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。


にもかかわらず、日本共産党が「子どもを性欲や暴力の対象、はけ口としても良いのだとする誤った社会的観念」を招くから「非実在児童ポルノ」を「社会的合意」のもとに法規制を行おうとすることは、自民党が2012年に公表した憲法改正草案で示したような、「経済を発展させ国を成長させる義務」「家族助け合い義務」などの特定の価値観や考え方、思想などを公権力が国民に強制するものと同様の行為であり、内心の自由を定める憲法19条違反であるとともに、国民の自由意思を重んじる、個人の尊重と基本的人権の確立を国家の目的とする近代憲法である日本国憲法の趣旨・目的(憲法11条、97条)そのものに反しています。

このように、日本共産党の「非実在児童ポルノ」に関する政策は、表現の自由(憲法21条1項)に関する基本的理解を誤っており、また、日本共産党という政治政党が「社会的合意」により法改正などにより国民の表現の自由を規制し、また、国民に政治政党である日本共産党が立法などを通じて自分達の好む思想を国民に強制しようとしている点で、国民の内心の自由(憲法19条)を侵害し、国民の自由意思に基づく自由な民主主義という日本の憲法の趣旨そのものに違反しています(憲法11条、13条、97条)。

日本共産党の国会議員や地方議員達は、政府・与党の議員や官僚などと同様に、憲法尊重擁護義務(憲法99条)を負っていますが、日本共産党はそのことを失念しているのではないでしょうか?

5.フェミニズム・ジェンダー平等
たしかにあらゆる差別の禁止、男女平等という平等原則・法の下の平等は重要な基本的人権(憲法14条1項)であり、私も男女平等や「女性の権利の向上」には大賛成です。しかし平等原則も人権である以上無制限に認められるものではなく、他の人権と衝突した場合にはその調整が必要となります(「公共の福祉」・憲法12条、13条、22条、29条)。

女性の平等権を侵害する表現等があった場合は、上でみたように表現の自由の重要性に鑑み、そのような表現行為は、現在の判例・通説上そうであるように、名誉棄損やわいせつ罪などの観点から裁判所で判断され事後的に救済されるべきです(最高裁昭和44年6月25日判決など)。

そのため、近年、日本共産党をはじめとする野党各党やフェミニスト、社会学者などは、「女性の権利の向上」「ジェンダー平等」などの主張を錦の御旗のように掲げ、それと異なる主張や価値観や、マンガ・アニメ・ゲーム等を激しく攻撃していますが、それは「フェミニズム・ファシズム」あるいは「女性至上主義」とでも呼ぶべきものであり、男女の平等を定める憲法14条1項違反であって、憲法学・法律学の観点から明らかに間違っています。

また、最近の日本共産党や立憲民主党などは、「フェミニズム」「ジェンダー平等」を憲法の掲げる個人の尊重と基本的人権よりも上位の価値理念であるかのような主張をしています。

たしかに最近、「ジェンダー平等」は日本でも社会的注目を集めている理念ですが、法的にみると、これは2015年の国連総会で採択された「持続可能な開発目標」・SDGs(Sustainable Development Goals)が17の目標を掲げているところ、その5番目に「ジェンダー平等」が掲げられているものです。
・持続可能な開発目標・SDGsとは|外務省

SDGS
(SDGsの17の目標。外務省サイトより)

つまり、「ジェンダー平等」を目標の一つに掲げるSDGsは、国連で採択された条約の一種であり、憲法学の通説は、条約と憲法との上下関係について、憲法98条は憲法が最高法規であり、法律や国の政策、処分などに優先すると規定していることから、憲法が条約に優越するとしています(98条)。

したがって、共産党や立憲民主党、フェミニストや社会学者などが、ジェンダー平等やフェミニズムなどの価値理念を憲法の定める表現の自由、法の下の平等、内心の自由などの基本的人権より優越する価値理念であるかのように主張することは憲法98条に違反しています。

さらに、上でみたように、共産党や立憲民主党などは国会議員等で構成される政治政党なので、共産党や立憲民主党などは憲法尊重擁護義務(憲法99条)を負っており、「非実在児童ポルノ」政策などの憲法違反の政策を主張する共産党や立憲民主党などは尊重擁護義務違反でもあります。(共産党・立憲民主党などは、憲法尊重擁護義務を負うのは政府与党だけだと勘違いをしているのでしょうか?)

従来、共産党や立憲民主党などは、「憲法を守れ」と主張する「護憲政党」であったはずですが、フェミニズムやジェンダー平等等を憲法の規定する表現の自由や法の下の平等より優越する価値理念であると憲法違反の主張を行っている共産党・立憲民主党等には「護憲政党」を名乗り「憲法を守れ」と主張する資格はもはやありません。

6.まとめ-日本共産党は「非実在児童ポルノ」政策の撤回を
戦前、特高警察に拷問で殺されたプロレタリア文学の小林多喜二が党員であった日本共産党は、公権力の暴走や、公権力の表現規制と闘うことがアイデンティティの政党だと思っていたのですが、表現規制推進に転換したことは信じられません。

小林多喜二
(特高警察により拷問で殺された小林多喜二の遺体を囲む遺族や文学者達。日本共産党サイトより)

戦前の日本は軍国主義・ファシズムが台頭し、その考え方の「社会的合意」に基づいて議会で治安維持法、翼賛体制などが立法化され、滝川事件などの学問弾圧や思想弾圧公立図書館などにおける「思想善導」などが行われ、第二次世界大戦に突入してしまいました。このような公権力による思想や価値観の強制や、表現の自由規制などがいかに間違ったものであるかは、第二次世界大戦の無残な戦禍の結果を見れば歴史的に明らかです。

表現の自由や内心の自由は民主主義の基盤であり、自民党などと同様に、表現規制推進派、つまりファシズムや国家主義、検閲を是とする監視国家的価値観に転換した日本共産党は、自由な民主主義や表現の自由、内心の自由を掲げる日本国憲法について、「憲法を守れ」と主張する資格や「護憲政党」を名乗る資格はありません。また、自民党・公明党や維新等を全体主義・国家主義と批判する資格ももはやありません。

このような理由から、私は日本共産党の2021年衆議院選挙の各政策の「7、女性とジェンダー」の「非実在児童ポルノ」の政策に反対であり、この政策の撤回を求めます。

(なお今回の衆院選の公約において、「インターネット上の誹謗中傷を含む、性別・部落・民族・障がい・国籍、あらゆる差別の解消を目指すとともに、差別を防止し、差別に対応するため国内人権機関を設置します。」としている立憲民主党の主張も、日本共産党の「非実在児童ポルノ」政策と同様に、国民の表現行為などを国(人権機関)が監視・検閲し、特定の表現行為や思想を弾圧し、立憲などが好む表現や思想を国民に強制する点で、中国や北朝鮮などのファシズム国家・超監視国家と同様であり、「反差別ファシズム」、「人権ファシズム」とでも呼ぶべきものであり、憲法の規定する表現の自由(憲法21条1項)や思想・良心の自由(憲法19条)に違反し、また自由主義と民主主義を掲げる日本国憲法の趣旨・目的そのものに反する考え方であり、私は反対であり撤回を求めます。)
・人権政策の抜本強化|立憲民主党

■追記(2021年11月2日)
報道によると、10月31日の衆議院選挙の大敗を受けて、立憲民主党の枝野幸男氏が党首を辞任するとのことです。衆院選の大敗もさることながら、「立憲民主党」という「立憲」を冠した党名の政党でありながら、国民の現実やネット上のあらゆる表現行為を検閲・規制する「人権機関」という近代立憲主義憲法に反するファシズム的な公約を掲げた立憲民主党の枝野氏が辞任するのは当然のことです。

同様に、「非実在児童ポルノ」というこれも近代立憲主義憲法に反するファシズム的な公約を掲げて衆院選で敗北した日本共産党の志位和夫委員長や、同政策の責任者の吉良よし子氏池内さおり氏なども責任をとって辞任更迭されるべきです。

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■参考文献
・芦部信喜・高橋和之補訂『憲法 第7版』180頁、213頁
・渋谷秀樹『憲法 第2版』380頁
・野中俊彦・中村睦男・高橋和之・高見勝利『憲法Ⅰ 第5版』352頁
・辻村みよ子『比較憲法 新版』126頁
・樋口陽一・小林節『「憲法改正」の真実』90頁

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