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2022年10月13日に河野太郎・デジタル庁大臣が紙の保険証を廃止しマイナンバーカード(個人番号カード)に一本化する方針を示したことをが大きな賛否を呼んでいます。

マイナンバー(個人番号)は税・社会保障・災害対応の3つに利用目的が法定されており、それ以外に利用することは違法となります(法9条)。一方、マイナンバーカードは法9条にとらわれずに身分証明書に利用ができるほか、マイナンバーカードのICチップには①公的個人認証のための電子証明書と②空き領域があります。

マイナンバーカードの3つの利用箇所
総務省サイト「個人番号カードの普及・利活用について」3頁)

①公的個人認証のための電子証明書は、e-TAX、マイナポータルの他、総務大臣が認定した民間事業者の利用も想定されています。具体例としては、金融機関のインターネットバンキング、インターネットショッピングなどです。

また、②ICチップの空き領域は、国の機関は総務大臣の定めるところにより、市町村等は条例で定めるところにより利用できるとされており、具体例としては、印鑑証明書、住民票の写し等のコンビニ交付、証明書自動交付、図書館利用カード、公共施設予約、地域の買い物ポイントなどが想定されています。

さらに上述の総務省の資料9頁によると、政府与党は学歴・職歴なども②のICチップの空き容量に収集することを検討しているようです。(注:2021年に成立したデジタル関連法のなかのマイナンバー法改正では、医師・看護師などの国家資格を国がマイナンバーで一元管理するための法改正なども実施された。)

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(2021年のデジタル社会形成法案の概要。個人情報保護委員会サイトより)

このように「国民の利便性向上」という名目のために、マイナンバーカードは今後もますます多目的化・ワンカード化が推進されるものと思われます。

この点、マイナンバー法の立案担当者である弁護士の水町雅子先生は著書でつぎのように解説しておられます。

カードや番号が幅広く多目的化すると、万一、カードや番号が悪用された場合に、さまざまな情報を名寄せ、盗用される危険性があるなど、プライバシー権を始めとする個人の権利利益を侵害するおそれが高い。

個人番号カードの取得は義務制ではない。(=マイナンバー法16条の2)…個人にとっては…自らが個人番号カードを持つのか持たないのか選択し、また個人番号カードの機能について選び取るという意識が必要であると考える。また政府が政策判断をするにあたっては、国民の利便性の向上、個人番号カードの可能性のみを検討するのではなく、多目的化を脅威と感じる国民の感情を受け、国民が個人番号カードを選択するかどうか、どの機能を選択するかどうか、自身で十分な情報を得た後に選び取れるような周知が必要であると考える。
(水町雅子『逐条解説マイナンバー法』257頁~258頁より)

このようにマイナンバー法の立案担当者である水町先生は、「政府が政策判断をするにあたっては、国民の利便性の向上、個人番号カードの可能性のみを検討するのではなく、多目的化を脅威と感じる国民の感情を受け、国民が個人番号カードを選択するかどうか、どの機能を選択するかどうか、自身で十分な情報を得た後に選び取れるような周知が必要である」と解説しておられますが、今般の「マイナ保険証」による"マイナンバーカードの事実上の強制"を打ち出した河野大臣、岸田首相などの政府与党の方針は、マイナンバー法の定めるマイナンバーカード制度の趣旨・目的に大きく反すると考えられます。

日本は自由な民主主義国家であり(憲法前文、1条)、国家主義・全体主義の中国やロシアなどとは違うのですから、河野大臣、岸田首相や政府与党は今からでもマイナンバーカードの国民への強制という国家主義・全体主義的な政策を撤回すべきです。

■追記
なお、上でもふれたとおり、マイナンバー(個人番号)はマイナンバー法9条が限定列挙する税・社会保障・災害対策の3つの目的のために法9条を根拠として行政機関等が強制的に個人のマイナンバーを含む個人情報を利用することが可能となっている一方で、マイナンバーカードに紐付いた個人情報については法9条に縛られず行政機関や民間企業等が自由に個人の個人情報を利用可能となっているため、当該個人がマイナンバーカードを取得し利用すること、マイナンバーカードを利用するとしてどのような機能を利用するかについて、当該個人の本人の任意の判断(本人の同意)が必須となっています。マイナンバー法16条の2第1項、同17条1項が、マイナンバーカードの取得を国民個人の申請に基づく任意のものと明記しているのはその趣旨ともいえます。
マイナンバー法(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)

(個人番号カードの発行等)
第16条の2 機構は、政令で定めるところにより、住民基本台帳に記録されている者の申請に基づき、その者に係る個人番号カードを発行するものとする。
(略)

(個人番号カードの交付等)
第17条 市町村長は、政令で定めるところにより、当該市町村が備える住民基本台帳に記録されている者に対し、前条第一項の申請により、その者に係る個人番号カードを交付するものとする。この場合において、当該市町村長は、その者が本人であることを確認するための措置として政令で定める措置をとらなければならない。
(略)

このマイナンバー法16条の2第1項、17条1項の規定や趣旨からも、河野大臣、岸田首相の保険証のマイナンバーカードへの一体化による国民へのマイナンバーカードの事実上の強制は違法であるといえます。

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■参考文献
・水町雅子『逐条解説マイナンバー法』257頁~258頁
・黒田充『あれからどうなった?マイナンバーとマイナンバーカード』163頁、199頁
・総務省サイト「個人番号カードの普及・利活用について」

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