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1.はじめに
Twitterでツイートする際に他人のツイートのスクリーンショット(スクショ)画像を添付したことが 適法な「引用」ではないと判断された裁判例(東京地判令和4.2.10)が出され批判が大きいところ、今般別件で、ツイートに他人のツイートのスクショ画像を添付することは適法な引用であるとする興味深い知財高裁判決(知財高裁令和4.11.2)が出されていたので紹介します。

2.事案の概要
本件は、氏名不詳者によりTwitterにおいて、本件ツイート1および2が投稿されたことにより、同各ツイートに添付された本件投稿画像1または2に含まれる本件控訴人プロフィール画像に係る控訴人X1の著作権および控訴人X2の原著作者の権利が侵害されたこと並びに控訴人X1の名誉権が侵害されたとして、控訴人らが経由プロバイダである被控訴人に対して、プロバイダ責任制限法に基づき発信者情報の開示を求めた事案である。

本件投稿画像1および2は、控訴人X1が投稿したツイートをそれぞれスクリーンショット(スクショ)により撮影したものであり、ツイートには投稿者を示すアイコンとして、控訴人X1のプロフィール画像が付されていた。本件控訴人プロフィール画像は、控訴人X1が自らのアカウントにおいてプロフィール画像として用いていたものであり、控訴人X2が撮影した控訴人X1の写真の顔部分に控訴人X1がイラストを付して加工したものであった。本知財高裁判決はスクショ画像の添付によるツイートを適法な引用と認めた。(ただし名誉棄損などを認定して発信者情報の開示を認めた。)

3.判決の判旨
『イ  本件では、本件ツイート1の投稿者が、本件アカウントにおいて、控訴人らの許諾を得ることなく本件ツイート1を投稿しており、これにより、本件控訴人プロフィール画像をツイッターのサーバに複製し、送信可能化したとい える。

ウ  被控訴人は、上記イの本件控訴人プロフィール画像の利用について、「引用」に当たり適法であると主張するので検討するに、適法な「引用」に当たるには、①公正な慣行に合致し、②報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われるものでなければならない(著作権法32条1項)。

エ(ア)  本件についてみると、本件ツイート1においては、「X1’ さん」「DM画像捏造してまで友人を悪人に仕立てあげるのやめてくれませんかね?」との文言と共に本件投稿画像1が投稿されているところ、「X1’」は控訴人X1の旧姓であるから、同ツイートは、控訴人X1 が「DM画像を捏造した」という行為を批判するために、控訴人X1 が捏造した画像として、本件投稿画像1を合わせて示したものと推認され、本件投稿画像1を付した目的は、控訴人 X1が「DM画像を捏造」してこれをツイートした行為を批評することにあると認められる。

(イ) 上記控訴人X1 の行為を批評するために、控訴人X1 のツイートに手を加えることなくそのまま示すことは、客観性が担保されているということができ、本件ツイート1の読者をして、批評の対象となったツイートが、誰の投稿によるものであるか、また、その内容を正確に理解することができるから、批評の妥当性を検討するために資するといえる。また、本件控訴人プロフィール画像は、ツイートにアイコンとして付されているものであるところ、本件ツイート1において、控訴人X1 のツイートをそのまま示す目的を超えて本件控訴人プロフィール画像が利用されているものではない。そうすると、控訴人X1 のツイートを、アイコン画像を含めてそのままスクリーンショットに撮影して示すことは、批評の目的上正当な範囲内での利用であるということができる。

(ウ) 次に、証拠によると、画像をキャプチャしてシェアするという手法が、情報を共有する際に一般に行われている手法であると認められることに照らすと、本件ツイート1における本件控訴人プロフィール画像の利用は、公正な慣行に合致するものと認めるのが相当である。

オ(ア)  控訴人らは、本件投稿画像1の分量が本件ツイート1の本文の分量と同等であり、主従関係にないから、引用に当たらないと主張するが、仮に「引用」に該当するために主従関係があることを要すると解したとしても、主従関係の有無は分量のみをもって確定されるものではなく、分量や内容を総合的に考慮して判断するべきである。本件では、本件投稿画像1ではなく、本件控訴人プロフィール画像と本件ツイート1の本文の分量を比較すべきである上、本件投稿画像1は、本件ツイート1の本文の内容を補足説明する性質を有するものとして利用されているといえることから、控訴人らの上記主張は採用できない。

(イ)  控訴人らは、引用リツイートではなくスクリーンショットによることは、ツイッター社の方針に反するものであって、公正な慣行に反すると主張する。しかしながら、そもそもツイッターの運営者の方針によって直ちに引用の適法性が左右されるものではない上、スクリーンショットの投稿がツイッターの利用規約に違反するなどの事情はうかがえない。

そして、批評対象となったツイートを示す手段として引用リツイートのみによったのでは、元のツイートが変更されたり削除された場合には、引用リツイートにおいて表示される内容も変更されたり削除されることから、読者をして、批評の妥当性を検討することができなくなるおそれがあるところ、スクリーンショットを添付することで、このような場合を回避することができる。(略)そうすると、スクリーンショットにより引用をすることは、批評という引用の目的に照らし必要性があるというべきであり、その余の本件に顕れた事情に照らしても公正な慣行に反するとはいえないから、控訴人らの上記主張は採用できない。』

4.検討
(1)「引用」 著作者の権利(著作権および著作者人格権)の享有にはいかなる方式の履行も要しないとされています(著作権法17条2項)。しかし著作権はさまざまな形で制約されます(法30条以下)。本件で問題となるのは「引用」です(法32条)。

著作権法
(引用)
第32条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

この著作権法32条1項の条文が示すように、適法な引用といえるためには、①公表されていること、②公正な慣行に合致すること、③報道、批評、研究その他の引用の正当な範囲内であること、が必要となります。ここで①は明確な要件ですが、②③は必ずしも明確ではないので、裁判例は判断基準として④明瞭区別性、⑤主従関係の要件をとることが一般的です(最高裁昭和55.3.28・パロディ=モンタージュ事件)。

(2)本判決の検討
(a)批評の引用の正当な範囲内であること
そこで本判決をみると、「エ(ア)」の部分で裁判所は、本件投稿画像(スクショ画像)の添付された本件ツイートは控訴人X1が「DM画像を捏造」してこれをツイートしたことを「批判」する目的のものであると認定しています。

そして「エ(イ)」の部分で裁判所は、X1のツイートを批評するためにスクショ画像でX1のツイートをそのまま示すことは、「客観性が担保」され、「誰の投稿によるものであるか明らか」であり、また「その内容を正確に理解できる」ので、「批評の妥当性を検討するに資する」と評価しています。そのため裁判所はスクショ画像をツイートに添付することは「批評の目的上正当な範囲内での利用ということができる」と結論付けています。

(b)公正な慣行・主従関係
また裁判所は「エ(ウ)」の部分で、「証拠によると、画像をキャプチャしてシェアするという手法が、情報を共有する際に一般に行われている手法であると認められていることに照らすと」、本件控訴人プロフィール画像の利用は「公正な慣行に合致」していると判断しています。

この点について控訴人は、本件投稿画像1の分量が本件ツイート1の本文の分量と同等であり主従関係にないと争っていますが、裁判所は、「主従関係の有無は分量のみをもって確定されるものではなく、分量や内容を総合的に考慮して判断すべきである」と判示し、控訴人らの主張を退けており注目されます。

(c)Twitterの利用規約-引用ツイートとスクショ・オーバーライド問題
さらに控訴人らは、Twitterの利用規約は他のツイートを引用する際には引用ツイートの手法のみを認めており、スクリーンショットによる手法を認めていないので、本件のスクショ画像は「公正な慣行」に反すると争っています。

この点に関しては、冒頭であげた東京地裁令和4.2.10は、スクショ画像の添付は"Twitterの利用規約に違反しており公正な慣行に合致しておらず適法な引用といえない"と判断してしまっておりますが、この東京地裁判決に対しては、「スクリーンショット画像の添付による引用がツイッター社の規約に違反するとしても、規約違反が「公正な慣行」という媒介を通じて直ちに32条1項の適法引用を否定することになるかについては、別個の検討が必要であろう(略)。さもなければ、SNS等のサービス運営者がその利用規約等をもって著作権法の定める適法引用要件を事実上修正できることになりかねない。」との批判(いわゆる「オーバーライド問題」への批判)がなされているところでした(小林利明「ツイッターにおけるスクリーンショット画像の添付と適法引用の成否」『ジュリスト』1572号9頁)。

これに対して本知財高裁判決は、「しかしながら、そもそもツイッターの運営者の方針によって直ちに引用の適法性が左右されるものではない」とし、さらに「批判対象となったツイートを示す手段として引用リツイートのみによったのでは、元のツイートが変更されたり削除された場合には、引用リツイートにおいて表示される内容も変更されたり削除されることから、読者をして、批評の妥当性を検討することができなくなるおそれがあるところ、スクリーンショットを添付することで、このような場合を回避することができる」と指摘し、その上で「そうすると、スクリーンショットによる引用をすることは、批評という引用の目的に照らし必要性があるというべきであり…公正な慣行に反するとはいえない」と結論付けています。

このように知財高裁が引用リツイートとスクショ画像とを比較検討し、スクショ画像のメリットを指摘し、その上でツイッター社の利用規約が引用リツイートしか認めていないからといってスクショ画像の添付が公正な慣行に反することにはならないと判示したことは極めて正当であると思われます。本知財高裁判決をもって、上述の東京地裁令和4.2.10の判旨は否定されたといえるのではないかと思われます。

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■参考文献
・知財高裁令和4年11月2日判決 令和4(ネ)10044 著作権侵害等に基づく発信者情報開示請求控訴事件|裁判所
・小林利明「ツイッターにおけるスクリーンショット画像の添付と適法引用の成否」『ジュリスト』1572号8頁
・中山信弘『著作権法 第2版』320頁
・高林龍『標準著作権法 第5版』181頁



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