めぶくpay概要
(前橋市サイトより)

1.はじめに

最近、Twitter(現X)でawakoyot様(@awakoyot)から、”前橋市が地域電子通貨「めぶくpay」の決済データを市政や民間ビジネスに利活用するとのことだが、このようなことは個人情報保護法等から大丈夫なのだろうか?”との趣旨のツイートとともに、東京新聞の記事(「「めぶくPAY」前橋市で始動 決済データを市政やビジネスに活用」(2024年1月13日))やめぶくpay等の利用規約・プライバシーポリシーなどを紹介いただいたので、興味深く読んでみました。

めぶくpay等の利用規約やプライバシーポリシーには「決済データを市政や民間ビジネスなどに利活用する」等とは明記されていませんが、めぶくpay等による決済データを市政や民間ビジネスなどに利活用することは個人情報保護法などから大丈夫なのでしょうか?

2.めぶくpay・めぶくID等の概要・利用規約・プライバシーポリシー

(1)上の東京新聞の記事などによると、前橋市の地域電子通貨「めぶくpay」は、同市と民間企業が共同出資した株式会社めぶくグラウンドが手掛ける共通ID「めぶくID」を利用した「めぶくアプリ」というデータ連携基盤を利用しているものであるそうです。めぶくIDは、マイナンバーカードによる本人確認を実施した上でスマートフォン上に実装されるデジタルIDであるそうです。そして同記事においては、「めぶくpayの決済データはめぶくグラウンド社という地域に残る前橋市独自の仕組みであり、このめぶくpayの決済データを統計処理して、同市の行政サービスや市内の民間ビジネスなどに利活用することができる」ことが強調されています。

そして、めぶくID・めぶくアプリというデータ連携基盤は、めぶくグラウンド社の「助け合い掲示板」「グッドグロウまえばし」「メブクラスまえばし」「my Allergy alert」という各種サービスとデータ連携しており、また今回のmy FinTech株式会社の運営する、めぶくpay等とデータ連携しているとのことです。このデータ連携基盤と各種サービスとの間においては、利用者が自分自身の個人データをどのサービス・事業者に提供・連携するか選択できるようになっているとのことです。

めぶくpay・めぶくIDなどの概要図

(2)この点、めぶくグラウンド社の利用規約およびプライバシーポリシーをみると、たしかに「当社は…本サービス中においてデータ連携サービスを提供しています。お客様はご自身の判断で個人情報を提供するか否かを決定することができます」等と規定されています(めぶくグラウンド社利用規約6条2項、同社プライバシーポリシー5条1項など)。また、個人情報の各種サービスへの第三者提供にあたっては、「当社が本サービス上等でお客様に事前通知する情報のみを提供し」ますと規定されています(同社利用規約6条5項)。さらにこのめぶくアプリ等によるデータ連携基盤と各種サービスとの個人データの提供は、委託や共同利用ではなく第三者提供であることが明記されています(同社プライバシーポリシー6条)。

めぶくID
(前橋市サイトより)

(3)つまり利用規約・プライバシーポリシーによると、めぶくアプリ・めぶくID・めぶくpayなどにおける個人データの取扱いはあくまでも利用者本人の同意に基づく個人データのやり取りであり、個人データの官民による利用等に関しては、原則として本人同意した利用者が責任を負うというスキームになっています。委託におけるいわゆる「委託の「混ぜるな危険」の問題」などの規制は適用されないことになります。

3.めぶくpayの決済データを市政や民間ビジネスに利活用することについて

(1)さらに、個人情報を元に作成された統計情報・統計データはそもそも個人情報に該当しないため(個情法2条1項1号、個人情報保護法ガイドラインQA1-17)、前橋市やめぶくグラウンド社およびmy FinTech社などが市政や民間ビジネスなどに、めぶくpayの決済データを「統計情報・統計データ」として利用する限りにおいては、少なくとも現状のゆるい日本の個人情報保護法上は違法ではなく、加えて統計情報・統計データを市政や民間ビジネスに利用する場合にはプライバシーポリシー等に記載して通知・公表することも不要ということになりそうです(個人情報保護法ガイドラインQA2-5)。

(2)しかし、いくら日本のゆるゆるな個人情報保護法がそのような取扱いを許容するとしても、前橋市などの地方自治体や同自治体が出資する準公的団体がそのような個人情報の取扱いを行うことは、道義的あるいは政治的に許容されるのでしょうか?

この点、前橋市の未来創造部未来政策課の担当者の方に私が電話にて質問したところ、

「めぶくpayの決済データを市政や民間ビジネスに利用することについては、技術的には可能だがまだ検討中の段階である。めぶくpayやめぶくアプリなどで取得された個人データを第三者提供することや、同データをプロファイリングすることについても技術的には可能だがまだ検討中の段階である。」


との趣旨のご回答をいただきました。

このご回答がもし正しければ、上であげた東京新聞の記事はやや「飛ばし記事」であるように思われます。

(3)なお、これがもし、めぶくグラウンド社・my FinTech社等が統計情報・統計データではなく、個人データとしての決済データをAIによるプロファイリングなどを行って、その結果を前橋市の市政や民間ビジネス等に利活用する場合には、「プロファイリングを実施してその結果を市政に利用している」等の事項をプライバシーポリシーの利用目的に記載する等して利用目的を特定し、通知・公表を行うことが必要です(個情法17条1項、21条1項、個情法ガイドライン通則編3-3-1※1、田中浩之ほか『AIプロファイリングの法律問題』43頁)。

4.まとめ

このように検討してみると、もしめぶくグラウンド社などがめぶくpayの決済データ等を統計データの形で市政や民間ビジネスなどに利用するのであれば、それはゆるいわが国の個人情報保護法や、めぶくグラウンド社などの利用規約・プライバシーポリシーなどとの関係では違法ではないという結論になりそうです。しかしこれも上述したとおり、前橋市の担当部署の担当者の方は、そのような取組みは「可能ではあるがまだ検討中」と回答しています。これが本当であれば、冒頭の東京新聞の記事はやや飛ばし記事なのではないかと思われます。

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■参考文献
・「めぶくPAY」前橋市で始動 決済データを市政やビジネスに活用|東京新聞
・安心・安全なデジタルID「めぶくID」を是非ご活用ください!|前橋市
・めぶくグラウンド社利用規約
・めぶくグラウンド社プライバシーポリシー
・my FinTech社プライバシーポリシー
・田中浩之ほか『AIプロファイリングの法律問題』43頁

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