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1.憲法改正を政治家が主張することは憲法違反?
最近、X(旧Twitter)上で、「憲法改正を大臣や国会議員などの政治家が主張することは憲法違反(憲法99条)なのか?」という論争が起きているようです。

例えばこの投稿はリプ欄で賛成・反対多くの論争を巻き起こしているようです。

Drナイフ投稿
(Dr.ナイフ氏(@knife900)の投稿より)

2.憲法96条・99条
この憲法上の論点を考える上で、まず前提として、憲法は憲法改正(96条)の規定と憲法尊重擁護義務(99条)の規定を置いています。

憲法
第九十六条 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。

第九十九条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ

つまり、憲法上には憲法改正の規定がある一方で、国務大臣、国会議員、公務員等は憲法尊重擁護義務が課されているのですが、憲法改正との観点ではこの両者をどのように考えるべきなのでしょうか?

3.憲法学的には
この点、憲法の教科書はつぎのように解説しています。

「確かに、憲法自身が改正手続を定めている以上、憲法改正を主張することは(憲法尊重)尊重擁護義務に反するものではない。しかし、国務大臣が憲法の規定や精神に反する立場を明らかにし、その改正を主張・唱道することによって、憲法および法令に従って行われるべきその職務の公平性に対する信頼を疑わしめる結果となるような場合には、本条の義務違反の問題となる。」
『基本法コンメンタール憲法 第5版』446頁(畑尻剛執筆部分)
つまり、「憲法自身が憲法改正手続の規定をおいている以上、憲法改正を主張すること自体は憲法尊重尊重擁護義務に反するものではない。しかし、国務大臣が憲法の規定や精神に反する立場を明らかにし、その改正を主張・唱道することによって、憲法および法令に従って行われるべきその職務の公平性に対する信頼を疑わしめる結果となるような場合には、本条の義務違反の問題となる」というのが、この論点に対する憲法学の考え方のようです。

なお、憲法改正には「憲法改正の限界」、つまりかりに憲法改正手続きによっても許されない限界があり、憲法の基本原則つまり国民主権、基本的人権の確立、平和主義、立憲主義、憲法改正手続などを侵害する憲法改正は「憲法改正の限界」に抵触し無効であるというのが憲法学上の通説です(芦部信喜・高橋和之補訂『憲法 第7版』409頁)。そのため、国民主権、基本的人権の確立、平和主義、立憲主義や基本的人権を大きく制約するような憲法改正を大臣や国会議員が主張したり実行することは憲法96条、99条違反になると考えられます。

4.まとめ
すなわち、「憲法自身が憲法改正手続の規定をおいている以上、憲法改正を主張すること自体は憲法尊重尊重擁護義務に反するものではない。しかし、国務大臣などが憲法の規定や精神に反する立場を明らかにし、その改正を主張することによって、憲法および法令に従って行われるべきその職務の公平性に対する信頼を疑わしめる結果となるような場合には、本条の義務違反の問題となる。国民主権、基本的人権の確立、平和主義、立憲主義や基本的人権を大きく制約するような憲法改正を大臣や国会議員が主張したり実行することは憲法96条、99条違反になる」というのが、この論点に対する憲法学上の考え方になるように思われます。

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