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とある会社の社員が、法律などをできるだけわかりやすく書いたブログです

カテゴリ: 保険法

1.はじめに
2025年10月30日に、最高裁第一小法廷で人身傷害保険の死亡保険金の帰属に関する非常に興味深い判決が出されたので見てみたいと思います。
・最高裁判所第一小法廷令和7年10月30日判決|裁判所

2.事案の概要
(1)平成31年、AはY損害保険会社(三井住友海上)との間で本件人身傷害保険条項のある自動車保険契約を締結した。本件人身傷害保険にはつぎのような特約条項があった。

「保険金請求権者は、人身傷害事故によって損害を被った次のいずれかに該当する者とする。
(ア)被保険者。ただし、被保険者が死亡した場合はその法定相続人とする。(本件条項1))
(後略)」

(2)Aは、令和2年1月、上記保険契約の被保険車両を運転中に自損事故を起こし、これにより死亡した。Aの子らはいずれもAの相続について相続放棄をし、Aの母であるBがAの遺産を単独で相続した。Bは本件人身傷害保険に基づく死亡保険金請求権を相続により取得したとして、Yに対して本件人身傷害保険に基づく死亡保険金の支払いを求めて提訴した。Bは第一審継続中に死亡し、Bの子であるXが本件訴訟を承継した。

3.判旨
(Y社の上告棄却)
「本件人身傷害条項によれば、人身傷害保険金は人身傷害事故により生ずる損害に対して支払われるものとされ、本件条項1の柱書きは、保険金請求権者を「人身傷害事故により損害を被った」者とする旨を定めている。

…そして、損害を填補する性質の金員の支払等がされた場合は、当該金員の額を控除するなどして人身傷害保険金を支払うものとされている。これらの点からすれば、本件人身傷害条項において、人身傷害保険金は、人身傷害事故により損害を被った者に対し、その損害を填補することを目的として支払われるものとされているとみることができる。

…そして、本件人身傷害条項では、人身傷害事故により被保険者が死亡した場合においても、精神的損害につき被保険者「本人」等が受けた精神的苦痛による損害とする旨の文言があり、(略)死亡保険金により填補されるべき損害が、被保険者自身に生ずるものであることが前提にされているといえる。 以上のような本件条項1の文言、本件人身傷害条項の他の条項の文言や構造等に加え、保険契約者の通常の理解を踏まえると、本件条項1は、人身傷害事故により被保険者が死亡した場合を含め、被保険者に生じた損害を填補するための人身傷害保険金の請求権が、被保険者自身に発生する旨を定めているものと解すべきである。本件条項1のただし書は、死亡保険金の請求権について、被保険者の相続財産に属することを前提として、通常は法定相続人が相続によりこれを取得することになる旨を注意的に規定したものにすぎないというべきである。

したがって、死亡保険金の請求権は、被保険者の相続財産に属するものと解するのが相当である。」


4.分析
(1)損保の保険実務上は、人身傷害保険の死亡保険金の帰属につき、約款の解釈として法定相続人が原始取得する考え方(原始取得説)をとっている保険会社が多数のようである。一方、学説は、被相続人より相続により取得するという考え方(承継取得説)が多数となっているようである。

(2)承継取得説は、実損てん補型の傷害保険契約であるので、傷害疾病損害保険であり、被保険者死亡の場合の保険金請求権は法定相続人に相続により承継取得されるとする見解である(洲崎、山下友信、山下典孝など)。一方、原始取得説は、被保険者死亡の場合の保険金請求権は、法定相続人によって原始取得されるとする見解である(佐野、大塚など)。(後掲の坂本貴生論文35頁参照)

(3)損保の保険実務の多くが原始取得説を採用しているのは人身傷害保険の策定時当時、約款策定者は「取扱いの内容は、既存の無保険車傷害保険に準じる」としており、つまり、自動車保険において加害運転者(とその遺族)の補償をカバーしようという商品の趣旨から、被保険者が死亡した場合の保険金受取人を相続人としての固有財産として、そのことを保険会社が約款に規定したものと考えられている。(後掲の松本裕夫論文129頁以下参照)

(4)この点、本最高裁判決は、「以上のような本件条項1の文言、本件人身傷害条項の他の条項の文言や構造等に加え、保険契約者の通常の理解を踏まえると、本件条項1は、人身傷害事故により被保険者が死亡した場合を含め、被保険者に生じた損害を填補するための人身傷害保険金の請求権が、被保険者自身に発生する旨を定めているものと解すべきである。本件条項1のただし書は、死亡保険金の請求権について、被保険者の相続財産に属することを前提として、通常は法定相続人が相続によりこれを取得することになる旨を注意的に規定したものにすぎないというべきである。」と判示して、承継取得説に立つことを明らかにしている。

(5)損保の人身傷害保険に関する実務は原始取得説を採用している保険会社が多いとされており、本最高裁判決の影響は大きいと考えられる。生命保険会社においては、生命保険の死亡保険金請求権は保険金受取人の固有の財産であることが判例・通説(最決平成16.10.29)であるところ、これが今後、裁判例等において変更されないか引き続き注視することが必要であると考えられる。

■参考文献
・坂本貴生「人身傷害保険の被保険者死亡における保険金請求権の帰属」『共済と保険』2021年12月号32頁
・松本裕夫「人身傷害保険における現在の約款の問題と課題の一考察」『Kobe University Repository:Kernnel

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1.はじめに
生命保険契約について、保険契約者からの保険金受取人変更の意思表示が口頭であった場合、保険金受取人の変更は成立したといえるのかが争われ、これを否定した興味深い裁判例(東京地裁令和4年4月28日判決・令3(ワ)2186号、2022WLJPCA04288002)を見かけました。以下見てみたいと思います。
(なお本件訴訟では、保険金受取人変更の意思表示についてだけでなく、保険者への保険金受取人変更の対抗要件についても争点となっておりますが、本稿では割愛します。)


2.事案の概要
(1)生命保険契約の概要

B(昭和46年生)は、生命保険会社Yと平成22年3月1日付でつぎの内容の生命保険契約を締結した。
(ア)保険種類 5年ごと配当付更新型終身移行保険10年満期
(イ)保険契約者・被保険者 B
(ウ)保険金受取人 D(Bの母・補助参加人)
(エ)保険金額 1000万円
(オ)特約死亡保険金・給付金合計額 400万円
(カ)保険約款の規定
本件保険契約に関する保険約款には,「死亡保険金受取人の指定又は変更は,保険証券に表示を受けてからでなければ,被告に対抗することができない」旨が定められていた(5年ごと配当付更新型終身移行保険普通保険約款第34条3項。)。

(2)本件訴訟の概要
Bは、Y社との間で,平成22年3月1日付けで本件保険契約を締結した。なお,その際の手続は,営業職員のCが担当した。XとBは,平成27年3月頃から交際を開始し,同年12月4日に婚姻した。

Cは,本件保険契約の更新時期の約1年前となったため,平成31年3月上旬頃,Bに架電し,保険の更新や見直しに関する話をした。Bはこの電話の際,Cに対し,結婚して住所が変わった旨を伝えた。これを受け,Cは,保険金の受取人をDからXに変更するかどうか確認する等した。Bは,同年3月30日,Cに架電し,面談は同日であったかを確認した。Cが4月6日の予定である旨回答すると,亡Bは,保険の内容についてよく考えたいので4月6日の面談はキャンセルしたい旨述べて電話を切った。Cは,同年4月1日,Bに対し,保険契約の見直しに関して提案することを考えていた保険商品の保障設計書2通及び契約の更新に関する試算資料を送付した。Bは,同年4月26日,くも膜下出血により死亡した。

Y社はDからの保険金請求を受けて、同人に対し、合計1400万円の死亡保険金を据置払いで支払った。これに対して、Xが、本件保険契約の保険金受取人はBにより自分に変更されていると主張して、Y社に対して死亡保険金1400万円および遅延損害金の支払いを求めて提訴したのが本件訴訟である。

3.判旨
(請求棄却)
2 BがXに対して本件保険契約の死亡保険金の受取人をXに変更するとの意思表示をしたか否かについて
(1)旧商法附則2条は,同法の施行日(平成22年4月1日)前に締結された保険契約については保険法(平成20年法律第56号)附則3条から6条までの規定により同法の規定が適用される場合を除いてなお従前の例によると定めており,本件保険契約についても原則として旧商法が適用される。  そして,旧商法の適用下においては,保険金受取人の変更は,保険契約者から新たな保険金受取人に対する意思表示のみによって効力を生じるものと解される(最高裁判所昭和62年10月29日第一小法廷判決・民集41巻7号1527頁参照)。

(2)この点について,Xは,BはXに対してXと婚姻する前の平成30年7月22日に「俺はY社に入っていて,受取人は母にしているんだけど,結婚したら受取人をXに変更するからね。」旨述べ,また,婚姻後の平成31年3月20日頃に「結婚したから保険料の支払金額の関係で契約の見直しと受取人の変更をするから。保険のおばさんにうちに来てもらうけど,いい?」,「受取人をXに変えるけど,万が一俺が死んだら,母にも渡してね。そうしてくれないと,化けて出るからね。」旨述べて,本件保険契約の死亡保険金の受取人を原告に変更するとの意思表示をした旨主張し,X本人がこれに沿う供述及び陳述をする。

 この点,Bが上記主張にかかる発言をした旨の原告の供述及び陳述を裏付ける的確な証拠はないが,この点を措き,仮にBが上記主張にかかる発言をしていたとしても,本件においては,以下のとおり,それによって直ちにBがXに対して本件保険契約の死亡保険金の受取人を原告に変更するとの意思表示をしていたものと認めることはできない。

 すなわち,まず,上記主張にかかるBの発言には(かえって,上記主張にかかるBの発言の内容からすれば,Bは単に「結婚したら受取人をXに変更するつもりである」又は「今度Y社の担当者に来てもらって保険の見直しと受取人の変更の手続をする予定である」旨の今後の意向ないし予定をXに語ったに過ぎないものと解するのが自然である。)。

また,後記3(2)のとおり,Cが,Bに対して保険金の受取人を変更するかどうか尋ねた際に,保険金の受取人は直ちには変更せずに保険の見直しの際に考える旨回答していた旨証言ないし陳述していることからも,Bが当時本件保険契約の保険金の受取人をXに変更するとの確定的な意思を有していたかには疑問がある。これらの事情からすれば,Bが上記主張にかかる発言をしたことをもって,直ちにその時点でBがXに対して保険金受取人変更の意思表示を行っていたものとは認められない。
(略)

 以上によれば,原告の請求は理由がないからこれを棄却する。

4.検討
(1)保険金受取人変更の意思表示

保険金受取人の変更について、現行の保険法43条は、保険事故が発生するまでは、原則として保険金受取人の変更を認め(同43条1項)、その方法として遺言(同44条)によるほかは、保険会社(保険者)に対する意思表示によると規定しています(同43条2項)。

一方、保険法制定前の平成20年改正前商法では、原則として保険金受取人を変更することはできないものの(改正前商法675条1項)、特約によって保険契約者に保険金受取人を変更する権利を留保することができるとされ(同条1項但書)、実務において保険約款上、保険金受取人の変更権を留保していることが一般的であり、本件の保険約款も同様となっていました。そして保険会社の二重払いのリスク回避のために、改正前商法は、保険契約者の保険会社に対する通知が保険金受取人変更の保険会社に対する対抗要件となると規定していました(同677条1項)。

その上で、保険契約者の保険金受取人変更の意思表示について最高裁は、保険契約者の一方的な意思表示で足りるとし、その意思表示の相手方は保険者、新旧保険金受取人のいずれでもよいとしています(最判昭和62・10・29民集41巻7号1527頁)。

本件は、保険法施行前に締結された保険契約が問題となっているため、保険法でなく平成20年改正前商法が適用される事案です(保険法附則2条)。

(2)保険金受取人変更の意思表示に関する裁判例・学説の変遷-保険契約者の意思の尊重vs法的安定性
上の昭和62年の最高裁判決およびそれを支持する学説は、「できる限り保険契約者の真の意思を尊重すべきである」という価値判断が背景にあります。

一方、昭和62年の最高裁判決後、このような保険契約者の意思の尊重を重視した変更の柔軟な認定に疑問が学説において提起されるようになります。すなわち、債権譲渡の確定日付による対抗要件のような意思表示の有無・前後を明確にする仕組みが商法にはないことから、保険金受取人変更が競合する場合、差押債権者等の第三者が発生した場合に法律関係が不安定となるため、保険金受取人変更を柔軟に認める方向に反対し、保険金受取人変更の意思表示の相手方は保険者に限るべきであるとする学説があらわれました。

また、同様に、法的安定性を重視する観点から、保険金受取人変更の意思表示であるといえるためには明確な基準によるべきであるとして、保険金受取人変更の意思表示はただの意思表示では足らず、「確定的な意思表示」が必要であるとする学説も現れました(長谷川仁彦「保険金受取人の変更の意思表示と効力の発生」『中西正明先生喜寿・保険法改正の論点』251頁)。

この点、裁判例においても昭和62年の最高裁判決後、保険契約者の意思の尊重でなく、法的安定性を重視して、保険金受取人変更の意思表示に「確定的な意思表示」を求めるものが現れるようになり、そのような方向が主流となっています(東京高判平成10・3・25判タ968号129頁、東京地判平成9・9・30判タ968号130頁など)。

そして、平成20年の保険法は、上でみたように、保険契約者の保険金受取人変更の意思表示の相手方を保険者と規定しており、昭和62年の最高裁判決の考え方は立法的に破棄されたものといえます。

(3)本件訴訟の判決について
本件は、平成20年改正前商法が適用される事案ですが、Bの発言について、「そもそも本件保険契約の具体的な内容がほとんど表れておらず,その発言の内容に照らしても,Bがかかる発言によって確定的にその保険金の受取人をXに変更する意思表示をしたと認めるのは困難であるといわざるを得ない」「今後の意向ないし予定をXに語ったに過ぎない」と認定して、保険金受取人変更を否定しています。

これは、上でみた昭和62年の最高裁判決以降の、保険金受取人変更の意思表示に「確定的な意思表示」を求める学説・裁判例の流れに沿うものであり、妥当なものであると思われます。

■参考文献
・山下友信『保険法(下)』307頁
・得津晶「保険金受取人変更の意思表示と対抗要件」保険事例研究会レポート323号6頁

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1.はじめに

金融・法務事情1676号(2023年10月15日号)51頁で、胃GISTはがん保険の保険金支払いの対象にあたらないとした興味深い裁判例(東京地判令5.3.14、請求棄却・確定)を見かけました。

2.事案の概要

(1)事案の経緯・保険契約の概要
本件は、原告X(保険金受取人)が被告Y生命保険株式会社に対して、Xの妻A(保険契約者・被保険者)がY社と締結していたがん保険契約に基づき、Aが胃GISTと診断されたため、診断給付金200万円等の支払いを請求した事案である。

保険契約者・被保険者のAはY生命保険会社と平成9年9月1日にがん保険契約を締結した。保険金受取人はAの夫X、入院給付金日額は3万円、診断給付金は200万円であった。

Aは平成30年5月29日から同月31日までB病院に入院し、超音波内視鏡検査等を受け、同年6月5日に胃GISTとの診断を受けた。Aは同年7月26日から合計9日間入院し、腹腔鏡下胃局所切除術の手術を受けた。Xは同年10月6日、Y社に対して給付金請求書を送付して保険金請求を行ったところ、Y社は同月31日、12日分の入院給付金36万円を支払ったが、胃GISTは本件保険契約上の「がん」には該当しないとして診断給付金の支払いは拒絶した。そこでXが診断給付金の支払いを求めて提起したのが本件訴訟である。

(2)本件がん保険契約の保険約款の概要
本件保険契約に適用される保険約款では、被保険者が責任開始日移行に初めてがんと診断確定され入院した場合に入院給付金および診断給付金を支払う旨を規定していた。がんの診断確定は、日本の医師または歯科医師の資格を持つ者によって病理組織学所見または細胞学的所見によりされねばならないとされていた。

本件保険約款における「がん」の定義については、厚生省大臣官房統計局編『疾病、傷害および死因統計分類提要』(以下「ICD-10」という)において、悪性新生物に分類される疾患をいうとされ、また「悪性」とは、厚生省大臣官房統計情報部編『国際疾病分類-腫瘍学(第2版)』(以下「ICD-O2」という)において、新生物の形態の形状コードが悪性と明示されているものであり(新生物を示すコードの5桁目が/3、/6、/9のもの)、さらにICDの改定等により、新たな分類が施行された場合、その施行日以降に締結される保険契約に対しては新たに施行された分類を適用することとされており、後にICDの改定があっても遡及適用はしないことが明記されていた。そのため、本件保険契約に適用されるのは、本件保険契約締結時のICDの基準であるICD-10およびICD-O2であった。

(3)胃GISTについて
GIST(ジスト:Gastrointestinal Stromal Tumor)は、胃や腸の筋肉層から発生する悪性腫瘍であり、消化管のペースメーカー細胞が異常増殖し腫瘍化するものである。がんは一般的には粘膜から発生するものであるのとは異なる。

胃GISTの図
(がんとGISTの違いのイメージ図、杏林大学病院サイト「「GIST」って、なに?」より)

GISTという概念が広く知られるようになったのは2000年以降のことであり、ICD-10やICD-O2には、胃の非上皮性腫瘍は掲載されているもののGISTの掲載はなかった。

ICD、ICD-Oのあてはめにおいて解釈を要する場面で参照される文献が「ブルーブック」であり、これは局部別の疾病、傷害の分類が解説されたWHOが刊行する教科書シリーズのうち腫瘍に関する分類がまとめられたものである。このブルーブックの第4版(本件診断時の最新のもの)には胃GISTの記載があったが、第2版(本件保険契約締結時点での最新のもの)には胃GISTの記載はなかった。

3.判旨

『前提事実によれば、本件病院の医師は、平成30年8月7日、手術で切除したAの腫瘍の病理組織を診断した結果、同腫瘍が胃GISTであると診断しているところ、前提事実(略)によれば、原発性のものと考えられる本件GISTが本件保険契約上「がん」に当たるといえるためには、ICD-10において胃の悪性新生物に分類されるものであるといえることが必要であり、悪性であるといえるためには、ICD-O2上、新生物の形態の形状コードが/3に当たることが必要である。

 前提事実(略)によれば、GISTという用語、概念自体、ICD-10やICD-O2上も記載がない。もっとも、GISTをICD-10やICD-O2に記載のある胃の非上皮性腫瘍(略)に含めて考え得るから、本件GISTがICD-10やICD-O2上、悪性の胃の非上皮性腫瘍に当たるかを念のため検討する。』

『まず、前提事実(略)のとおり、ICD-10もICD-O2も、GISTという用語、概念自体の記載がない以上、ICD-10やICD-O2の記載から、直ちに本件GISTが悪性であるかを判断することはできない。

 もっとも、前提事実(略)によれば、ブルーブックは、WHOが刊行する教科書シリーズであり、WHOは、ICD、ICD-Oの作成に当たり、ブルーブックを参照していることが認められるから、ICD-10やICD-O2の記載内容の解釈に当たっては、ブルーブックの記載内容を参照することが合理的である。』
(略)

『そうすると、ブルーブックの基準に照らせば、GISTであるということのみでは悪性であるとは認めがたい。また、GISTには悪性のものが含まれるものの、前提事実(略)のとおり、本件GISTは、予後グループ2に該当するから、本件保険契約締結時及び本件GISTの診断時のいずれを前提としても、ブルーブックの基準に照らして悪性であると認めるに足りない。

 以上のとおりであり、GISTの悪性の判断基準がICD-10やICD-O2上明らかでなく、その解釈上参照すべきブルーブックの基準に照らしても本件GISTが悪性であると認めがたいから、本件GISTが、ICD-10やICD-O2上、悪性の胃の非上皮性腫瘍に当たるとも認めるに足りない。』
(略)

『したがって、本件GISTが本件保険契約上「がん」に当たるとは認めるに足りない。 以上のとおり、Xの請求は理由がない。』

4.検討

(1)がん保険・医療保険における疾病の定義
保険法には疾病に関する定義規定がないため、がん保険、医療保険、入院特約などにおける疾病の定義は、保険約款で定義されており、本件がん保険契約においては、ICD-10およびICD-O2により定義がなされています。この点、いつの時点のICDおよびICD-Oにより疾病を判断すべきかが本事例のように訴訟の争点となることがあります(潘阿憲「医療保険の諸問題」『ジュリスト』1522号43頁)。

(2)本判決について
本事例においては、ICD-10およびICD-O2によれば胃GISTが「がん」に該当しないことは明らかですが、裁判所は、胃GISTが保険金の支払い対象である非上皮性腫瘍に該当する可能性があるとして、検討を行っていることが本判決の特色の一つといえます。また、本判決は、ICD-10およびICD-O2だけでなくブルーブックの記述についても詳細な検討を行っていますが、この点も本判決の特色の一つです。(なお、胃GISTが争われた類似の裁判例としては、他に東京地判令2.3.27・D1-law判例体系29060066があります。)

(3)情報提供義務・約款の不当条項の問題
なお、このようながんの定義は、一般人が日常用語で理解しているがんとは食い違いがあり、医師の診断における患者への説明とも食い違うことがあり得るとの指摘がなされています。そのため、「保険技術的にはがんを厳密に定義する必要があるとしても、一般的な消費者の理解とは大きく食い違うような定義であるとすれば、契約締結時における情報提供が不十分であることにより対象外とする定義が定型約款における不当条項として評価される可能性を認めるべきである」との指摘がなされています(山下友信『保険法(下)』225頁)。

したがって、保険会社においては、法的リスクを回避する観点から、『ご契約のしおり―定款・約款』のしおり部分などにおいて、疾病の定義について一般消費者の理解と食い違うような疾病の取扱いについて説明を行う等、情報提供義務を尽くす必要があるように思われます(保険業法294条、消費者契約法10条、民法548条の2第2項)。

■参考文献
・金融・商事判例1676号(2023年10月15日号)51頁
・ 山下友信『保険法(下)』225頁
・潘阿憲「医療保険の諸問題」『ジュリスト』1522号43頁

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1.はじめに

金融法務事情2223号(2023年12月10日号)64頁に、損害保険会社の法人向けの傷害総合保険契約に関して、入院保険金等は会社ではなく従業員に支払われるべきとされた興味深い裁判例(大阪高判令5.4.14、控訴棄却・確定)が掲載されていました。これは損保業界の実務に影響がありそうな裁判例なので見てみたいと思います。

2.事案の概要

(1)Y(砕石業の会社)は平成27年5月に損害保険会社との間で全役員および従業員を被保険者とする傷害総合保険契約(本件保険契約)を締結した。本件保険契約においては入院保険金・通院保険金・手術保険金等の保険金請求権者は被保険者もしくはその父母、配偶者または子と保険約款に規定されていた。Yは入院給付金等はYが受け取る趣旨の法人契約特約が本件保険契約には付加されていたと主張しているが、この点については本件訴訟で争われている。

(2)Xは従業員としてY社で働いていた。平成27年9月、YはXに80万円を貸し付けて、Xがこの貸金の分割返済を怠ったときは強制執行を行う旨の公正証書を作成した。Xは平成27年9月25日、就労中に労災事故により受傷し、入院して手術を受けるなどした。そしてYは平成28年9月に損害保険会社から本件保険契約に基づき、入院保険金19万円、休業保険金90万円、手術保険金5万円など合計114万円の保険金(本件保険金)を受取り、またXはその旨を損害保険会社から通知を受けた。

(3)その後、Xは上記貸金をYに返済しないまま他社に転職したため、Yは令和3年4月に上記公正証書に基づき、Xの転職先の会社から支払われる給与を差押えた。それに対してXは、社簡易裁判所に請求異議の訴えを提起し、本件保険金はXが取得すべきものであるにもかかわらずYが保持しているため、XはYに対して引渡請求権または不当利得返還請求権を有しており、これを自働債権として上記貸金債権と相殺したと主張して、上記公正証書に基づく強制執行は認められないとの判決を求めた。社簡易裁判所は本件訴訟を神戸地裁社支部に移送した。神戸地裁社支部(神戸地裁社支部令4.10.11)はXの主張を認めたためYが控訴したのが本件訴訟である。

3.高裁判決の判旨(控訴棄却・確定)

「そうである以上、Yが保険会社から本件保険契約に基づき本件保険金を受け取った場合、当該受取行為は、被保険者である被控訴人からの委託に基づくものでなくとも、同人のためにするものとして、事務管理に該当し、受け取った本件保険金は、特段の事情がない限り、同人に引き渡さなければならず(民法701条、646条1項)、Yがこれを引き渡さない場合には、本件保険金は不当利得になると解される。」

「Yは、当審においても、本件保険契約には法人契約特約(法人を保険契約者とし、その役員、従業員を被保険者とする保険契約において、死亡保険金受取人を保険契約者である法人とした場合に、後遺障害保険金、入院保険金、手術保険金、通院保険金についても死亡保険金受取人に支払う特約)が付されており、したがって、本件保険金の受給権者はYであるから、Yに不当利得が生じる余地はない旨主張する。  しかし、本件保険契約に係る「傷害総合保険契約更改申込書」(乙3)を子細にみても、本件保険契約について、事業者費用補償特約は付されているものの、Yが主張する、法人契約特約が付されていることを明確に示す記載は見当たらない。(略)」

「結局、本件保険契約においては、Yが主張する法人契約特約が付されていたとまでは認めることができない。なお、仮に、本件保険契約において法人契約特約が付されていたとしても、同特約は、本件保険契約の内容や、本件保険金がXの労災事故に起因して給付された入院保険金、通院保険金等であることからしても、保険法8条の規定に反する特約で被保険者であるXに不利なものとして、同法12条により無効であるというべきである。

4.検討

(1)本判決は、とくに「なお、仮に、本件保険契約において法人契約特約が付されていたとしても、同特約は、本件保険契約の内容や、本件保険金がXの労災事故に起因して給付された入院保険金、通院保険金等であることからしても、保険法8条の規定に反する特約で被保険者であるXに不利なものとして、同法12条により無効であるというべきである。」と判示している部分が重要であると思われます。

保険法
(第三者のためにする損害保険契約)
第8条 被保険者が損害保険契約の当事者以外の者であるときは、当該被保険者は、当然に当該損害保険契約の利益を享受する。

(強行規定)
第12条 第八条の規定に反する特約で被保険者に不利なもの及び第九条本文又は前二条の規定に反する特約で保険契約者に不利なものは、無効とする。
すなわち、保険法8条は、損害保険契約において被保険者が保険契約者と別人である場合には、当該被保険者は保険金を受け取ると規定しており、同法12条は同法8条に反する特約で被保険者に不利なものは無効となると規定しています。これらの条文を受けて、本判決は、法人契約特約は、「本件保険契約の内容や、本件保険金がXの労災事故に起因して給付された入院保険金、通院保険金等であることからしても、保険法8条の規定に反する特約で被保険者であるXに不利なものとして、同法12条により無効である」と判示しているのです。

(2)損害保険会社各社から法人向けの傷害総合保険が販売されているところ、その保険金について、これを受け取った企業が社内の補償規程に基づいて従業員に支払えば問題は起きませんが、補償規程がないとか、企業が被った損害にこの金銭を充当するなどして従業員に保険金を支払わずトラブルとなるケースがあるとされています。

この点に関しては生命保険会社各社の団体定期保険(全員加入型のいわゆる「Aグループ」の団体定期保険)においても約30年前に同様の法的トラブルが多発し、最高裁判決(最判平18.4.11民集60巻4号1387頁)などが出され、生命保険会社各社は主契約の保険金は従業員の遺族に、ヒューマンバリュー特約の保険金は法人に支払うとする「総合福祉団体定期保険」を創設するなどの実務対応を行いました。

これに対して、本件判決は損害保険分野における法人向け傷害総合保険の入院給付金等を会社が受け取るべきなのか、従業員が受け取るべきなのかについて訴訟となり、保険法8条、12条に基づいて従業員が受け取るべきと裁判所が判示しためずらしい裁判例であると思われます(金融法務事情2223号66頁コメント部分)。

(3)この大阪高裁判決を受けて、損害保険会社各社は、とくに法人契約特約などの保険約款の保険金を受け取るべき者の規定について見直しを行うなどの対応が必要になると思われます。

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■参考文献
・金融法務事情2223号(2023年12月10日号)64頁
・山下友信『保険法(上)』345頁
・山下友信・竹濱修・洲崎博史・山本哲生『有斐閣アルマ保険法 第3版補訂版』236頁
・出口正義・平澤宗夫『生命保険の法律相談』(学陽書房)314頁

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『ジュリスト』1590号(2023年11月号)130頁に小野寺千世先生の「銀行による外貨建て変額保険勧誘の違法性が否定された事例」(東京地判令2.1.31・請求棄却・控訴)が掲載されていたので、変額保険訴訟について考えてみました。

1.事案の概要
本件は被告銀行Y1の従業員Y2の勧誘により訴外生命保険会社Aとの間で変額保険契約を締結した原告Xが、上記勧誘には書面交付義務違反、説明義務違反ないし適合性原則違反等があったと主張して、Y1およびY2に対して不法行為および使用者責任に基づく損害賠償約303万円の支払いを求めた事案である(民法709条、715条、会社法350条)。

本件でXが勧誘された保険(以下「本件保険」)は、通貨選択一般勘定移行型変額終身保険すなわち外貨建ての変額保険であり、移行日までの運用期間、外貨建てで振り込まれた一時払保険料の全額が特別勘定で運用され、その運用成果により死亡保険金および解約返戻金が変動するものである。そのため移行日前に保険契約を解約した場合、その運用成績によっては解約返戻金額が一時払保険料の金額を下回るリスク(元本割れのリスク)があるが、移行日までに解約をしなかった場合には一時払保険料の額が解約返戻金の最低金額として保証されるものであった。また死亡保険金も最低死亡保険金額が保障されるものであった。

Xは昭和29年生まれで不動産管理会社Bの代表取締役であり、およそ3400万円の資産を有していた。Xは平成27年8月26日、生命保険会社Aとの間で、保険契約者および被保険者をX、契約通貨を米ドル、移行日までの運用期間を20年として本件保険を内容とする保険契約(以下「本件保険契約」)を締結し、一時払保険料8万1000米ドル(当時の為替レートで約1004万円)を支払った。

その後の約3年後、Xは本件保険契約を平成30年9月現在で解約した場合の解約返戻金額は約833万円であり、一時払保険料約1004万円との差額である約171万円に相当する損害を被り、100万円相当の精神的苦痛を受けたとして、弁護士費用約32万円を加えた合計約303万円の損害を被ったとして、Y1およびY2には説明義務違反、適合性原則違反などがあったとして損害賠償を求めて訴訟を提起したのが本件訴訟である。

2.本判決の判旨(請求棄却・控訴)
判旨1 契約締結前の書面交付義務違反ないし説明義務違反について
ア Xは、本件勧誘の際、Y2がXに対して本件パンフレットを交付するにとどまり、クーリング・オフを含め、本件保険の内容について具体的な説明をしなかった旨主張し、X本人もこれに沿う供述等をする…。これに対し、Yらは、Y2がXに対して本件パンフレット、保険設計書、契約締結前交付書面…等を交付し、当該各書面に基づき具体例も交えて本件保険の内容及びリスク等を説明した旨主張し、Y2本人もこれに沿う供述等をする…。

イ (ア)そこで、X本人及びY2本人の前記供述等の信用性について検討するに、X本人の前記供述等は、そもそも…契約締結前交付書面等によって本件保険について説明を受け、その内容を確認し理解した旨や『契約締結前交付書面(契約概要/注意喚起情報)』、『ご契約のしおり・約款』及び『特別勘定のしおり』を受領したことを認める旨の記載がある書面にXが署名又は署名及び押印をしていること…と明らかに矛盾する。
(略)

ウ そうすると、Y2は、本件保険契約締結以前の段階で、Xに対し、契約締結前交付書面等の各書面を交付するとともに、当該各書面に基づき、本件保険について元本割れのリスクや為替リスクなどがあること…など、本件保険の内容等について具体的に説明したものと認めるのが相当であるから、本件勧誘に契約締結前の書面交付義務違反ないし説明義務違反があったということはできない。」

判旨2 適合性原則違反について
ア 保険の勧誘が適合性の原則から著しく逸脱していることを理由とする不法行為の成否に関し、顧客の適合性を判断するに当たっては、当該保険の特性を踏まえて、これとの相関関係において、顧客の投資に関する経験や知識、投資意向、財産状態等の諸要素を総合的に考慮する必要があるというべきである。

イ 本件保険は、解約返戻金が一時払保険料の額を下回る危険性を有し、為替相場の変動も受けるから、当該保険契約の締結により損失が生ずるおそれがある商品であるということができる。しかしながら、本件商品においては、死亡保険金として支払いを受ける場合及び移行日以後に解約返戻金として支払いを受ける場合には、米ドル建てで支払った一時払保険料の額が最低でも保証されている。…契約内容は、投資に関する知識が豊富でない者でも容易に理解できるというべきである(略)。

ウ Xに係る諸事情についてみると、…Xは、…投資等の経験を有していなかったものの、B社の代表取締役としてその事業についての経営判断等も常日頃からしており、米国及び欧州の為替についての知識も有していたこと、値上がり益を追求し、比較的積極的な運用をする意向を有していたこと及び少なくとも3400万円程度の金融資産を有していたことがそれぞれ認められる。 以上を総合すると、Xが前記イの各リスクを理解するための知識や認識に欠けていたということはできず、本件保険がXの投資意向に反していたともXの財産状態に照らして著しく不相当であったとも認められない。」


3.検討
(1)本判決について
(ア)説明義務
本件においてXは、Y2が本件パンフレットを交付するにとどまり、クーリング・オフを含め本件保険の内容について具体的な説明を行わなかった旨を主張するのに対して、Yらは、Xに対して本件パンフレットのほか、保険設計書、契約締結前交付書面、ご契約のしおり・約款及び特別勘定のしおりを交付し、当該各書面に基づき具体例も交えて本件保険の内容およびリスク等を説明した旨を主張しています。

この点、裁判所の本判決の判旨1は、契約締結前交付書面等によって本件保険について説明を受け、その内容を確認し理解した旨や当該各書面を受領した旨の記載がある書面にXは署名または署名および押印していることなどを事実認定し、Y2からXに契約締結前交付書面等が交付され、本件保険の契約内容やリスクなどについて説明がなされたと認定し、Yらの説明義務および書面交付義務は尽くされていたとしています。この判旨は妥当であると思われます。

(イ)適合性原則
適合性原則について本判決の判旨2は、従来の裁判例(東京地裁平成25・8・28判タ1406号316頁など)を踏襲し、「当該保険の特性を踏まえて、これとの相関関係において、顧客の投資に関する経験や知識、投資意向、財産状態等の諸要素を総合的に考慮する必要がある」との判断枠組みを示した上で判断を行っています。

判旨2は、本件保険はリスクのある商品ではあるが、投資に関する知識が豊富でない者であっても理解でき、必ずしも元本割れリスクが大きいものとはいえないと判示しています。また、Xは会社の取締役であり日常で経営判断などを行っていること、米国や欧州の為替について知識を有していること、3400万円程度の資産を有していること等を認定し、Yらの説明に適合性原則違反はなかったと判示しています。そして結論として本判決は、Xの請求を棄却しています。本判決は妥当であると思われます。

(2)説明義務に関する学説
学説は、保険契約の重要な内容については保険会社および保険募集人は説明義務を負い、この義務に違反した場合には不法行為として損害賠償責任を負うということは判例法理として確立しているとします。

説明義務において説明すべき事項については、一般論は必ずしも明らかではないものの、保険会社、保険募集人の責任が認められている事案から見れば、当該事項の説明があったとすれば当該保険契約は締結しなかったか、または当該保険契約の内容のままでは締結しなかったであろうといえる場合であるといえるような事項であるということができるとしています。

保険業法その他の法令では、2014年保険業法改正前でも情報提供規制は整備されていたものであって(保険業法300条1項1号、同100条の2)、その規律を遵守していたとすれば保険契約者一般にとって重要な事項は各種文書の交付等により情報提供されていたはずであり、説明義務違反が生じることはあまり考えられないとしています(山下友信『保険法(上)』274頁、275頁)。

(3)保険実務上の留意点
本判決を含む裁判例は保険会社および保険募集人の説明義務について、保険契約締結までに「ご契約のしおり・約款」や契約締結前交付書面などの各書面が交付されていたかを非常に重視しています。そのため保険会社等はこれらの各書面の交付を必ず行い、申込書の各書面の受領を確認した旨の署名・押印欄に必ず署名・押印をいただくことが求められます。

また、2014年保険業法改正以降は、保険会社等には従来の意向確認義務だけでなく意向把握義務も課せられるため(保険業法294条の2)、保険会社等は、この意向把握において、顧客が自らの保険ニーズをどのように述べたか、保険募集人はどのように説明したか等を折衝記録として残すことが求められると思われます。

■参考文献
・小野寺千世「銀行による外貨建て変額保険勧誘の違法性が否定された事例」『ジュリスト』1590号(2023年11月号)130頁
・『金融法務事情』2155号(2021年2月10日号)77頁
・山下友信『保険法(上)』274頁、275頁
・松本恒雄「変額保険の勧誘と説明義務」『金融法務事情』1407号20頁
・大高満範『生命保険の法律相談(青林法律相談23)』240頁

■関連するブログ記事
・変額個人年金等の勧誘の際における金融機関の説明義務

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