07ef3973bedc00679e83f9ee1bbeb034-450x401
東京オリンピック・パラリンピックの開会式・閉会式の楽曲を担当するミュージシャンの小山田圭吾氏が、学生時代に障害者の同級生に長年にわたっていじめをしていたことを過去に雑誌のインタビューで武勇伝的に自慢していたことがここ最近、連日のように炎上しています。

ROCKIN'ON JAPAN1996年1月号では、「障がい者の生徒たちを跳び箱の中に閉じ込める」「マットレスでぐるぐる巻きにした上に飛び蹴りする」「排泄物を食べさせる」「服を脱がせ裸で歩かせる」「自慰行為を強要する」「殴る・蹴る等の傷害」などを行っていたことを語っていたとのことです。

小山田氏はこれを武勇伝として雑誌に語っているようですが、もしこれが事実であれば、これは暴行罪、傷害罪、脅迫罪、強要罪、逮捕・監禁罪などに該当する重大な犯罪行為です。被害者の方々が何年間も継続的に受けた被害は、身体の傷害だけでなく、被った精神的苦痛は甚大なものだったのではないでしょうか。小山田氏は7月16日にTwitterに謝罪文を掲載したとのことで、事実であると認めた格好です。

ところで、不可解なのは、小山田氏の障害者へのこのような長期間にわたる苛烈な犯罪行為がネット上で連日のように炎上しているにもかかわらず、五輪組織委員会などは小山田氏の擁護に必死なことです。

7月19日にも、加藤官房長官が「小山田氏の行為は許されるものではない」と記者会見で述べたにもかかわらず、組織委員会のスポークスマンは記者会見で「「ご本人は謝罪文を掲出した。我々は現在は高い倫理観を持って創作活動するクリエーターと考えている。開会式準備における貢献は大きなもの」と、小山田氏を留任することを強調したとのことです。
・小山田圭吾氏の留任 組織委があらためて強調「貢献は大きなもの」|Yahoo!ニュース

今年2月には、五輪組織委員会の会長であった森喜朗氏が、「女性がたくさん入っている理事会の会議は時間がかかります」等と女性差別発言をしたことの責任をとって辞任しました。

森氏の女性差別発言も非常に時代錯誤なひどい差別発言ですが、これは言葉によるものです。一方、小山田氏の行為は、何年間も継続した陰湿で激烈な暴行罪、傷害罪、脅迫罪、強要罪、逮捕・監禁罪などに該当する重大な犯罪行為であり、森氏の発言よりも悪質です。森氏が会長を辞任するのは当然として、小山田氏に対しては辞任を求めるどころか、組織委員会は更迭などの厳しい懲戒処分を行うべきなのではないでしょうか。

東京五輪はオリンピックだけでなく、障害者の選手のパラリンピックも開催されるのに、障害者などへの暴行・傷害などの犯罪行為を組織委員会は放置するスタンスなのでしょうか?組織委員会のメンバー達の人権感覚が強く疑われる状況です。

この点、JOCのウェブサイトにあるオリンピック憲章をみると、オリンピック憲章は冒頭の「オリンピズムの基本原則」の部分で、「個人の尊重」「あらゆる差別の禁止」等の非の打ち所がない大変立派な理念を掲げています。また、同憲章は、「スポーツをする者は教育的な模範」となるべきことや、「スポーツをする者の社会的責任」についても述べています。

オリンピック憲章1
オリンピック憲章2
(JOCサイトより)

・オリンピック憲章|JOC

しかし、障害者に対して長年にわたり暴行・傷害などを行ってきた許しがたい卑怯者の小山田氏は、このオリンピック憲章の精神の対極にある人物なのではないでしょうか。

このような人物をオリンピック・パラリンピックの要職につけたままで、組織委員会やIOCなどは、障害者の選手や、社会一般の障害者の方々に対して、オリンピック・パラリンピック開催の意義を語れるのでしょうか? あるいは、五輪組織委員会やIOCにとっては、オリンピック憲章はただの張子の虎の飾りなのでしょうか? やはりバッハ氏や橋本聖子氏、山下泰裕氏、菅首相などとしては、IOCやテレビ局、電通、スポンサー企業などがカネ儲けさえできれば、オリンピックの精神やスポーツマンシップの精神などはやはりどうでもいいのでしょうか?

オリンピックまで1週間を切った状況のため、組織委員会やIOCなどは、開催の準備のためにこれ以上の負担の増加は無理であるという思いがあるのかもしれません。しかし、小山田氏を五輪スタッフの要職に留任させることは、オリンピック・パラリンピックの主役の一人である障害者の方々を侮辱する重大な人権侵害です。組織委員会は、小山田氏の楽曲を開会式で利用することはスケジュールの関係から無理としても、小山田氏自身を更迭するなど、懲戒処分を実施しなければ、「個人の尊重」や「あらゆる差別の禁止」等の理念を掲げる東京オリンピック・パラリンピックを開催することは不可能なのではないでしょうか。

もちろん、本ブログは、以前より新型コロナが日本と世界で大流行が続くなかでの東京オリンピック・パラリンピックの開催には反対してきました。この小山田圭吾氏の件で、多くの参加選手や参加国などからボイコットが起きて、もし東京オリンピック・パラリンピックが事実上中止となれば、それは世界や日本のためであると思われます。

■追記(7月19日)
報道によると、7月19日夜、小山田氏が組織委員会などに対して辞任を申し入れ、組織委員会はそれを承諾したとのことです。
・小山田圭吾さん 東京五輪作曲陣から辞任 大会組織委が正式発表|NHK

BBCなども小山田氏の件を報道しています。
・Tokyo Olympics: Composer Keigo Oyamada resigns over bullying at school|BBC

■関連する記事
・西村大臣の酒類販売事業者や金融機関に酒類提供を続ける飲食店との取引停止を求める方針を憲法・法律的に考えた
・西村大臣の金融機関や酒類販売事業者への要請を行政法から考えた-行政指導の限界
・新型コロナ・尾見会長「五輪何のためにやるのか」発言への丸川五輪大臣の「別の地平の言葉」発言を憲法的に考えた
・菅首相の「東京オリンピックの主催は私ではない」発言を法的に考えた-国家の主権
・川渕三郎氏の東京オリンピックに関するツイートが戦時中の政府のように根性論の思考停止でひどい件
・「幸福追求権は基本的人権ではない」/香川県ゲーム規制条例訴訟の香川県側の主張が憲法的にひどいことを考えた