1.ビッグモーターの保険代理店登録が取消へ
11月14日の日経新聞などの報道によると、鈴木俊一金融相は14日の閣議後会見で、中古車販売大手ビッグモーターの保険金不正請求問題を巡り、同社の保険代理店登録を11月末に取り消す方針を明らかにしたとのことです。鈴木大臣は「(立ち入り検査を通じて)適正な保険募集を確保するための体制整備が行われていないことが確認された」と述べたとのことです。
・ビッグモーター、11月末で代理店登録取り消し 金融相|日経新聞
2.保険業法
「ほけんの窓口」など大型の乗合代理店の登場など保険業界の多様化を受けて、保険業法は平成28年(2016年)に大きな改正が行われました。その改正の大きな柱の一つとして、保険代理店に対して保険募集に関する体制整備義務が新設されました(保険業法294条の3第1項)。
この体制整備義務を充足するために、保険代理店は法令遵守規程、保険募集管理規程、顧客情報管理規程、顧客サポート等管理規程、外部委託管理規程、内部監査規程などを整備し、PDCAサイクルを有効に実施する必要があります(保険業法施行規則227条の7、監督指針Ⅱ‐4-2-9(8))。
ところが報道によると、ビッグモーターはわざと顧客の自動車を壊して損害保険会社に保険金の過大な不正請求を行う取扱いが横行していたとのことであり、法令遵守規程などがまったく形骸化していたと思われ、金融庁はこれを保険代理店の体制整備義務違反(法294条の3第1項)と認定したものと思われます。
そして保険代理店の体制整備義務の状況に問題があると認められた場合には、金融庁は必要に応じて報告徴求や立入検査を行い(保険業法305条)、重大な問題が認められるときには行政処分を行うことになります(同法306条、307条)。
すなわち行政処分としては、①業務改善命令、②業務停止命令(以上同法306条)、③登録の取消し(同法307条1項)の3種類があるところ、金融庁はビックモーターについて、「その他保険募集に関し著しく不適当な行為をしたと認められるとき」(同法307条1項3号)に該当するとして、一番重い保険代理店の登録の取消の行政処分が相当であると判断したものと思われます。
■追記(2023年11月24日)
金融庁は11月24日にビッグモーターに対して、保険業法307条1項3号に基づいて保険代理店の登録の取消しの行政処分を行ったとのことです。
・株式会社ビッグモーター、株式会社ビーエムホールディングス及び株式会社ビーエムハナテンに対する行政処分について|金融庁
■参考文献
・吉田桂公『一問一答改正保険業法早わかり』48頁、52頁、56頁
・錦野裕宗・稲田行祐『銀行等代理店のための改正保険業法ハンドブック』74頁
■関連する記事
・ビッグモーターの虚偽の自動車保険契約の疑い等を保険業法的に考えた
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