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タグ:プライバシー

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(日本経済新聞の「月曜日のたわわ」の宣伝広告)

1.日経新聞のマンガ「月曜日のたわわ」宣伝広告が炎上
4月4日(月)の日本経済新聞のマンガ「月曜日のたわわ」の宣伝広告が、Twitterなどのネット上で、「「公共の場所」としての新聞広告にこのような表現はけしからん」とフェミニスト・社会学者などの方々から大きな批判が起き、賛否両論の「炎上」となっています。

ところで、電車の中の宣伝アナウンス(車内広告)が、そのような宣伝を聞きたくない乗客の自由(権利)を侵害するものか否かが争われた著名な憲法訴訟の「とらわれの聴衆」事件判決に照らしても、この日経の「日曜日のたわわ」の宣伝広告を批判している人々の主張は法律論としては、あまり正しくないように思われます。

2.「とらわれの聴衆」事件判決
「とらわれの聴衆」事件判決(最高裁昭和63年12月20日判決)は、大阪市の市営地下鉄の電車内の「次は〇〇前です」「〇〇へお越しの方は次でお降りください」という商業宣伝広告が、そのような商業宣伝広告を聞きたくない個人の人格権の侵害であるとして争われたものです。最高裁は、市営地下鉄の宣伝広告は不法行為または債務不履行との関係で違法とはいえないとしてこの訴えを退けています。

・最高裁判所第三小法廷昭和63年12月20日判決(昭和58(オ)1022 商業宣伝放送差止等請求事件)|裁判所

本判決にはパブリック・フォーラム論などで有名な伊藤正己裁判官の補足意見がつけられていますが、この補足意見によると、最高裁はいわゆる受忍限度論(「社会生活を営む上で我慢するべき限度」が受忍限度(我慢すべき限度)であり、これを超えると加害者側が違法となるが、これを超えない場合、被害者側は受忍をしなければならないとする考え方)で本件訴えを退けたようです。

そしてこの伊藤裁判官の補足意見は、「日常生活において、見たくないものを見ず、聞きたくないものを聞かない自由(権利)」について論じていることが、今回の日経の新聞広告との関係で参考になります。

3.伊藤正己裁判官の補足意見
「とらわれの聴衆」事件判決の伊藤正己裁判官の補足意見(概要)
『人は日常生活において見たくないものを見ず、聞きたくないものを聞かない自由を有している。これは、個人が他者から自己の欲しない刺激によって心の静謐を乱されない法的な利益であり、広い意味でのプライバシー権であり、人格的利益として幸福追求権(憲法13条)に含まれる。

『しかし、他者から自己の欲しない刺激によって心の静謐を乱されない権利も、社会に存在する他の利益との調整が図られなければならず、対立する利益(そこには経済的自由権も当然含まれる)との比較考量により、その侵害を受忍しなければならないこともありうる。

『すでにみたように、他者から自己の欲しない刺激によって心の静謐を乱されない権利は広義のプライバシーの権利と考えられるが、プライバシーは個人の居宅などと異なり、公共の場所においてはその保護が希薄とならざるを得ず、受忍すべき範囲が広くなることを免れない。したがって、一般の公共の場所にあっては、本件のような放送はプライバシーの侵害の問題を生じるとはいえない。』

このように伊藤裁判官の補足意見は、「日常生活において見たくないものを見ず、聞きたくないものを聞かない自由」は、「個人が他者から自己の欲しない刺激によって心の静謐を乱されない法的な権利(自由)」であり、「広い意味でのプライバシー権」であって、「人格的利益」として幸福追求権(憲法13条)に含まれるとしています。

しかし同補足意見は、この他者から自己の欲しない刺激によって心の静謐を乱されない権利も社会の対立する他の利益(権利)との比較衡量による調整が図られなければならないとし、この権利がプライバシー権の一種であることから、個人の居宅などと異なり、公共の場所ではその保護が希薄とならざるを得ず、受忍すべき範囲は広くなるとしています。

3.日経新聞の「月曜日のたわわ」の新聞広告を考える
この最高裁にかんがみると、日経新聞の「月曜日のたわわ」の新聞広告については、フェミニストや社会学者などの人々が、そのような新聞広告を見たくないと考え、そのような新聞広告は自らの人格権の侵害であるとすることは、「日常生活において見たくないものを見ず、聞きたくないものを聞かない権利」の一つに含まれ、「個人が他者から自己の欲しない刺激によって心の静謐を乱されない法的な権利(自由)」であり、「広い意味でのプライバシー権」であって、「人格的利益」として幸福追求権(憲法13条)に含まれると解される余地があります。

しかし、この「日常生活において見たくないものを見ず、聞きたくないものを聞かない権利」(憲法13条)も無制限なものではなく、社会に存在する他の権利との比較衡量による調整が必要となります。

「とらわれの聴衆」事件は市営地下鉄という公的機関による宣伝広告でしたが、日経新聞の件は、日経新聞は民間企業であり日経新聞を購読するか否かは個人の判断に委ねられており、マンガ「月曜日のたわわ」の漫画家も出版社も民間人であり民間企業であるので、これらの民間人・民間企業の営業の自由(憲法22条、29条)や表現の自由(営利的な表現の自由、憲法21条1項)もより重要な人権(経済的自由権・精神的自由権)となります。(なおそのため、フェミニスト等の人々の日経新聞の宣伝広告は「公共の場所」であるとの議論の前提にもやや疑問が残ります。)

また、「とらわれの聴衆」事件で問題となったのは、電車内の車内アナウンスから逃れられない「とらわれの聴衆」の乗客でしたが、日経新聞の件では、読者はもしその宣伝広告が不快であると感じたのなら、その紙面の該当部分を閉じて見なければよいだけの話です。(あるいは日経新聞の購読を止めるなど。)

4.まとめ
したがって、日経新聞の「月曜日のたわわ」の新聞広告を「公共の場所である新聞広告にふさわしくない」と批判しているフェミニストや社会学者などの方々には「日常生活において見たくないものを見ず、聞きたくないものを聞かない権利」(憲法13条)があるとしても、日経新聞や「月曜日のたわわ」の漫画家や出版社などの権利との比較衡量をすると、受忍限度の範囲内にとどまり、「月曜日のたわわ」の新聞広告は不法行為および債務不履行との関係で違法でないということになると思われます。

■追記-マンガ・アニメ等の表現の自由と「見たくないものを見ない自由」・SDGs
なお近年、とくにフェミニストや社会学者の人々が、女性の「見たくないものを見たくない権利」を主張し、街の宣伝広告やポスターなどを規制する条項を東京都の条例などに盛り込むべきであるとの議論がなされているとの話もあります。

あるいは2010年頃にはマンガ・アニメ等の表現規制のために、東京都の青少年保護条例に「非実在少年」の条項を盛り込もうという議論も行われ、2021年の衆院選挙においては、日本共産党が「非実在児童ポルノ」という概念を持ち出して、マンガ・アニメなどの表現の自由規制を行うことを公約に掲げ議論を巻き起こしました。さらに近年、コンビニで成年向けの雑誌などがコンビニの「自主規制」により撤去されている問題も発生しています。

このような問題に関しては、表現の自由(憲法21条1項)だけでなく、この「とらわれの聴衆」事件最高裁判決の「見たくないものを見ない自由」の伊藤正己裁判官の補足意見も大いに参考になるものと思われます。フェミニズムの人々は女性の「見たくないものを見ない自由」を声高に主張しますが、それは法的権利(憲法13条)であるとしても絶対無制限なものではなく、例えば漫画家や出版社、読者などの表現の自由や情報を受け取る自由(21条1項)、営業の自由(22条、29条)などとの調整が重要なのです。(これはフェミニズムや社会学者の人々が主張する平等(憲法14条1項)についても同様です。)

なお、フェミニズムや社会学者の方々は、しばしばSDGs(Sustainable Development Goals)を根拠としてジェンダー平等などの主張を行いますが、SDGsは2015年に国連総会で採択された2035年までの国際的な「目標」であり法的義務を持つものではありません。仮にSDGsが国際条約的な意味を持つとしても、国際条約は憲法(日本国憲法など)より下位の法規範です(憲法98条1項、2項)。そのため、SDGsの掲げるジェンダー平等等が憲法の定める表現の自由や営業の自由などの基本的人権より優越する価値理念だという考え方は間違っています。また、SDGsの目標16(平和と公平)のなかのターゲット16-3には「法令遵守」が盛り込まれています。そのためジェンダー平等などの理念のためには表現の自由や営業の自由、平等などの憲法の定める基本的人権は制限されるとのフェミニズムや社会学者等の方々の主張はやはり正しくありません。

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■参考文献
・渡辺康行・宍戸常寿・松本和彦・工藤達朗『憲法1基本権』278頁
・野中俊彦・中村睦男・高橋和之・高見勝利『憲法1 第5版』273頁
・紙谷雅子「車内広告放送と「とらわれの聴衆」」『憲法判例百選1 第7版』44頁
・最高裁判所第三小法廷昭和63年12月20日判決(昭和58(オ)1022 商業宣伝放送差止等請求事件)|裁判所
・SDGsとは?|外務省

■関連する記事
・日本共産党の衆院選公約の「非実在児童ポルノ」政策は憲法的に間違っている
・「幸福追求権は基本的人権ではない」/香川県ゲーム規制条例訴訟の香川県側の主張が憲法的にひどいことを考えた
・「表現の不自由展かんさい」実行委員会の会場の利用承認の取消処分の提訴とその後を憲法的に考えた-泉佐野市民会館事件・思想の自由市場論・近代立憲主義
・デジタル庁「教育データ利活用ロードマップ」は個人情報保護法・憲法的に大丈夫なのか?
・スーパーシティ構想・デジタル田園都市構想はマイナンバー法・個人情報保護法や憲法から大丈夫なのか?-プロファイリング拒否権・「デジタル・ファシズム」



















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面接
1.朝日新聞の「ウェブ面接で「部屋着見せて」 就活セクハラ、対策は」
2021年8月22日付の朝日新聞の「ウェブ面接で「部屋着見せて」 就活セクハラ、対策は」という記事がネット上で話題となっています。
・ウェブ面接で「部屋着見せて」就活セクハラ、対策は|朝日新聞

■追記(2021年12月22日)
朝日新聞の2021年12月12日付の記事「(フォーラム)裏アカ調査、どう考える」が、河合塁・岩手大学准教授(労働法)「企業側や委託を受けた調査会社が就活生のSNSの「裏アカ」などを調査することは、職業安定法違反のおそれがある」との趣旨のコメントを掲載したことを、このブログの下部に追記しました。

この記事によると、コロナ禍における就活のウェブ面接において、採用選考を行う企業の人事部やリクルーターなどが、就活生に対して「部屋着を見せて」「部屋の様子も見せて」などとセクハラ・パワハラ的な要求を行う事例が発生しているとのことです。

またツイッター上では、この問題に関連して、ウェブ面接において本棚の本などに関して企業の面接担当より「そのような本は当社にあなたが入社した際に何の役にたつの?」などと、採用選考と関係のない嫌がらせのような質問をされたなどの事例も投稿されています。

このような企業の人事部やリクルーターなどのウェブ面接での行為は、セクハラ・パワハラに該当するおそれがあり、また企業による就活生・求職者などに対するプライバシー権侵害として、そのような行為を行った企業は不法行為に基づく損害賠償責任を負う可能性もあります(民法709条、憲法13条)。

2.職業安定法5条の4・労働省告示平成11年第141号が禁止する個人情報の収集
大昔の最高裁の判決には、日本は民事上「私的自治の原則」があり、企業側には「採用の自由」があるので、企業側が求職者等の思想・信条に関する情報を収集することは違法ではないとする判決も存在します(最高裁昭和48年12月12日判決・三菱樹脂事件)。

しかしこの判決は当時においても求職者のプライバシーを軽視しすぎであるとの社会的批判を受け、就活生や求職者の採用選考に関する職業安定法は、立法により求人を行う企業などによる就活生や求職者の個人情報の収集に法規制を設けています。

つまり、職業安定法5条の4(求職者等の個人情報の保護)は、求人を行う企業、人材紹介会社、ハローワークなどは、就活生・求職者等の個人情報に関して、「個人情報を収集し、保管し、又は使用するに当たつては、その業務の目的の達成に必要な範囲内で求職者等の個人情報を収集し、並びに当該収集の目的の範囲内でこれを保管し、及び使用しなければならない。」と規定しています。

つまり、求人を行う企業や人材紹介会社などは、就活生・求職者などから無制限に個人情報を収集することは許されず、当該求人を行う企業の「業務の目的の達成に必要な範囲内」でのみ求職者等の個人情報を収集し保存・利用することが許されています。

そして求人を行う企業や人材紹介会社などは、個人情報保護法15条に基づき、就活生などから個人情報を収集する際の個人情報の利用目的を特定し、同法18条に基づきその利用目的などをあらかじめ就活生などに対して通知・公表しなければなりません。

また、この職業安定法5条の4に関連して厚労省は、労働省告示平成11年第141号(以下「労働省告示」という)という通達を出しています。
・職業紹介事業者、労働者の募集を行う者、募集受託者、労働者供給事業者等が均等待遇、労働条件等の明示、求職者等の個人情報の取扱い、職業紹介事業者の責務、募集内容の的確な表示等に関して適切に対処するための指針(平成11年労働省告示第141号)|厚労省

この労働省告示は「第4 法第5条の4に関する事項(求職者等の個人情報の取扱い)」において、つぎのように、①人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出身地その他社会的差別の原因のおそれのある事実②思想および信条③労働組合への加入状況などの個人情報の収集を禁止しています。

そして厚労省の「公正な採用選考の基本」は、求職者等の個人情報の収集に関して「(3)採用選考時に配慮すべき事項」においてさらに詳しい説明を行っています。
・公正な採用選考の基本|厚労省

厚労省「公正な採用選考の基本」
(3)採用選考時に配慮すべき事項
次のaやbのような適性と能力に関係がない事項を応募用紙等に記載させたり面接で尋ねて把握することや、cを実施することは、就職差別につながるおそれがあります。

<a.本人に責任のない事項の把握>
本籍・出生地に関すること (注:「戸籍謄(抄)本」や本籍が記載された「住民票(写し)」を提出させることはこれに該当します)
家族に関すること(職業、続柄、健康、病歴、地位、学歴、収入、資産など)(注:家族の仕事の有無・職種・勤務先などや家族構成はこれに該当します)
住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近郊の施設など
生活環境・家庭環境などに関すること

<b.本来自由であるべき事項(思想信条にかかわること)の把握>
宗教に関すること
支持政党に関すること
人生観、生活信条に関すること
尊敬する人物に関すること
思想に関すること
労働組合に関する情報(加入状況や活動歴など)、学生運動など社会運動に関すること
購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること

<c.採用選考の方法>
身元調査などの実施 (注:「現住所の略図」は生活環境などを把握したり身元調査につながる可能性があります)
・合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施


したがって、朝日の記事にあった、「部屋着を見せて」などの企業側の要求は、この「採用選考の基本」が禁止する「生活環境・家庭環境に関する情報の収集」に抵触する違法な要求と思われますし、「部屋のなかをよくみせて」などの要求も「住宅状況に関する情報の収集」や「生活信条に関すること」などの規定に抵触する違法なものと思われます。また、冒頭であげた、部屋のなかの本・雑誌・CDなどに関する企業側の質問なども、「採用選考の基本」が禁止する「購読新聞・雑誌・愛読書など」、「人生観、生活信条」、「思想」、「尊敬する人物」などに関する情報収集に該当し違法です。

3.調査会社による就活生などのSNSの「裏アカウント」の書き込み等の調査
さらに労働省告示は、求人を行う企業や人材紹介会社などは、就活生・求職者から個人情報を収集する場合には、本人から直接収集するか、または本人の同意の下で本人以外の者から収集しなければならないなど、個人情報の収集の方法も適切かつ公平な手段で行われなければならないと規定しています。

加えて厚労省の「公正な採用選考の基本」は、「身元調査」も望ましくないとしています。

そのため、求人企業の人事部が安易に調査会社・探偵会社等に委託して、TwitterなどSNSのアカウントや裏アカウント(「裏アカ」)を割り出してその書き込みの調査を行うなどのネット上の身元調査・素行調査を行う調査会社・探偵会社(「KCC 企業調査センター」(東京都千代田区飯田橋)や「ソルナ」(東京都中央区)など)の違法・不当なサービスを利用するであるとか、GithubやSNSなどネット上の個人情報を勝手に収集して違法・不当な人材紹介ビジネスを行っている、HackerBase JobsLAPRASなどのネット系・AI系人材紹介会社などを利用することは望ましくないと考えられます。

企業調査センター
(KCC企業調査センターのサイトより)

ソルナネットの履歴書
(ソルナのサイトより)

LAPRAS
(LAPRASのサイトより)

(2019年には就活生内定辞退予測データの売買を行っていたことが発覚した「リクナビ事件」が大きな社会的非難を受けました。この事件においては、個人情報保護委員会は、リクルートキャリアだけでなく、リクナビを利用していた求人企業のトヨタなどに対しても、「新しい事業を行うにあたって、社内で組織的に個人情報保護法などの法令を十分に検討していなかった」ことを理由の一つとして行政指導を行っています(個人情報保護委員会「株式会社リクルートキャリアに対する勧告等について」(令和元年12月4日))。)
・「株式会社リクルートキャリアに対する勧告等について」(令和元年12月4日)|個人情報保護委員会
・リクルートなどの就活生の内定辞退予測データの販売を個人情報保護法・職安法的に考える

なお、労働省告示は、上であげた個人情報の収集の制限に関して、「ただし、特別な職業上の必要性が存在することその他業務の目的の達成に必要不可欠であって、収集目的を示して本人から収集する場合はこの限りでない」とのただし書きを置いています。しかし労働法の実務書は、一般企業においてこのただし書きが適用される場合は少ないとしています(大矢息生・岩出誠・外井浩志『会社と社員の法律相談』53頁)。

加えて、求人を行う企業や人材紹介会社などは、収集した個人情報については滅失・毀損・漏えいなどが発生しないように安全管理措置を講じることが要求されます。加えて求人を行う企業や人材紹介会社などが就活生等の秘密に係る個人情報を知った場合はこれを厳重に管理しなければならないと規定されています。(そのため、2019年の就活生の内定辞退予測データの授受を行っていたリクナビ事件の、リクルートキャリアやトヨタなどはこの点にも違反しています。)

4.職業安定法5条の4・労働省告示平成11年第141号に違反があった場合
求人を行う企業や人材紹介会社等が、上でみたような職業安定法5条の4や労働省告示に違反があった場合、当該企業などは厚労省から改善命令を受ける場合があります(職業安定法48条の3)。また、当該企業が改善命令に違反した場合は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金の罰則を科せられる場合があり、これは両罰規定となっています(法65条7号、法67条)。

さらに、求人を行う企業や人材紹介会社などから上のような行為を行われた就活生や求職者などは、ハローワークや都道府県労働局、労基署などを通じて厚生労働大臣に申告を行い、厚生労働大臣に必要な調査や措置を行わせることができます(法48条の4)。

加えて、このような企業などによる違法な個人情報の収集などが行われた場合は、当該企業は不法行為に基づく損害賠償責任を負う法的リスクがあります(東京地裁平成15年5月28日判決・東京都警察学校・警察病院HIV検査事件など)。

5.まとめ
いずれにせよ、就活生や求職者に対して採用選考の場面で上のようなセクハラ・パワハラ的な行為、プライバシー侵害やSNSにおける「裏アカ」の調査など、違法な個人情報の収集、調査などを行うような企業は、もし就活生などが採用されたとしても、職場でセクハラ・パワハラや労働法違反、各種の法令違反などが横行しているコンプライアンス意識が欠けたブラック企業である可能性が高いのではないでしょうか。就活生や求職者の方々は、ウェブ面接などやSNS上の書き込みなどに関して上のような違法・不当な被害を受けた場合は、その企業への就職は辞退したほうがよいかもしれません。

■追記(9月25日)
朝日新聞が9月に企業の就活生のSNSの「裏アカ」の調査の問題を特集して取り上げていました。そのなかの、「「取り違えないといえるか」「社会の萎縮心配」 裏アカ調査に識者は」との記事は、個人情報保護法や知的財産権法などの専門家の岡村久道先生などのコメントが大変参考になります。
・「就活生の裏アカ特定、企業に報告…ネットから見える「ホントの姿」」|朝日新聞
・「取り違えないといえるか」「社会の萎縮心配」 裏アカ調査に識者は|朝日新聞

■追記(2021年12月22日)
朝日新聞の12月12日付の記事「(フォーラム)裏アカ調査、どう考える」のなかで、朝日新聞は労働法の河合塁・岩手大学准教授に取材し、おおむねつぎのような河合先生のコメントを掲載しています。
・(フォーラム)裏アカ調査、どう考える|朝日新聞

河合塁・岩手大学准教授(労働法)のコメント(概要)
『1999年に改正され新設された職業安定法5条の4とそれに関連する厚労省の通達(労働省告示平成11年第141号)は、採用選考で企業側が収集してはならない個人情報(出身地域、人種、民族、思想・信条、労働組合活動の有無、親の借金など)を列挙しているおり、厚労省の「公正な採用選考の基本」などのガイドラインは「身元調査」「望ましくない」としている。採用企業や調査会社がSNSの裏アカなどを調べていて、意図せずにそうした収集してはならない個人情報に接して、その情報をもとに不採用とするケースがあった場合、それは身元調査と変わらず、職業差別(職業安定法3条)に該当し違法であるおそれがある。現在の企業側の「SNSの裏アカ調査をやったもの勝ち」の現状を是正するために、厚労省はまずは指針・ガイドラインで企業側に努力義務などを規定すべきだ。』

採用選考おいて企業側が就活生本人の同意なくSNSやSNSの「裏アカ」を調査する問題については、日経新聞などは「企業側は就活生等の「本音」や「日常の普通の様子」が知りたいのだからしかたない」などと開き直る企業側の姿勢を支持・応援するかのような記事を書いたり、朝日新聞なども就活生や企業側の意識のアンケート調査など、ピントのずれた記事ばかり掲載しているのが現状ですが、この朝日の記事が労働法の学者の先生に取材し、「職業安定法や厚労省の関連通達等に照らして違法のおそれがある」と明確なコメントを記事にしているのは、新聞記事にはめずらしいクリーンヒットな記事であると思われます。

採用選考おいて企業側が本人の同意なくSNSやSNSの「裏アカ」を調査することは、企業の人事部側の「お気持ち」や「ご意向」、あるいは就活生や企業側の「アンケート調査」などで決すべき社会学や人文科学的な問題ではなく、職業安定法5条の4(求職者の個人情報保護)同法3条(雇用における差別の禁止)に違反する違法な行為である、つまりSNSの「裏アカ」調査の問題は、法律の問題コンプライアンスガバナンスの問題であることを、就活生などを採用選考する企業の人事部や経営陣などは、まずは明確に認識する必要があります。

就活生等を募集する企業に、職業安定法違反があった場合、ハローワークや労働基準監督署、都道府県労働局、厚労省などは企業に対して報告徴求や立入検査を実施し、行政指導や行政処分を行う権限を持っています。

これは労働法の専門家の河合准教授が指摘するとおり、法律違反の行為であり、企業側の人事部や経営陣が就活生の「本音」や「日常のすがた」が知りたいと思っているから許されるという問題ではないのです。

■参考文献
・菅野和夫『労働法 第12版』69頁
・浜辺陽一郎『労働法実務相談シリーズ10 個人情報・営業秘密・公益通報』98頁、100頁
・大矢息生・岩出誠・外井浩志『会社と社員の法律相談』53頁
・労務行政研究所『新・労働法実務相談 第2版』45頁
・公正な採用選考の基本|厚労省

■関連する記事
・人事は就活生のSNSを見ているのか?-就活と個人情報・SNS
・Github利用規約や厚労省通達などからSNSなどをAI分析するネット系人材紹介会社を考えた
・コロナ下のテレワーク等におけるPCなどを利用した従業員のモニタリング・監視を考えた(追記あり)-個人情報・プライバシー・労働法・GDPR・プロファイリング
・リクルートなどの就活生の内定辞退予測データの販売を個人情報保護法・職安法的に考える
・令和2年改正個人情報保護法ガイドラインのパブコメ結果を読んでみた(追記あり)-貸出履歴・閲覧履歴・プロファイリング・内閣府の意見
・欧州の情報自己決定権・コンピュータ基本権と日米の自己情報コントロール権
・JR東日本が防犯カメラ・顔認証技術により駅構内等の出所者や不審者等を監視することを個人情報保護法などから考えた

























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1.はじめに
情報セキュリティや情報法などの専門家で海外の動向に詳しい 高梨陣平氏(@jingbay)が、6月8日にTwitter上でつぎのように投稿しておられるのを見かけました。

『ドイツで警察が任意の端末にマルウェアを入れることが許可され、ISPやテック業界はそれを手助けを強制される法案が準備中。ドイツはこれでバックドアが不必要になると考えている。これに対し著名なハッカーグループ、Chaos Computer Clubやプライバシについて評判の悪いGoogle、Facebookまで反対とw』
ドイツ警察マルウェア
https://twitter.com/jingbay/status/1402037879191265282
・Google, Facebook, Chaos Computer Club join forces to oppose German state spyware|TheRegister

つまり、ドイツでは、警察などが国民のPCなどの端末をマルウェアで監視するするために通信事業者やIT企業などに協力を法的に強制する法案が準備中であり、著名なハッカーグループや、Google、Facebookなどもこの法案に反対しているとのことです。

ドイツ
では、アメリカの2001年の同時多発テロを受けて、ある州が法改正を行い、州当局がマルウェアなどによる国民のPC等のオンラインによる監視を可能にする法改正を行ったところ、2008年に連邦憲法裁判所が、いわゆる「コンピュータ基本権」という新しい基本権(人権)を示してこの法改正を違憲とした判決があったはずだと思い、資料を読み直してみました。

このブログ記事では、ドイツ「コンピュータ基本権」オンライン監視事件とともに、②最近一部で議論となっている、個人データ保護法制の立法目的に関連して、日米の自己情報コントロール権と欧州の情報自己決定権との同じ点・違う点などについてみてみたいと思います。

2.オンライン監視事件-コンピュータ基本権(2008年2月27日連邦裁判所第一法定判決 連邦憲法裁判所判例集120巻274頁以下 BVerfGE 120.274.Urteil v.27.2.2008)
(1)事案の概要
ドイツでは「自由で民主的な基本秩序または連邦もしくは州(ラント)の存立もしくは安全の保障」を守るために、1950年に連邦憲法擁護法が制定され、連邦憲法擁護庁、16の州(ラント)の憲法擁護庁軍事諜報局(MAD)連邦情報庁(BND)などの憲法擁護機関(憲法保障機関)が分担して諜報活動などの業務を行っている(武市周作「憲法保障機関の正統性―連邦憲法擁護庁を中心に」『東洋法学』61巻3号49頁)。(いわゆる「闘う民主主義」。)

2001年9月11日のアメリカの同時多発テロを受け、世界的にテロ対策への取組が強化されるなか、ドイツノルトライン・ヴェストファーレン州(NRW州)では、2006年12月に州の憲法擁護法が改正された。このNRW州憲法擁護法改正は、「警察トロイの木馬」「Govware」と呼ばれる州当局のマルウェア(スパイウェア)をインターネット経由で州の住民の家庭や事務所などのPC・コンピュータなどに送り込み、PCの記憶領域に蓄積された情報・データを監視することができる「オンラインによる監視」を可能とするものであった(NRW州憲法擁護法5条2項11号)。

ドイツ・ノルトライン・ヴェストファーレン州憲法擁護法
第5条(権限)
第2項 憲法擁護庁は、情報収集活動を行うための7条の役割に応じて、情報収集活動として以下の措置を実行することができる。
 第11号 インターネットへの秘密裡になされる観察及び、とくにコミュニケーション装置への隠密な関わり、またはこうした装置への捜索のようなインターネットへの偵察並びに技術的手段を用いた情報技術システムへの秘密裡になされる侵入。信書、郵便そして電信電話の秘密への関与が、この措置によってなされる場合、この措置は基本法10条が定める法律の諸条件の下でのみ認められる。

このNRW州憲法擁護法改正に対して、NRW州のジャーナリストや弁護士、政治家などが、NRW州憲法擁護法は自分達の基本権10条(通信の秘密)、13条(住居の不可侵)などの基本的人権を侵害するものであるとしてドイツ連邦憲法裁判所に本件訴訟を提起した。

これに対してドイツ連邦憲法裁判所は2008年2月27日に、NRW州憲法擁護法5条2項は、ドイツ基本法に違反しているとの違憲判決を出した。(BVerfGE 120.274.Urteil v.27.2.2008)

(2)判旨
(a)「情報技術システムに秘密裡に関与することを定めた、憲法擁護法5条2項11号の第1文の後半部分は、機密性を保障し情報技術システムの不可侵性を保障する権利という、特別な表現をもって表される一般的人格権に違反する。これを新しい基本権であるとするのは、それが基本法10条(通信の秘密)、13条(住居の不可侵)、さらに情報自己決定権のそれぞれに関連するが、その内容から直接導かれるものではないからである。

コンピュータには、システムに組み込まれたデータ保存機能があり、そのメモリに保存されたデータにまで10条の保障は及ぶものではない。インターネット通信によって、本人が意図しないデータが無意識の内に自己のデータとして蓄積された場合、その内容まで10条では保障しきれないからである。

基本権13条(住居の不可侵)1項は住居の不可侵を規定するが、この不可侵性も、同条2項から7項までの理由があれば国家機関の侵入は認められている。しかし基本法13条1項は、システムへの侵入によって、住居にある情報技術システムのハードディスクないしメモリに蓄積されたデータの取得からの防御を保護しているわけではない。

さらに、一般的人格権から導かれる私的領域の保障情報自己決定権は、情報技術システムの利用者の特別に十分な保護を意味することにはならない。なぜならば、情報技術システムの利用者が求める保障内容は、その利用者の私的領域にあるデータだけに留まるものではないからである。

そこで、基本法1条1項と関連する2条1項に基づく新たな基本権が、私的な領域を国家による情報技術システムへのアクセスから守るために求められる。それが、「情報技術システムにおける不可侵性と機密性を保障する基本権」である。この基本権を保護することを明確に規定する規範があってはじめて、憲法擁護機関は情報システムに関わりうることになるので、その定め方を以下検証しなければならない。

(b) 当該規定(憲法擁護法5条2項)は、規範の明確性の命題を満たしていない。なにより、同条が基本権10条と関係する法律への指示を十分に行っていないからである。

さらに、当該規定は広義の意味での比例原則を満たしていない。比例原則が求められるのは、必要性の命題を満たすときであるが、基本権への侵害が正当化された目的にあり、さらにこうした目的に見合った手段としてなされ、適合的なものであること(が求められる)。

ところが、改正法の内容は明確でもなく、テロ対策に組織的に対応することが限定化されたわけでもない。

当該規定がさらに狭義の比例原則に一致しないのは、高い程度に及ぶ基本権侵害を引き起こすからであり、それは、複雑な情報技術システムを用いての国家による調査が、該当者の人格をえぐり出すことになるからである。さらに、第三者への通信をも監視することによって、一般市民の自由にも影響がでてくる。

もしも情報技術システムへの秘密裡での関与が許されるとすれば、以下の条件があった場合ということになる。つまり、ある事実がとくに高い重要性を有する法に対して個別に引き起こされる危険を示唆する場合であり、たとえその危険がすでに近い将来に訪れるという十分な蓋然性をもって確定できない場合であってもそうである。さらに、こうした関与の権限を認めることになる法律は、該当者に対して適切な手続規定をもって、その基本法保護を確保しなければならない。ここに示されたとくに重要な法益とは、まず、人の身体・生命・自由であり、さらに、国家の基礎や構造ないし人間の存在の基礎にかかわる公共の財産である。また、具体的な危険を表す3つの指標とは、個別性、危険が被害を引き起こす逼迫性、そして起因者としての個人的関連性である。

立法者は、適切な措置によって、私的な生活の中心に位置するデータに関わるような場合は、侵害が最小に抑えられ、該当者の人格への関わりが最小限に抑えられるようにしなければならない。

(c)以上の観点から判断すると、憲法擁護法5条2項11号に示された手段は、情報技術システムが有する機密性や不可侵性の保障に示された一般的人格権への侵害を構成しており、この規定は無効となる。

3.検討
(1)日米の自己情報コントロール権と欧州の情報自己決定権
プライバシー権と個人情報保護法(個人データ保護法)との関係については、アメリカで「ひとりで放っておいてもらう権利」として生まれた従来からの古典的なプライバシー権を包含する形で、自己情報コントロール権として一体的に説明することが日本においては通説的な見解とされています。

つまり、個人の私的領域に他者を無断で立ち入らせないという自由権的なプライバシー権は、情報化社会の進展に伴い、「自己に関する情報をコントロールする権利」(自己情報コントロール権としてとらえられ、自由権的側面だけでなく、プライバシーの保護を公権力に対して積極的に要求してゆく側面が重視されるようになってきているとされています。すなわち、個人に関する情報(個人情報)が行政機関などに集中的に管理されるようになった現代社会においては、個人が自己に関する情報を自らコントロールし、自己に関する情報についての閲覧・訂正ないし抹消請求を求めることが必要であると考えられています(芦部信喜・高橋和之補訂『憲法 第7版』123頁)。

日本の憲法13条は「すべて国民は、個人として尊重される。 生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」と規定していますが、この憲法13条の 生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」つまり幸福追求権から、プライバシー権と自己情報コントロール権は導き出されるとされています。

一方、ドイツでは1983年の国勢調査判決において連邦憲法裁判所が「情報自己決定権」という新しい基本権(人権)を示し、古典的プライバシー権と情報自己決定権の二本立てで考える構成がヨーロッパでは広く共有されているとされています(小山剛「なぜ「情報自己決定権」か」『日本国憲法の継承と発展』320頁。

日米の自己情報コントロール権と欧州の情報自己決定権のイメージ2
(日米の自己情報コントロール権と欧州の情報自己決定権・プライバシー権のイメージ。小山剛「なぜ「情報自己決定権」か」『日本国憲法の継承と発展』320頁をもとに筆者作成。)

1983年の国勢調査判決においてドイツ連邦憲法裁判所は、情報自己決定権「自己の個人データの放棄および使用について、原則として自ら決定する権限」定義し、その制約については、①優越した一般的利益、②規範の明確性の要請を満たした法律上の根拠、③比例原則、④人格権侵害を予防するための組織的・手続的予防措置を要求しました。また、⑤統計目的のデータ取得については、統計目的で取得したデータを法執行目的で利用する場合には、限定的で具体的な利用目的による拘束が不可欠であり、規範の明確性の要請が特に重要であるとしました。

ドイツ憲法裁判所は国勢調査判決において、個人情報・個人データについて「(公権力からの)申告の性質だけに照準を合わせることはできない。決定的であるのは、(個人情報・個人データの)その有用性利用可能性である。これらは、一方における取得の目的、他方における情報技術に固有処理可能性および結合可能性に左右される。それにより、それだけを見れば些末な情報が、新たな位置・価値を取得する。その限りで、自動化されたデータ処理という前提のもとでは、「些末な」情報はもはや存在しない。」と述べ、情報自己決定権の必要性を説明しています(小山・前掲)。

日米の自己情報コントロール権とヨーロッパの情報自己決定権との違いは、情報自己決定権に対する公権力などからの制約には、上の①から⑤までの要件・歯止めがある一方で、自己情報コントロール権にはそのような公権力からの制約に関する要件・歯止めが不十分であることにあるとされています。

例えば、警察のNシステムによる自動車のナンバープレート情報や、公道に設置された防犯カメラ・監視カメラによる人の容貌や顔などの情報など、それ自体は外部に公開されている情報の、法的強制を伴わない取得・保存・利用において顕著に表れるとされています。

Nシステムについて2009年の日本の裁判例(東京高裁平成21年1月29日判決)は、「わが国においては警察法2条1項の規定により任意の捜査は許容されており、公道上の何人でも確認し得る車両データを収集・利用することは適法」としています。

一方、ドイツ連邦裁判所は「自動車ナンバープレートの自動記録に関する法律は、法律による授権の特定性および明確性という法治国家の要請を充足しなければならない。」「不特定の広範さゆえに、この法律の規定は憲法上の比例原則の要請も満たしていない」として違憲としています(2008年3月11日ドイツ連邦憲法裁判所第一法廷判決・BVerfGE 120.378[407.427]、小山・前掲)。

このドイツをはじめとするヨーロッパの情報自己決定権は、アメリカの自己情報コントロール権に影響されてドイツ等で生み出されたものとされています(藤原静雄「「西ドイツの国勢調査判決における「情報の自己決定権」」一橋論叢94巻5号138頁)。

(2)コンピュータ基本権
情報自己決定権という新しい基本権が生み出されてから約25年後の2008年にドイツ憲法裁判所がいわゆる「コンピュータ基本権」という新しい基本権を示したことは、内外の大きな注目を集めました。

この2008年の本判決は、「情報技術システムの機密性や不可侵性を保障する権利」(コンピュータ基本権を、基本法1条(人間の尊厳、基本権による国家権力の拘束)1項の「人間の尊厳は不可侵である。これを尊重し、および保護することは、すべての国家権力の義務である」と関連する2条(人格の自由、人身の自由)1項の「何人も、他人の権利を侵害せず、かつ憲法的秩序または道徳律に違反しない限り、自らの人格の自由な発展を求める権利を有する」に関わる基本権としています(石村修「コンピュータ基本権-オンライン監視事件」『ドイツの憲法判例Ⅳ』50頁)。

本判決が出された直後のドイツの学界は、情報自己決定権ではなく、このコンピュータ基本権を提示しなければならない理由が不明確であること、示された判断基準が従来の判例と異なること、さらに、技術的な発展に対して新たな基本権が提唱されるのは、それが完全に入れ替えが必要となった場合であり、オンラインによる監視は、いまだ従来の国家機関がとってきた手法の延長にあること、等の批判が本判決のコンピュータ基本権に対してはなされたとされています。

一方、本事件において申立人らが主張した基本権10条、13条などからはオンラインの監視を取扱うことは困難であること、また、オンラインの監視は個人のデータ保護を超えて、情報技術システムの保護の必要性や、システムへの介入は監視される本人だけでなく、第三者や一般市民にまでその被害がおよぶことなどの理由から、本判決がコンピュータ基本権を提示したのではないかとの指摘もされています(石村・前掲)。

なお、本判決を受けて、ドイツの連邦法レベルでは、2008年11月に連邦検事庁法が改正され、同法20k条は、情報技術システムへの関与について、本判決が示した要件を明記したとされています。また、NRW州も州憲法擁護法5条2項について、本判決の示した要件を明記する法改正を行ったとされています。

4.まとめ
2018年にはEUGDPR(EU一般データ保護規則)が施行されました。GDPRは22条がいわゆるプロファイリング拒否権を規定していることが注目されています。そして、本年4月にはEUはAI規制法案を公表しました。日本でも2021年にデジタル関連法の制定や個人情報保護法改正などが行われ、国会などでは、個人情報保護法の立法目的に自己情報コントロール権を明記すべきかどうかが論点の一つとなりました。その一方で、最近は一部の情報法の学者の先生方からは、自己情報コントロール権を批判する主張もなされています。

日本の情報法・個人情報保護法制の学者・研究者などの関係者の方々、企業や官庁などの実務担当者の方々などは、プライバシー権と個人データ保護法制の在り方や、個人データ保護法制の法目的などについて検討するにあたっては、日米の自己情報コントロール権だけでなく、GDPRの根底にある欧州の情報自己決定権・コンピュータ基本権などについて、また日米と欧州の憲法の基本構造の違い(近代憲法とポスト近代憲法の違い)などについても目配りが必要であると思われます。

なお、本ブログ記事を書くにあたっては、憲法学者の石村修・専修大学名誉教授より貴重なご教示をいただきました。石村先生、誠にありがとうございました。

■参考文献
・石村修「コンピュータ基本権-オンライン監視事件」『ドイツの憲法判例Ⅳ』50頁
・小山剛「なぜ「情報自己決定権」か」『日本国憲法の継承と発展』320頁
・武市周作「憲法保障機関の正統性―連邦憲法擁護庁を中心に」『東洋法学』61巻3号49頁
・藤原静雄「西ドイツの国勢調査判決における「情報の自己決定権」」一橋論叢94巻5号138頁
・芦部信喜・高橋和之補訂『憲法 第7版』123頁

■追記(2022年3月18日)
2022年3月18日に、情報法制研究所の高木浩光先生のつぎのインタビュー記事に接しました。
・高木浩光さんに訊く、個人データ保護の真髄 ——いま解き明かされる半世紀の経緯と混乱|Cafe JILIS


■関連する記事
ドイツの国勢調査事件判決と情報自己決定権についてーBVerfGE 65,1, Urteil v.15.12.1983
コロナ下のテレワーク等におけるPCなどを利用した従業員のモニタリング・監視を考えた(追記あり)-個人情報・プライバシー・労働法・GDPR・プロファイリング





























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1.警察庁がSNSをAI解析して人物相関図を作成する捜査システムを導入
2021年5月29日の共同通信などの報道によると、警察庁がSNSをAI解析して人物相関図を作成する捜査システムを導入することを決定したとのことです。年内に警察庁と警視庁などの5都府県警で運用を始め、全国の警察に広げる方針とのことです。SNSを利用して行われる特殊詐欺などの犯罪を捜査するためのAIシステムの導入と警察関係者は説明しているようです。

・警察庁SNS解析システム導入へ AI捜査で人物相関図作成|共同通信・ヤフージャパン

しかしこのような捜査は、特殊詐欺の捜査のためという必要性が肯定されるとしても、国民のプライバシーやSNSなどにおける国民の表現の自由などとの関係、あるいは、憲法や刑事訴訟法の定める令状主義や強制処分法定主義との関係で、法的に許容されるものなのでしょうか?

以下、①プライバシー権、②表現の自由、③刑事訴訟法(とくにGPS捜査)、④個人情報保護法制における「自動処理決定拒否権」などの観点から検討してみてみたいと思います。

2.プライバシー権
警察庁のSNSをAI解析して人物相関図を作成する捜査システムにおいて、警察当局がもっとも取得しようと考えているのは、SNSの利用者・ユーザーの人物相関図であるようです。つまり、利用者のSNS上における友人関係(あるいは友人でない関係、ブロックしている関係など)、SNS上の社会関係のようです。

この「個人の自律的な社会関係」は、憲法上、プライバシー権あるいは自己情報コントロール権(憲法13条)の保障のもとにあります。

つまり、憲法の基本原理のひとつである、「すべての国民は(それぞれ個性を持った人間として)個人として尊重される」という「個人の尊重」原理(憲法13条)から、国や企業、第三者などに対して個人の自律的な社会関係は、尊重することが要求されてるものです。

すなわち、国民個人が自律的に形成する社会関係などの私的な領域は、個人の尊重原理に基づいて、国などの公権力や企業、第三者などによって干渉されてはならない領域であるため、国民個人の自律的な社会関係などの私的領域の情報については、国などは立入が許されないということになります。これが現代の情報化社会におけるプライバシー権であり、あるいは「自己に関する情報をコントロールする権利」(自己情報コントロール権)として憲法の学説上、通説として説明されるものです(野中俊彦・中村睦男・高橋和之・高見勝利『憲法Ⅰ 第5版』275頁)。

日本の裁判例も、1964年の「宴のあと」事件判決が「私生活をみだりに公開されない権利」として認めたことを始まりとして(東京地裁昭和39年9月28日)、プライバシーの権利が判例により認められています(最高裁平成15年9月12日・早大講演会名簿提出事件など)。

3.表現の自由などの問題
また、国民のSNSなどのインターネット上の書き込みなどの情報発信などの表現行為も、憲法の表現の自由(憲法21条1項)の保障のもとにあります。また、国民がSNSなどのインターネットによりさまざまな情報を受け取る自由も、国民の「知る権利」として表現の自由の保障のもとにあります(芦部信喜・高橋和之補訂『憲法 第7版』194頁)。

4.精神的自由と刑事法との関係
このように、SNSなどネット上の国民個人の社会関係・人間関係・人物相関図は、プライバシー権あるいは自己情報コントロール権(憲法13条)による保障のもとにあり、また、SNSなどネット上の国民の情報の発信や情報の授受なども表現の自由(21条1項)の保障のもとにあるわけですが、これらの精神的自由(人権)と、警察当局や刑罰法規がぶつかり合う場合に、それをどう解決するかが問題となります。

この点、裁判例は、国民の表現行為を規制・侵害する刑罰法規が「通常の判断能力を有する一般人の理解」において、具体的場合に当該表現行為がその刑罰法規の適用を受けるかどうかの基準が読み取れないような場合には、その刑罰法規は漠然とした不明確な法令であり違憲・無効となるとしています(「明確性の基準」「適正手続きの原則」(憲法31条)・最高裁昭和50年9月10日判決・徳島市公安条例事件)。

今回問題となっている、警察庁のSNSをAI解析して人物相関図を作成する捜査システムは、報道をみるかぎり、従来、捜査員が目や手をもとに行っていた捜査手法をAIシステムに置き換えるだけであると警察庁は考えているようであって、警察庁の内部規則があるとしても、そもそも法律上の根拠なしに警察当局が導入し使用を開始するようです。

つまり、この明確性の基準を適用する法律すら存在しないようなので、そのような捜査システムを使用して国民のプライバシー権や表現の自由などを侵害することは、それだけで違憲・無効となると思われます(13条、21条1項、31条)。

5.刑事訴訟法
防犯カメラ、電話の盗聴、GPS捜査など、新しい科学技術を用いた警察の捜査は、刑事訴訟法の分野で裁判で争われてきました。つまり、そのような新しい捜査手法により収集した証拠などが、刑事裁判において有効な証拠となるかが争われてきました(違法収集証拠排除の原則)。

このなかで、従来、警察の捜査員が見張りや尾行などを行っていたところ、それに代えて、警察が令状をとらずに被疑者・容疑者の自動車などにひそかにGPS機器を取り付け、その被疑者の位置情報・移動履歴を収集する手法が裁判で争われ、最高裁はそのような捜査手法は令状主義や強制処分法定主義(憲法35条、刑事訴訟法197条1項)に違反するものであり、また、GPS捜査については国会で立法を行うべきであると判示しています(最高裁平成29年3月15日判決、宍戸常寿『新・判例ハンドブック情報法』231頁)。

すなわち、最高裁は、GPS捜査は①公道上だけでなくプライバシーが保護されるべき場所・空間をも捜査対象としており、②個人の行動を継続的・網羅的把握しプライバシーを侵害すること、③個人に秘密で機器を着けて行う点で公道上の見張りや尾行などと異なるため、令状が不要な任意捜査の限界を超えており、強制捜査というべきであり、違法な捜査であるとしています。

また、最高裁は、現行の刑事訴訟法上の検証などの令状でGPS捜査を適切に限定することは困難であり、また、裁判官が多様な選択肢のなかから実施条件を選んで令状を交付することは強制処分法定主義に反するとして、GPS捜査について、国会立法を行うべきであると判示しています。

■GPS捜査事件最高裁判決について詳しくはこちら
・【最高裁】令状なしのGPS捜査は違法で立法的措置が必要とされた判決(最大判平成29年3月15日)

この判決を警察庁のSNSをAI解析して人物相関図を作成する捜査システムについてあてはめると、 上でみたように、SNS上の友好関係・社会関係などの人物相関図などは、利用者個人のプライバシーあるいは自己情報コントロール権による保障の対象であるので、①のプライバシーが保護されるべき空間などに該当します。また、AIによる分析というその捜査手法の性質上、利用者個人のSNS上の表現・行動などを継続的・網羅的に把握し、大量の個人データ・プライバシーに関する情報を迅速に収集してしまうことから、②のように継続的・網羅的に利用者のプライバシーに関する膨大な情報を収集してしまうことに該当します。

加えて、SNSの利用者には秘密裡にAI捜査が行われると思われ、さらに、AIによる人物相関図の分析という捜査の性質上、その捜査対象がSNSの利用者全員におよぶおそれがあり、たとえば日本のTwitterの利用者が約4500万人、LINEの利用者が約8600万人、Facebookの利用者が約2600万人などとされていることから(echoes「2021年2月更新 データからみるTwitterユーザー実態まとめ」)、単純に計算しても日本の国民の大多数が警察庁のAI捜査システムの捜査対象となってしまう危険性があるため、③のように令状なしに警察等が実施できる任意捜査の限界を大きく超えています。

AIやコンピュータなどによるこのようなネット上の網羅的・継続的な捜査により収集された大量の個人データなどによれば、友好関係だけでなく、利用者・個人の思想・信条、政治的見解、趣味・嗜好、性的嗜好、病歴、犯罪歴などを把握することにより、「国家の前で国民が丸裸になる」状況が生み出されてしまいます。

これは国家による国民の監視・モニタリングであり、しかも上でみたように、その警察によるモニタリング・監視の対象が国民の大多数におよぶ危険があることから、これは国民の個人の尊重や基本的人権の確立という目的のために国などの統治機構は手段として存在する(憲法11条、97条)というわが国の近代立憲主義憲法の根幹すら揺るがしなけない、極めて深刻な状況であるといえます。

したがって、GPS捜査事件について最高裁判決が判示するように、警察庁のSNSをAI解析システムについては、国会で慎重な議論を行い、そのような捜査手法が本当に許容されるのか、許容されるとしてどのような基準をもとに警察が実施・運用するのか等を検討し、本当に必要であれば立法を行うべきです。

6.AI・コンピュータの自動処理による人間の選別
1960年代からのコンピュータの発展による人権侵害のおそれを受けて、世界で個人情報保護法(個人データ保護法)が検討されてきています。

さまざまな目的で収集されたさまざまな個人データが国などに収集され、それがコンピュータなどにより迅速に機械的に処理されるようになると、それぞれの個人データがある目的のためには適切であるとしても、別の目的のためには利用することが適切でない個人データが名寄せにより連結され、コンピュータが極端な結果や間違った結果を生み出してしまうおそれがあります。

また、データの誤りの混入によっても間違った結論が出されてしまうおそれがあります。これらの極端な結論や間違った結論について、人間がチェックすればその結論に疑問を持ち再確認が行えるはずなのに、コンピュータであるとその間違い等に気が付けないリスクが存在します。

さらに近年急速に発展しているAIは、大量のデータを自ら学習することにより自らを高度化させてゆきますが、その機械学習が進んでいくと、AIの専門家ですら、AIがどのような理由でそのような結論を導き出したか説明できないとされています(ブラックボックス化)。しかも人間は、人間よりも機械やコンピュータなどを過信してしまう傾向があります(自動化バイアス)。(山本龍彦『AIと憲法』63頁。)

このような問題意識をもとに、とくに西側自由主義諸国(近代立憲主義的憲法をもつ諸国)の個人情報保護法(個人データ保護法)においては、プライバシー権、自己情報コントロール権と並んで、「コンピュータ・AIによる人間の選別・差別を拒否する権利」(自動処理決定拒否権)がその重要な立法目的とされてきています。

つまり、「コンピュータ・AIによる人間の選別・差別を拒否する権利」(自動処理決定拒否権)とは、上でみたようなさまざまなリスクのあるコンピュータ・AIによる個人データの自動処理のみによる法的決定・重要な決定を個人・国民が拒否する権利であり、言ってみれば人間について、工場などのベルトコンベアーに載せられたモノではなく、人間による人間らしい対応を求める権利であり、つまり、個人の尊重人格権に基づく権利であるといえます(憲法13条、山本・前掲101頁)。

この「コンピュータ・AIによる人間の選別・差別を拒否する権利」は、1996年のILO「労働者の労働者の個人情報保護に関する行動準則」で明文化され、欧州では1995年のEUデータ保護指令15条から2018年のGDPR22条に受け継がれています。そして、EUでは本年4月に「AI規制法案」が公表されました。

この自動処理決定拒否権は、日本でも2000年の労働省「労働者に関する個人情報の保護に関する行動指針」第2(個人情報の収集)6(6)に、「使用者は、原則として、個人情報のコンピュータ等による自動処理又はビデオ等によるモニタリングの結果のみに基づいて労働者に対する評価又は雇用上の決定を行ってはならない。」と明文規定があるとおり、日本の個人情報保護・個人データ保護法制にも存在する考え方です。

そして、EUのAI規制法案は、AIの人間に対する危険度から①禁止②高リスク③限定的なリスク④最小限のリスクと、4つのカテゴリに分類しています。

このうち、①禁止のカテゴリには、AIによる信用スコア事業や、公共の場所における警察などによる防犯カメラの顔認証などによる国民の常時監視・モニタリングが該当するとされ、また、②高リスクのカテゴリには、AIを利用した運輸・ガス・水道などのインフラ、教育、医療、企業などの採用・人事考査、公的部門の移民・難民の審査、司法、社会保障など公共機関におけるAIの利用などが該当するとされています。

そのため、今回報道された警察庁のAIを利用したSNSの捜査システムは、「司法」に準じた警察・検察の行政作用であるという点で少なくとも②高リスクに該当しそうですし、AIによる国民の常時監視・モニタリングという行為を考えると、①禁止のカテゴリに該当してしまいそうです。

したがって、日本を含む西側自由主義諸国(近代立憲主義憲法を持つ諸国)の個人データ保護の基本的な考え方の一つの「コンピュータ・AIによる人間の選別・差別を拒否する権利」からは、警察庁のAIを利用したSNSの捜査システムは、①禁止、あるいは②高リスクのカテゴリに該当するとして、平成11年の通信傍受法などのように、警察の捜査システムとして本当に必要であるのか、必要であるとしてどのような基準で実施すべきなのか等を国会で慎重に審議して、必要であれば新しい法律を制定した上で実施すべきなのではないでしょうか(法律による行政の原則)。

■関連する記事
・コロナ下のテレワーク等におけるPCなどを利用した従業員のモニタリング・監視を考えた-個人情報・プライバシー・労働法・GDPR
・【最高裁】令状なしのGPS捜査は違法で立法的措置が必要とされた判決(最大判平成29年3月15日)
・デジタル庁のプライバシーポリシーが個人情報保護法的にいろいろとひどい件-個人情報・公務の民間化

■参考文献
・野中俊彦・中村睦男・高橋和之・高見勝利『憲法Ⅰ 第5版』275頁
・芦部信喜・高橋和之補訂『憲法 第7版』194頁
・宍戸常寿『新・判例ハンドブック情報法』231頁
・山本龍彦『AIと憲法』63頁
・田口守一『刑事訴訟法 第4版補正版』46頁
・小向太郎・石井夏生利『概説GDPR』94頁
・高木浩光「個人情報保護から個人データ保護へ―民間部門と公的部門の規定統合に向けた検討」『情報法制研究』2巻75頁
・EUのAI規制案、リスク4段階に分類 産業界は負担増警戒|日経新聞














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smartphone
Androidのスマホの設定をみたら、「緊急位置情報サービス(ELS)」とかいう物々しい項目がいつの間にか新設(?)されていました。

ELS1
リンクされている、グーグルのヘルプ画面を読むと、"緊急事態"があった場合にグーグルからの信号を受けて、スマホ(デバイス)の位置情報が"緊急通報機関"に伝達される仕組みのようです。しかも、かりに我々ユーザーがELSをオフにしていても、緊急通報機関の指示があった場合、グーグルはELSを強制的にオンにして位置情報を緊急通報機関に送信することがあるとされています。

ELS2

スマホの位置情報をユーザー本人の意思を無視してグーグルが取得し、第三者提供するからには、具体的な法律の根拠か、あるいは裁判所の令状が必要なのでは、と思ってしまうのですが・・・。

グーグルのヘルプみても、緊急事態や緊急通報機関とは具体的に何かなどが明示されてないのはどうなのでしょう。

素人考えとしては、この緊急位置情報サービス(ELS)は、まずは新型コロナ対応のための接触確認アプリ(COCOA)対応なのでしょうか?

しかし、政府・与党の説明では、同アプリは「インストールするのはユーザー本人の自由・任意に委ねられる。また、濃厚接触が発覚した場合に処理番号を入力し保健所に通報するのもユーザー本人の自由意思。」「とにかく個人情報を勝手に取らないプライバシーに配慮したアプリ。」であるのが最大のセールスポイントというか、同アプリが合法である根拠だったはずではないでしょうか?(いうまでもなく、接触確認アプリを明確に合法たらしめている個別具体的な立法などはいまだ存在しません。)

また、「緊急事態」というふわっとしたバスケット条項的な、大雑把な用語で、位置情報を強制的に国・自治体・企業などが取得できるような仕組みになっているのも大いに気になります。

最初は「コロナ対応のため」「本人が災害にあって命を助けるため」と言っていたのに、気が付いたら警察当局が何となく見込み捜査やこっそり内偵をするためであるとか、はては某万引き防止なんとか協会などの民間団体が何となく怪しいと思った国民を監視するため…等々と安易に拡大的な運用がグーグルにより行われて、なし崩し的に法令上の根拠なしに国や企業などによる国民・市民の電子的なモニタリングや監視化が進行しかねません。

それでは法令上の根拠なく、歯止めなく国民の個人情報やプライバシー権(憲法13条、個人情報保護法1条、3条)が侵害され、国民個人が人間として私的にも社会的にもまともに生きてゆけなくなってしまいます。

また、裁判所の令状や法令上の根拠なしに、国などによって国民が電子的に捜索や検証などを強制的に行われることは、令状主義や強制処分法定主義(憲法33条、刑事訴訟法197条)などに抵触する問題に思われ、憲法や刑事法的にも由々しき事態であると思われます。

■関連するブログ記事
・【最高裁】令状なしのGPS捜査は違法で立法的措置が必要とされた判決(最大判平成29年3月15日)








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