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本ブログ記事の概要
最高裁第一小法廷令和5年3月9日判決は住基ネット訴訟と同様に構造審査の手法をとりマイナンバー制度を合憲とした。ただし本判決はマイナンバー制度が税・社会保障・災害対策の3点に利用目的を限定していることを合憲の理由の一つとしているので、最近のデジタル庁のマイナンバー法「規制緩和」法案は違法の可能性がある。また、本判決はマイナンバーカードについては検討していないため、「マイナ保険証」等の問題や、xIDなどの民間企業によるマイナンバーカードの利用にはお墨付きを与えていない。

1.はじめに
3月9日にマイナンバー制度はプライバシー権の侵害であるとする訴訟について、マイナンバー制度は合憲とする最高裁判決が出され、同日、裁判所サイトにその判決文が掲載されたため読んでみました(最高裁第一小法廷令和5年3月9日判決)。

・最高裁第一小法廷令和5年3月9日判決・令和4(オ)39マイナンバー(個人番号)利用差止等請求事件|裁判所

2.事案の概要
本件は、マイナンバー法(令和3年の改正前のもの。以下「番号利用法」)により個人番号(マイナンバー)を付番された上告人Xらが、被上告人(国)Yが番号利用法に基づき上告人らの特定個人情報(個人番号をその内容に含む個人情報)の収集、保管、利用又は提供(以下、併せて「利用、提供等」という。)をする行為は、憲法13条の保障する上告人らのプライバシー権を違法に侵害するものであると主張して、Yに対し、プライバシー権に基づく妨害予防請求又は妨害排除請求として、Xらの個人番号の利用、提供等の差止め及び保存されているXらの個人番号の削除を求めるとともに、国家賠償法1条1項に基づき、慰謝料等の支払を求める事案である。裁判所はつぎのように判示してXらの上告を棄却した。

3.本判決の判旨
『第2 上告理由のうち憲法13条違反をいう部分について
1 憲法13条は、国民の私生活上の自由が公権力の行使に対しても保護されるべきことを規定しているものであり、個人の私生活上の自由の一つとして、何人も、個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由を有するものと解される(最高裁平成19年(オ)第403号、同年(受)第454号同20年3月6日第一小法廷判決・民集62巻3号665頁)。

2 そこで、行政機関等が番号利用法に基づき特定個人情報の利用、提供等をする行為が上告人らの上記自由を侵害するものであるか否かを検討するに、前記…のとおり、同法は、個人番号等の有する対象者識別機能を活用して、情報の管理及び利用の効率化、情報連携の迅速化を実現することにより、行政運営の効率化、給付と負担の公正性の確保、国民の利便性向上を図ること等を目的とするものであり、正当な行政目的を有するものということができる。』

『3 もっとも、特定個人情報の中には、個人の所得や社会保障の受給歴等の秘匿性の高い情報が多数含まれることになるところ、理論上は、対象者識別機能を有する個人番号を利用してこれらの情報の集約や突合を行い、個人の分析をすることが可能であるため、具体的な法制度や実際に使用されるシステムの内容次第では、これらの情報が芋づる式に外部に流出することや、不当なデータマッチング、すなわち、行政機関等が番号利用法上許される範囲を超えて他の行政機関等から特定の個人に係る複数の特定個人情報の提供を受けるなどしてこれらを突合することにより、特定個人情報が法令等の根拠に基づかずに又は正当な行政目的の範囲を逸脱して第三者に開示又は公表される具体的な危険が生じ得るものである。しかし、番号利用法は、前記第1の2イ及びのとおり、個人番号の利用や特定個人情報の提供について厳格な規制を行うことに加えて、前記第1の2のとおり、特定個人情報の管理について、及び特定個人情報の漏えい等を防止し、特定個人情報を安全かつ適正に管理するための種々の規制を行うこととしており、以上の規制の実効性を担保するため、これらに違反する行為のうち悪質なものについて刑罰の対象とし、一般法における同種の罰則規定よりも法定刑を加重するなどするとともに、独立した第三者機関である委員会に種々の権限を付与した上で、特定個人情報の取扱いに関する監視、監督等を行わせることとしている。

また、番号利用法の下でも、個人情報が共通のデータベース等により一元管理されるものではなく、各行政機関等が個人情報を分散いところ、前記第1の2管理している状況に変わりはなのとおり、各行政機関等の間で情報提供ネットワークシステムによる情報連携が行われる場合には、総務大臣による同法21条2項所定の要件の充足性の確認を経ることとされており、情報の授受等に関する記録が一定期間保存されて、本人はその開示等を求めることができる。のみならず、上記の場合、システム技術上、インターネットから切り離された行政専用の閉域ネットワーク内で、個人番号を推知し得ない機関ごとに異なる情報提供用個人識別符号を用いて特定個人情報の授受がされることとなっており、その通信が暗号化され、提供される特定個人情報自体も暗号化されるものである。以上によれば、上記システムにおいて特定個人情報の漏えいや目的外利用等がされる危険性は極めて低いものということができる。
(略)

これらの諸点を総合すると、番号利用法に基づく特定個人情報の利用、提供等に関して法制度上又はシステム技術上の不備があり、そのために特定個人情報が法令等の根拠に基づかずに又は正当な行政目的の範囲を逸脱して第三者に開示又は公表される具体的な危険が生じているということもできない。

4 そうすると、行政機関等が番号利用法に基づき特定個人情報の利用、提供等をする行為は、個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表するものということはできない。したがって、上記行為は、憲法13条の保障する個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由を侵害するものではないと解するのが相当である。

以上は、当裁判所大法廷判決(最高裁昭和40年(あ)第1187号同44年111- 12 - 2月24日大法廷判決・刑集23巻12号1625頁)の趣旨に徴して明らかである。論旨は採用することができない。』

4.検討
(1)本判決の概要
本判決は前半の「第1」の部分でマイナンバー制度を概説した上で、後半の「第2 上告理由のうち憲法13条違反をいう部分について」のおおむね上で引用したような判旨でマイナンバー制度の合憲性を検討しています。そしてその検討をみてみると、まず「1」の部分では、住基ネット訴訟最高裁判決(最高裁平成20年3月6日判決)を引いて、「憲法13条は…個人の私生活上の自由の一つとして、何人も、個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由を有するものと解される」と憲法13条に基づくいわゆる古典的プライバシー権(静的プライバシー権)が問題になっていることを明らかにしています。

つぎに本判決は「2」の部分で、マイナンバー制度がこのプライバシー権を侵害しているかを検討するためにマイナンバー制度の目的の検討が必要であるとします。そして、「同法は、個人番号等の有する対象者識別機能を活用して、情報の管理及び利用の効率化、情報連携の迅速化を実現することにより、行政運営の効率化、給付と負担の公正性の確保、国民の利便性向上を図ること等を目的とするものであり、正当な行政目的を有する」として、マイナンバー制度の目的は行政権の行使として正当であるとしています。

さらに本判決は、マイナンバー法が個人番号の利用範囲を「社会保障、税、災害対策およびこれらに類する分野の法令又は条例で定められた事務に限定」されていること、目的外利用の許容される例外事例も一般法である(旧)行政機関個人情報保護法よりも限定されていること、政令への委任も白地委任とはなっていないこと等を判示し、法的にマイナンバー制度が問題ではないとしています。

なお本判決は「3」の部分で、特定個人情報(マイナンバーを含む個人情報)は、個人の所得や社会保障の受給歴等の秘匿性の高い情報が含まれるところ、理論的には識別能力を有するマイナンバーを利用して名寄せや突合を行い、個人の分析や不当なデータマッチングなどが行われる「具体的な危険」があるとしつつも、マイナンバー法は罰則を置き、監督を行う第三者機関として個人情報保護委員会が設置されている等の理由で、そのような目的外利用や情報漏洩などがなされる危険性は「極めて低い」としてしまっています。(そのため、本判決はプライバシー権の本質論について、基本的に古典的プライバシー論と構造審査論に立っており、最近の「自己の情報を適切に取扱われる権利」論は採用していないように思われます。)

加えて本判決は、マイナンバー制度は情報連携を行う情報提供ネットワークシステムにおいてはマイナンバーそのものは利用されていないこと等を理由として情報システム上もマイナンバー制度は問題がないとしています。

その上で本判決は「これらの諸点を総合すると、番号利用法に基づく特定個人情報の利用、提供等に関して法制度上又はシステム技術上の不備があり、そのために特定個人情報が法令等の根拠に基づかずに又は正当な行政目的の範囲を逸脱して第三者に開示又は公表される具体的な危険が生じているということもできない。」とし、マイナンバー制度は法的にもシステム的にも問題はなく、上告人らのプライバシー侵害はないと結論付けています(いわゆる「構造審査」論)。構造審査論をとっていることから、本判決は基本的に構造審査論を採用した住基ネット訴訟判決を承継するものといえます。

加えて本判決は「以上は、当裁判所大法廷判決(最高裁昭和44年2月24日大法廷判決)の趣旨に徴して明らかである」として、本判決は警察官によるデモ隊の写真撮影によるプライバシー権および肖像権の侵害が争われた京都府学連事件(最高裁昭和44年2月24日大法廷判決)に連なる判例であることを明らかにしています。

(2)本判決は令和3年改正前のマイナンバー法を対象としており、またマイナンバーカードについては検討していない
このように本判決は、国民個人のプライバシー権との関係でマイナンバー制度は違法・違憲ではないと判示しましたが、その一方で、本判決は令和3年改正前のマイナンバー法を対象としており、またマイナンバーカードについては検討していない点は注意が必要です。

すなわち、令和3年(2021年)のいわゆるデジタル社会形成法案の一つとしてマイナンバー法も一部改正がなされましたが、その際に追加された、国家資格をマイナンバーに紐付け管理する等の法改正は本判決の範囲外となります。

デジタル社会形成法案の概要
(令和3年のデジタル社会形成法案の概要。個人情報保護委員会サイトより。)

同様に、現在デジタル庁が国会に法案を提出した、マイナンバー制度の目的を税・社会保障・災害対策に限定せず「規制緩和」を行うことや、その改正を法律によらず政省令で可能にすること等も本判決の対象外であり、司法府のお墨付きを得ているわけではありません。むしろ、本判決はマイナンバー制度の合憲の根拠の一つにマイナンバー制度の目的が税・社会保障・災害対策の3つに限定されていることを挙げているのですから、「規制緩和」法案は違法・違憲の可能性があるのではないでしょうか。

また、本判決はマイナンバーカードについては司法判断を行っていないため、例えば本年大きな問題となっている、保険証をマイナンバーカードに一体化して国民にマイナンバーカードを事実上強制する等の「マイナ保険証」の問題も司法のお墨付きを得ているわけではありません。同様に、児童・子どもの教育データをマイナンバーで国が一元管理するというデジタル庁の「子どもデータ利活用ロードマップ」等も司法のお墨付きを得ているわけではありません。あるいはxIDなどのようにマイナンバーカードのICチップ部分の電子証明書等の民間企業の利用についても司法は合憲と判断しているわけではない状況です。

(3)まとめ
以上見てきたように、本判決は住基ネット訴訟と同様に構造審査の手法をとりマイナンバー制度を合憲としています。ただし本判決はマイナンバー制度が税・社会保障・災害対策の3点に利用目的を限定していることを合憲の理由の一つとしているので、最近のデジタル庁のマイナンバー法「規制緩和」法案は違法の可能性があります。また、本判決はマイナンバーカードについては検討していないため、「マイナ保険証」等の問題や、xIDなどの民間企業によるマイナンバーカードの利用にはお墨付きを与えていません。

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■参考文献
・黒澤修一郎「プライバシー権」『憲法学の現在地』(山本龍彦・横大道聡編)139頁
・成原慧「プライバシー」『Liberty2.0』(駒村圭吾編)187頁
・山本龍彦「住基ネットの合憲性」『憲法判例百選Ⅰ 第7版』42頁
・高木浩光「個人情報保護から個人データ保護へ(6)」『情報法制研究』12号49頁

■関連する記事
・マイナンバー制度はプライバシー権の侵害にあたらないとされた裁判例を考えた(仙台高判令3・5・27)
・備前市が学校給食無償をマイナンバーカード取得世帯のみにすることをマイナンバー法から考えたーなぜマイナンバー法16条の2は「任意」なのか?(追記あり)
・デジタル庁のマイナンバー法9条および別表の「規制緩和」法案を考えた
・デジタル庁「教育データ利活用ロードマップ」は個人情報保護法・憲法的に大丈夫なのか?



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1.備前市が学校給食無償をマイナンバーカード取得世帯のみに
備前市が現在学校給食が無償であるところ、今後マイナンバーカードを取得した家庭のみに給食無償とする方針を明らかにし、ネット上で話題となっています。これに対して総務省は「自治体にそのようにするよう指示したことはない」とする一方で、河野太郎デジタル庁大臣は「そのような政策もありえる」と国会で回答しているようです。

・給食無償 マイナカード取得者のみ 備前市方針、保護者らに戸惑いも|山陽新聞
・給食費免除はマイナンバーカード取得世帯に限定 国会で賛否|NHK

このような国や自治体の政策の変更によるマイナンバーカードの事実上の強制をどのように考えるべきなのでしょうか。

2.なぜマイナンバー法16条の2はマイナンバーカードの取得を任意としているのか?
マイナンバー法16条の2第1項は、「機構(=地方公共団体情報システム機構)は、(略)住民基本台帳に記録されている者の申請に基づき、その者に係る個人番号カードを発行するものとする。」と規定しており、マイナンバーカード(個人番号カード)は国民本人が申請を行いそれに基づいて発行されると規定しており、マイナンバーカードの発行はあくまでも個人の任意であることを規定しています。

マイナンバー法
第16条の2 機構は、政令で定めるところにより、住民基本台帳に記録されている者の申請に基づき、その者に係る個人番号カードを発行するものとする。
(略)

マイナンバーカードはマイナンバーが記載されているだけでなく、ICチップ部分に公的個人認証サービスの電子証明書(署名用電子証明書と利用者署名用電子証明書)があり、この電子証明書によりe-TAXやマイナポータルや民間企業によるネットショッピング等による利用ができるようになっています。またICチップの空き領域は、行政機関や自治体が図書館利用カードや公共施設予約などに利用できることとなっています。

マイナンバーカードの図
総務省「個人番号カードの普及・利活用について」3頁より)

この点、元内閣官房社会保障改革担当室参事官補佐でマイナンバー法の立案担当者の水町雅子先生の『逐条解説マイナンバー法』258頁以下は、このようにマイナンバーカードはメリットとして、その普及を目指して利便性の向上のために多目的カード化のさまざまな政策が検討されている一方で、「カードや番号が幅広く多目的化すると、万一、カードや番号が悪用された場合に、さまざまな情報を名寄せ盗用される危険性があるなど、プライバシー権を始めとする個人の権利利益の侵害のおそれが高い。」というデメリットがあると解説しています。

そのため同書は、「個人にとっては、(略)自らが個人番号カードを持つのか持たないのか選択し、また個人番号カードの機能について選び取るという意識が必要」であると解説しています。 この点は、日本が中国などとは異なり、自由な民主主義国家であることに照らせば(憲法前文第1段落、1条)、国や自治体が強制するのではなく、国民個人が自由意思により判断することは当然のことと思われます。

そして同書は、「また政府が政策判断するに当たっては、国民利便性の向上、個人番号カードの可能性のみを検討するのではなく、多目的化を脅威と感じる国民の素朴な感情を受け、国民が個人番号カードを選択するかどうか、どの機能を選択するかどうか、自身で十分な情報を得た後に選び取れるような周知が必要である」と解説しています。

つまり、マイナンバーカードは国民一人一人が自らが個人番号カードを持つのか持たないのか選択し、また個人番号カードの機能について選び取るものであり、そのためにマイナンバー法16条の2はマイナンバーカードの発行を任意としているのであって、政府や自治体は、「政策判断するに当たっては、国民利便性の向上、個人番号カードの可能性のみを検討するのではなく、多目的化を脅威と感じる国民の感情を受け、国民が個人番号カードを選択するかどうか、どの機能を選択するかどうか、自身で十分な情報を得た後に選び取れるよう」にする必要があるのです。

したがって、備前市がマイナンバーカードの取得を住民に事実上強制し普及を促すために、学校給食費無償はマイナンバーカードを取得した世帯だけに限るとの政策は、マイナンバー法16条の2がマイナンバーカードの取得は任意であると規定している趣旨・目的に反しています。

(同様に、国はマイナンバーカードの取得を国民に事実上強制するために、紙の健康保険証を廃止し健康保険証をマイナンバーカード化する政策を推進していますが、これもマイナンバー法16条の2に違反しているものと言えます。)

3.個人情報と本人の同意
また、マイナンバー法はマイナンバーに関しては同法9条で個人情報の利用目的を税・社会保障・災害対策の3つに関連するもののみに限定列挙して法定しています。

一方、マイナンバーカードのICチップ部分の電子証明書や空き領域を利用して取扱われる個人情報は同法9条などには利用目的を法定されていないので、これらの個人情報については個別の国民の本人の同意によって、目的外利用や第三者提供などが有効なものとなります(個人情報保護法18条1項、27条1項)。

この意味でも、マイナンバーカードの取得は国民個人の任意による同意に基づきなされるべきであり、国や自治体が事実上の強制でマイナンバーカードを取得させることは、マイナンバー法の一般法である個人情報保護法18条、27条などとの関係でも妥当ではありません。

4.まとめ
このように、マイナンバーカードは国民が自らが個人番号カードを持つのか持たないのか選択しするものであり、そのためにマイナンバー法16条の2はマイナンバーカードの発行を任意としているのであり、政府や自治体は、「政策判断するに当たっては、国民利便性の向上、個人番号カードの可能性のみを検討するのではなく、多目的化を脅威と感じる国民の感情を受け、国民が個人番号カードを選択するかどうか、自身で十分な情報を得た後に選び取れるよう」にする必要があります。また備前市などの自治体や国が、国民にマイナンバーカードを事実上強制することは、個人情報保護法18条、27条の本人同意を没却するものでありこれも問題です。

したがって、備前市や国が国民・住民にマイナンバーカードを事実上強制するような政策を行うことは、マイナンバー法16条の2や個人情報保護法18条、27条などに反して違法なものといえます。

■追記・憲法26条2項・14条1項について(2023年2月24日)
憲法26条2項後段は「義務教育は、これを無償とする。」と規定しています。この「無償」を「教育に必要な部分」まで含むと解すると、給食費もこれに含まれることになります。

日本国憲法
第26条 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。

第14条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

本件では備前市は教育費の無償の判断にマイナンバーカードを使って世帯の所得調査を行う等のことをしているわけではないので、マイナンバーカード取得の有無で学校給食費の無償の有無を判断することは憲法26条2項との関係でも違法ということになります。

また、備前市がマイナンバーカードを取得している世帯の児童にしか給食費無償を適用せず、マイナンバーカードを取得していない世帯の児童の給食費を有償とすることは、あらゆる差別を禁止する法の下の平等(憲法14条1項)と教育の機会均等を定める憲法26条1項に抵触しており違法なものと思われます。

※この憲法26条、14条の部分については、専修大学名誉教授の石村修先生(憲法学)にご教示をいただきました。石村先生誠にありがとうございました。

■追記(2023年3月18日)
47NEWSの「マイナカードないと給食費有料、市の方針に「違法性の疑い」指摘 岡山・備前市、人口超える反対署名」に、名古屋大大学院法学研究科の稲葉一将教授(行政法)のつぎのようなコメントが掲載されていました。

「条例案の『特に必要がある』か否かの法的基準は、給食費などの場合、教育基本法にのっとったものでなければならない。信条で差別してはならず、子どもの教育条件は同じようにするのが行政の責任だ。また、全国で無償化が広がる中であえて(条例案で定めた)有償が原則ならば、例外を認めることが教育の機会均等のために必要だという理由でなければ法的基準から逸脱する」

「学校給食の無償化は本来教育制度の中で行うべきもので、仮にマイナカード取得が無償化の目的達成のために必要な手段ならば、そのように説明すべきだ。しかし実際の目的はデジタル化の推進。目的である無償化と手段であるカード取得に対応関係がなければ、行政法上、問題になる。また、自治体が公金を支出して行う無償事業の対象者を恣意的に扱うことは、平等原則の観点から許されない。無償化する対象者を区別する場合には正当な理由が必要だが、給食無償化にはカードを使わなければならない理由はない。違法性が疑われ、住民監査請求などを起こされる可能性もある」

「自治体は国の出先機関ではない。住民の期待に応えるためには国から距離を置き、政策に問題点がないか確認しなければならないが、備前市はむしろ国のカード普及政策を国よりも一歩先んじて進めようとしていないか。その背景には地方財政の問題がある。自治体は国の政策の方針に沿って予算を勝ち取る競争に敏感にならざるを得ず、自治体間の財政調整と均衡を理念とする地方交付税法の趣旨も曲げられている」

■追記(2023年3月23日)
報道によると本日、備前市でマイナンバー関連の条例が可決したようです。
・備前市議会 マイナンバーカード関連条例すべて可決|NHKニュース

このNHKの記事によると、吉村武司・備前市長は「個人情報の漏えいなどまったく危惧はなく、何の問題もないと考えている」と主張しているそうですが、マイナンバーカードの任意性(マイナンバー法16条の2)や平等原則(憲法14条1項、26条1項)、個人の自己決定権(憲法13条)などは無視なのでしょうか?ずいぶん横暴な気がします。

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■関連する記事
・マイナンバー訴訟最高裁判決を読んでみたー最高裁第一小法廷令和5年3月9日判決
・マイナポータル利用規約と河野太郎・デジタル庁大臣の主張がひどい件(追記あり)
・デジタル庁「教育データ利活用ロードマップ」は個人情報保護法・憲法的に大丈夫なのか?
・スーパーシティ構想・デジタル田園都市構想はマイナンバー法・個人情報保護法や憲法から大丈夫なのか?



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マイナンバーカード
1.はじめに
マイナンバーカードに保険証を一体化すると政府が方針を打ち出すなど、最近、マイナンバー制度が話題ですが、今度はマイナポータルの利用規約の免責条項の部分がひどいとネット上で炎上ぎみとなっています。つまり、マイナポータル利用規約の免責条項が、何かあっても「国は一切の責任を負わない」と規定していることがひどいと話題になっているところ、本日(2022年10月29日)のネット記事(「情報流出しても責任負わず? マイナポータル「免責事項」に疑義続出 河野デジタル相の回答は?」ITmediaニュース)によると、河野太郎・デジタル庁大臣は「一般的な(IT企業のサービスの)利用規約と変わらない」と反論しているとのことです。そこで私もマイナポータルの利用規約を読んでみました。

2.マイナポータル利用規約3条と23条1項
すると、マイナポータル利用規約3条と23条1項はたしかに「国は一切の責任を負わない」との趣旨の規定していますが、これはいくらなんでも無理筋と思われます。

マイナ1
(マイナポータル利用規約3条)

マイナ2
(マイナポータル利用規約23条1項)

・マイナポータル利用規約|デジタル庁

3.定型約款
たしかに民間企業などの契約書や約款などの作成の実務においては、民法の一般原則として、「契約自由の原則」があるために、労働基準法などの強行法規に抵触しない限り、約款や契約書などは当事者が原則自由に作成し、それに基づいて契約などを締結することができます。このマイナポータル利用規約も約款の一つといえます。

しかし、近年改正された民法は定型約款の規定を新設して約款の取扱いを明確化しています(民法548条の2以下)。そして同548条の2第2項は消費者契約法10条に似た条文ですが、「相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項であって、その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして第一条第二項(=信義則)に規定する基本原則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものについては無効」と規定しています。

つまり、約款が有効であっても、その個別の約款条項が相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項であり、取引上の社会通念に照らして信義則に反して相手方の利益を一方的に害するような約款条項は無効なのです。そのため「何があっても一切の責任は負わない」という趣旨のこのマイナポータル利用規約3条、23条1項は法的に無効と評価される可能性が高く、無理筋といえます。

4.マイナンバー法・個人情報保護法
また、マイナンバー(個人番号)は行政が保有する国民個人の個人データを名寄せ・突合できる”究極のマスター・キー”ですので、マイナンバー法は国の責務として「国は…個人番号その他の特定個人情報の取扱いの適正を確保するために必要な措置を講」じなければならないと法的義務を規定しています(マイナンバー法4条1項)。

マイナンバー法(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)
(国の責務)
第4条 国は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、個人番号その他の特定個人情報の取扱いの適正を確保するために必要な措置を講ずるとともに、個人番号及び法人番号の利用を促進するための施策を実施するものとする。
(略)

5.ベネッセ個人情報漏洩事件
この点、マイナンバー法の一般法にあたる個人情報保護法は民間企業や行政機関等に個人データの滅失、棄損や漏洩などを防止するための安全管理措置を講じなければならないと法的義務を課しています(法23条)。

そして、2014年に発覚したベネッセ個人情報漏洩事件において被害者がベネッセに損害賠償請求を行った民事裁判では、最高裁はベネッセ側の安全管理措置が不十分であったことを認定し、審理を高裁に差戻し、大阪高裁はベネッセ側の損害賠償責任を認めています(最高裁平成29年10月23日判決)。

つまり、企業や行政機関等が安全管理措置などを怠った場合、損害賠償責任が発生することがあると最高裁は認めています。したがって、この判例からも、「何があっても一切の責任をデジタル庁は負わない」というこのマイナポータル利用規約3条、23条1項の免責条項はちょっと無理筋すぎます。

6.国家賠償法
なお、万が一マイナンバー制度で個人情報漏洩事故などが発生した場合には、被害者の国民はデジタル庁や国を相手取って国家賠償法に基づく損害賠償請求の訴訟を提起することになると思われます。

国家賠償法1条1項は「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」と規定しています。そのため万一国賠訴訟になった場合には、「一切の責任を負わない」というマイナポータル利用規約3条、23条はあまり意味がないように思われます。行政と民間企業の違いを河野大臣やデジタル庁の官僚たちが理解できているのか疑問です。

国家賠償法
第1条 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
(略)

7.まとめ
このブログではこれまで何回かデジタル庁に関して取り上げてきていますが、河野太郎大臣やデジタル庁の官僚の方々は、法律面があまり強くない方々ばかりなのでしょうか。国民の一人としては大いに心配になります。

個人情報保護法制の趣旨・目的は「個人情報の利活用」の面だけでなく「個人の権利利益の保護」と「個人の人格尊重」(個人情報保護法1条、3条)の面があるわけですので、デジタル庁の役職員の方々は、デジタル行政の企画立案や運営にあたっては、個人の個人情報やプライバシー権(憲法13条)の保護への十分な配慮もお願いしたいものです。

■追記(2022年11月24日)
本日の朝日新聞が本件を取り上げていますが、マイナンバー法の立案担当者の弁護士の水町雅子先生の「一般的に利用規約は、免責の範囲を広くとる記述に偏りやすい。規約への同意の有効性にも問題が残る。ただ、マイナポータルは、嫌なら使わなければいいという民間のサービスとは違う。よりわかりやすい説明が求められる。」とのコメントが掲載されています。

・マイナポータル、国は免責 「一切負わない」規約に批判も|朝日新聞

■追記(2022年11月30日)
神奈川新聞によると、河野太郎大臣はマイナポータル利用規約の免責規定の改定を行う方針を記者会見で公表したとのことです。

・マイナポータル規約 河野デジタル相が「修正指示」|神奈川新聞

■追記(2022年12月29日)
朝日新聞などによると、批判を受けて、デジタル庁はマイナポータルの利用規約を見直すことを表明したとのことです。

・マイナポータル「一切免責」改定 デジタル庁、規約へ「無責任」批判受け|朝日新聞

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■関連する記事
・保険証の廃止によるマイナンバーカードの事実上の強制を考えたーマイナンバー法16条の2(追記あり)
・デジタル庁「教育データ利活用ロードマップ」は個人情報保護法・憲法的に大丈夫なのか?
・スーパーシティ構想・デジタル田園都市構想はマイナンバー法・個人情報保護法や憲法から大丈夫なのか?
・デジタル庁のプライバシーポリシーが個人情報保護法的にいろいろとひどい件(追記あり)



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2022年10月13日に河野太郎・デジタル庁大臣が紙の保険証を廃止しマイナンバーカード(個人番号カード)に一本化する方針を示したことをが大きな賛否を呼んでいます。

マイナンバー(個人番号)は税・社会保障・災害対応の3つに利用目的が法定されており、それ以外に利用することは違法となります(法9条)。一方、マイナンバーカードは法9条にとらわれずに身分証明書に利用ができるほか、マイナンバーカードのICチップには①公的個人認証のための電子証明書と②空き領域があります。

マイナンバーカードの3つの利用箇所
総務省サイト「個人番号カードの普及・利活用について」3頁)

①公的個人認証のための電子証明書は、e-TAX、マイナポータルの他、総務大臣が認定した民間事業者の利用も想定されています。具体例としては、金融機関のインターネットバンキング、インターネットショッピングなどです。

また、②ICチップの空き領域は、国の機関は総務大臣の定めるところにより、市町村等は条例で定めるところにより利用できるとされており、具体例としては、印鑑証明書、住民票の写し等のコンビニ交付、証明書自動交付、図書館利用カード、公共施設予約、地域の買い物ポイントなどが想定されています。

さらに上述の総務省の資料9頁によると、政府与党は学歴・職歴なども②のICチップの空き容量に収集することを検討しているようです。(注:2021年に成立したデジタル関連法のなかのマイナンバー法改正では、医師・看護師などの国家資格を国がマイナンバーで一元管理するための法改正なども実施された。)

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(2021年のデジタル社会形成法案の概要。個人情報保護委員会サイトより)

このように「国民の利便性向上」という名目のために、マイナンバーカードは今後もますます多目的化・ワンカード化が推進されるものと思われます。

この点、マイナンバー法の立案担当者である弁護士の水町雅子先生は著書でつぎのように解説しておられます。

カードや番号が幅広く多目的化すると、万一、カードや番号が悪用された場合に、さまざまな情報を名寄せ、盗用される危険性があるなど、プライバシー権を始めとする個人の権利利益を侵害するおそれが高い。

個人番号カードの取得は義務制ではない。(=マイナンバー法16条の2)…個人にとっては…自らが個人番号カードを持つのか持たないのか選択し、また個人番号カードの機能について選び取るという意識が必要であると考える。また政府が政策判断をするにあたっては、国民の利便性の向上、個人番号カードの可能性のみを検討するのではなく、多目的化を脅威と感じる国民の感情を受け、国民が個人番号カードを選択するかどうか、どの機能を選択するかどうか、自身で十分な情報を得た後に選び取れるような周知が必要であると考える。
(水町雅子『逐条解説マイナンバー法』257頁~258頁より)

このようにマイナンバー法の立案担当者である水町先生は、「政府が政策判断をするにあたっては、国民の利便性の向上、個人番号カードの可能性のみを検討するのではなく、多目的化を脅威と感じる国民の感情を受け、国民が個人番号カードを選択するかどうか、どの機能を選択するかどうか、自身で十分な情報を得た後に選び取れるような周知が必要である」と解説しておられますが、今般の「マイナ保険証」による"マイナンバーカードの事実上の強制"を打ち出した河野大臣、岸田首相などの政府与党の方針は、マイナンバー法の定めるマイナンバーカード制度の趣旨・目的に大きく反すると考えられます。

日本は自由な民主主義国家であり(憲法前文、1条)、国家主義・全体主義の中国やロシアなどとは違うのですから、河野大臣、岸田首相や政府与党は今からでもマイナンバーカードの国民への強制という国家主義・全体主義的な政策を撤回すべきです。

■追記
なお、上でもふれたとおり、マイナンバー(個人番号)はマイナンバー法9条が限定列挙する税・社会保障・災害対策の3つの目的のために法9条を根拠として行政機関等が強制的に個人のマイナンバーを含む個人情報を利用することが可能となっている一方で、マイナンバーカードに紐付いた個人情報については法9条に縛られず行政機関や民間企業等が自由に個人の個人情報を利用可能となっているため、当該個人がマイナンバーカードを取得し利用すること、マイナンバーカードを利用するとしてどのような機能を利用するかについて、当該個人の本人の任意の判断(本人の同意)が必須となっています。マイナンバー法16条の2第1項、同17条1項が、マイナンバーカードの取得を国民個人の申請に基づく任意のものと明記しているのはその趣旨ともいえます。
マイナンバー法(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)

(個人番号カードの発行等)
第16条の2 機構は、政令で定めるところにより、住民基本台帳に記録されている者の申請に基づき、その者に係る個人番号カードを発行するものとする。
(略)

(個人番号カードの交付等)
第17条 市町村長は、政令で定めるところにより、当該市町村が備える住民基本台帳に記録されている者に対し、前条第一項の申請により、その者に係る個人番号カードを交付するものとする。この場合において、当該市町村長は、その者が本人であることを確認するための措置として政令で定める措置をとらなければならない。
(略)

このマイナンバー法16条の2第1項、17条1項の規定や趣旨からも、河野大臣、岸田首相の保険証のマイナンバーカードへの一体化による国民へのマイナンバーカードの事実上の強制は違法であるといえます。

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■参考文献
・水町雅子『逐条解説マイナンバー法』257頁~258頁
・黒田充『あれからどうなった?マイナンバーとマイナンバーカード』163頁、199頁
・総務省サイト「個人番号カードの普及・利活用について」

■関連する記事
・健康保険証のマイナンバーカードへの一体化でカルテや処方箋等の医療データがマイナンバーに連結されることを考えた
・スーパーシティ構想・デジタル田園都市構想はマイナンバー法・個人情報保護法や憲法から大丈夫なのか?-デジタル・ファシズム
・デジタル庁「教育データ利活用ロードマップ」は個人情報保護法・憲法的に大丈夫なのか?
・マイナンバー制度はプライバシー権の侵害にあたらないとされた裁判例を考えた(仙台高判令3・5・27)



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xidトップ画面2
(xID社サイトより)

■追記(2021年11月11日)
渋谷区は、11月10日付で施設予約システムの開発業務の委託先を、xID社でなく別の企業にすることを決定したとのことです。詳しくは本ブログ記事下部の追記をご参照ください。

このブログ記事の概要
xID社は11月4日付のプレスリリースで、12月から提供開始としている新しいxIDについて、マイナンバーから「確認要素」を生成することを止めて、マイナンバーカードの電子証明書の「新旧シリアル番号の紐付けサービス」を利用するとしているが、xIDの法的性質が「広義の個人番号」(法2条8項かっこ書き、いわゆる「裏番号」「裏個人番号」)であることは従来と同じであり、xID社がxIDを法9条の定める税・社会保障・災害対応の3つの利用目的以外に利用しようとしていることに変わりはないので、やはり12月以降のxIDもマイナンバー法9条違反の違法なサービスである。

1.はじめに
このブログでは、以前、初期登録時にマイナンバーの入力が必要であるxID社のデジタルID・共通IDのxIDが、「個人番号に対応し、当該個人番号に代わって用いられる番号、記号その他の符号」つまりマイナンバーと法的に同等の性質を持つ「広義の個人番号」(いわゆる「裏番号」・「裏個人番号」)であり、そのようなxIDをマイナンバー法9条が定める税・社会保障・災害対応以外の利用目的に利用することは法9条等に違反する違法なものではないかとの問題を取り上げました。
・xIDのマイナンバーをデジタルID化するサービスがマイナンバー法違反で炎上中(追記あり)

この問題に関して11月4日に、xID社は、xIDに関する新たなプレスリリースを公表しました。そのため、本ブログ記事では、このxID社の新しいプレスリリースをみてみたいと思います。

しかし、結論を先取りしてしまうと、xID社が12月から提供を開始するとしている新しいxIDサービスも、マイナンバー法9条などに違反する違法なサービスであることに変わりはないと思われます。

・xIDアプリの個人番号入力を伴う仕様に関するご指摘への回答と当社の今後の対応について|xID
・違法性指摘のxIDアプリが一時停止へ、社長が明かした「マイナンバー入力仕様」のわけ|日経XTECH

リリース3

リリース6
(xID社プレスリリース「xIDアプリの個人番号入力を伴う仕様に関するご指摘への回答と当社の今後の対応について」(2021年11月4日)より)

2.なぜxIDの初回登録でマイナンバーの入力が必要なのか?
xID社のリリースによると、xID社はxIDサービスを11月4日から一旦中止とし、12月中旬から仕組みを変えた新しいxIDサービスの提供を行うとしています。

xID社のリリースによると、共通ID・デジタルID・アカウントIDであるxIDそのものは、マイナンバーとは関係なくランダムに生成される番号であるとのことです。

それでは何故、初回登録時にマイナンバーの入力が必要となるかについて、日経XTECHの記事はつぎのように説明しています。

『初回登録時は、ユーザーがスマートフォンにマイナンバーカードをかざすと、xIDアプリがJPKI(=マイナンバーカードのICチップ部分の公的個人認証サービス)の署名用電子証明書を読み取り、マイナンバーカードとxIDアプリをひも付ける。具体的には、署名用電子証明書に含まれる基本4情報(氏名、生年月日、性別、住所)を暗号化し、xID社のサーバーに送信・保管する。』

そして、初回登録時になぜ利用者がマイナンバーの入力を要求されるかについて、日経XTECHの記事はつぎのように記述しています。

『xID社の日下光社長は次のように説明する。「マイナンバーの一部と他の情報を使い、アカウント作成者が新規登録者であるか、それとも過去にアカウントを登録した人物であるかを確認するための(xIDアプリ独自の)要素である『確認要素』を生成している」。

『確認要素を生成する具体的な手順はこうだ。まず、入力させた12桁のマイナンバーと、マイナンバーカードから読み取った8桁の生年月日を加えた20桁の数字をつくる。これをハッシュ化したうえでバイト配列に変換し、さらにそこから数カ所のバイトを抽出・変換して確認要素とする。ここまでの過程はxIDアプリ内で実行する。』

『xIDアプリは生成した確認要素のみを、xID社のサーバーに送信し、サーバー側で確認要素とアカウントIDとをひも付けて保管する。同一のユーザーが異なるメールアドレスや異なるスマホを使って、新規にアカウントを登録したとしても、登録時に確認要素を生成することで、1人が複数のアカウントを登録することを防げるというわけだ。ただし、確認要素は一意となるデータではなく、「他人の確認要素と一定確率で衝突する可能性はある」(日下社長)。』(「違法性指摘のxIDアプリが一時停止へ、社長が明かした「マイナンバー入力仕様」のわけ」日経XTECH2021年11月4日より)

つまり、デジタルID・共通IDのxIDそのものはxIDアプリがマイナンバーとは関係なくランダムに生成する番号である一方で、利用者に入力させたマイナンバーと8桁の生年月日を加えた20桁の番号をハッシュ化し、それをバイト配列に返還し、さらにそこから数か所のバイトを抽出・変換して「確認要素」を生成し、この「確認要素」とxIDをセットでxID社のサーバーに保管していたとのことです。

そしてこの「確認要素」は、同一の利用者がメールアドレスやスマホ端末などを変えて登録作業を行うことにより、同じ人間が複数のxIDを持てないように、つまり一人一つのxIDを付与するために利用していたとのことです。

しかし、10月22日に個人情報保護委員会は、「マイナンバーを元にハッシュ化するなどして不可逆的に生成した番号も「広義の個人番号」(マイナンバー法2条8項かっこ書き、いわゆる「裏番号」「裏個人番号」)に該当するので、マイナンバーをハッシュ化するなどして生成した番号を法9条の定める税・社会保障・災害対応の3つの利用目的以外に利用することは法9条違反のおそれがある。」とのプレスリリースを出しました。
・番号法第2条第8項に定義される個人番号の範囲について(周知)|個人情報保護委員会

これを受けてxID社の今回のリリースは「マイナンバーから生成された「確認要素」は法2条8項かっこ書きの「広義の個人番号に該当する」との個人情報保護委員会の見解を受けて、12月中旬以降の新しいxIDサービスにおいては、マイナンバーから「確認要素」を生成するスキームを止めるとし、その上で、次のような新しい仕組みを導入するとしています。

同一の個人が複数のアカウントを持てない仕組みを提供するために、新たにマイナンバーカードの電子証明書の「新旧シリアル番号の紐付けサービス」を利用します。』『 「新旧シリアル番号の紐付けサービス」は、J-LIS(地方公共団体情報システム機構)が提供する⺠間事業者向けの付加サービスです。マイナンバーカードの電子証明書が更新された場合に、更新前と更新後それぞれの電子証明書を紐づけ、保有者の同一性を確認できるようになります。』(xID社のリリースより)

つまり、xID社は、あくまでも利用者・国民に一人一つの共通IDであるxIDを付与するために、マイナンバーをハッシュ化するなどして「確認要素」を生成するかわりに、12月中旬以降は、マイナンバーカードの電子証明書の「新旧シリアル番号の紐付けサービス」を利用する方針であるとのことです。

ここで、このマイナンバーカードの電子証明書の「新旧シリアル番号の紐付けサービス」について地方公共団体情報システム機構(J-LIS)サイトの説明ページをみると、たしかに平成29年1月開始の民間向けの新サービスとして、『利用者証明用電子証明書が更新された場合に、更新前と更新後それぞれの利用者証明用電子証明書の保有者の同一性を確認できないことに対応するため、民間事業者向けの付加サービスとして、新しい利用者証明用電子証明書のシリアル番号を用いて公的個人認証サービスに問い合わせると、1世代前の利用者証明用電子証明書のシリアル番号を提供するサービスを、平成29年1月から開始しました 。』と解説されています。
新たに開始したサービス
(地方公共団体情報システム機構(J-LIS)サイトより)
・民間事業者が公的個人認証サービスを利用するメリット|地方公共団体情報システム機構(J-LIS)

3.マイナンバーカードの公的個人認証サービス
総務省サイトのマイナンバーカードの民間利用の説明ページのなかの説明資料「個人番号カードの概要及び公的個人認証サービスを活用したオンライン取引等の可能性について(参考資料)」には、マイナンバーカードのICチップ部分の電子証明書のシリアル番号等を利用して、例えば銀行口座の新規開設などの場面でマイナンバーカードの電子証明書のシリアル番号等が「なりすまし」や「改ざん」防止のための本人確認として利用できることが説明されています。
・マイナンバー制度とマイナンバーカード>公的個人認証サービスによる電子証明書(民間事業者向け)|総務省
・個人番号カードの概要及び公的個人認証サービスを活用したオンライン取引等の可能性について(参考資料)(PDF)|総務省

公的個人認証サービス1
公的個人認証サービス3
(総務省「個人番号カードの概要及び公的個人認証サービスを活用したオンライン取引等の可能性について(参考資料)」より)

しかし、総務省サイトやその説明ページの資料の解説などを読むと、このマイナンバーカードのICチップ部分の公的個人認証サービスは、あくまでも「なりすまし」や「改ざん」などを防ぐための本人確認のための機能です。つまり例えば銀行口座の開設の場面でいえば、銀行口座の新規開設をしたいという利用者・国民が確かに当該利用者・国民の本人であることの確認を行って「なりすまし」や「改ざん」を防止することが「本人確認」です。この「本人確認」は、この銀行口座の新規開設の場合における銀行口座番号を作った利用者・国民が本人であることを確認するための仕組みであって、当該銀行口座番号が国民に一人一つの唯一無二性を証明する機能ではないはずです。

そのため、利用者・国民の「本人確認」をして「なりすまし」「改ざん」を防ぐという目的のための機能である、マイナンバーカードの電子証明書の「新旧シリアル番号の紐付けサービス」を、現行のマイナンバーをハッシュ化等して「確認要素」を生成し、当該「確認要素」により利用者・国民に付与するxIDを利用者・国民に一人一つの番号であること(唯一無二性・悉皆性)を担保することの代わりに利用することは、マイナンバーカードの電子証明書の「新旧シリアル番号の紐付けサービス」や、マイナンバーカードの電子証明書の「本人確認」という利用目的を逸脱した脱法的なものなのではないでしょうか?

4.なぜxID社は国民一人に一つの共通IDのxIDに執着するのか?
そもそも、xID社はなぜここまでして、xIDを国民に一人一つの番号とすることに異常なまでに執着するのでしょうか。今回のプレスリリースでもxID社はマイナンバーカードの「新旧シリアル番号の紐付けサービスを利用」する目的を「同一の個人が複数のアカウントを持てない仕組みを提供するため」として、xIDを国民に一人一つ(唯一無二性・悉皆性)の性質を持つ共通IDとする方針は継続する方針です。

この点、xID社はこのブログでも取り上げたとおり、2020年10月2日の経産省の「第5回インフラ海外展開懇談会」に提出されたxID社のxIDに関する資料(「資料3 xID 日下様 ご提供資料(第5回インフラ海外展開懇談会 日本で唯一の次世代デジタルIDアプリ「xID」)」において、『Society 5.0の社会においては、パーソナルデータ(個人情報)を活用した個人最適なサービスの提供などを実現するにはデジタル世界で、あらゆるサービスを利用するAさんがどのサービスにおいても同一の人物である。と特定すること=”ユーザーの同一性・一意性担保”が重要です。利便性・信頼性と透明性を担保しながら利用できるデジタルIDがあれば、ユーザー同意に基づくパーソナルデータの活用が実現できます。』とxIDの趣旨・目的を説明しています。
xIDの概要1

xidの概要2
(2020年10月2日の経産省「第5回インフラ海外展開懇談会」の「資料3 xID 日下様 ご提供資料(第5回インフラ海外展開懇談会 日本で唯一の次世代デジタルIDアプリ「xID」)」より)
・第5回 インフラ海外展開懇談会|経済産業省

つまり、xIDとは「民間企業や各自治体、各官庁などがばらばらに保有している国民の個人データを、本人の同一性・一意性が担保できるデジタルIDであるxIDにより、官民のさまざまなサービスを利用する個人の個人データを一元管理・集中管理して国民の個人データの利活用を実現するもの」であり、すなわち、xIDとは一言で言うならば、「さまざまな行政機関・自治体やさまざまな民間企業がばらばらに保有する国民の個人データを、国・大企業が一元管理・集中管理して、国・大企業がマイナバー法に縛られずに自由な用途に利用できる唯一無二性・悉皆性の性質を持つ「民間版マイナンバー」」(=裏個人番号・裏マイナンバー・「広義の個人番号」、マイナンバー法2条8項かっこ書き)と言えます。

しかしそのような、国・自治体やさまざまな民間企業などがばらばらに保有する国民の個人情報を、国・大企業などがxIDなどの国・企業などの保有する個人情報を名寄せ・突合できるマスターキーの共通IDで一元管理・集中管理することは、国民のあらゆる分野・項目の個人情報・個人データが国・大企業により一元管理・集中管理され、いわば「国民個人個人が国家・大企業の前であたかも丸裸にされるがごとき状況」(住基ネット訴訟・金沢地裁平成17年5月30日判決)が発生することとなってしまいます。

そのような状況下では、国民のプライバシーや私的領域(憲法13条)、表現の自由(21条1項)、内心の自由(19条)、信仰の自由(20条)などの国民の基本的人権が国家・大企業の前でゼロとなってしまい、国民が国家や大企業による監視・モニタリングにおびえ、日々の生活における行動や表現行為などが委縮し、安心して人間らしいのびのびとした生活を送れなくなってしまう危険があります。つまり「国民総背番号制」の危険や、中国、北朝鮮やかつてのソ連やその衛星国家などの旧共産圏、あるいはジョージ・オーウェルのSF小説「1984」、最近のアニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」などのような「超監視国家」・「超監視社会」の危険があります。

マイナンバー法は、行政の効率化や行政のコストダウン等の目的のために、国民すべてに割り当てられ(悉皆性)、国民一人に一つの番号(唯一無二性)の性質を有するマイナンバー(個人番号)という、行政が保有するあらゆる個人情報・個人データを名寄せ・突合できる究極のマスターキーとしてのマイナンバーを創設する一方で、同法9条はマイナンバーの利用目的を税・社会保障・災害対応の3つに限定し、利用できる行政機関・民間企業も限定的に定めてそれ以外の利用を罰則付きで禁止しています。

また、本人や行政機関・民間企業等も法9条の定める利用目的以外にマイナンバーを提供することを禁止しており、かりに「本人の同意」があったとしても、法9条の定める利用目的以外のマイナンバーの提供・利用・保存などは禁止されています(法19条)。

マイナンバー法はこのような厳しい法制度により、行政の効率化とともに、マイナンバーが国や大企業などに悪用され、日本社会が中国や北朝鮮などのような超監視国家となるリスクを防止しているのです。

にもかかわらず、xID社が実施している「さまざまな行政機関・自治体やさまざまな民間企業がばらばらに保有する国民の個人データを、国・大企業が名寄せ・突合できるようにして一元管理・集中管理して、国・大企業が自由な用途に利用できる「民間版マイナンバー」」というxIDサービスは、つまり、国・自治体・大企業等がマイナンバー法を潜り抜けて、あらゆる用途に好き勝手に国民のあらゆる個人情報・個人データを名寄せ・突合して利活用できるようにするために、日本社会の「超監視国家」化を防止するためのマイナンバー法9条を潜脱するための脱法的なサービスが目的であると思われ、これはマイナンバー法9条違反として許されないものなのではないでしょうか。

xID社は、今回のプレスリリースで、マイナンバーをハッシュ化等して「確認要素」を生成するスキームは止めて、12月中旬以降は、マイナンバーカードの電子証明書の「新旧シリアル番号の紐付けサービス」を利用した新サービスを提供する方針であるそうです。

しかし上でみたように、この電子証明書の「新旧シリアル番号の紐付けサービス」の利用は、マイナンバーカードの電子証明書機能の「本人確認」という本来の目的を逸脱した脱法的な利用です。

また、そもそも12月中旬以降の新しいxIDも、マイナンバーカードの電子証明書の「新旧シリアル番号の紐付けサービス」の利用により、「国民一人に一つで国民すべてに割り当てられた番号」という「唯一無二性・悉皆性」というマイナンバー(個人番号)の法的性質(宇賀克也『番号法の逐条解説 第2版』24頁)が担保された、マイナンバーに代わる番号(=「広義の個人番号」「裏番号」「裏個人番号」、法2条8項かっこ書き)であることに変わりはないので、新しいxIDを税・社会保障・災害対応という法9条が規定する利用目的以外の、自治体の施設予約システムのIDや、自治体の各種の行政サービスへの電子申請のIDに利用・提供・保存などをすることは、やはりマイナンバー法9条違反や、法19条違反となると思われます。

5.まとめ
xID社は、「マイナンバーカードの電子証明書の「新旧シリアル番号の紐付けサービス」の利用」などというマイナンバー法を潜脱するための手段を考案することに力を入れるのではなく、「デジタル世界で、あらゆるサービスを利用するAさんがどのサービスにおいても同一の人物であると特定すること=”ユーザーの同一性・一意性担保”」という「広義の個人番号」(「裏番号」「裏個人番号」「民間版マイナンバー」)のxIDというマイナンバー法を潜脱する脱法的なサービス自体を断念する経営判断を行うべきではないでしょうか。

日本は個人の尊重や個人の基本的人権の確立を掲げる近代立憲主義憲法を持つ民主主義国であり、そのような近代民主主義国家においては、主権者たる国民の基本的人権を守るために、国民から負託された国会において制定された法律を遵守して行政や民間企業等が行政活動や経済活動を行う「法の支配」法治主義が大原則です。(最近、社会的に注目されているSDGsの「17の目標」も、「公正」を目標の一つに掲げています。)

xID社は日本社会の「良き企業市民」として、マイナンバー法や個人情報保護法などの法律や社会倫理・モラルを遵守するというコンプライアンス意識を持った企業活動が求められます。法律の抜け道を探すことに力を注ぎ、脱法的な企業活動を行うことは、「Gov-tech」を標榜する「良き企業市民」のやることではありません。

■追記(11月5日)
産業技術総合研究所主任研究員の高木浩光先生も11月5日にTwitterで、xIDのプレスリリースについて次のように批判する投稿をしておられます。

この期に及んで(何度変換しようが照合させようが対応して変わって用いられる限りそれが法の個人番号の定義だと言われているのに)まだこんなこと言うのですね。思考力の弱い自治体相手ならまだまだこれで通せそうでしょうか?

ひろみつ先生2
(高木浩光先生(@HiromitsuTakagi)のTwitterより)
https://twitter.com/HiromitsuTakagi/status/1456333854680092695

サイバートラストはこんな用途(1人1アカウントを実現)に新旧シリアル番号ひも付け機能を使わせちゃダメだよ。利用者が自ら証明書更新時にアカウントを継続するときに使うものだからね。

ひろみつ先生1
(高木浩光先生(@HiromitsuTakagi)のTwitterより)
https://twitter.com/HiromitsuTakagi/status/1456339328137789440

■追記(11月11日)
11月10日に、渋谷区議会議員須田賢様より、渋谷区は施設予約システム開発の業務委託先をXID社ではない企業に委託することを決定したとの情報提供をTwitterにていただきました。また須田様は、まだxID社のシステム導入を渋谷区が検討中の段階で、xID社が「渋谷区からxIDが問題ないと認定を受けた」趣旨の投稿をTwitterで行っていたことは、民間IT企業の宣伝活動・広報活動のあり方として問題がある旨も指摘しておられます。須田賢・渋谷区議様、情報提供をいただき誠にありがとうございました。
須田賢氏1
須田賢氏2
(須田賢・渋谷区議会議員(@sudaken_shibuya)のTwitterより)
https://twitter.com/sudaken_shibuya/status/1458401780027432961

この点、渋谷区11月10日付プレスリリース「令和3年度施設予約システム再構築に係る設計・開発業務委託の公募型プロポーザルの選考結果について公表します」は、令和3年度施設予約システム再構築に係る設計・開発業務委託について、xID社ではなく、ぴあ株式会社を業務委託先の選定事業者に決定したと公表しています。
・令和3年度施設予約システム再構築に係る設計・開発業務委託の公募型プロポーザルの選考結果について公表します|渋谷区

渋谷区をはじめとする自治体・行政機関について憲法15条2項、地方公務員法32条などは行政サービスの公平性・中立性や法令遵守を要求しており、法律の抜け穴を探すことばかりに熱心でコンプライアンス意識が希薄な企業風土のxID社との業務提携を行わない決定した渋谷区や渋谷区議会の判断は、極めて正当であると思われます。

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■参考文献
・水町雅子『Q&A番号法』10頁、56頁
・宇賀克也『番号法の逐条解説 第2版』24頁

■関連する記事
・xIDのマイナンバーをデジタルID化するサービスがマイナンバー法違反で炎上中(追記あり)
・東京都のLINEを利用したコロナワクチン接種啓発の「TOKYOワクション」は個人情報保護法制や情報セキュリティの観点から違法・不当でないのか?(追記あり)
・LINEの個人情報事件に関するZホールディンクスの有識者委員会の最終報告書を読んでみた
・デジタル庁がサイト運用をSTUDIOに委託していることは行政機関個人情報保護法6条の安全確保に抵触しないのか考えた(追記あり)
・デジタル庁のプライバシーポリシーが個人情報保護法的にいろいろとひどい件(追記あり)-個人情報・公務の民間化
・デジタル庁の事務方トップに伊藤穣一氏との人事を考えた(追記あり)
・健康保険証のマイナンバーカードへの一体化でカルテや処方箋等の医療データがマイナンバーに連結されることを考えた
・文科省が小中学生の成績等をマイナンバーカードで一元管理することを考える-ビッグデータ・AIによる「教育の個別最適化」
・小中学校のタブレットの操作ログの分析により児童を評価することを個人情報保護法・憲法から考えた-AI・教育の平等・データによる人の選別
・JR東日本が防犯カメラ・顔認証技術により駅構内等の出所者や不審者等を監視することを個人情報保護法などから考えた
・令和2年改正の個人情報保護法ガイドラインQ&Aの「委託」の解説からTポイントのCCCの「他社データと組み合わせた個人情報の利用」を考えた-「委託の混ぜるな危険の問題」
・河野太郎大臣がTwitterで批判的なユーザーをブロックすることをトランプ氏の裁判例や憲法から考えたー表現の自由・全国民の代表(追記あり)
・コロナ下のテレワーク等におけるPCなどを利用した従業員のモニタリング・監視を考えた(追記あり)-個人情報・プライバシー・労働法・GDPR・プロファイリング
・令和2年改正個人情報保護法ガイドラインのパブコメ結果を読んでみた(追記あり)-貸出履歴・閲覧履歴・プロファイリング・内閣府の意見
・欧州の情報自己決定権・コンピュータ基本権と日米の自己情報コントロール権
・リクルートなどの就活生の内定辞退予測データの販売を個人情報保護法・職安法的に考える
・トヨタのコネクテッドカーの車外画像データの自動運転システム開発等のための利用について個人情報保護法・独禁法・プライバシー権から考えた







































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