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本日(2024年4月3日)、岡口基一判事の弾劾裁判所において岡口判事の罷免が言い渡されました。
・岡口判事に裁判官を辞めさせる「罷免」判決、戦後8人目 弾劾裁判|朝日新聞

岡口判事の投稿が「著しい非違行為」にあたるとはとても思えません。この弾劾判決は裁判官や公務員に公平中立どころか無色透明を求めるものであまりにも不当だと思われます。無色透明がよいというのなら、人間でなく生成AIに裁判をやらせるべきとなってしまうのではないでしょうか。「けしからん投稿だ」「不謹慎」だけでは裁判官を罷免とする理由にはなりません。裁判官、全国の公務員や弁護士の方々の表現行為(憲法21条1項)に萎縮効果が働くことが強く懸念されます。

またこのレベルの投稿で裁判官の免職の判決を出すことは、独立性を有する司法に対する政府・行政の不当な干渉で三権分立に反すると思います(憲法76条3項)。

憲法
第七十六条 すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
 特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。
 すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。
さらに弾劾裁判所は裁判官も表現の自由など基本的人権を有する国民の一人であることを失念しているのではないでしょうか。むしろこのような「けしからん」レベルで弾劾裁判の訴追を行った訴追者のクレーマーぶりが強く非難されるべきです。被害者の遺族の方には同情しますが、しかし弾劾裁判が当該遺族のお気持ちに寄り添うばかりでは裁判とは言えません。

加えて、裁判官・裁判所には司法の独立が憲法上規定されているにもかかわらず、岡口判事を守ろうとせず、「けしからん」との一部世論に迎合した裁判所上層部も厳しく批判されるべきだと思われます。

なお、立命館大の市川正人特任教授(憲法)の時事通信の記事つぎのコメントが大変参考になります。
立命館大の市川正人特任教授(憲法)は「投稿の意図よりも遺族感情を傷つけたという結果を過大に重視した判断だ」と分析。裁判官としての威信を著しく失うほどの非行に当たるかの説明が尽くされておらず、「国会議員が胸三寸で裁判官を追放できることになってしまいかねない」と懸念を示した。

「裁判官、罷免に慎重意見 識者「萎縮効果与える」 岡口判事弾劾」時事通信より)

■関連するブログ記事
・裁判官はツイッターの投稿内容で懲戒処分を受けるのか?-岡口基一裁判官の分限裁判

■追記
岡口判事の弾劾裁判に至る経緯については、つぎの相馬獄長氏のnoteが参考になります。
岡口裁判官の訴追までの経緯
岡口裁判官の民事裁判の経緯・その1

■追記(2024年4月5日)
憲法学者で専修大学名誉教授の石村修先生より、本ブログ記事に関してつぎのようなコメントをいただいたので共有させていただきます。石村先生どうもありがとうございました。

 弾劾の訴えは相当の件数があり、裁判に敗訴した人たちが裁判官を訴えるパターンがあるのは困った現象である。
 弾劾制度については、日本は裁判官だけだが、本来はアメリカのように、大統領の弾劾があってしかるべきだ。また、裁判官を、国会が弾劾するという制度が「権力分立、又は司法権の独立、裁判官の独立」と符合するかも考えなければならないところだ。
 かつての「鬼頭判事」事件も同じく罷免になった。しかし、実際は復権し、弁護士としての資格を得ている。
 今回の岡口氏のケースも実体はどうなのか。マスコミは正確には報道していないようだ。投稿癖があるようだが、市民として自分の意見をいえるかどうか、とくに、自分の関わった事件での守秘義務をまもる限りで、一般に事例に対して意見を主張する自由はあると思う。

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