なか2656のblog

とある会社の社員が、法律などをできるだけわかりやすく書いたブログです

タグ:平井卓也

デジタル庁トップページ
1.デジタル庁のウェブサイト
9月1日から正式に発足したデジタル庁は、サイト作成や運用にSTUDIO株式会社というベンチャー企業の「コード不要」というSTUDIOというサービスを利用して同庁サイトの作成や運用を行っていますが、STUDIO社のプライバシーポリシーは個人情報保護法違反の部分があり、また同社の利用規約は「当社システムは高度な安全性はない」と明示しています。つまり、デジタル庁(および内閣IT戦略室)は厚労省のCOCOAの件などと同様に、委託先の選定等の安全確保措置を十分に実施していない行政機関個人情報保護法6条違反の可能性があります。

2.STUDIO社の利用規約
ITmediaニュースなどの報道によると、デジタル庁のサイトは、ベンチャー企業のSTUDIO株式会社のSTUDIOという「コード不要」なシステムで作成されているようです。同社サイトをみると、主に個人事業主や中小企業向けのサービスのようですが。「コード不要」とは、いかにも新しいものがお好きな平井大臣が好みそうなサービスですが、共同入札などの正式な手続きは経ているのでしょうか?
・デジタル庁発足 公式サイトにITエンジニアから反応続々「シンプル」「重い」「ロゴが丁寧」「苦労が見える」|ITmediaニュース

この点、ある方の9月1日のツイッターの投稿によると、デジタル庁のサイトの利用者のログやブラウザ情報、端末データなどの個人データはやはりSTUDIO社のサーバーに送信されているようであり、STUDIO社がデジタル庁サイトの運営を委託されていることは間違いないようです。

デジタル庁のサイトのサーバー

また、サイトを作成さえすればドメイン、サーバなどはS社が一括管理と説明されていますが、中央官庁サイトの安全管理措置などには十分対応できるのでしょうか。

スタジオ社
(STUDIO社サイトより)
https://studio.inc/

そこでSTUDIO社の利用規約をみると、IT企業の利用規約のよくあるパターンで、利用規約9条(保障・免責)の各号では「本サービスの利用による保障はしないし、責任も負わない」旨を明示しています。
・利用規約・プライバシーポリシー・特定商取引法上の表記|STUDIO

スタジオ1

とくに利用規約9条4項は、STUDIOのサービス・システムは「本サービスは高度の安全性が要求され…重大な損害が発生する用途には設計しておりません」と明示しています。中央官庁であるデジタル庁のサイトは、「高度な安全性」が必要だと思うのですが、これはまずいのではないでしょうか?
スタジオ社利用規約9条4項

この点、デジタル庁などの行政機関に適用される行政機関個人情報保護法6条は行政機関とその委託先に個人データの滅失・毀損・漏洩などが発生しないように安全確保措置を講じることを要求しています。

行政機関個人情報保護法6条
これを受けて、総務省総管情第84 号・平成 16 年9月14 日通知「行政機関の保有する個人情報の適切な管理のための措置に関する指針について(通知)」「第8 保有個人情報の提供及び業務の委託等」4項は、行政機関が委託を行う際は、委託先が安全確保の能力があることを事前に確認し、年1回以上の立入検査の実施、個人データの利用の制限や障害対応、秘密保持条項、障害対応、損害賠償、再委託の制限などを明記した契約書を締結しなければならない等と規定しています(岡村久道『個人情報保護法 第3版』430頁)。

総務省安全確保指針
・「行政機関の保有する個人情報の適切な管理のための措置に関する指針」及び「独立行政法人等の保有する個人情報の適切な管理のための措置に関する指針」の改正|総務省

にもかかわらず、利用規約において「当社のサービスは高度の安全性が要求される用途のためには設計されていない」と明記しているSTUDIO社にサービスやシステムの運用を委託しているということは、デジタル庁およびその前身の内閣IT戦略室は、個人データを取り扱う情報システムの委託について、委託先が安全確保の能力があることを事前に確認するなどの安全確保措置を十分に講じておらず、行政機関個人情報保護法6条および総務省「「行政機関の保有する個人情報の適切な管理のための措置に関する指針」第8第4項などに違反しているのではないでしょうか?

この点に関しては、コロナの接触確認アプリCOCOAのシステム開発の委託においても厚労省や内閣IT戦略室が杜撰な委託を行っていたことが発覚したばかりであり、また、今年春にはLINE社のLINEが個人情報や通信の秘密の杜撰な安全管理を行っており、かつLINE社が国・自治体に対して繰り返し「LINEの日本の個人データは日本のサーバーに保存されている」等と虚偽の説明を行い、国・自治体がこの説明を鵜呑みにして立入検査・実地検査などをしてLINE社が安全管理措置を本当に講じているかどうか確認を行わず、安全確保措置を講じていないという行政機関個人情報保護法6条などの違反などを行っていたことが発覚したばかりなのにです。

デジタル庁や内閣IT戦略室などは、高度な法令順守・コンプライアンスが要求される国の機関であるにもかかわらず、このような度重なる行政機関個人情報保護法6条の違反を漫然と繰り返していることは、「法の支配」や法治主義、「法律による行政の原則」、「法律による行政の民主的コントロールの原則」(憲法41条、65条、76条)の観点から非常に問題なのではないでしょうか。国・行政がコンプライアンス意識を無くし、憲法や法律を無視するようになっては、国民から選挙で選ばれた国会の法律で行政を民主的にコントロールしようという議会制民主主義が破綻してしまいます。

総務省や個人情報保護委員会などは、デジタル庁や内閣IT戦略室などに対して法律を守れと指導・勧告等を実施すべきではないでしょうか。

3.STUDIO社のプライバシーポリシー
なお、STUDIO社のプライバシーポリシーについても簡単にみてみると、利用者のcookieや端末情報、操作ログなどの個人データを収集・利用するとあるのはある意味当然ですが、STUDIO社はプライバシーポリシー6条で、それらの個人データの共同利用(個人情報保護法23条5項3号)を行うとしているのに、共同利用を行う者の範囲、利用される個人データの項目、共同利用の利用目的などが同社サイトにどこにも明示されてないのは個人情報保護法23条5項3号違反です(岡村久道『個人情報保護法 第3版』264頁)。

スタジオプライバシーポリシー共同利用

また、STUDIO社のプライバシーポリシー9条は、開示・削除・利用停止等の請求の手続や手数料などについては「当社が別途定める所定の方式により」としていますが、肝心のこの別記がサイト上にどこにも掲載されてないのは、個人情報保護法27条1項3号違反です(岡村・前掲295頁)。個人情報保護委員会はSTUDIO社やデジタル庁などに対して指導・勧告などを実施すべきではないでしょうか(法40条、41条、42条)。

このようにSTUDIO社は、プライバシーポリシーについても個人情報保護法違反が複数存在します。同社にサイトの作成や運用を委託したデジタル庁・内閣IT戦略室が委託先の選定などの安全確保措置に関していかに杜撰であるかがここにも見受けられます。

デジタル庁は日本の国・自治体のデジタル行政を所管する官庁のはずなのに、行政機関個人情報保護法や個人情報保護法などの法律の素人しか存在しないのでしょうか?それ以前に国の官庁なのに法令を遵守して業務を行おうというコンプライアンス意識が非常に低いように見受けられるのは非常に心配です。

個人情報保護法は「個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護」(法1条)とし、また「個人情報は、個人の人格尊重の理念の下に慎重に取り扱われるべき」(法3条)との立法目的・趣旨を明記しています。

国・自治体のデジタル化は重要です。しかし、国民の個人の尊重と基本的人権の確立(憲法13条)と、「個人の権利利益を保護」、「個人の人格尊重の理念」(個人情報保護法1条、3条)、つまり国民の人権保障という憲法や個人情報保護法の基本理念を大原則として、デジタル庁はコンプライアンス意識を持ってデジタル行政を企画立案、実施していただきたいと思います。

デジタル庁は民間のITスタートアップ企業ではなく、国の行政官庁であり、その大臣や職員は公務の中立性・公平性とともに法令順守が要求され(国家公務員法96条1項、98条1項、憲法15条2項)、憲法尊重擁護義務(憲法99条)を負うのですから。

■追記(9月4日)
9月3日のマスメディア各社の報道によると、デジタル庁デジタル監の石倉洋子氏が、画像素材サイト「PIXTA」の複数の画像を、同サイトから購入せずに自身のウェブサイトに勝手に掲載していたとのことです。同サイトからの申し出に対して石倉氏はこの事実を認め、自身のサイトを閉鎖したとのことです。これにはさすがに呆れてしまいました。

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(石倉洋子氏のTwitterより)

石倉氏は経営学者であり、ITや情報法などの専門家ではないが、2000年代からTwitterやFacebookなどを利用しておりITリテラシーの高い人物である」と、石倉氏を高く評価する投稿が9月になってからTwitter上で多く見られたところですが、画像素材サイトの画像を購入せずに勝手にパクって自分のサイトに掲載するとは、石倉氏の「ITリテラシー」は最低です。

デジタル庁は国・自治体のデジタル政策を担う官庁であり、その業務のためには、ITの知識やノウハウだけでなく、著作権法などの知的財産権法や個人情報保護法制や憲法、行政法、独禁法や消費者法などの法律知識は必須のはずですが、事務方トップの石倉氏はこのような素人レベルな法律知識で、デジタル庁の役職員の業務に違法・不当がないか監督できるのでしょうか? 多いに疑問です。

平井大臣の特定企業との癒着の問題や、NECを「徹底的に干せ」「脅せ」などとヤクザのような暴言を吐いていた問題や、アメリカの性犯罪者の富豪から多額の寄付金を受けていた伊藤譲一氏のデジタル監の人事の問題など、デジタル庁や菅政権はとにかく憲法や法律・モラルを遵守しようというコンプライアンス意識が致命的に欠落しています。

デジタル庁は、デジタル行政の業務を始める前に、まずは大臣やデジタル監をはじめとする全役職員が、憲法や国家公務員法、国家公務員倫理法や、個人情報保護法、知的財産権法、独占禁止法などの法令の基礎に関する全庁的なコンプライアンス研修を実施すべきではないでしょうか。

このままでは、デジタル庁は、役職員が「法令を守っていては日本は潰れる」などと嘯いて官民のデジタル利権を牛耳って、中抜きで私腹を肥やす経済マフィアのような組織になっていまいます。

■追記・デジタル庁ナンバー3の岡下昌平・デジタル大臣政務官が違法Youtuberであることが発覚(9月30日)
nukalumix様「畳之下新聞」の9月30日付の記事「(逃走中) 違法Youtuber が #デジタル庁 ナンバー3 の大臣政務官 という地獄」によると、デジタル庁ナンバー3岡下昌平・デジタル大臣政務官が、自身のYouTubeチャンネル「おかしょうちゃんねる堺」において、ABEMAなどの動画を切り取り、自身のYouTubeチャンネルにアップロードするなどの著作権法違反の行為を繰り返していたことが発覚したとのことです(自動公衆送信権(著作権法23条1項)の侵害)。
・(逃走中) 違法Youtuber が #デジタル庁 ナンバー3 の大臣政務官 という地獄|畳之下新聞

おかしょうちゃんねる堺
(岡下昌平氏の「おかしょうちゃんねる堺」より)

デジタル庁は、上から下まで法令無視のアウトローの人間しかいないのでしょうか。呆れてしまいます。このような無法者集団がデジタル行政を行っては、日本の官民のデジタル部門やIT業界などは、法律無視が当たり前で、腕力や発言力、経済力、政治力が強い人間が幅を利かす原始時代のような世界になってしまうような気がします。

■関連する記事
・デジタル庁の事務方トップに伊藤穣一氏との人事を考えた(追記あり)
・デジタル庁のプライバシーポリシーが個人情報保護法的にいろいろとひどい件(追記あり)-個人情報・公務の民間化
・西村大臣の酒類販売事業者や金融機関に酒類提供を続ける飲食店との取引停止を求める方針を憲法・法律的に考えた
・LINEの個人情報・通信の秘密の中国・韓国への漏洩事故を個人情報保護法・電気通信事業法から考えた
・LINEの個人情報事件に関する有識者委員会の第一次報告書をZホールディンクスが公表
・新型コロナの接触確認(感染追跡)アプリ(COCOA)の内閣府の仕様書を読んでみた
・コロナ禍の緊急事態宣言で国民の私権制限をできないのは憲法に緊急事態条項がないからとの主張を考えた

■参考文献
・岡村久道『個人情報保護法 第3版』264頁、295頁、430頁
・宇賀克也『個人情報保護法の逐条解説 第6版』179頁、432頁



















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政府は、デジタル庁事務方トップの「デジタル監」に実業家の伊藤穣一氏をすえる方針というニュースが大きな話題となっています。

伊藤穣一氏
(ANNニュースより)
・デジタル庁事務方トップに伊藤穰一氏 政府最終調整|ANNニュース

伊藤氏は、2019年に買春・未成年性的虐待で有罪判決を受けた米の富豪ジェフリー・エプスタイン氏などから8億円を超える寄付を受け取っていたことが発覚し、MITメディアラボ所長を辞任したばかりのいわくつきの人物です。
・人身売買容疑の大富豪との関係は…伊藤穰一氏がMITメディアラボの所長を辞任

公務員については、「すべての公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」憲法15条2項に明記され、また「すべて職員は、国民全体の奉仕者として、公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当っては、全力を挙げてこれに専念しなければならない。」国家公務員法96条1項に規定されるように、公務員や国・行政には、公平・中立性、公益性などが憲法や法律上、要求されます。

憲法
第15条2項
すべての公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない

国家公務員法
第96条1項
すべて職員は、国民全体の奉仕者として、公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当っては、全力を挙げてこれに専念しなければならない。

それを受けて、国家公務員倫理法および人事院の国家公務員倫理程は、「利害関係者から金銭、物品又は不動産の贈与を受けること」、「利害関係者から供応接待を受けること」などを禁止しています(規程3条1号、6号、法6条)。

国家公務員倫理規程
(禁止行為)
第3条 職員は、次に掲げる行為を行ってはならない。
 利害関係者から金銭、物品又は不動産の贈与(せん別、祝儀、香典又は供花その他これらに類するものとしてされるものを含む。)を受けること。
 利害関係者から供応接待を受けること。

さらに、デジタル庁サイトをみると、「デジタル社会形成の10原則」として、「1.オープン・透明」「2.公平・倫理」などの大変立派な原則が掲げられています。

デジタル庁の10原則
デジタル庁サイトより)

このように、公務員国・自治体などの行政には、公平性・中立性・公益性高度な職業倫理が憲法や法令上要求されます。

この点、8億円を超える巨額の寄付を性犯罪などで悪名高い富豪から受け取り、アメリカのMITの要職を辞任したという不祥事の経歴のある伊藤氏は、公平性・中立性・公益性や高度な職業倫理が憲法や法令上要求される行政官庁であるデジタル庁の要職には、あまりにもふさわしくないのではないでしょうか。

また、デジタル庁の事務方トップに伊藤氏を据えようとしている、平井大臣菅首相ら政府与党の幹部達は、同様に憲法や法令が要求する公平性・中立性・公益性の意識や、公務を行うための高い職業倫理が欠落しているのではないでしょうか。

平井大臣はNECについて「徹底的に干せ」「脅しておけ」などと部下の官僚に発言していたことが発覚した問題や、東京大学工学系研究科の松尾豊教授の関連企業との癒着や脱税の問題などが報道され、最近、税務申告の修正を行うなど、疑惑の渦中にあります。

・平井デジタル相に資産公開法違反の疑い “五輪アプリ受注”の親密ITグループの株を不記載|文春オンライン

また、デジタル庁幹部の向井治紀室長代理も、NTTから違法な接待を何回も受けていたことが発覚したばかりです。

9月から発足するデジタル庁そのものも、民間IT企業から数百人規模の人材を職員として受け入れる等、特定の民間企業との癒着のおそれなど、中央官庁の公平性・中立性・透明性が大いに疑問視されています。

今年春に国会でデジタル関連法とセットで成立した、官民の個人情報保護法制の一元化のための法改正も、例えば全国の自治体のこれまでの個人情報保護条例を廃止させ、国の定めるモデルに一元化するなど、権力分立により国民・住民の人権保障を行うという地方自治・団体自治(憲法92条、94条)に抵触するなど、憲法レベルの問題をはらんでいます。

同時にデジタル関連法とセットで成立した改正マイナンバー法も、看護師などの国家資格保有者の個人情報をマイナンバーで国が一元管理することを可能にするなど、政府による国民の個人情報やプライバシーの管理・監視がますます推進される内容となっています。

・【デジタル関連法案】自治体の個人情報保護条例の国の個人情報保護法への統一化・看護師など国家資格保有者の個人情報の国の管理について考えた

あるいは最近も、東京オリンピック・パラリンピックに関連して、森喜朗氏小山田圭吾氏小林賢太郎氏など幹部達が、相次いで差別問題・人権問題などで辞任・解任されており、国や国周辺の公務の公平性・中立性や倫理感、コンプライアンス意識の欠如が大きな問題となっています。

そのようななか、不祥事の経歴のある伊藤穣一氏を、疑惑をもたれているデジタル庁の事務方トップにすえようという菅政権の人事は、疑念の上に疑念を重ねるものなのではないでしょうか。デジタル庁や国のデジタル行政に対する国民の信頼さらに低下するのではないでしょうか。政府与党はこの人事の再検討や、デジタル庁のあり方の再検討を行うべきではないでしょうか。

■追記(8月11日)
伊藤穣一氏は2003年には住基ネットに関する長野県の侵入実験を実施するなど、当時、インターネットの専門家として住基ネットの反対運動を主導する有識者の一人であったそうです。
・長野県の住基ネット侵入実験、結果はクロ!|日経
・長野県が住基ネットへの侵入実験の結果を公表|INTERNET Watch

住基ネットはマイナンバー制度の前身ともいうべきものであり、マイナンバー制度の推進などを任務とするデジタル庁の事務方トップに、かつて住基ネットの反対運動を主導していた人物をあてるというのは、非常に矛盾しています。このような人物を幹部にすえて大丈夫なのでしょうか。

9月からの正式な設置の前に問題点や不祥事が次々と明らかになっているデジタル庁ですが、国の中央官庁として本当に大丈夫なのだろうかと、国民の一人としては心配な思いです。

ネット上のニュースなどをみていると、政府の要職の人間を採用する際には身元調査などが行われるそうですが、伊藤穣一氏のアメリカでの不祥事については内閣調査室などが承知していなかったとのことであり、日本の政府やデジタル庁などの情報収集能力リスク管理能力の低さが大いに気になります。

■追記(8月18日・8月29日)
報道によると、8月18日、政府は伊藤譲一氏をデジタル庁のデジタル監とする人事を撤回したとのことです。
・デジタル監、伊藤穣一氏見送り 政府|時事通信

また、8月26日のマスメディアの報道によると、政府はデジタル庁のデジタル監に一橋大学名誉教授の石倉洋子氏をあてる方針とのことです。しかし石倉氏はITや情報法、行政法などの専門家ではなく、経営学の学者であるそうです。この人事も伊藤氏同様に、よくわかりません。デジタル庁は民間ITスタートアップの起業の指南でもするつもりなのでしょうか?

Yōko_Ishikura_20210901
(石倉洋子氏。wikipediaより)

さらに最近、デジタル庁はnoteのドメインも急に変更しましたが、旧ドメインから新ドメインへのリダイレクトがなされないこと等にもネット上で批判が殺到しています。また、デジタル庁のプライバシーポリシーが個人情報保護法制的に素人レベルであることは、このブログでも取り上げた通りです。

デジタル庁は国・自治体のデジタル行政の企画立案を担う官庁であり、民間IT企業から数百人規模の優秀な人材を中途採用したはずですが、個人情報保護法制など法律の知識や、ITや情報セキュリティなどの技術面についても素人レベルなのでしょうか?

デジタル庁のキャッチコピーは「誰一人取り残さないデジタル庁」だそうですが、9月の設立前からこんな不祥事続きの状況では、「国民誰からも相手にされない三流官庁のデジタル庁」になってしまいそうで心配です。

■追記(2021年9月3日)
報道によると、伊藤穣一氏に代わってデジタル庁デジタル監に就任した一橋大学名誉教授の石倉洋子氏(経営学)が、なんと画像素材サイト「PIXTA」の有料の画像素材を対価を支払わずに勝手に自身のウェブサイトに利用していたことが発覚したそうです。石倉氏は事実を認め、謝罪と「PIXTA」に代金を支払うなどの対応を行う旨を表明したとのことです。石倉氏は経営学が専門とはいえ、著作権法の初歩の知識やITリテラシーはないのでしょうか?そのような人物が官庁たるデジタル庁のナンバー2で大丈夫なのでしょうか?

正式始動の前後からデジタル庁のコンプライアスやガバナンスは崩壊しており、呆れてしまいます。これでは中央官庁ではなく、まるでコンプライアンスやガバナンス無視のITベンチャー企業のようです。

■追記・デジタル庁ナンバー3の岡下昌平・デジタル大臣政務官が違法Youtuberであることが発覚(9月30日)
伊藤穣一氏にかわってデジタル庁のナンバー2のデジタル監に就任した石倉洋子・一橋大学名誉教授が、画像素材サイトの画像などを対価を支払わずに無断で自身のウェブサイトに多数使用していたことが9月頭に発覚し、石倉氏も平井大臣や伊藤穣一氏らのご同類の無法者であることが発覚しました。

ところがさらに、nukalumix様「畳之下新聞」の9月30日付の記事「(逃走中) 違法Youtuber が #デジタル庁 ナンバー3 の大臣政務官 という地獄」によると、デジタル庁ナンバー3岡下昌平・デジタル大臣政務官が、自身のYouTubeチャンネル「おかしょうちゃんねる堺」において、ABEMAなどの動画を切り取り、自身のYouTubeチャンネルにアップロードするなどの著作権法違反の行為を繰り返していたことが発覚したとのことです(自動公衆送信権(著作権法23条)の侵害)。
・(逃走中) 違法Youtuber が #デジタル庁 ナンバー3 の大臣政務官 という地獄|畳之下新聞

デジタル庁は、上も下も法令無視のアウトローの人間しかいないのでしょうか。呆れてしまいます。このような無法者集団がデジタル行政を行っては、日本の官民のデジタル部門やIT業界などは、違法状態が当たり前で、腕力や発言力、経済力、政治力が強い人間が幅を利かす原始時代のようになってしまうような気がします。

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