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(日本経済新聞の「月曜日のたわわ」の宣伝広告)

1.日経新聞のマンガ「月曜日のたわわ」宣伝広告が炎上
4月4日(月)の日本経済新聞のマンガ「月曜日のたわわ」の宣伝広告が、Twitterなどのネット上で、「「公共の場所」としての新聞広告にこのような表現はけしからん」とフェミニスト・社会学者などの方々から大きな批判が起き、賛否両論の「炎上」となっています。

ところで、電車の中の宣伝アナウンス(車内広告)が、そのような宣伝を聞きたくない乗客の自由(権利)を侵害するものか否かが争われた著名な憲法訴訟の「とらわれの聴衆」事件判決に照らしても、この日経の「日曜日のたわわ」の宣伝広告を批判している人々の主張は法律論としては、あまり正しくないように思われます。

2.「とらわれの聴衆」事件判決
「とらわれの聴衆」事件判決(最高裁昭和63年12月20日判決)は、大阪市の市営地下鉄の電車内の「次は〇〇前です」「〇〇へお越しの方は次でお降りください」という商業宣伝広告が、そのような商業宣伝広告を聞きたくない個人の人格権の侵害であるとして争われたものです。最高裁は、市営地下鉄の宣伝広告は不法行為または債務不履行との関係で違法とはいえないとしてこの訴えを退けています。

・最高裁判所第三小法廷昭和63年12月20日判決(昭和58(オ)1022 商業宣伝放送差止等請求事件)|裁判所

本判決にはパブリック・フォーラム論などで有名な伊藤正己裁判官の補足意見がつけられていますが、この補足意見によると、最高裁はいわゆる受忍限度論(「社会生活を営む上で我慢するべき限度」が受忍限度(我慢すべき限度)であり、これを超えると加害者側が違法となるが、これを超えない場合、被害者側は受忍をしなければならないとする考え方)で本件訴えを退けたようです。

そしてこの伊藤裁判官の補足意見は、「日常生活において、見たくないものを見ず、聞きたくないものを聞かない自由(権利)」について論じていることが、今回の日経の新聞広告との関係で参考になります。

3.伊藤正己裁判官の補足意見
「とらわれの聴衆」事件判決の伊藤正己裁判官の補足意見(概要)
『人は日常生活において見たくないものを見ず、聞きたくないものを聞かない自由を有している。これは、個人が他者から自己の欲しない刺激によって心の静謐を乱されない法的な利益であり、広い意味でのプライバシー権であり、人格的利益として幸福追求権(憲法13条)に含まれる。

『しかし、他者から自己の欲しない刺激によって心の静謐を乱されない権利も、社会に存在する他の利益との調整が図られなければならず、対立する利益(そこには経済的自由権も当然含まれる)との比較考量により、その侵害を受忍しなければならないこともありうる。

『すでにみたように、他者から自己の欲しない刺激によって心の静謐を乱されない権利は広義のプライバシーの権利と考えられるが、プライバシーは個人の居宅などと異なり、公共の場所においてはその保護が希薄とならざるを得ず、受忍すべき範囲が広くなることを免れない。したがって、一般の公共の場所にあっては、本件のような放送はプライバシーの侵害の問題を生じるとはいえない。』

このように伊藤裁判官の補足意見は、「日常生活において見たくないものを見ず、聞きたくないものを聞かない自由」は、「個人が他者から自己の欲しない刺激によって心の静謐を乱されない法的な権利(自由)」であり、「広い意味でのプライバシー権」であって、「人格的利益」として幸福追求権(憲法13条)に含まれるとしています。

しかし同補足意見は、この他者から自己の欲しない刺激によって心の静謐を乱されない権利も社会の対立する他の利益(権利)との比較衡量による調整が図られなければならないとし、この権利がプライバシー権の一種であることから、個人の居宅などと異なり、公共の場所ではその保護が希薄とならざるを得ず、受忍すべき範囲は広くなるとしています。

3.日経新聞の「月曜日のたわわ」の新聞広告を考える
この最高裁にかんがみると、日経新聞の「月曜日のたわわ」の新聞広告については、フェミニストや社会学者などの人々が、そのような新聞広告を見たくないと考え、そのような新聞広告は自らの人格権の侵害であるとすることは、「日常生活において見たくないものを見ず、聞きたくないものを聞かない権利」の一つに含まれ、「個人が他者から自己の欲しない刺激によって心の静謐を乱されない法的な権利(自由)」であり、「広い意味でのプライバシー権」であって、「人格的利益」として幸福追求権(憲法13条)に含まれると解される余地があります。

しかし、この「日常生活において見たくないものを見ず、聞きたくないものを聞かない権利」(憲法13条)も無制限なものではなく、社会に存在する他の権利との比較衡量による調整が必要となります。

「とらわれの聴衆」事件は市営地下鉄という公的機関による宣伝広告でしたが、日経新聞の件は、日経新聞は民間企業であり日経新聞を購読するか否かは個人の判断に委ねられており、マンガ「月曜日のたわわ」の漫画家も出版社も民間人であり民間企業であるので、これらの民間人・民間企業の営業の自由(憲法22条、29条)や表現の自由(営利的な表現の自由、憲法21条1項)もより重要な人権(経済的自由権・精神的自由権)となります。(なおそのため、フェミニスト等の人々の日経新聞の宣伝広告は「公共の場所」であるとの議論の前提にもやや疑問が残ります。)

また、「とらわれの聴衆」事件で問題となったのは、電車内の車内アナウンスから逃れられない「とらわれの聴衆」の乗客でしたが、日経新聞の件では、読者はもしその宣伝広告が不快であると感じたのなら、その紙面の該当部分を閉じて見なければよいだけの話です。(あるいは日経新聞の購読を止めるなど。)

4.まとめ
したがって、日経新聞の「月曜日のたわわ」の新聞広告を「公共の場所である新聞広告にふさわしくない」と批判しているフェミニストや社会学者などの方々には「日常生活において見たくないものを見ず、聞きたくないものを聞かない権利」(憲法13条)があるとしても、日経新聞や「月曜日のたわわ」の漫画家や出版社などの権利との比較衡量をすると、受忍限度の範囲内にとどまり、「月曜日のたわわ」の新聞広告は不法行為および債務不履行との関係で違法でないということになると思われます。

■追記-マンガ・アニメ等の表現の自由と「見たくないものを見ない自由」・SDGs
なお近年、とくにフェミニストや社会学者の人々が、女性の「見たくないものを見たくない権利」を主張し、街の宣伝広告やポスターなどを規制する条項を東京都の条例などに盛り込むべきであるとの議論がなされているとの話もあります。

あるいは2010年頃にはマンガ・アニメ等の表現規制のために、東京都の青少年保護条例に「非実在少年」の条項を盛り込もうという議論も行われ、2021年の衆院選挙においては、日本共産党が「非実在児童ポルノ」という概念を持ち出して、マンガ・アニメなどの表現の自由規制を行うことを公約に掲げ議論を巻き起こしました。さらに近年、コンビニで成年向けの雑誌などがコンビニの「自主規制」により撤去されている問題も発生しています。

このような問題に関しては、表現の自由(憲法21条1項)だけでなく、この「とらわれの聴衆」事件最高裁判決の「見たくないものを見ない自由」の伊藤正己裁判官の補足意見も大いに参考になるものと思われます。フェミニズムの人々は女性の「見たくないものを見ない自由」を声高に主張しますが、それは法的権利(憲法13条)であるとしても絶対無制限なものではなく、例えば漫画家や出版社、読者などの表現の自由や情報を受け取る自由(21条1項)、営業の自由(22条、29条)などとの調整が重要なのです。(これはフェミニズムや社会学者の人々が主張する平等(憲法14条1項)についても同様です。)

なお、フェミニズムや社会学者の方々は、しばしばSDGs(Sustainable Development Goals)を根拠としてジェンダー平等などの主張を行いますが、SDGsは2015年に国連総会で採択された2035年までの国際的な「目標」であり法的義務を持つものではありません。仮にSDGsが国際条約的な意味を持つとしても、国際条約は憲法(日本国憲法など)より下位の法規範です(憲法98条1項、2項)。そのため、SDGsの掲げるジェンダー平等等が憲法の定める表現の自由や営業の自由などの基本的人権より優越する価値理念だという考え方は間違っています。また、SDGsの目標16(平和と公平)のなかのターゲット16-3には「法令遵守」が盛り込まれています。そのためジェンダー平等などの理念のためには表現の自由や営業の自由、平等などの憲法の定める基本的人権は制限されるとのフェミニズムや社会学者等の方々の主張はやはり正しくありません。

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■参考文献
・渡辺康行・宍戸常寿・松本和彦・工藤達朗『憲法1基本権』278頁
・野中俊彦・中村睦男・高橋和之・高見勝利『憲法1 第5版』273頁
・紙谷雅子「車内広告放送と「とらわれの聴衆」」『憲法判例百選1 第7版』44頁
・最高裁判所第三小法廷昭和63年12月20日判決(昭和58(オ)1022 商業宣伝放送差止等請求事件)|裁判所
・SDGsとは?|外務省

■関連する記事
・日本共産党の衆院選公約の「非実在児童ポルノ」政策は憲法的に間違っている
・「幸福追求権は基本的人権ではない」/香川県ゲーム規制条例訴訟の香川県側の主張が憲法的にひどいことを考えた
・「表現の不自由展かんさい」実行委員会の会場の利用承認の取消処分の提訴とその後を憲法的に考えた-泉佐野市民会館事件・思想の自由市場論・近代立憲主義
・デジタル庁「教育データ利活用ロードマップ」は個人情報保護法・憲法的に大丈夫なのか?
・スーパーシティ構想・デジタル田園都市構想はマイナンバー法・個人情報保護法や憲法から大丈夫なのか?-プロファイリング拒否権・「デジタル・ファシズム」



















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Googleワークスペース

1.茅ヶ崎市の小学校が生徒にGoogle Workspace For Educationのパスワードの提出を求めている?
Twitter上で、ある茅ヶ崎市の小学校の親の方(hiro_様 @papa_anniekey)が、「茅ヶ崎市の小学校が生徒のGoogle Workspace For Educationのアカウントのパスワードの年1回の変更を親に求めたうえで、新しいパスワードを学校に提出しろとプリントで要求しているのは情報セキュリティの観点からおかしい」とツイートし、ネット上で大きな注目が集まっています。確かにこれは突っ込みどころが満載すぎて驚いてしまいます。
『子供が小学校から持って帰ってきた文書、セキュリティ側の人間からすると違和感しかない。 1年経ったから情報セキュリティの観点からパスワード変更?意味わからん。理由になってない。 パスワードをこの紙に記載の上教師に提出?パスワードは個人に帰属でしょ。
@Chigasaki_city
#茅ヶ崎市』
ヒロ様のツイート1
(hiro_様(@papa_anniekey)のTwitterより)
https://twitter.com/papa_anniekey/status/1489026061937508357

この茅ヶ崎市の小学校におけるGoogle Workspace for Educationの生徒のパスワードに関する問題は、①茅ヶ崎市が生徒やその親にパスワードの年1回の定期変更を求めていること、②新しいパスワードを書面に書いて学校に提出することを求めていること、③そのような行為はGoogle Workspace for Educationの利用規約に違反しているおそれがあること、④そもそも自治体・教育委員会や学校がGoogle Workspace for Educationを未成年の小学生に全面一律に利用させることが妥当なのか、⑤茅ヶ崎市個人情報保護条例8条、11条違反のおそれおよび個人情報保護法17条、20条違反のおそれ、など様々な面で問題があると思われます。

2.パスワードの定期変更
そもそもパスワードの年1回などの定期変更は必要なのでしょうか?

この点、総務省サイトの「安全なパスワード管理」のページはつぎのように説明して、パスワードの定期変更は不要であるとしています。
・安全なパスワード管理|総務省

なお、利用するサービスによっては、パスワードを定期的に変更することを求められることもありますが、実際にパスワードを破られアカウントが乗っ取られたり、サービス側から流出した事実がなければ、パスワードを変更する必要はありません。むしろ定期的な変更をすることで、パスワードの作り方がパターン化し簡単なものになることや、使い回しをするようになることの方が問題となります。定期的に変更するよりも、機器やサービスの間で使い回しのない、固有のパスワードを設定することが求められます。
総務省パスワード
(総務省「安全なパスワード管理」より)

この総務省の「安全なパスワード管理」をみても、パスワードの定期変更は不要であるとされています。

3.パスワードを他人や学校に教えてよいのか?
また、この総務省の「安全なパスワード管理」は、「パスワードの管理方法」として、「他人に知られないよう、かつ自分でも忘れてしまうことがないように管理をしましょう。」と明記しています。

総務省パスワード2
(総務省「安全なパスワード管理」より)

この点、児童とSNSの問題に関して、内閣府サイトの『保護者向け普及啓発リーフレット「ネットの危険からお子様を守るために 今、保護者ができること」』の2ページ目もつぎのように、「他人にIDやパスワードは絶対に教えません。」と記載しています。
内閣府パスワード
(内閣府『保護者向け普及啓発リーフレット「ネットの危険からお子様を守るために 今、保護者ができること」』2ページより)
・ ネットの危険から子供を守るために>保護者の皆様へ|内閣府

そのため、職場だけでなく学校でも、個人が自らのパスワードを学校に教えることは情報セキュリティの観点から適切でないと思われます。

なお、2021年12月には、練馬区のある中学校がSNSのパスワードを学校に書面に書いて提出することを求めるプリントを配布したことが炎上し、練馬区は謝罪と撤回を行いました。

・練馬区が親子に家庭のSNSルールを作成させ学校に提出させるプリントにパスワードの記入欄があることを考えた(追記あり)-セキュリティ・プライバシー・不正アクセス

4.茅ヶ崎市個人情報条例や個人情報保護法に違反しているのではないか?
(1)学校と個人情報保護法制
茅ヶ崎市の教育委員会や公立学校は、茅ヶ崎市の個人情報保護条例の適用を受けます。また、私立学校は個人情報保護法の適用を受けます。また、文科省の指針通達「学校における生徒等に関する個人情報の適正な取扱いを確保するために事業者が講すべき措置に関する指針」(平成16年11月11日)は、公立学校に対しても個人情報保護法を遵守することを求めています。

(2)不正の手段による個人情報の収集の禁止
そこでまず、茅ヶ崎市個人情報保護条例8条3項は、「実施機関は、個人情報を収集するときは、適法かつ公正な手段により収集しなければならない。」と規定しているところ、上でみたように、パスワードの定期変更を求め、新しいパスワードを学校に提出することを求めることは、不適法であり、不公正な手段によるパスワードという個人情報の収集であり、茅ヶ崎市の教育委員会は同市の個人情報保護条例8条3項に違反していると思われます。

茅ヶ崎市条例2

同時に、個人情報保護法17条1項も「個人情報取扱事業者は、偽りその他不正の手段により個人情報を取得してはならない。」と規定しており、茅ヶ崎市の教育委員会・小学校は「偽りその他不正の手段」によりパスワードという個人情報を収集しており、個人情報保護法17条1項違反であると思われます。

(3)安全管理措置
つぎに、茅ヶ崎市個人情報保護条例11条1項は、「実施機関は、個人情報の漏洩、滅失及び毀損の防止その他の個人情報の適切な管理のために必要な措置を講じなければならない。」と自治体の教育委員会や学校などの実施機関に対して個人情報の安全管理措置を講じるように定めています。

茅ヶ崎市条例

また、個人情報保護法20条も「個人情報取扱事業者は、その取り扱う個人データの漏えい、滅失又はき損の防止その他の個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければならない。」と、学校などの事業者に対して、個人データに対する安全管理措置を講じるように求めています。

そして、個人情報保護委員会の「個人情報保護法ガイドライン(通則編)」の「8-6 技術的安全管理措置」は、事業者に対して「アクセス制御」や「アクセス者の識別と認証」を適切に行うことを求めており、パスワードの定期変更を求めたり、パスワードの学校への提供を求めている茅ヶ崎市の学校や教育委員会の行為は、茅ヶ崎市個人情報保護条例11条1項と個人情報保護法20条および個人情報保護法ガイドライン(通則編)の8-6に抵触しているおそれがあります。

(なお、個人情報保護法17条違反があった場合、本人は個人情報取扱事業者に対して、個人データの利用の停止と消去を請求することができます(法30条1項)。また、本人はこの請求から2週間後に、裁判所に対して個人データの利用停止と消去を求める訴訟を提起することが可能です(法34条1項)。さらに茅ヶ崎市個人情報保護条例17条以下も開示請求の規定を置いています。)

5.Google Workspaceの利用規約などに違反するのではないか?
「Google Workspace for Education 利用規約」はネット上でも公開されています。そこでこの利用規約を読むと、「2.5 不正使用」は、自治体・教育委員会や学校に対してつぎのように、「本サービスの不正使用を防止し、不正使用をやめさせるための…合理的な努力を行う」ことを求め、「本サービスの不正使用または不正アクセスを発見した場合は直ちに Google へ通知」することを求めています。

Google不正使用の禁止
(Google Workspace for Education 利用規約より)
・Google Workspace for Education 利用規約|Google

上でみたように、日本の総務省や内閣府がパソコンやスマホなどの「パスワードは他人に教えてはいけない」ことを国民に周知し、またパスワードの定期変更も不要と周知しています。

また、不正アクセス禁止法「何人も、不正アクセス行為(略)の用に供する目的で、アクセス制御機能に係る他人の識別符号を取得してはならない。」(4条)と規定しており、自治体や企業、学校などが他人のIDやパスワードなどをみだりに収集してはならないと定めていることなどを考えると、茅ヶ崎市の小学校が生徒のパスワードの定期変更と新しいパスワードを書面に書いて提供することを求めていることは、この利用規約の「不正使用」または「不正アクセス」に該当し、Googleから茅ヶ崎市が、契約解除や損害賠償などを請求されるリスクがあるのではないでしょうか(民法415条または709条)。

5.学校でGoogleのシステムを利用することは妥当なのか?
GoogleがPCやスマホなどのCookieやIPアドレスなどを利用して、ユーザーのネット閲覧履歴、購買履歴、移動履歴などの個人データを収集・分析し、ユーザーを監視やプロファイリングなどを行い、行動ターゲティング広告などを実施していることはよく知られています。

日本の個人情報保護法は直接、プロファイリングを規制する条文はありませんが、しかしEUGDPR(一般データ保護規則)22条1項「コンピュータの個人データの自動処理のみによる法的決定、重要な決定の拒否権」、つまりいわゆる「プロファイリング拒否権」を定めています。

そして、日本の2000年の労働省「労働者の個人情報の保護に関する行動指針」第2、6(6)も同様の内容の条文を置いており、AIやコンピュータによる個人のプロファイリングやスコアリングは個人の人格権などの人権侵害であるとの認識が西側世界で広まりつつあります。(2019年の厚労省「労働政策審議会労働政策基本部会報告書~働く人がAI等の新技術を主体的に活かし、豊かな将来を実現するために~」9頁、10頁も同様の問題点を指摘しています。)

また、EUは2021年4月に「AI規制法案」を公表しましたが、これはAIをその危険性から4段階に分類して法規制するところ、教育分野や雇用分野、出入国管理などの行政サービスなどへのAI利用は上から2番目の危険性の「高リスク」に分類され、法規制が実施される内容となっています。

日本の個人情報保護法や情報法の学者の先生方の一部には、「個人情報保護法の立法目的は、プライバシー権の保護や自己情報コントロール権の保護ではなく、プロファイリング拒否権である」と主張する先生方も現れるに至っています。

このような状況下で、茅ヶ崎市が、小学校の生徒に対してGoogle Workspace for Educationを利用させることが果たして妥当な判断であるのかも、問題の一つであると思われます。(同様に、2022年1月6日にデジタル庁が公表した「教育データ利活用ロードマップ」も、西側世界の個人情報保護・個人データ保護の流れに逆行するものであると思われます。)

6.まとめ
このように、茅ヶ崎市の小学校におけるGoogle Workspace for Educationの生徒のパスワードに関する問題は、①茅ヶ崎市が生徒やその親にパスワードの年1回の定期変更を求めていること、②新しいパスワードを書面に書いて学校に提出することを求めていること、③そのような行為はGoogle Workspace for Educationの利用規約に違反しているおそれがあること、④そもそもGoogle Workspace for Educationを未成年の小学生に全面一律に利用させることが妥当なのか、⑤茅ヶ崎市個人情報保護条例8条、11条違反のおそれおよび個人情報保護法17条、20条違反のおそれ、など様々な面で問題があると思われます。

文部科学省や総務省、個人情報保護委員会などは事実確認を行い、茅ヶ崎市の教育委員会や小学校などに必要な対応を行うべきではないでしょうか。

■追記(2022年2月6日)
このブログ記事について、明治大学理工学部の情報セキュリティの齋藤孝道先生より、「生徒の保護に欠けるのではないか」「もし学校内でセキュリティ上の重大な事故が発生しても学校や教師は責任を負わないのだろうか」との趣旨のコメントを頂戴しました。

「Google Workspace for Education利用規約」の「3.2 法令遵守」は、「3.2 法令遵守。お客様は、(a)お客様およびお客様のエンドユーザーによる本サービスの使用が本契約に従って行われることを保証し、(b)商業上合理的な努力によって本サービスの不正使用と不正アクセスを防止し、不正使用があった場合は中止させ、(c)本サービス、アカウント、またはお客様のパスワードの不正使用または不正アクセスを認識した場合には速やかに Google に通知するものとします。」と規定しており、Googleは、茅ヶ崎市の教育員会や学校の管理者が生徒のパスワードを知っていなくても、システムを監視・モニタリングすることができる仕組みを用意しているようです。

このように学校がGoogle Workspace for Educationのようなシステムを導入した場合には、企業が電子メールやグループウェア、基幹システムなどを導入した場合と同様には、組織内での不正防止やセキュリティ対策、個人情報の安全管理措置(個人情報保護法20条、21条)などのために、システムの監視・モニタリングが必要となりますが、その一方で電子メールなどは従業員や生徒などのプライバシーにも関するものなので、その調整が問題となります。

この点、個人情報保護委員会個人情報保護法ガイドラインQA4-6は、企業などが社内の情報システムのモニタリングを行う場合には、①モニタリングの目的をあらかじめ特定し、社内規則に定め、従業員に明示すること、②モニタリングの実施に関する責任者とその権限を定めること、③あらかじめモニタリングの実施に関するルールを策定し、その内容を従業員に周知徹底すること、④モニタリングがあらかじめ定めたルールに従って適正に実施されているか確認を行うこと、の4点が必要であるとしています(岡村久道『個人情報保護法 第3版』225頁)。

個人情報保護法QA4-6
(個人情報保護法ガイドラインQA4-6より)

なお、このような企業などの組織内のシステムのモニタリングは、従業員などのプライバシー権との調整が問題となるところ、この点が争われた裁判例は、「監視・モニタリングの目的、手段およびその態様等を総合考慮し、監視される側に生じた不利益とを比較考量の上、社会通念上相当な範囲を逸脱した監視はプライバシー権の侵害となる」と判示しています(F社Z事業部電子メール事件・東京地裁平成13年12月3日判決、山本龍彦「職場における電子メールの監視と不法行為責任」『新・判例ハンドブック情報法』(宍戸常寿編)98頁)。

したがって、企業や学校が組織内のシステムを監視・モニタリングすること自体は不正防止などの観点から正当であるとしても、その手段・方法などが社会通念を逸脱するような場合には、当該監視・モニタリングは従業員や生徒などのプライバシー権侵害となり、違法と評価される可能性があります(民法709条、憲法13条)。

この点、企業や学校が不正防止やセキュリティ対策、個人情報の漏洩防止などの安全管理措置のために社内ルールなどを定めて明示した上で、情報システムの監視・モニタリングを行うこと自体は正当です。しかし、茅ヶ崎市の小学校のように、生徒のパスワードの提出を求めることは、仮にそれがGoogle Workspace for Educationの不正防止のための監視・モニタリングなどの目的であったとしても、手段・方法として社会通念を逸脱しているので違法と判断される可能性があるように思われます(民法709条、憲法13条)。

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■参考文献
・岡村久道『個人情報保護法 第3版』218頁、225頁、516頁
・小向太郎・石井夏生利『概説GDPR』93頁
・西田典之・橋爪隆補訂『刑法各論 第7版』145頁
・山本龍彦「職場における電子メールの監視と不法行為責任」『新・判例ハンドブック情報法』(宍戸常寿編)98頁
・坂東司朗・羽成守『新版 学校生活の法律相談』346頁
・安全なパスワード管理|総務省
・ ネットの危険から子供を守るために>保護者の皆様へ|内閣府

■関連記事
・練馬区が親子に家庭のSNSルールを作成させ学校に提出させるプリントにパスワードの記入欄があることを考えた(追記あり)-セキュリティ・プライバシー・不正アクセス
・デジタル庁「教育データ利活用ロードマップ」は個人情報保護法・憲法的に大丈夫なのか?
・コロナ下のテレワーク等におけるPCなどを利用した従業員のモニタリング・監視を考えた(追記あり)



















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1.赤羽一嘉国交大臣の「内閣には臨時国会を開く権限はない」ツイートが炎上
8月16日午前9時の公明党赤羽一嘉国交大臣(@AKBhyogo2ku)のつぎのツイートがTwitter上で炎上しました。

『臨時国会の開催については、国会が決めることでして、内閣には何の権限もございません。但し、閉会中の今も、毎週、委員会は開催しており、今週も、(水)(木)に内閣委員会が開かれます!』
赤羽ツイート1
(赤羽大臣のTwitterより)
https://twitter.com/AKBhyogo2ku/status/1427064920818917376

炎上したのは、憲法53条には臨時国会(臨時会)を召集し開催することは内閣の権限であることが規定されているにもかかわらず、現職の大臣の赤羽氏が、まるで憲法53条の条文を読んだことすらないようなツイートをしているからです。(なお、赤羽氏がツイートしている、「国会閉会中の委員会」は閉会中審査(衆議院)、継続審査(参議院)と呼ばれる国会法47条2項に基づく会議であり、国会ではありません。)

憲法
第53条

内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。

2.赤羽大臣の釈明ツイートがさらにひどい
このツイートに対しては大きな批判が寄せられ、16日夜にはTwitter上でもトレンド欄「憲法53条」「臨時国会」が表示される事態となりました。

これを受けて、赤羽大臣は同日23時につぎの釈明ツイートを行っていますが、これも非常にひどい内容です。

私のツイートでお騒がせし、スミマセン
私の申上げたかったことは、「内閣は、臨時国会の召集を決定することができる」のは憲法53条にある通りですが、実際は、臨時国会の開催時期やその期間などについては、与野党の国対委員長間で話し合いが行われ、実施されてきたのが慣例でしたということです。


赤羽ツイート2
(赤羽大臣のTwitterより)
https://twitter.com/AKBhyogo2ku/status/1427282139901427714

赤羽大臣はこの釈明ツイートで、「臨時国会の開催時期などについては与野党の国対委員の話し合いで決定し実施される」という国会の実務を紹介し、同日9時頃の「臨時国会を開催する権限は内閣にはない」という自身のツイートは間違いではないと主張しています。

3.憲法53条後段に基づく少数議員の要求による内閣の臨時国会の召集
しかし、現在の日本政治で大問題となっているのは、赤羽大臣のツイートにある「内閣は、臨時国会の召集を決定することができる」との憲法53条前段の話ではなく、同53条後段の「いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。」の話です。

つまり、7月16日には野党各党が憲法53条後段に基づき、議員の四分の一以上の議員の要求として、臨時国会(臨時会)の招集を内閣に求めているにもかかわらず、菅内閣が1か月を経過しても臨時国会を召集していないことが憲法違反だと社会的非難を受けているのに、赤羽大臣がまるでこれを理解できていない釈明ツイートをしているのは、ひどいとしか言いようがありません。

そもそも内閣が憲法53条後段に基づくいずれかの議院の四分の一以上の議員からの臨時国会を召集せよとの要求があったにもかかわらず、内閣がこれを拒否することは、2015年の安倍晋三内閣にはじまり、その後も漫然と行われて、憲法違反であると社会的批判を受けています。

この点、憲法の解説書によると、憲法53条後段の「法定要件を満たす招集の要求があった場合、内閣は相当の期間内に臨時会を招集する義務を負う。とされています(野中俊彦・中村睦男・高橋和之・高見勝利『憲法Ⅱ 第5版』115頁)。

この憲法53条後段の趣旨・目的は、議院内閣制においては国会の多数派の意思は内閣により実現されやすいが、国会の少数派の意思は実現されにくいため、この少数派の意思を守るためであるとされています(芹沢斉・市川正人・坂口正二郎『別冊法学セミナーNo210 新基本法コンメンタール憲法』334頁)。

つまり、内閣が少数議員からの臨時国会の召集要求を拒むことは、少数議員に付託している日本国民の少数意見を内閣(行政)が無視することであって、これは少数意見にも配慮した熟議を行わななければならないという議会制民主主義の否定です。

なお、臨時国会を召集せよと要求する議員が招集期日の指定をすることが通常ですが、この招集期日の指定に内閣が拘束されるかは憲法上の論点とされています。

この点、2015年の安倍政権より前の政府の公式見解は、「諸般の状況を勘案して合理的に判断して最も適当と認める招集時期を決定する」として議員側の招集期日の指定に拘束されないとの見解をとっています(芹沢ら前掲334頁)。しかしこの従来の政府の公式見解も、「臨時国会の召集の要求が議員から内閣にあったのに、内閣は臨時国会を召集する義務を負わない」とはしていないのです。

つまり、2015年の安倍内閣以来、ずるずると議員からの臨時国会の召集の要求があったにもかかわらず臨時国会の召集を拒否している安倍内閣・菅内閣の対応は、憲法53条の文言に違反している憲法違反なだけでなく、従来の政府の公式見解にも違背しています。

4.まとめ
このような最近の内閣の憲法違反の行為を、現職大臣の赤羽氏がまったく理解できていないかのツイートを繰り返していることは大問題であるといえます。内閣の憲法違反の大問題や、憲法53条の条文上の知識すら理解していない赤羽大臣は、国務大臣としての資質に重大な問題があるのではないでしょうか。

■関連する記事
・コロナ対策のために患者の入院制限を行う菅内閣の新方針について考えた
・自民の横浜市議の山本たかし氏が住民に「他に引っ越せ」とツイートして炎上してる件
・西村大臣の酒類販売事業者や金融機関に酒類提供を続ける飲食店との取引停止を求める方針を憲法・法律的に考えた
・デジタル庁の事務方トップに伊藤穣一氏との人事を考えた(追記あり)
・「法の支配」と「法治主義」-ぱうぜ先生と池田信夫先生の論争(?)について考えた

■参考文献
・野中俊彦・中村睦男・高橋和之・高見勝利『憲法Ⅱ 第5版』115頁
・芹沢斉・市川正人・坂口正二郎『別冊法学セミナーNo210 新基本法コンメンタール憲法』334頁
・安倍政権が臨時国会を開かないのは憲法違反である|南野森













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7月31日に、自民党横浜市議山本たかし氏(@yamamotoT0709)が、林市長を批判する住民に対して「他に引っ越せ」とツイートして炎上しています。

山本たかし1
(山本たかし氏のTwitterより)
https://twitter.com/yamamotoT0709/status/1421423721886089216

山本たかし氏は、国家主義の戦前の日本とは異なり、現在の日本は国民主権の自由な民主主義国であり、主権者の国民に対して山本氏を含む国・自治体は行政サービスを行う存在であるという民主主義の初歩の初歩をご存知ないのだろうかと驚いてしまいます。

また、山本氏は、「いやなら出ていけばいい。そこに留まるなら、自分自身も努力しようじゃないかと言っただけです」ともツイートしています。

山本たかし2


しかし、この「いやなら出ていけ。そこに留まるなら、住民・国民自身も努力すべきという山本たかし氏の発言は、自民党の参議院議員の片山さつき氏「人権思想をやめて、『国があなたのために何をしてくれるかでなく、あなたが国のために何ができるか考えよう』とするのが、自民党憲法改正草案の基本的な考え方です」とのツイートと、同じ考え方に基づくものであると思われます。

片山さつきツイート
(片山さつき氏のTwitterより)

2012年に公表された自民党の憲法改正草案は、「良き伝統と国家を末永く承継」することを憲法の目的とし、国民に対して経済活動などで国を成長させる義務や、国防義務、家族助け合い義務などを課し、さらに社会の基礎単位は一人一人の国民個人でなく「家族」であるとする、非常に国家主義的・全体主義的な内容のものです。

つまりそれは、「国民には生まれながらに一人の人間として尊く、基本的人権が存在する」(憲法13条等)ということと、「国民・住民の福祉や基本的人権の確立という目的のために国・自治体などの統治機構は手段として存在する」(憲法11条、97条)という、18世紀のアメリカ独立戦争やフランス革命などの市民革命以降の近代の自由主義諸国の近代憲法(近代立憲主義憲法)の大原則を否定し、戦前の日本やドイツ、あるいは現代の中国などのような国家主義・全体主義の国家を目指す危険な考え方です。

第二次世界大戦では、世界で少なくとも5000万人もの人々が死亡し、これは当時の世界人口の2.5%以上に相当するとされています。国家主義・軍国主義国家であった当時の日本は、ドイツ・イタリアとともにこの戦争を引き起こしてしまった深い反省に立ち、自由な民主主義の近代憲法である現行憲法を持つに至ったのですが、横浜市議の山本たつや氏や、自民党の方々はその反省をもう忘れてしまったのでしょうか。非常に心配です。国会やマスメディアなどは、この横浜市議の山本たつや氏の発言を取り上げてほしいと思います。

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小林解任
(TBSニュースより)
1.東京オリンピック開会式・閉会式のトップのディレクター・小林賢太郎氏が解任
東京オリンピックの開会式が明日にせまるなか、7月22日午前11時頃に、開会式のディレクターで開会式の演出のトップの元お笑い芸人の小林賢太郎氏が、お笑い芸人時代にナチス・ドイツのユダヤ人大虐殺(ホロコースト)を笑いの対象としたコントをしていたことに対し、ユダヤ人人権団体のサイモン・ウィーゼンタール・センター(SWC)が同氏を非難する声明を公表したことを受け、組織委員会は本日、小林賢太郎氏を解任したとのことです。
・小林賢太郎氏を解任 五輪開会式演出担当、ホロコーストをやゆ|毎日新聞

・SWC Condemns Anti-Semitic Remarks by Director of Opening Ceremony of Tokyo Olympics|SWC

SWCサイト
(SWCサイトより)

たしかに、SWCサイトをみると7月21日付で、「SWC Condemns Anti-Semitic Remarks by Director of Opening Ceremony of Tokyo Olympics」(SWCは東京オリンピックの開会式のディレクターによる反ユダヤ主義の発言を非難する)との抗議声明が出されています。

同声明はつぎのように、小林賢太郎氏を強く非難しています。

“Any person, no matter how creative, does not have the right to mock the victims of the Nazi genocide. The Nazi regime also gassed Germans with disabilities. Any association of this person to the Tokyo Olympics would insult the memory of six million Jews and make a cruel mockery of the Paralympics,”
(どんなに創造的であっても、ナチスの虐殺の犠牲者をあざける権利は誰にもありません。ナチス政権はまた、障害を持つドイツ人をガス処刑した。この人物(=小林賢太郎氏)と東京オリンピックとの関係は、600万人のユダヤ人の記憶を侮辱するものであり、パラリンピックへの残酷な嘲笑を引き起こすでしょう。)

「どんなに創造的であっても、ナチスの虐殺の犠牲者をあざける権利は誰にもありません。」との批判は正当であり、もはや東京オリンピックは開会を前に、完全にレイムダック、「死に体」の状況に陥っているように思われます。

障害者のパラリンピックを含む東京五輪の開会式・閉会式の音楽担当の小山田圭吾氏が、学校時代の障害者へのいじめ加害で辞任となったばかりですが、今度は開会式の演出トップが、ナチスドイツのユダヤ人大虐殺を笑いの対象としていたことでSWCから非難され解任というのは非常に深刻な状況です。(SWCはアメリカに本部を置く、日本を含む西側自由主義諸国の政治に大きな影響力のある団体です。)

ナチスドイツによる600万人を超えるユダヤ人虐殺は、第二次世界大戦における重大な戦争犯罪の一つであり、ナチスドイツと同盟を結び軍国主義・全体主義国家として第二次世界大戦を行ってしまった日本も、このユダヤ人虐殺を軍国主義・全体主義国家の重大な間違いとして深く反省しなければならない立場のはずです。

世界の国々が参加する、オリンピックという準国家的なイベントの開会式・閉会式の演出のトップのディレクターの人選にあたり、組織委員会や国は、十分な身元調査などを実施していなかったのでしょうか?

また身元調査以前の問題として、そもそも、オリンピックという準国家的なイベントの演出ディレクターや楽曲担当などの要職は、いわば日本の広告塔となるわけですから、イベントの演出や音楽などの実務能力だけでなく、学識経験や高潔な人格など高い水準が要求されるように思われますが、なぜ東京オリンピック開会式・閉会式のスタッフ達は、お笑い芸人であるとか、露悪趣味を売り物にしているサブカル系のミュージシャン等ばかりが幹部に選抜されているのでしょうか?

武藤組織員会事務総長は、小山田氏の辞任劇に際し「我々は開会式・閉会式のスタッフは一人一人選んでいない」と自分達に責任がないと強調していましたが、電通などに重要な人事を丸投げにして放置していた点にこそ、重大な責任があるのではないでしょうか。武藤事務総長や橋本組織委員長ら幹部達は、重要な人事すら丸投げして放置しておいて、自分達はこれまで一体何の仕事をしていたのでしょうか?電通やテレビ局、政治家などへの中抜きのカネ勘定しかやっていなかったのでしょうか。

このように、五輪組織委員会の幹部達の経営責任や、監督する立場の菅首相や丸川大臣らの国の責任は重大であると思われます。

2.中山泰秀・防衛副大臣がサイモン・ウィーゼンタール・センター(SWC)に通報?
また、この解任劇は、Twitter等によると、ネット上で小林賢太郎氏の過去のコントが問題であると話題になり、7月22日午前1時頃にあるネット上の人物からTwitter上で申告を受けた防衛省副大臣の中山泰秀氏が同日午前2時前にSWCに通報を行い、22日午前11時頃に組織委員会が小林氏を解任したという経緯があるようです。

防衛省副大臣中山氏のツイート2
(中山泰秀氏のTwitterより)
https://twitter.com/iloveyatchan/status/1417896461262483457

Twitter等によると、中山泰秀・防衛副大臣は菅総理や丸川五輪担当大臣、橋本聖子組織委員長などに連絡することなしに、直接、SWCに通報を行ったようですが、これは少し大げさにいえば、防衛省幹部による、政府に対する一種の電子的なクーデターなのではないでしょうか。

新型コロナの第5波が日本を襲うなか、世論調査によると国民の5割~8割が東京オリンピックに反対しているにもかかわらず、菅首相は東京五輪の開催を強行しています。昨日は、経団連など経済界の3団体のトップが東京五輪の開会式を欠席することを明らかにしただけでなく、東京オリンピック開催を推進してきた安倍前総理も開会式を欠席することが明らかになりました。もはや政府与党の中では、菅首相に幹部達が公然と従わない空気となっているのかもしれません。

東京オリンピックとともに、菅政権も「死に体」、レイムダックの状況となっているのかもしれません。これまでの東京五輪のごたごたをみると、不祥事は小林氏の件で終わりになるとは思えません。オリンピック関係者や選手、スポーツ関係者達だけならまだよいですが、一般国民に対してもトラブルや政治的混乱の悪影響が及ばないことを願うばかりです。

今からでも菅政権は東京オリンピックを中止し、コロナ対応に全力を尽くすべきです。

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