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タグ:看護師

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東京オリンピック・パラリンピック選手村村長で、日本サッカー協会相談役などを務める川渕三郎氏の5月4日の東京オリンピックに関する医師・看護師の募集についての次のようなツイートが炎上しています。

『東京オリパラ開催に向けて組織委員会はじめ多くの関係者が毎日ベストを尽くしている。中止が決定しない限り最大の努力をするのは日本を代表して世界に対応しているのだから当然の話。スポーツドクターや看護師にボランティアの呼びかけをするのもその延長戦上での事。何故この事が批判の対象になるの?』(川渕三郎氏のTwitter( @jtl_President )より)

https://twitter.com/jtl_President/status/1389505969856540673

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(川渕三郎氏のTwitter(@jtl_President)より)

組織やその人間が、目的に向かって一生懸命努力さえしていれば、その目的や努力は常に正当化されると川渕氏は考えているようです。

たしかにスポーツにおいてはそうかもしれません。しかし、世界で今なおコロナが大流行するなかでの東京オリンピック開催の是非は、日本や世界の多くの国民・市民の生命や健康に関わる、重大な公衆衛生上の問題あるいは政治問題です。

スポーツでは判断を誤っても負けるだけで済みますが、東京オリンピックに関して公衆衛生的にあるいは政治的に誤った判断がなされた場合、日本あるいは世界の多くの国民・市民の生命や健康が侵害される危険があります。

世界コロナ感染者の累計は約1億5700万人を超え、世界のコロナによる死者約320万人を超え、国内コロナ感染者の累計は約64万人を超え、国内のコロナによる死者1万人を超えています(2021年5月10日現在。Yahoo!Japanサイトより)。

コロナの世界の発生状況(2021年5月10日現在。Yahoo!Japanサイトより)
コロナ世界の発生状況

コロナの国内の発生状況(2021年5月10日現在。Yahoo!Japanサイトより)
コロナ国内の発生状況

にもかかわらず、川渕氏は、東京オリンピックの問題を、根性論や精神論の問題に矮小化しようとしているようです。また、日本でコロナの第4波が拡大しつつあるにもかかわらず、東京オリンピック開催を強行しようとしている政府・与党も、川渕氏と同様に、思考停止の根性論で物事を進めているように見えます。

しかしそれでは、原爆を2発投下されるまで自分で暴走を止められなかった戦時中全体主義・軍国主義日本政府の思考停止の精神論と、今の日本の政府や五輪組織委員会、IOC・JOC等は思考方法がまったく同じということになります。まさに「オリンピック・ファシズム」と言わざるを得ません。

また、川渕氏はTwitterで、「中止が決定しない限りは、日本を代表して世界を相手に対応しているのだから最大限努力するのは当然」と投稿しています。

「日本を代表して」、「世界を相手にしている」など、大きなモノを持ち出してきて国民に思考停止して賛同するよう求めていますが、日本のオリンピック関係者が「日本を代表して」、「世界を相手」に仕事をするのはその職務上当然のことであり、それと東京オリンピック開催をするか否かは別の問題です。

川渕氏をはじめとする日本のオリンピック関係者や政府は、「日本を代表して」、「世界を相手に」仕事をしている当事者なのですから、「中止の決定がない限りはー」などと他人事のようなことを言って思考停止するのでなく、この世界的なコロナ禍のなかで今夏に東京オリンピックを本当に開催すべきなのか、当事者として今一度検討すべきなのではないでしょうか。

世界的なスポーツの祭典であるオリンピックも、有史以前から継続されてきたわけではなく、近代オリンピックは約120年の歴史があるに過ぎません。中世のペストなど世界史レベルの疫病であるコロナ禍に対して、「昔から4年に1回開催されているから」などとお役所的な思考をするのでなく、オリンピック関係者や各国の政府関係者は現実的な判断をすべきではないでしょうか。

日本政府は、東京オリンピック開催による経済効果を狙っているものと思われますが、金銭的な問題であれば、後からさまざまな方策でリカバリー可能です。しかし、一度失われた人間の生命や健康は後から金銭で回復させることはできません。

オリンピック関係者や政府関係者は、東京オリンピックについて、精神論による思考停止に陥ることなく、今一度よく考えて中止(または延期)をしていただきたいと思います。

■追記(5月10日)
水泳のオリンピック選手の池江璃花子氏のTwitterアカウントが東京オリンピック開催の是非について炎上したことについて、5月7日に池江氏は同アカウント上で、川渕三郎氏と同様に、自分はオリンピックに向けて「努力」しているとした上で、「私個人に批判を当てられるのは苦しいです」とのツイートを行いました。この池江選手の炎上に対しては、ネット上やマスコミにおいては、池江氏に対して同情的な意見が多いようです。

池江るかこツイート
(池江璃花子氏のTwitter(@rikakoikee)より)

https://twitter.com/rikakoikee/status/1390638021943316482

しかし、この池江璃花子氏の主張も、川渕三郎氏と基本的には同じようです。つまり、「自分たちは周囲の期待もあるのでオリンピックに向けて努力をしているのだから、批判するな」という精神論・根性論による思考停止です。

「「努力」さえしていれば人間は批判されない」という子供のような甘えた主張。いつから日本は、こんな仕事のできない新入社員の弁解のような甘えた主張がまかり通る社会になってしまったのでしょうか。およそ人間社会において、「努力」していない人が存在するのでしょうか。会社員も、事業主も、家庭で働く人も、学生や生徒も、病気や障害をもち生きている人も、高齢の方々も、それぞれの自分の人生において日々、努力をしています。

「自分たち選手は周囲の期待のために努力しているのだから、オリンピックには参加だけしてメダル地位名誉を得たい。だけど私個人に批判を当てられるのは苦しいですという虫のよい自分勝手な主張は大人の社会で通用しません。

池江選手は20歳を超えた成人のはずであり、かつ大学生のはずです。20歳を超えた大の大人のであれば、オリンピック選手というオリンピックの「当事者」「主役」として、自分の自己実現だけでなく、この夏の東京オリンピック開催が日本および世界のコロナ禍、日本と世界の約78億人国民・人間の生命・健康にどのような悪影響を与えるか、当事者として自分の頭で今一度真剣に考えるべきです。

金メダル候補のオリンピック選手という当事者中の当事者主役であるならば、真剣に自分の頭で考え判断すべきです。それを「苦しいです」と言って逃げるのは、バッハや組織委員会、日本政府、広告代理店、スポンサー企業などに操られる、ただのマスコミが好みそうな病歴があり、スポーツが得意でルックスがよいだけの「お人形」のやることです。それは自らの意思を持って生きる人間・国民とはとてもいえません。もしそれがそれほど「苦しい」のなら、池江選手は器ではないのでオリンピック選手を早く辞めて、別の人生を送るべきです。

■追記(2021年5月23日)
弁護士で政治家の宇都宮健司氏が、東京オリンピック中止を求めるネット署名を行っています。私も署名しました。
・東京五輪の開催中止を求める署名はこちら | 宇都宮けんじ公式サイト

#東京五輪の開催中止を求めます
#StopTokyoOlympics

■関連する記事
・新型コロナ・尾見会長「五輪何のためにやるのか」発言への丸川大臣の「スポーツの力を信じて」発言を考えた















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1.自治体の個人情報保護条例を国の個人情報保護法に強制的に一元化してよいのか?
自治体の個人情報保護条例を国の個人情報保護法に統一化・一元化する内容を含む、デジタル関連法案が衆議院を通過し、現在、参議院で審議中です。

・「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案」の閣議決定について|個人情報保護委員会

デジタル関連法案の概要
(「デジタル関連法案の概要」 個人情報保護委員会サイトより)

今回の2021年の個人情報保護法改正に賛成する情報法の学者の先生方は、個人情報保護条例の統一化について、「自治体により個人情報保護条例が異なると大企業・国が個人情報を利活用しにくい」と主張しておられます(いわゆる「2000個問題」)。

しかし大企業等が自治体等が保有する個人情報を利活用しにくいということは、住民の個人情報が条例の壁により守られているとプラスに評価すべきではないでしょうか。

国の個人情報保護法においても、その立法目的・基本理念は、企業等による「個人情報の有用性に配慮」だけでなく、「個人の権利利益を保護」、「個人情報は、個人の人格尊重の理念の下に慎重に取り扱われるべきもの」と規定されているのですから、住民・国民の個人情報の保護による、国民・住民のプライバシー権や人格権などの人権保障も重要な個人情報保護法制の立法目的です。

例えば防犯カメラの問題について、個人情報保護法に個別の規定はなく(法18条4項4号による)、個人情報保護委員会は企業寄りのガイドライン・QAを公表しているのみです(QA1-11など)。

一方、自治体においては、例えば三鷹市、世田谷区等は住民の人権をも考慮した「防犯カメラ条例」を制定し、事業者等の防犯カメラの設置や運用に規制を設けています。

デジタル関連法案、個人情報保護法改正で、全国の自治体のこのような画期的な取組が国に潰されてよいのでしょうか?

日本は中国のような全体主義・国家主義の国でなく、西側自由主義諸国に並ぶ、国民の個人の尊重と人権保障を国の目的とする近代憲法をもつ国民主権の国のはずです(憲法1条、11条、13条、97条)。

2.自治体の団体自治・条例制定権
また、自治体には国から独立して権力分立の関係で自治を行う権限(「団体自治」・憲法92条)があり、国から独立した条例制定権を有しています(94条)。そのため、国が強制的に自治体の個人情報保護条例を国の個人情報保護法に一元化することは、憲法の地方自治の条文に抵触しており、国の統治の観点からも大きな問題をはらんでいます。

政府・与党は、このように問題の多い2021年の個人情報保護法改正・デジタル関連法案を今一度見直すべできす。

3.国家資格保有者の個人情報を国が一元管理するマイナンバー法改正
4月30日には、東京オリンピック組織委員会が日本看護協会に、大会の医療スタッフとして看護師500人の確保を要請したことに関連し、菅首相「休んでいる方もたくさんいると聞いている。可能だと考えている」と発言したことが注目されました。

また、5月3日には、同じく組織委員会は、医師をボランティアとして約200人募集したことが明らかになりました。

・菅首相 五輪・パラリンピックの看護師500人確保は可能「休んでいる人多い」|東京新聞
・東京五輪の組織委、ボランティアの医師200人を募集|朝日新聞

今回のデジタル関連法案のなかのマイナンバー法改正法案には、「国家資格保有者の個人情報をマイナンバーを使って国が一元管理するための改正」も含まれています。(冒頭の「デジタル関連法案の概要」の上から2番目の「マイナンバーを活用した情報連携による行政手続きの効率化」の部分。)菅首相はこのマイナンバー法改正を念頭に発言をしたものと思われます。

しかし、上でもみたように、わが国は個人の自由意思を基本とする自由主義国です。たとえ看護師などの国家資格を保有していたとしても、当該資格を有している方が看護師として働くか否かは本人の自由意思に委ねられます(自己決定権・憲法13条)。また、憲法は職業選択の自由(22条)財産権の自由(29条)を規定しており、個人や法人には営業の自由が認められています(22条、29条)。この職業選択の自由や営業の自由には、ある職業を選択しない自由や、営業しない自由が含まれているのは当然のことです。

(なお、医師法19条は診療に関する医師の応召義務を規定していますが、医師は「正当な理由」があれば診療の拒否が可能であり、また同義務は罰則規定もない公的義務です(神戸地裁平成4年6月30日判決)。そのため、医師法19条を根拠に五輪組織委員会や国が医師などにオリンピックへの協力を強制できるとは思えません。)

にもかかわらず、国が看護師などの国家資格保有者の個人情報データベースを作成し、コロナ禍で働き手が足りないから等と資格保有者の方に書面やメール、電話などで看護師等として働くよう促すことは、軍国主義・全体主義の戦前・戦中の日本政府の「赤紙」と同じです。

現行の憲法は、このような国の命令による強制労働について、「奴隷的拘束」「意に反する苦役」を明文で禁止しています(憲法18条)。

また、国から国民に刑罰が科される場合には、それが正しく行われることを担保するために、法律に定められた手続きによることが要求されますが(適正手続きの原則・憲法31条)、この適正手続きの原則は、刑罰だけでなく国・自治体の行政にも適用されます(最大判昭47年11月22日判決・川崎民商事件)。

今回の日本看護協会への組織委員会の要請について、菅首相は「可能であると考えている」と、国として看護協会あるいは個々の看護師への要請あるいは事実上の強制を行うような発言を行ったわけですが、この菅首相の言動には法的な根拠がなく、憲法31条の適正手続きの原則にも違反しているように思われます。

日本国憲法

第十八条 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。

第三十一条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

このように、国の命令により国民を強制労働させる目的で、国が国家資格保有者の個人情報データベースを作成することは、憲法18条、31条に抵触すると思われますので、そのような国家資格保有者の個人情報データベースを用意するためのマイナンバー法改正は違法・違憲であり、政府・与党はこれを撤回すべきです。

なお、菅政権は、商社・銀行など大企業の従業員を国が管理・監督し、当該従業員を地方の企業等で働かせる政策も公表しています。

・菅首相 “大企業の人材 地方の中小企業に派遣 活性化を”|NHK

しかしこの政策も、看護師などの国家資格保有者の個人情報を国が一元管理し、強制労働に利用しようという全体主義・国家主義的な考え方に似ています。今後、政府・与党が、国家資格保有者だけでなく、大企業の従業員の個人情報を一元管理する施策を打ち出さないか、国民は注目する必要があると思われます。

■関連するブログ記事
・2021年の個人情報保護法の改正法案の学術研究機関の部分がいろいろとひどい件-デジタル関連法案
・ジュンク堂書店が防犯カメラで来店者の顔認証データを撮っていることについて
・健康保険証のマイナンバーカードへの一体化でカルテや処方箋等の医療データがマイナンバーに連結されることを考えた

■参考文献
・宇賀克也『個人情報保護法の逐条解説 第6版』30頁、92頁
・芦部信喜『憲法 第7版』378頁
・石村修「コンビニ店舗内で撮影されたビデオ記録の警察への提供とプライバシー」『専修大学ロージャーナル』3号19頁










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