AIと著作権

■追記(2023年6月22日)
6月19日の文化庁の本セミナーがアーカイブで配信されています。
令和5年度著作権セミナー「AIと著作権」の講演映像及び講演資料を公開しました。

1.はじめに

2023年6月19日午後2時から3時まで、文化庁のYouTubeの著作権セミナー「AIと著作権」が開催されたので受講しました。とても興味深く面白い講義でした。受講して印象に残った点や感想などを少し書いてみたいと思います。(あくまでも個人の感想です。)

2.著作権法30条の4の「権利者の権利を不当に害する場合」
まず、文化庁としては、AIの①開発・学習段階と、②生成・利用段階を分けて考えてほしいということをとても強調されていました。

また文化庁は著作権法30条の4の「権利者の権利を不当に害する場合」については、情報解析用DBの販売・利用を阻害する場合が具体例として想定されると非常に狭く解して説明している点が印象に残りました。

(そのため、イラストレーターの方々が「自分の権利が不当に侵害されている」と法30条の4の「権利者の権利を不当に害する場合」に該当すると主張しても、ただちにその主張が採用されるかについては厳しそうだと感じました。)


2.類似性と依拠性
つぎに、AI生成物が著作権侵害となるかどうかについては一般の著作権侵害と同様に、①類似性と②依拠性があるかで判断されるが、類似性はAIでない創作物と同じ判断基準によるとなるが、依拠性は現在議論中で難しいとのことでした。講義のなかでは4つの見解が紹介されていました。

ただし、①Image to Imegi(i2i)の場合や、②特定のクリエイターの作品を集中的に学習させた場合は、依拠性が認められる可能性はあるのではないかとのことでした。この点に関しては、イラストレーターの方々にとっては朗報なのではと思いました。


3.利用者側の注意点
さらに、利用者側の注意点としては、①利用行為が著作権の権利制限規制に該当しないか検討する②既存の著作物と類似していないか検討し、もし類似している場合には、(a)利用をさける、(b)著作権者の許諾を得る、(c)大幅な修正を加えるなどの対応をとることが望ましい、との説明がありました。この点は、今後の法的紛争の予防のために重要な指針なのではと思いました。


4.AI生成物が著作物にあたるか
加えて、AI生成物が著作物にあたるかについては、AIが自律的に作成したものは該当しない、しかし人間が思想・感情を創作的に表現するために「道具」として利用した場合には該当するとし、それには「創作的意図」・「創作的寄与」が問題になるとのことでした。このうち創作的意図は簡単だが、創作的寄与の判断は難しく、現在、文化庁も有識者委員会などで検討中とのことでした。


5.その他
なお、文化庁はAIの問題に関連し「海賊版対策情報ポータルサイト」を準備しているのでイラストレーターなどの方々は利用してほしいとのことでした。
・インターネット上の海賊版による著作権侵害対策情報ポータルサイト

また、生成AIに関する説明を追加した文化庁の「著作権テキスト」(令和5年版)は7月に公開予定とのことでした。

YouTubeのセミナー終了後にはアンケートがあったのですが、「アーカイブ動画を希望しますか?」とあったので強く「希望」としました。


6.感想
このように1時間の講義ながら、全体として分かりやすく非常に勉強になりました。また文化庁の現在の考え方がよくわかるセミナーでした。文化庁におかれては、今後もネット媒体のセミナーなどで、生成AIと著作権の問題を取り上げてほしいと思いました。

■関連するブログ記事
・chatGPT等の「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」に関して個人情報保護委員会に質問してみた

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