なか2656のblog

とある会社の社員が、法律などをできるだけわかりやすく書いたブログです

タグ:要配慮個人情報

AIのイメージ
内閣府 科学技術・イノベーション推進事務局 人工知能政策推進室が、「人工知能基本計画(素案)に関する御意見の募集について」とのパブコメを実施しています(締切6月23日)。

・人工知能基本計画(素案)に関する御意見の募集について|e-GOVパブリック・コメント

「人工知能基本計画(素案)」ですが、ざっと読んだ感じでは、国民個人の権利利益の保護よりも、ますますAIの利活用を推進しようという、いかにも経済界・政官が喜びそうな内容でした。

とりいそぎ、入力フォームからごく簡単な意見を送ってみました。先日のブログ記事でも取り上げた、AIに関する個人情報改正法案の統計利用特例についても書きました。

ところでこのパブコメ、開始が6月19日19時30分で、締切が6月23日23時59分とたった約5日間しかパブコメ期間がないのは、ちょっとあまりにも「広く一般の意見を求める」(行政手続法39条1項)というパブコメの趣旨に反しているのではないでしょうか・・・。政府のAI政策は、あまりにも一般国民のほうを向いていないように思われます。

私の意見はつぎのとおりです。

・クロード・ミュトスなどのようなAIの危険性が増加していることから、日本のAI推進法を抜本的に改め、EUのAI法のようにリスクベースでAIを規制する法律に改正すべきである。

・「法律による行政の原則」の観点からは、AI規制については、AI事業者ガイドラインなどのようにソフトロー中心で規制をおよぼす建付けを抜本的に改め、法律によるハードローにより規制をおよぼすことにより、国民の基本的人権をしっかりと保護する方向に政府の方針を改正すべきである。

・AI規制にあたっては、個人の尊厳、プライバシー権、内心の自由・精神活動の自由などの基本的人権、民主主義などを保護するため、AIを利用した個人のプロファイリングや、AIを利用した個人の内心や精神活動への介入・働きかけを法規制すべきである(個情法1条、3条、憲法13条、19条)。

・現在国会で審議中の個人情報保護法改正案については、AIの開発のための統計利用特例のために本人同意なく要配慮個人情報の収集・利用・第三者提供を可能とする改正の部分について、個人の人格権、個人の尊厳、プライバシー権、内心の自由、自己情報コントロール権、「自己の情報を適切に取扱われる権利」などの個人の権利利益を大きく侵害するものであり違法・違憲なものであるから(個情法1条、3条、憲法13条、19条)、これを撤回すべきである。
■関連するブログ記事
・あなたの病歴が外国企業に渡る?-「統計特例」に関する個人情報保護法改正案の問題点
・あなたのLINEの情報が保険営業に?ー2026年個人情報保護法改正の「AI学習目的」という抜け穴

人気ブログランキング

ブログランキング・にほんブログ村へ

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

内閣府や厚労省等の検討会議で、健康・医療データについて本人同意なしに二次利用(目的外利用・第三者提供)を認める方向で検討がなされているようですが、この方向の検討に難治性の疾患の長年の患者の一人として反対です。

例えば、厚労省の検討会「健康・医療・介護情報利活用検討会 医療等情報の二次利用に関するワーキンググループ」の第2回資料をみると、健康・医療データを本人同意なしで二次利用する方向で議論しています。

第一回でいただいたご意見
(厚労省の検討会「健康・医療・介護情報利活用検討会 医療等情報の二次利用に関するワーキンググループ」の第2回資料より)

医療データ利活用の関する議論の全体像
「医療データの利活用に関する議論の全体像ー目指すべき未来」『医療データ利活用について(論点整理(骨子))』内閣府より)

医療データは要配慮個人情報・センシティブ情報であり、個人情報のなかでもとりわけ取扱注意な情報です(個人情報保護法2条3項、20条2項、27条2項ただし書き)。それを患者本人の同意を取らずに勝手に二次利用とは個情法の観点からもあまりにもおかしいと考えます。

プライバシーに関しては日本の憲法学では一応、自己情報コントロール権説(情報自己決定権説)が通説なのですから、その観点からも本人同意なしは説明がつかないと考えます。

(なお、有力説としては曽我部真裕教授などの「自らの個人情報を適切に取扱われる権利」説や、高木浩光氏の「関連性のない個人データによる個人の選別・差別禁止」説などがあるが、これらの説ではこの医療データの本人同意なしの二次利用の問題などについて、政府等から「いやいや貴方の医療データは適切に取扱います。もちろん関連性のない個人データで貴方を選別・差別したりしません。」と言われたときに患者・国民は何も反論できないという問題点がある。)

医療データは風邪のような軽微なものから、がんやHIV、精神病など社会的差別の原因となる疾病が多いのに、医療データを乱雑に扱ってよいとはとても思えません。とくに精神疾患は患者の内心(憲法19条)に直結しています。政府や製薬会社・IT企業等は、患者・国民の内心・内面や思想・信条に土足で踏み込むつもりなのでしょうか。これらの社会的差別の原因となる、あるいは患者の内面に直結する医療データを患者の本人同意なしに二次利用してよいとはとても思えません。

日本経済の発展のために医療データの利活用が必要だとしても、オプトアウト制度など何らかの患者本人が関与するしくみが絶対に必要だと考えます。

日本は中国やシンガポール等のような全体主義国家ではなく、国民主権の民主主義国なのですから(憲法1条)、国民の個人の尊重や基本的人権の確立が最も重要な国家目的のはずです(憲法13条、12条、97条)。患者・国民を国や製薬会社・IT企業等のために個人データを生産する家畜のように扱うことは絶対に止めるべきです。

健康・医療データについて本人同意なしに二次利用を認めることには患者の一人として私は反対です。政府は患者・国民不在でこういう検討を勝手に進めるのは止めてほしいと思います。

■関連するブログ記事
・健康保険証のマイナンバーカードへの一体化でカルテや処方箋等の医療データがマイナンバーに連結されることを考えた

■参考文献

・山本龍彦・曽我部真裕「自己情報コントロール権のゆくえ」『<超個人主義>の逆説』165頁
・高木浩光「個人情報保護から個人データ保護へ(6)」『情報法制研究』12 巻49頁
・黒澤修一郎「プライバシー権」『憲法学の現在地』(山本龍彦・横大道聡編)139頁
・成原慧「プライバシー」『Liberty2.0』(駒村圭吾編)187頁
・「患者データ利用 同意不要へ」読売新聞2023年7月26日付記事

人気ブログランキング

PR
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

LINEポケットマネーTOP

1.消費者金融の主戦場がスマートフォンに
最近の日経新聞の記事(「消費者金融、スマホ申し込み9割 LINEはペイ借り入れも」)によると、消費者金融の主戦場が店舗からスマートフォンに移行しているそうです。同記事はLINE子会社の消費者金融「LINEクレジット」の「LINEポケットマネー」とその前提となる信用スコアリングの「LINEスコア」について解説しています。

ところで同記事によると、LINEスコアではAI分析により、LINEの利用において「1か月前より友だち(連絡先)が減少した場合には、延滞や貸し倒れの確率(リスク)が2倍になった」等の分析結果を割り出し信用スコアリングを行っていることに、ネット上では「LINEの「友だち」が減ると信用スコアが減ってしまうのか!?」等と驚きや困惑の声が広がっています。

LINEクレジットの与信判断の例
(LINEクレジットの与信判断の例。「消費者金融、スマホ申し込み9割 LINEはペイ借り入れも」日経新聞記事より)

2.プロファイリングと差別の問題
2022年4月に公表された、商事法務の「パーソナルデータ+α研究会」の「プロファイリングに関する最終提言」4頁によると、AI等によるプロファイリングとは「パーソナルデータとアルゴリズムを用いて、特定の個人の趣味嗜好、能力、信用力、知性、振る舞いなどを分析・予測すること」と定義されています。そしてプロファイリングの具体例は「融資の場面におけるAIを用いた個人の信用力の測定」などであるとされています。つまりLINEポケットマネーおよびLINEスコアはAIによるプロファイリングの問題といえます。

そしてプロファイリングにおいては差別のおそれが重要なリスクです。つまり、AIに学習させた個人データのデータセットに、もし人種や性別などの個人の属性に関するバイアス(偏り)が存在していた場合、そのバイアスが含まれた評価結果が生成され、結果として審査等の対象となる個人が不当な差別を受けるおそれがあります。

例えば2018年に米アマゾンがAIを用いた人事採用システムを導入した後、女性の評価が不当に低い欠陥が発覚し当該システムの利用を取りやめた事例は注目を集めました。このように不当な差別が意図せず生じてしまうことに、AIによるプロファイリングの恐ろしさがあります。また、AIを活用した機械的な審査では、対象者のスキルや実績などを十分に評価できず、特定の属性を持つ者に対して不当に厳しい条件が出力されてしまうおそれもあり、人間による判断が介在しないことは危険であると考えられます(久保田真悟「プロファイリングのリスクと実務上の留意点」『銀行法務21』890号(2022年10月号)45頁、47頁)。

この点、LINEポケットマネー・LINEスコアの「1か月前より友だち(連絡先)が減少した場合には、延滞や貸し倒れの確立(リスク)が2倍になった」等のAIの機械学習による評価結果には本当に不当な差別を招くバイアスが含まれていないかには疑問が残ります。(なおLINEポケットマネーのサイトを読むと「10分で融資可能か審査します」等と記載されており、人間の判断が介在していないのではと思われます。)

3.プロファイリングにおける要配慮個人情報の推知と取得の問題
プロファイリングによる個人データの生成行為(あるいは推知)が要配慮個人情報の「取得」に該当するかについては重要な解釈問題として議論されています(宇賀克也『新・個人情報保護法の逐条解説』215頁)。

しかしプライバシー権(憲法13条)との関係上、プロファイリングは要配慮個人情報やセンシティブ情報について、直接これらの情報を取得せずとも高い確率でこれらの情報を推知可能です。つまりプロファイリングによる要配慮個人情報の推知は取得とほぼ異ならないため、実務上は要配慮個人情報やセンシティブ情報の推知を取得とみなして業務対応を行うべきとの指摘がなされています(久保田・前掲46頁)。

この点、要配慮個人情報の取得については「本人の同意」が必要であるところ(個人情報保護法20条2項)、LINEポケットマネー(同クレジット)およびLINEスコアのプライバシーポリシーを読むと、「与信・融資の審査のために要配慮個人情報を取得・利用する」等との明示はなされておらず、本人の同意は十分に取得されていないのではないかとの疑問が残ります。(「本人の同意」については後述。)

(なお、LINE社のプレスリリース「【LINE】「LINE」、スペインの登録ユーザー数がヨーロッパ圏で初めて1,000万人を突破」などによると、LINEのスペインのユーザーは1000万人を超えているそうです。欧州のGDPR(一般データ保護規則)22条1項は、コンピュータやAIによる個人データの自動処理の結果のみをもって法的決定や重要な決定を下されない権利を規定し、同条2項はそのような処理のためには本人の明確な同意が必要であると規定しています。そのため、もしLINEポケットマネーのサービスがスペイン等の欧州のユーザーに提供されていた場合、LINEはGDPR22条2項違反のおそれがあります。)

4.「本人の同意」の方式をLINEは満たしているか?
個人情報保護法は上でみた法20条2項だけでなく、法18条(利用目的の制限)、法27条(第三者提供の制限)、法28条(外国にある第三者への提供の制限)および法31条(個人関連情報の提供の制限)などの場面で本人の同意の取得を事業者に義務付けています。この本人の同意の方法については、「事業の性質および個人情報の取得状況に応じ、本人が同意に係る判断を行うために必要と考えられる合理的かつ適切な方法」によらなければならないと解されています(岡村久道『個人情報保護法 第4版』119頁)。

そして金融業や信用業務に関しては一般の事業よりもデリケートな個人情報を扱うため、それぞれの分野の個人情報保護に関するガイドラインが制定されています。「金融分野における個人情報保護に関するガイドライン」3条は、金融機関に対して、本人の同意を得る場合には、原則として書面(電磁的記録を含む)によるとした上で、事業者が事前に作成した同意書面を用いる場合には、文字の大きさ及び文書の表現を変える等の措置を講じることが望ましいとしています。

また「信用分野における個人情報保護に関するガイドライン」Ⅱ.1.(3)は、与信事業者は本人の同意を得る場合には、原則として書面(電磁的記録を含む)によることとし、文字の大きさ、文章の表現その他の消費者の理解に影響する事項について消費者の理解を容易にするための講じることを義務付けています。債権管理回収業ガイドラインもほぼ同様の規定を置いています(岡村・前掲121頁)。

この点、LINEポケットマネーのユーザーの申込み画面をみると、つぎの画像のように、LINEクレジット(LINEポケットマネー)やLINEスコアの利用規約やプライバシーポリシーへのリンク一覧が貼られ、そのリンク横にチェックを入れる画面があるだけで「次へ」と進むボタンがあるだけとなっています。

LINEポケットマネー同意画面
(LINEポケットマネーの申込みの際の同意画面)

それぞれのプライバシーポリシーを個別に見ても、プロファイリングや要配慮個人情報を取得(または推知)することを明示した条項はありません。(LINEポケットマネーのプライバシーポリシーの「3.機微(センシティブ情報の取扱い)」には、「(7)保険業その他金融分野の事業のため」との条項があるが、「与信」、「融資」または「信用」などの明示はなく、文字の大きさや文章の表現などの工夫もなされていない。)

したがってLINEポケットマネーのサービスは、「文字の大きさ、文章の表現その他の消費者の理解に影響する事項について消費者の理解を容易にするための講じる」等の信用分野個人情報保護ガイドラインⅡ.1.(3)などの規定への違反があるといえます。

また、LINEポケットマネーのプライバシーポリシーを見ると、韓国の関連会社(決済・バンキングシステムのLINE Biz Plus等)に業務委託を行っているとありますが、外国にある第三者(韓国の関連会社)への業務委託があるにもかかわらず、上でみたようにユーザーの本人の同意を明確に得ていないことは、これも個人情報保護法28条や信用分野個人情報保護ガイドラインⅡ.1.(3)などの規定への違反であると思われます。(法28条(外国にある第三者への提供の制限)の「提供」には、「委託」や「共同利用」なども含むため。)

5.まとめ
このように、LINEポケットマネーおよびLINEスコアのサービスは、プロファイリングについて不当な差別のおそれがあり、また特に要配慮個人情報の推知・取得について個人情報保護法20条2項などの違反の可能性があり、さらにユーザーの本人の同意の取得について法28条や信用分野個人情報保護ガイドラインⅡ.1.(3)等の違反の可能性があると思われます。

このブログ記事が面白かったらブックマークやシェアをお願いします!

■参考文献
・宇賀克也『新・個人情報保護法の逐条解説』215頁
・岡村久道『個人情報保護法 第4版』119頁、121頁
・山本龍彦「AIと個人の尊重、プライバシー」『AIと憲法』59頁
・久保田真悟「プロファイリングのリスクと実務上の留意点」『銀行法務21』890号(2022年10月号)44頁
・ヤフーの信用スコアはなぜ知恵袋スコアになってしまったのか|高木浩光@自宅の日記
・「消費者金融、スマホ申し込み9割 LINEはペイ借り入れも」|日本経済新聞
・「プロファイリングに関する最終提言」|商事法務「パーソナルデータ+α研究会」

■関連する記事
・日銀『プライバシーの経済学入門』の「プロファイリングによって取得した情報は「個人情報」には該当しない」を個人情報保護法的に考えた(追記あり)
・LINEの個人情報・通信の秘密の中国・韓国への漏洩事故を個人情報保護法・電気通信事業法から考えた
・LINEの改正プライバシーポリシーがいろいろとひどいー委託の「混ぜるな危険」の問題・外国にある第三者
・ヤフーのYahoo!スコアは個人情報保護法的に大丈夫なのか?



[広告]








このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

display_monitor_computer
東京都調布市が「調布市個人情報保護法施行条例(案)の概要」のパブコメ手続きを行っていたので、私も次のような意見を作成して送ってみました(2022年10月11日まで)。

・「(仮称)調布市個人情報保護法施行条例(案)の概要」へのご意見をお寄せください|調布市

1.「個人情報」の定義についてー改正調布市個人情報保護条例(以下「改正条例」とする)3条2号
個人情報の定義が「生存する」をつけない「個人に関する情報(以下略)」となっているが、死者の個人情報も含むのか、生存する個人に関する情報に限るのか、規定を明確化すべきではないか。

2.条例要配慮個人情報についてー改正条例3条
改正条例3条に要配慮個人情報の定義が存在せず、個人情報保護法にすでに要配慮個人情報の定義規定があるので条例要配慮個人情報の規定は改正条例に設けない方針とのことであるが、改正条例5条2項各号には要配慮個人情報に類する事項の規定があるところ、同2項2号の「社会的差別の原因となる個人情報」には、調布市の実務において個人情報保護法2条3項が列挙する事項以外の事項が存在しないか調査は行われているのであろうか(例えば信仰、病歴、障害歴、ワクチン接種等の履歴、本籍地、資産情報、金融情報など)。もし存在するのであれば、条例要配慮個人情報として明文で定義規定を置くべきではないか。

3.安全管理措置についてー改正条例8条の条文名、2項、4項、同10条1項
改正条例8条、10条の「適正管理」または「適正な管理」は、個人情報保護法66条にそろえて「安全管理」または「安全な管理」に用語をそろえては如何でしょうか。

4.オンライン結合の制限規定についてー改正条例13条
改正条例13条に現行条例13条と同様のオンライン結合の制限規定があることに賛成いたします。

国や企業等による個人情報の利活用だけでなく、主権者たる市民・国民の「個人の権利利益の保護」(個人情報保護法1条)と、「個人情報は、個人の人格尊重の理念の下に慎重に取り扱われるべき」(法3条)との個人情報保護法制の趣旨・目的に照らすと、市民・国民個人の個人情報とプライバシー権の保護を重視する調布市の姿勢に賛成します。

5.開示請求手続きにおける実施機関以外のものとの協議についてー改正条例16条5項
2021年11月に発覚した調布市つつじが丘のNEXCO東日本による陥没事故の被害者住民の情報公開請求に係る個人情報漏洩事件を踏まえ、改正条例16条5項に「ただし、当該開示決定等に係る保有個人情報の安全管理を徹底し、当該実施機関以外のものに当該保有個人情報の漏洩等が発生しないようにして、開示請求者の権利利益を保護しなければならない。」等のただし書きを設けるべきではないか。

6.利用停止・外部提供の停止についてー改正条例26条1号、2号
改正条例26条1号の利用停止又は消去の要件の部分に、「個人情報保護法63条の定める不適正利用が行われたとき」を追加すべきではないか。また改正条例26条2号の外部提供の停止の要件の部分に、「個人情報保護法68条の定める個人情報の漏洩等が発生した場合その他本人の権利または正当な利益が害されるおそれがあるとき」を追記すべきではないか。

7.行政機関等匿名加工情報についてー「調布市個人情報保護法施行条例(案)の概要について(説明資料)」2頁の図表3の「ウ行政機関等匿名加工情報(改正法第109条等)の作成・提供」
改正条例に行政機関等匿名加工情報の規定を設けないとの調布市の判断に賛成いたします。

国や企業等による個人情報の利活用だけでなく、主権者たる市民・国民の「個人の権利利益の保護」(個人情報保護法1条)と、「個人情報は、個人の人格尊重の理念の下に慎重に取り扱われるべき」(法3条)との個人情報保護法制の趣旨・目的に照らすと、市民・国民個人の個人情報とプライバシー権の保護を重視する調布市の姿勢に賛成します。

(注:今回の令和3年改正対応の個人情報保護法改正では、市区町村に対しては行政機関等匿名加工情報の規定の設置は義務とはなっていない。)

■関連する記事
・調布市の陥没事故の被害者住民の情報公開請求に係る個人情報の漏洩事件について考えた(追記あり)
・令和2年改正個人情報保護法ガイドラインのパブコメ結果を読んでみた(追記あり)-貸出履歴・閲覧履歴・プロファイリング・内閣府の意見
・健康保険証のマイナンバーカードへの一体化でカルテや処方箋等の医療データがマイナンバーに連結されることを考えた
・スーパーシティ構想・デジタル田園都市構想はマイナンバー法・個人情報保護法や憲法から大丈夫なのか?-デジタル・ファシズム
・デジタル庁「教育データ利活用ロードマップ」は個人情報保護法・憲法的に大丈夫なのか?



[広告]












このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

doctor_isya_warui
1.はじめに
NHKの5月14日のニュースによると、帯広中央病院、済衆館病院、JA広島総合病院、福井赤十字病院、府中病院(大阪)の5か所の病院の眼科医5名が、米医療機器会社の日本法人「スター・ジャパン」社に対して、患者の白内障手術をスター・ジャパン社のカメラで撮影した画像データを3年間にわたり繰り返し第三者提供し現金(40万円~105万円)を受け取っていたことが発覚したとのことです。

・“手術動画”無断で外部提供か 病院側「再発防止に努めたい」|NHKニュース

本事件は、センシティブ情報の要配慮個人情報である医療データについて、①取得にあたり「本人の同意」は適正に取得されていたのか、②医療機器メーカーに販売するという利用目的での本人の同意は取得されていたのか、あるいは目的外利用に本人の同意はあったのか、③医療機器メーカーに販売するという第三者提供について本人の同意は得られていたのか、④各病院の安全管理措置、⑤医師の守秘義務などが主に問題になると思われます。

2.要配慮個人情報
白内障手術の画像データは、「医師等により心身の状態の改善のための指導又は診療」に該当する「診察情報」(個人情報保護法施行令2条3項)に該当するので、要配慮個人情報に該当します(個人情報保護法2条3項)。そして要配慮個人情報の収集にあたっては原則として「本人の同意」が必要となります(法20条2項)。(岡村久道『個人情報保護法 第4版』237頁、91頁。)

3.「医療・ 介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」における「本人の同意」
この「本人の同意」について、平成29年4月29日・個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・ 介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」の「Ⅳ 医療・介護関係事業者の義務等」の「9.個人データの第三者提供(法第27条)」の「(3)本人の同意が得られていると考えられる場合」は、つぎのような場合は本人の同意は得られているとしています(黙示の同意)。

「(略)このため、第三者への情報の提供のうち、患者の傷病の回復等を含めた患者への医療の提供に必要であり、かつ、個人情報の利用目的として院内掲示等により明示されている場合は、原則として黙示による同意が得られているものと考えられる。(後略)」
病院の本人の同意
(個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・ 介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」より)

つまり、①患者への医療の提供に必要であり、かつ、②個人情報の利用目的として院内掲示板等により明示されている場合、には、患者本人からの明確な本人同意がなくても黙示の同意が得られており、「本人の同意」は適法に取得されていると本ガイダンスはしています。

この点、例えば今回問題となった帯広協会病院は、同病院サイトでプライバシーポリシーのなかで利用目的を表示しています。

帯広病院1
帯広病院2
(帯広協会病院サイトより)

しかしこの帯広協会病院のプライバシーポリシーの利用目的には、「外部の医療機器メーカーなどの医療機器の研究開発に協力する」であるとか、「外部の医療機器メーカーなどに患者の医療データを販売(第三者提供)する」などの利用目的は記載されていません。(個人情報保護委員会等の本ガイダンスに記載されている利用目的の例をみると、他の4つの病院にも記載はないものと思われます。)

4.小括
(1)そのため、本事件において、5つの病院は本人の同意なしに要配慮個人情報の患者の白内障手術の画像データを取得している点で法20条2項違反であり、また本人の同意なしに患者の個人データを目的外利用し、またスター・ジャパン社に第三者提供しているので、法18条1項違反および法27条1項違反であると思われます。さらに、所属する眼科医がこのような違法な行為をしていたことを見逃していた帯広協会病院など5つの病院は、病院内の個人情報に関する安全管理措置に重大な落ち度があったといえると思われます(法23条、24条)。

(2)加えて、今回違法に提供された白内障手術の画像データの全部または一部をスター・ジャパン社に提供し、現金を受け取っていた5名の医師および病院は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金の個人情報データベース等提供罪に該当する可能性があるのではないでしょうか(法174条)。同時にこの医師らは守秘義務違反として刑事責任を問われる可能性があります(刑法134条)。

5.被害にあった患者の方などについて
本事件では、白内障手術の画像データという個人データが本人の同意なしに目的外利用され、また第三者提供されているので、被害にあった患者の方は、各病院に対して、個人データの利用の停止または消去と、第三者提供の停止請求を行うことができます(法35条1項、3項)。また、被害にあった患者の方々は、各病院および各医師に対してプライバシー権の侵害として不法行為に基づく損害賠償責任を請求することができます(民法709条、715条)。

6.個人情報保護委員会など
本事件は個人情報漏洩事故といえるので、各病院は個人情報保護委員会および厚労省に対して報告をし、被害者に通知するとともに公表することが義務付けられています(法26条)。

一方、個人情報保護委員会および厚労省は、各病院に対して報告を徴求し立入検査を行い(法143条)、指導・助言や勧告・命令などの行政指導・行政処分を出すことができます(法144条、145条)。

7.まとめ
このように本事件は、センシティブ情報の要配慮個人情報である医療データについて、①取得にあたり「本人の同意」が適正に取得されておらず違法であり、②医療機器メーカーに販売するという利用目的での本人の同意は取得されておらず違法な目的外利用であり、③個人データの医療機器メーカーへの第三者提供について本人の同意は得られておらず違法であり、④各病院の安全管理措置は尽くされておらず、⑤医師の守秘義務違反による刑事責任やプライバシー侵害による不法行為に基づく損害賠償請求権が問題となる事案であると思われます。

■追記(5月17日)
NHKのニュースによると、本事件について、厚労省はスター・ジャパン社に聞き取りをするなどの調査を開始したとのことです。また、業界団体の「医療機器業公正取引協議会」も調査を開始したとのことです。今後の展開が気になるところです。

追記(2022年11月2日)
本事件について個人情報保護委員会が行政指導を行った旨のプレスリリースと、注意喚起のページを公開しています。
・手術動画提供事案に対する個人情報の保護に関する法律に基づく行政上の対応について|個人情報保護委員会
・「医療機関における個人情報の取扱い」に関する注意喚起(PDF)|個人情報保護委員会

このブログ記事が面白かったらブックマークやシェアをお願いします!

■参考文献
・岡村久道『個人情報保護法 第4版』237頁、91頁、400頁、405頁
・平成29年4月29日・個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・ 介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」

■関連する記事
・健康保険証のマイナンバーカードへの一体化でカルテや処方箋等の医療データがマイナンバーに連結されることを考えた
・デジタル庁「教育データ利活用ロードマップ」は個人情報保護法・憲法的に大丈夫なのか?
・スーパーシティ構想・デジタル田園都市構想はマイナンバー法・個人情報保護法や憲法から大丈夫なのか?-デジタル・ファシズム













このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

↑このページのトップヘ