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東京都調布市が「調布市個人情報保護法施行条例(案)の概要」のパブコメ手続きを行っていたので、私も次のような意見を作成して送ってみました(2022年10月11日まで)。

・「(仮称)調布市個人情報保護法施行条例(案)の概要」へのご意見をお寄せください|調布市

1.「個人情報」の定義についてー改正調布市個人情報保護条例(以下「改正条例」とする)3条2号
個人情報の定義が「生存する」をつけない「個人に関する情報(以下略)」となっているが、死者の個人情報も含むのか、生存する個人に関する情報に限るのか、規定を明確化すべきではないか。

2.条例要配慮個人情報についてー改正条例3条
改正条例3条に要配慮個人情報の定義が存在せず、個人情報保護法にすでに要配慮個人情報の定義規定があるので条例要配慮個人情報の規定は改正条例に設けない方針とのことであるが、改正条例5条2項各号には要配慮個人情報に類する事項の規定があるところ、同2項2号の「社会的差別の原因となる個人情報」には、調布市の実務において個人情報保護法2条3項が列挙する事項以外の事項が存在しないか調査は行われているのであろうか(例えば信仰、病歴、障害歴、ワクチン接種等の履歴、本籍地、資産情報、金融情報など)。もし存在するのであれば、条例要配慮個人情報として明文で定義規定を置くべきではないか。

3.安全管理措置についてー改正条例8条の条文名、2項、4項、同10条1項
改正条例8条、10条の「適正管理」または「適正な管理」は、個人情報保護法66条にそろえて「安全管理」または「安全な管理」に用語をそろえては如何でしょうか。

4.オンライン結合の制限規定についてー改正条例13条
改正条例13条に現行条例13条と同様のオンライン結合の制限規定があることに賛成いたします。

国や企業等による個人情報の利活用だけでなく、主権者たる市民・国民の「個人の権利利益の保護」(個人情報保護法1条)と、「個人情報は、個人の人格尊重の理念の下に慎重に取り扱われるべき」(法3条)との個人情報保護法制の趣旨・目的に照らすと、市民・国民個人の個人情報とプライバシー権の保護を重視する調布市の姿勢に賛成します。

5.開示請求手続きにおける実施機関以外のものとの協議についてー改正条例16条5項
2021年11月に発覚した調布市つつじが丘のNEXCO東日本による陥没事故の被害者住民の情報公開請求に係る個人情報漏洩事件を踏まえ、改正条例16条5項に「ただし、当該開示決定等に係る保有個人情報の安全管理を徹底し、当該実施機関以外のものに当該保有個人情報の漏洩等が発生しないようにして、開示請求者の権利利益を保護しなければならない。」等のただし書きを設けるべきではないか。

6.利用停止・外部提供の停止についてー改正条例26条1号、2号
改正条例26条1号の利用停止又は消去の要件の部分に、「個人情報保護法63条の定める不適正利用が行われたとき」を追加すべきではないか。また改正条例26条2号の外部提供の停止の要件の部分に、「個人情報保護法68条の定める個人情報の漏洩等が発生した場合その他本人の権利または正当な利益が害されるおそれがあるとき」を追記すべきではないか。

7.行政機関等匿名加工情報についてー「調布市個人情報保護法施行条例(案)の概要について(説明資料)」2頁の図表3の「ウ行政機関等匿名加工情報(改正法第109条等)の作成・提供」
改正条例に行政機関等匿名加工情報の規定を設けないとの調布市の判断に賛成いたします。

国や企業等による個人情報の利活用だけでなく、主権者たる市民・国民の「個人の権利利益の保護」(個人情報保護法1条)と、「個人情報は、個人の人格尊重の理念の下に慎重に取り扱われるべき」(法3条)との個人情報保護法制の趣旨・目的に照らすと、市民・国民個人の個人情報とプライバシー権の保護を重視する調布市の姿勢に賛成します。

(注:今回の令和3年改正対応の個人情報保護法改正では、市区町村に対しては行政機関等匿名加工情報の規定の設置は義務とはなっていない。)

■関連する記事
・調布市の陥没事故の被害者住民の情報公開請求に係る個人情報の漏洩事件について考えた(追記あり)
・令和2年改正個人情報保護法ガイドラインのパブコメ結果を読んでみた(追記あり)-貸出履歴・閲覧履歴・プロファイリング・内閣府の意見
・健康保険証のマイナンバーカードへの一体化でカルテや処方箋等の医療データがマイナンバーに連結されることを考えた
・スーパーシティ構想・デジタル田園都市構想はマイナンバー法・個人情報保護法や憲法から大丈夫なのか?-デジタル・ファシズム
・デジタル庁「教育データ利活用ロードマップ」は個人情報保護法・憲法的に大丈夫なのか?



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「ゲゲゲの鬼太郎」などの漫画家の水木しげる先生の11月30日の命日にちなみ、調布市内でさまざまな「ゲゲゲ忌」のイベントが開催されていますが、調布駅前の真光書店の地下一階奥でも、水木しげる先生の作品のキャンペーンが開催されています。
・ゲゲゲ忌2021|調布観光ナビ
・ゲゲゲ忌2021|調布市

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(調布・真光書店)

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生前、水木しげる先生はしばしば真光書店を利用していたそうで、真光書店のブックカバーには「ゲゲゲの鬼太郎」のキャラクターが使われています。
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「ゲゲゲの鬼太郎」などの妖怪漫画や、「総員玉砕せよ!」など水木先生の戦争体験に基づく漫画、エッセイ集、画集などさまざまな書籍が書棚に並んでいます。最近刊行された、武良布枝様の『ゲゲゲの女房の「長寿力」』も販売されていました。

「ゲゲゲの鬼太郎」のしおりやキーホールダー等のキャラクターグッズも販売されていました。

真光書店は最近、この地下一階のスペースで、まんがタイムきららの『NEW GAME!』や『星屑テレパス』、植田まさし先生の四コマ漫画『コボちゃん』などのイラスト展を開催しています。今後もさまざまなジャンルのイラスト展、絵画展などを実施していただきたいと思います。

真光書店は50年以上の社歴を持つ地元一の老舗書店です。すぐ近くに電気通信大学などがあるためか、IT、AIなどの理工系の書籍や、CG、イラスト、デザインなどに関する書籍などが非常に充実しています。水木しげる先生や画家の中川平一先生の風景画の画集、調布市の行政資料や地元の郷土資料なども多く販売されています。これからも末永く営業を続けていただきたいと地元民として思います。

■追記(11月27日)
11月27日に真光書店に行ったところ、展示がいろいろとバージョンアップしていました。

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(水木しげる先生の妖怪などに関する大判の画集や、ゲゲゲの鬼太郎の塗り絵など)

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(ポスターなど)

小さな子ども向けのアマビエの塗り絵のコーナーもありました。
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「ゲゲゲ忌」のスタンプラリーのコーナーもありました。
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■関連する記事
・「ゲゲゲの鬼太郎」の調布の聖地をめぐってみた
・調布市・真光書店で「NEW GAME!」・「星屑テレパス」の複製原画展が開催中
・「中川平一風景画展ー調布を描いて55年ー」が3月13日よりたづくりで開催される
・三鷹の国立天文台に桜を見に行ってみた
・野川公園に桜を見に行ってきた(2018)
・調布市の陥没事故の被害者住民の情報公開請求に係る個人情報の漏洩事件について考えた(追記あり)

















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TBSニュース
(TBSニュースより)

■追記(11月13日)
11月12日付の東京新聞の報道によると、この調布市の個人情報漏洩事件は、市職員のミスではなく、NEXCO東日本や国交省などと癒着した調布市都市整備部の職員が故意にNEXCO東日本や国交省などに情報公開請求を行った被害者の方の個人情報を提供していたとのことです。詳しくはこの記事の下部の追記をご参照ください。

1.調布市で個人情報漏洩事件が発覚
報道によると、東京・調布市つつじが丘等の住宅街NEXCO東日本の地下道工事に起因する陥没事故などが起きている問題について、被害者の住民の男性の方が調布市に対し情報公開請求を行ったところ、調布市都市整備部街づくり事業課が、その被害者の方の個人情報を9回にわたり、NEXCO東日本や国土交通省に漏洩していたことが発覚したとのことです。

このような個人情報の情報公開請求の関係機関への情報漏洩は、情報公開の請求者に関係機関などから不利益な処分や取扱いなどがなされる危険があり、情報公開制度の趣旨・目的を没却しかねない非常に重大な事故です。

被害者の方々はNEXCOの工事による陥没事故の被害者であるのに、さらにその被害者の方の個人情報を漏洩していたという調布市の行為は、非常にひどい仕打ちとしかいいようがありません。Twitterなどのネット上では、本件は調布市による個人情報のミスによる漏洩ではなく、調布市がNEXCO東日本や国交省への便宜を図るため、故意に被害者の方の個人情報を提供していたのではないかとの意見すら出されています。

2.調布市のプレスリリース
調布市のプレスリリースをみると、『請求者の請求内容に、市以外のものに関する情報が記録されていたことから、…市以外のものの意見を聴く必要がありました。このため、意見を聴く必要のある関係機関に対して連絡する際に、請求者の個人情報が含まれた情報公開請求書を本日までに計9枚送付しました。その際に個人情報にマスキングを施すことを怠り、個人情報が漏えいする事案が発生いたしました。』と説明されており、漏洩した個人情報は、『請求者の住所、氏名、電話番号、電子メールアドレス』となっています。
・個人情報の漏えいに関するお詫びと御報告|調布市

調布リリース1
調布市リリース2
(調布市サイトより)

本プレスリリースは、この個人情報漏洩事故の原因を「日々の業務を行うなかで、個人情報保護への職員の意識が希薄であったことによるミス」としており、既に被害者の方への謝罪は行ったと記述しています。

しかし本プレスリリースは、調布市がこの事件を受けてどのような再発防止策を策定したのか、また関係者の処分や、総務省や個人情報保護委員会などに報告したのか等については一言も説明していないこと等は、個人情報漏洩事故に対する自治体の個人情報漏洩事故への対応として不十分であり、非常に問題であるといえます。

とくにマスメディアの報道によると、調布市はNEXCO東日本や国土交通省に対して9回も、被害者の方の個人情報を漏洩していたとのことですが、これは漏洩というより、調布市都市整備部街づくり事業課が、NEXCO東日本や国土交通省にわざと個人情報を提供していた可能性もあるのではないでしょうか?もしそうであるならば、情報公開制度の趣旨を没却するような行為であり、調布市はNEXCO東日本や国土交通省の共犯者ということになります。調布市は第三者委員会を設置する等して、この事件を十分調査するべきなのではないでしょうか?

3.調布市個人情報保護条例など
(1)個人情報保護条例上の市職員の個人情報に関する守秘義務
調布市個人情報保護条例をみると、同3条市職員の個人情報に関する守秘義務を定め、同46条は職員が個人情報を「自己又は第三者の利益のため」に漏洩した場合の罰則規定(1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に)を置いています。

・調布市個人情報保護条例|調布市

条例3条
条例46条
(調布市サイトより)

しかし本件は、市職員のただのミスだったのか、あるいいは市職員がNEXCO東日本や国土交通省の利益のために個人情報を提供していたのか不明です。そのためこの罰則が適用されるかどうかは現段階では不明です。やはり調布市は第三者委員会などを設置して、十分な調査を実施すべきです。

(2)地方公務員法の公務員の守秘義務
また、地方公務員法34条公務員に対して守秘義務を課しています。この守秘義務には罰則(一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金)も科されています(同60条1項2号)。この地方公務員法上の守秘義務違反は本件の調布市の役職員への適用の可能性があるのではないでしょうか。

(3)調布市の個人情報漏洩などを防止するための「適正管理」の義務
さらに、調布市個人情報保護条例10条2項は個人情報の漏洩等が発生しないように「適正管理」の措置を実施するように市に義務付けしています(岡村久道『個人情報保護法 第3版』516頁)。

条例10条

しかし本件では漏洩が9回も発生してるのですから、調布市の適正管理の義務違反は重大であり、調布市都市整備部の責任者や調布市長などは、適正管理の義務違反の責任を免れないと思われます。

この点、例えば2014年に発覚したベネッセの個人情報漏洩事件は委託先企業のエンジニアがベネッセの個人情報を持ち出して販売等した事件ですが、情報漏洩の被害者からベネッセへの損害賠償を求める民事訴訟において、最高裁平成29年9月29日判決は、ベネッセの安全管理措置(個人情報保護法20条)の実施が不十分であったとして、ベネッセの不法行為による損害賠償責任を認め(民法709条、個人情報保護法20条)、審理を東京高裁に差し戻しています。

また、地方自治体における個人情報漏洩事件については、宇治市が住民票データによる乳児検診システムのシステム開発をあるIT企業に委託したところ、その企業から再々委託を受けたIT企業の従業員が住民票データから住民の個人情報を持ち出し名簿屋に販売した事件に関して、裁判所は情報漏洩の被害者の住民のプライバシー侵害を認め、宇治市には情報漏洩をした従業員への実質的な指揮命令関係があったとして、宇治市に対して不法行為に基づく損害賠償責任を認定しています(民法709条、715条、宇治市住民票データ漏洩事件・大阪高裁平成13年12月25日判決、興津征雄「住民票データの漏洩」『新・判例ハンドブック 情報法 』(宍戸常寿編)199頁)。

したがって、もし仮に本件で被害者の方が調布市に対して損害賠償を求める民事訴訟を提起した場合、調布市の都市整備部の責任者や調布市長などは、個人情報の漏洩などの防止のための適正管理の措置が不十分であったとして、不法行為に基づく損害賠償責任(民法709条、調布市個人情報保護条例10条2項)を認める判決が出される可能性があるのではないでしょうか。

4.調布市の住民の個人情報の取扱
なお、調布市は従来より、市内の障害児のセンシティブな個人情報の医療データや学校の教育データなどの一元管理・集中管理を推進する政策(「i-ファイル」)を推進しているなど、住民の個人情報の保護を軽視し、行政などが住民の個人情報を利活用することを重視する傾向があります。このような調布市の住民の個人情報保護の軽視の風土が、今回の個人情報漏洩事件を招いたのではないでしょうか。

・調布市の障害児などの「i-ファイル」(iファイル)について-個人情報保護の観点から|なか2656のブログ

5.まとめ
調布市の陥没事故では、加害者のNEXCO東日本の被害者の方々への対応が非常に遅く、NEXCO東日本は事件の発覚から約1年後の本年10月15日になってようやく調布の長友市長に謝罪を行いました。
・東京・調布市 道路陥没事故から1年 NEXCO東日本社長が調布市長に謝罪|FNN

このように陥没事故に関するNEXCO東日本の被害者軽視の状況があるのに、調布市のこのNEXCO東日本や国交省への9回もの個人情報漏洩または個人情報の第三者提供は、被害者の方々に対して死体をむち打つかのような行為であり、調布の長友貴樹市長や都市整備部の責任者らの責任は重大です。

調布市は上でみたような簡単なプレスリリースを発表したのみで、長友市長や都市整備部の責任者などによる謝罪の記者会見などを実施していないのは、事の重大さを理解していないのでしょうか?

調布市は第三者委員会などを設置して本件を十分に調査し、NEXCO東日本や国交省に便宜を図るためにわざと調布市が被害者の方の個人情報を提供していたのではないか等を含めて調査を行い、個人情報漏洩事件の原因究明や再発防止策の策定、関係者の処分などを実施するとともに、まずは迅速に長友市長や都市整備部の責任者などが、謝罪の記者会見などを実施するべきではないでしょうか。

あるいは、調布市に個人情報漏洩事故対応の当事者能力が欠落しているのであれば、調布市議会は地方自治法に基づく百条委員会を設置するなどして、この個人情報漏洩事件の事故原因の調査や再発防止策の策定、関係者の処分などを実施すべきなのではないでしょうか。

このような国・自治体の個人情報の杜撰な取扱いや個人情報保護の意識の低さが、国民の国・自治体の個人情報保護行政やデジタル行政に関する深刻な不信感を招き、マイナンバーやマイナンバーカードなどへの国民の強い不信感につながっているのではないでしょうか。

政府のさまざまな施策にもかかわらず、マイナンバーカードの取得率は約5割にとどまっているようでありますが、これはマイナンバーカードやマイナンバー制度により国民の個人情報が国・自治体や大企業などにどのように利活用されるのか信用できないという、国民の国・自治体や大企業などへの強い不信感の表れであると思われます。

■追記(2021年11月13日)
11月12日付の東京新聞のスクープ報道によると、この調布市の個人情報の事件は、調布市職員のミスではなく、市職員が故意にNEXCO東日本や国交省などに情報公開請求を行った被害者の方の個人情報を提供していたとのことです。
・「前回同様、取扱厳重注意で」 調布市情報漏えい問題 市職員がメールで念押し|東京新聞
・調布市個人情報漏えい、身内も驚くずさん運用 「ミス」ではなく「そもそも送る必要はない」|東京新聞

東京新聞の記事によると、今回の事件に関して東京新聞は、調布市都市整備部街づくり事業課職員が東京外環国道事務所、NEXCO東日本、NEXCO中日本の各担当課長あてに情報公開請求を行った被害者の男性の情報公開請求書の画像データを氏名・住所などの部分をマスキングなどせずにそのまま添付して送信したメールを入手したとのことです。

情報公開請求申請書の画像
(メールに添付された情報公開請求の申請書の画像。東京新聞の記事より。申請者の氏名・住所等の部分は東京新聞がマスキング処理している。)

東京新聞によると、10月下旬、匿名の内部告発者から「我々と調布市のやりとりが度をこえていると感じましたのでお知らせします。あなたの個人情報が駄々洩れとなっています」との内部告発の手紙が情報公開請求をした被害者の方の自宅に届き、この事件が発覚したとのことです。東京新聞によると、同様の手紙が調布市の長友市長にも郵送されていたとのことです。

東京新聞の記事によると、情報公開制度を所管する調布市総務課の担当者は、取材に対して、情報公開請求への情報開示に関して、外部の機関と調整する必要がある場合であっても、外部の機関と具体的事実を示して開示する範囲をすり合わせれば足りるので、「そもそも情報公開の請求書の写しをそのまま送ることは考えられない」と回答しているとのことです。

また、東京新聞の取材に対して、NPO法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長は、「照会手続きで請求書を第三者に渡すことはあり得ない。調布市は外環道について、国交省やNEXCO東日本などとの境界線を失って一体化しているのでは」とコメントしているとのことです。

この東京新聞の記事によると、今回の調布市の個人情報漏洩事件は、調布市都市整備部街づくり事業課の担当者の個人情報のマスキング漏れなどのミスによる個人情報漏洩ではなく、情報公開請求の申請書の写しの画像をそのままNEXCO東日本や国交省などにメールなどで送付していた故意による個人情報の違法・不当な提供であったことになります。

情報公開請求者の個人情報を相手方に知らせることは、申請者に不利益処分や取扱いがなされる危険があり、また住民・国民が委縮して情報公開が適切に行われなくなるおそれがあるなど、情報公開制度の趣旨を没却する重大な違法・不当な行為です。

この点、調布市情報公開条例の第3条2項は「実施機関は,この条例の解釈及び運用に当たっては,個人の尊厳を守るため,個人に関する情報がみだりに公開されることのないよう最大限の配慮をしなければならない。」と規定し、市や市職員に対して情報公開請求をした住民の個人情報保護を要求しています。

調布市情報公開条例3条
(調布市情報公開条例3条。調布市サイトより)

つまり、今回の調布市都市整備部街づくり事業課の担当者の行為は、情報公開制度の趣旨・目的に反するだけでなく、調布市個人情報保護条例3条(守秘義務)、同10条2項(個人情報の安全確保)に違反し、地方公務員法34条(守秘義務)、同60条1項2号に違反し、調布市情報公開条例3条2項(個人情報保護)にも違反する重大な違法行為です。

また、この東京新聞の記事によると、今回の個人情報漏洩は「市職員の個人情報保護の意識の希薄化によるミス」であるとする11月10日付の調布市のお詫びのプレスリリースは、「嘘のリリースを出して事件をうやむやにしてしまおう」という意図による、全体として虚偽の内容のリリースであり、調布市都市整備部街づくり事業課だけでなく、調布市の広報部門や長友市長などを含めた調布市全体のコンプライアンスやガバナンスがボロボロであることを示す点で致命的な問題をはらんでいます。

情報公開制度は、国民主権の民主主義(憲法1条)の前提である国民の「知る権利」や表現の自由、言論の自由(憲法21条1項)のための重要な制度です。情報公開制度が正常に機能しなくなっては、民主主義がうまく動かなくなり、国・自治体の行政活動も正常に機能しなくなってしまいます。

情報公開の請求者の個人情報を違法に外部機関に提供していただけでなく、虚偽のプレスリリースを出した調布市都市整備部街づくり事業課や調布市の広報部門などの管理部門や長友市長らの責任は重大です。

長友市長や調布市都市整備部街づくり事業課は、従来からも、調布駅前の再開発に際して、多くの地元住民の反対の声を無視し、駅前の再開発計画の策定・実施や、それに伴う駅前広場の古くからの樹木の大量の伐採などを強行してきました。

・調布市の「調布駅前広場整備に関する説明会(平成29年度第2回)」に行ってきた
・タコ公園のある調布駅前広場の樹木の撤去に反対する署名活動が行われている

長友市長や調布市都市整備部街づくり事業課の反民主主義的で独裁的・専制国家的なスタンスが、今回の情報公開請求をした方の個人情報漏洩事件でも、いよいよ明らかとなったといえるのではないでしょうか。

調布市はこの事件について、外部の弁護士などによる第三者委員会を設置し、あるいは場合によっては調布市市議会が地方自治法に基づく百条委員会を設置するなどして、都市整備部とNEXCO東日本や国交省などとの癒着の問題を調査し、再発防止策を策定し、関係者の処分、被害者の方への謝罪、記者会見などを直ちに実施すべきです。

なお、次回の調布市長選は来年の2022年のようですが、次回の調布市の市長選挙は、この調布市とNEXCO東日本や国交省などとの癒着の問題や、個人情報漏洩事故の問題、長友貴樹市長や調布市都市整備部などの反民主的で独裁的・専制国家的なスタンスなどが大きな争点となるのではないでしょうか。

■追記(2022年5月21日)
東京新聞によると、本事件に関連して調布市は被害者の住民との面談の様子を無断で録音し、一字一句書き起こしたメモを作成し、NEXCO東日本などと情報共有していたことが情報公開請求により発覚したとのことです。
・調布陥没 市民との「面談メモ」 市職員、一字一句漏らさず業者に提供 住民が情報開示請求で文書入手|東京新聞

今回の工事で被害にあった方々は調布市の主権者たる住民であり、市役所が守るべき存在のはずですが、調布市役所は被害者の住民の方々を犯罪者予備軍とでも認識しているのでしょうか?まるで戦前のような市の姿勢は大いに疑問です。

長友貴樹・調布市長は長年市長を継続しているため、市長も市役所も腐敗が起きているのではないでしょうか。調布市議会は百条委員会を設置して問題の原因究明を行うべきなのではないでしょうか。そうでなければ住民側から住民監査請求・住民訴訟が提起されるように思われます。また長友市長と都市整備部の長は引責辞任すべきではないでしょうか。

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■参考文献
岡村久道『個人情報保護法 第3版』516頁
興津征雄「住民票データの漏洩」『新・判例ハンドブック 情報法』(宍戸常寿編)199頁
・竹内朗・鶴巻暁・田中克幸・大塚和成『個人情報流出対応にみる実践的リスクマネジメント』31頁、46頁

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・健康保険証のマイナンバーカードへの一体化でカルテや処方箋等の医療データがマイナンバーに連結されることを考えた
・xID社がプレスリリースで公表した新しいxIDサービスもマイナンバー法9条違反なことについて(追記あり)
・xIDのマイナンバーをデジタルID化するサービスがマイナンバー法違反で炎上中(追記あり)
・デジタル庁のプライバシーポリシーが個人情報保護法的にいろいろとひどい件(追記あり)-個人情報・公務の民間化
・デジタル庁の事務方トップに伊藤穣一氏との人事を考えた(追記あり)
・文科省が小中学生の成績等をマイナンバーカードで一元管理することを考える-ビッグデータ・AIによる「教育の個別最適化」
・小中学校のタブレットの操作ログの分析により児童を評価することを個人情報保護法・憲法から考えた-AI・教育の平等・データによる人の選別
・JR東日本が防犯カメラ・顔認証技術により駅構内等の出所者や不審者等を監視することを個人情報保護法などから考えた
・令和2年改正の個人情報保護法ガイドラインQ&Aの「委託」の解説からTポイントのCCCの「他社データと組み合わせた個人情報の利用」を考えた-「委託の混ぜるな危険の問題」
・コロナ下のテレワーク等におけるPCなどを利用した従業員のモニタリング・監視を考えた(追記あり)-個人情報・プライバシー・労働法・GDPR・プロファイリング
・令和2年改正個人情報保護法ガイドラインのパブコメ結果を読んでみた(追記あり)-貸出履歴・閲覧履歴・プロファイリング・内閣府の意見
・欧州の情報自己決定権・コンピュータ基本権と日米の自己情報コントロール権
・リクルートなどの就活生の内定辞退予測データの販売を個人情報保護法・職安法的に考える
・トヨタのコネクテッドカーの車外画像データの自動運転システム開発等のための利用について個人情報保護法・独禁法・プライバシー権から考えた

















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真光書店きらら展ポスター
調布市の京王線調布駅北口の駅前の真光書店の地下一階で、9月26日より、芳文社のマンガ雑誌「まんがタイムきらら」の「NEW GAME!」と「星屑テレパス」の複製原画展が開催されています。(10月31日(日)まで。)
・真光書店|ちょうふどっとこむ
・まんがタイムきららWeb|芳文社

真光書店きらら展入口

真光書店は昔から「まんがタイムきらら」関係のマンガの品揃えが非常に充実しています。
真光書店きららの本棚

また、少年漫画、少女マンガ、青年マンガなどのマンガ一般の品ぞろえも非常に充実しています。アメコミなどめずらしい種類のマンガも販売されています。

さらに、真光書店は近くに電気通信大学、国立天文台、JAXAの調布航空宇宙センターなどがあるためか、地下一階は、IT・AI・セキュリティなどのデジタル系の書籍・教科書・専門書や、デザイン・CG・3D・絵の描き方などの書籍・解説書、電気系・建築系・通信系・天文学・地学などの理工系の書籍・専門書などの品ぞろえが非常に充実しています。これらのIT系やデザイン系、理工系のジャンルの書籍の品ぞろえはおそらく多摩地区一なのではないでしょうか。1階のビジネス書・法律書コーナー・資格の参考書なども良書がそろっています。

真光書店は調布駅北口に1968年(昭和43年)に開店した50年以上の歴史のある老舗の書店です。調布市は故・水木しげる先生が長年住んでおられた場所なので、水木先生のマンガや画集、エッセイ集などを特集した本棚もあります。調布・三鷹・狛江などの風景画で有名な画家の中川平一先生の画集なども販売されています。調布市役所などが刊行している行政資料、地元の郷土資料に関する書籍など、ネット通販などでは入手困難な書籍も販売されています。

真光書店ビル

私も地元民として、子供の頃からこの書店にお世話になってきました。地元住民にとっては、調布市立中央図書館などと並んで、多くの書籍や雑誌などに触れられる貴重な場所です。末永く営業を続けてほしいと思います。



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・野川公園に桜を見に行ってきた(2018)





























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キリスト教的視点に基づく講座「創造への道」
(調布市役所サイトより)

1.はじめに
調布市役所から週一ペースで配信されてくる市のメールマガジンの項目のなかに、「キリスト教的視点に基づく講座「創造への道」(白百合女子大学)(2019.04.08)」という項目がありぎょっとしました。調布市役所ウェブサイトにも宣伝の掲示があります。

・キリスト教的視点に基づく講座「創造への道」(白百合女子大学)|調布市サイト

もちろん私立大学である白百合女子大学がこのような宗教講座の公開講座を行うことは自由であり、民間企業のマスメディアなどがこれを宣伝・報道することも自由です。しかし、公権力である調布市がこの宗教講座である市民公開講座を市民に告知・宣伝することは、憲法20条、89条が規定する政教分離原則の観点から許されるのでしょうか?

2.政教分離原則
憲法20条1項後段は、「いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない」と規定し、同3項は、「国及びその他の機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない」と規定し、国から特権を受ける宗教を禁止し、国家の宗教的中立性を明示しています。そして、憲法89条は、財政的な観点から政教分離を規定しています。

憲法

第20条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
3 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。

第89条 公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。

このように国家と宗教の分離の原則を政教分離の原則と呼びますが、これは戦前の日本の国家神道のように、国家と宗教の一致による弊害を避けることや、国民個人のそれぞれの信教の自由を保障するための原則です。

3.裁判例
この憲法20条、89条の政教分離原則が争点となったリーディングケースである津地鎮祭事件において、最高裁は、国・自治体についてその「行為の目的が宗教的意義をもち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になるような行為」は憲法20条により禁止される宗教的行為であると判示し、いわゆる「目的・効果基準」を採用しました(津地鎮祭事件・最高裁昭和52年7月13日判決)。

また、その後の愛媛玉串料訴訟なども、この目的・効果基準を厳格に運用し、自治体の行為を違憲とする判断を示しています(愛媛玉串料事件・最高裁平成9年4月2日判決、芦部信喜『憲法 第7版』164頁)。

4.調布市役所の行為を考える
ここで調布市役所の今回の行為をみると、まず、白百合女子大学の当該講座は、調布市の告知のページにリンクが貼られた同大学サイトの説明によると、

「現代の日本でいちばん必要なことは、 このイエスのもたらした新しい創造、新しいいのちの経験です。イエスが教会に委ねた使命を、 私たちの一人ひとりが自分のこととして引き受け、自分の周りから始めることが必要です。そのためには、イエスの中にあった神のいのちをしっかりといただき直して、現代の日本に証しすることが不可欠でしょう。」

・宗教講座「創造への道」|白百合女子大学サイト

などと説明されており、これは一般市民向けの一般教養講座ではなく、完全にキリスト教の宗教教育講座です。

そのため、よくある地域の大学の一般教養講座ではなく、白百合女子大学の今回の宗教教育講座を市の公式ウェブサイトを使って宣伝し、市公式メールマガジンでも配信・宣伝している調布市役所の行為は「目的として宗教的意義を持つ」と言わざるを得ません。

また、この調布市サイトの告知・宣伝を見た多くの調布市民は、「調布市においては行政からキリスト教が優遇されているのか」と感じるでしょう。つまり調布市の行為は、「効果が特定の宗教に対する援助、助長、促進」にあたるといえます。

調布市の担当者の方々や、白百合大学の担当者の方々は「そんな大げさな」と言うかもしれません。しかし今回問題になっているのが、もしミッション系の私立大学のキリスト教に関する宗教教育講座ではなく、かりに例えば布田天神や日本青年会議所などが主催する「神道を学ぶ講座」「靖国神社を学ぶ講座」などであったらどう感じるのでしょうか?

したがって、調布市が白百合女子大学の宗教教育講座「キリスト教的視点に基づく講座「創造への道」について市公式ウェブサイトやメールマガジンなどで宣伝などを行っている行為は、憲法21条、89条の定める政教分離原則に照らして違法であるといえます。

もちろん、調布市が自治体として地元の各大学と相互友好協力協定を締結している趣旨はわかります。しかし、市は自由な活動が許される民間企業等ではないのですから、各大学の公開講座を宣伝する際にも、憲法や各種の法令に抵触しない範囲で宣伝などを行うべきと思われます。

もし調布市が憲法その他の法令を無視した行政運営を行うのであれば、それは地元住民からの住民監査請求、住民訴訟の提起などの法的リスクをはらむものになるでしょう(地方自治法242条、242条の2)。


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