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7月23日の東京オリンピック開催まであと3日の20日、菅義偉首相はウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)のインタビューで、「東京オリンピックをやめるのは簡単」だが、「挑戦するのが政府の役割だ」と語ったとのことです。
・菅首相「五輪やめるのは簡単」「挑戦するのが政府の役割だ」、WSJに語る|WSJ・Yahoo!ニュース

これまで国会で、「新型コロナの感染拡大のなかの東京オリンピック開催は危険だから中止や延期すべきだ」と何度問われてても、「安心・安全な東京オリンピックを開催する」と主張していた菅首相ですが、開催まで数日ということで、とうとう本音が出たようです。
菅義偉首相はやはりヒトラーと同じ国家主義者・全体主義者・ファシストです。

ヒトラー

「挑戦するのが国家の役割」などと一見かっこいいことを言っていますが、その「国家の挑戦」のために犠牲となるのは、菅首相など政府与党の幹部達の生命や健康ではなく、一般の日本世界国民生命や健康です。

一般の国民の生命・健康を犠牲にして自分の独りよがりな「国家の挑戦」という目的を追求しようとしていますが、これはナチスドイツや現在の中国のような国家主義・全体主義・ファシズムであって、国民の生命・健康や基本的人権の確立が一番重要であるとする、日本の憲法が定める自由主義・民主主義に明確に反しています。

日本は中国・北朝鮮や旧ソ連などの国家主義国・全体主義国と違って、菅首相などの政府与党の幹部が主権者なのではなく、国民が主権者の自由主義・民主主義の国家です(憲法1条)。そして近代民主主義国家においては、国民の命と健康は一番大事なものであり(13条)、国民の命や健康などの基本的人権を守るために国・自治体などの機関は存在します(11条、97条)。

菅首相など政府与党が国民の命や健康を犠牲にして自分達の野心を実現するために権力を行使することは許されません。「日本のコロナの死者が他の国に比べて多い少ない」はこの場合、関係がない問題です。国民はたとえたった一人であっても、個人として尊く、国から個人として尊重される存在なのですから(憲法13条)。国にはたった一人の国民に対しても、生命や健康を守る責務があります(13条、25条など)。

もはや「国家のために国民は犠牲となれ」との本音をさらした菅首相は、日本や世界の国民と、自由主義・民主主義、個人の尊重を掲げる近代立憲主義憲法の敵です。

日本や西側世界の個人・法人は、敵である菅首相ら政府与党から、国民・法人の個人の尊重や基本的人権を守るために、「不断の努力」を行わなければなりません(憲法12条)。

■追記(7月22日)
東京オリンピックの開会式が明日にせまるなか、開会式のディレクターで開会式の演出のトップの元お笑い芸人の小林賢太郎氏が、お笑い芸人時代にナチス・ドイツのユダヤ人大虐殺(ホロコースト)を笑いの対象としたコントをしていたことに対し、ユダヤ人団体のサイモン・ウィーゼンタール・センター(SWC)が同氏を非難する声明を公表したことを受け、組織委員会は本日、小林賢太郎氏を解任したとのことです。もはや東京オリンピックは開会を前に、完全にレイムダック、「死に体」の状況に陥っているように思われます。

障害者へのいじめ加害で小山田圭吾氏が辞任となったばかりですが、今度は開会式の演出のトップが、ナチスドイツのユダヤ人大虐殺を笑いの対象としていたことでSWCから非難され解任というのは、もはや東京オリンピックと菅政権は、五輪の開会を前に完全に「死に体」、レイムダックの状況といえます。

■関連する記事
・新型コロナ・尾見会長「五輪何のためにやるのか」発言への丸川五輪大臣の「別の地平の言葉」発言を憲法的に考えた
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・西村大臣の金融機関や酒類販売事業者への要請を行政法から考えた-行政指導の限界

















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東京オリンピック・パラリンピックの開会式・閉会式の楽曲を担当するミュージシャンの小山田圭吾氏が、学生時代に障害者の同級生に長年にわたっていじめをしていたことを過去に雑誌のインタビューで武勇伝的に自慢していたことがここ最近、連日のように炎上しています。

ROCKIN'ON JAPAN1996年1月号では、「障がい者の生徒たちを跳び箱の中に閉じ込める」「マットレスでぐるぐる巻きにした上に飛び蹴りする」「排泄物を食べさせる」「服を脱がせ裸で歩かせる」「自慰行為を強要する」「殴る・蹴る等の傷害」などを行っていたことを語っていたとのことです。

小山田氏はこれを武勇伝として雑誌に語っているようですが、もしこれが事実であれば、これは暴行罪、傷害罪、脅迫罪、強要罪、逮捕・監禁罪などに該当する重大な犯罪行為です。被害者の方々が何年間も継続的に受けた被害は、身体の傷害だけでなく、被った精神的苦痛は甚大なものだったのではないでしょうか。小山田氏は7月16日にTwitterに謝罪文を掲載したとのことで、事実であると認めた格好です。

ところで、不可解なのは、小山田氏の障害者へのこのような長期間にわたる苛烈な犯罪行為がネット上で連日のように炎上しているにもかかわらず、五輪組織委員会などは小山田氏の擁護に必死なことです。

7月19日にも、加藤官房長官が「小山田氏の行為は許されるものではない」と記者会見で述べたにもかかわらず、組織委員会のスポークスマンは記者会見で「「ご本人は謝罪文を掲出した。我々は現在は高い倫理観を持って創作活動するクリエーターと考えている。開会式準備における貢献は大きなもの」と、小山田氏を留任することを強調したとのことです。
・小山田圭吾氏の留任 組織委があらためて強調「貢献は大きなもの」|Yahoo!ニュース

今年2月には、五輪組織委員会の会長であった森喜朗氏が、「女性がたくさん入っている理事会の会議は時間がかかります」等と女性差別発言をしたことの責任をとって辞任しました。

森氏の女性差別発言も非常に時代錯誤なひどい差別発言ですが、これは言葉によるものです。一方、小山田氏の行為は、何年間も継続した陰湿で激烈な暴行罪、傷害罪、脅迫罪、強要罪、逮捕・監禁罪などに該当する重大な犯罪行為であり、森氏の発言よりも悪質です。森氏が会長を辞任するのは当然として、小山田氏に対しては辞任を求めるどころか、組織委員会は更迭などの厳しい懲戒処分を行うべきなのではないでしょうか。

東京五輪はオリンピックだけでなく、障害者の選手のパラリンピックも開催されるのに、障害者などへの暴行・傷害などの犯罪行為を組織委員会は放置するスタンスなのでしょうか?組織委員会のメンバー達の人権感覚が強く疑われる状況です。

この点、JOCのウェブサイトにあるオリンピック憲章をみると、オリンピック憲章は冒頭の「オリンピズムの基本原則」の部分で、「個人の尊重」「あらゆる差別の禁止」等の非の打ち所がない大変立派な理念を掲げています。また、同憲章は、「スポーツをする者は教育的な模範」となるべきことや、「スポーツをする者の社会的責任」についても述べています。

オリンピック憲章1
オリンピック憲章2
(JOCサイトより)

・オリンピック憲章|JOC

しかし、障害者に対して長年にわたり暴行・傷害などを行ってきた許しがたい卑怯者の小山田氏は、このオリンピック憲章の精神の対極にある人物なのではないでしょうか。

このような人物をオリンピック・パラリンピックの要職につけたままで、組織委員会やIOCなどは、障害者の選手や、社会一般の障害者の方々に対して、オリンピック・パラリンピック開催の意義を語れるのでしょうか? あるいは、五輪組織委員会やIOCにとっては、オリンピック憲章はただの張子の虎の飾りなのでしょうか? やはりバッハ氏や橋本聖子氏、山下泰裕氏、菅首相などとしては、IOCやテレビ局、電通、スポンサー企業などがカネ儲けさえできれば、オリンピックの精神やスポーツマンシップの精神などはやはりどうでもいいのでしょうか?

オリンピックまで1週間を切った状況のため、組織委員会やIOCなどは、開催の準備のためにこれ以上の負担の増加は無理であるという思いがあるのかもしれません。しかし、小山田氏を五輪スタッフの要職に留任させることは、オリンピック・パラリンピックの主役の一人である障害者の方々を侮辱する重大な人権侵害です。組織委員会は、小山田氏の楽曲を開会式で利用することはスケジュールの関係から無理としても、小山田氏自身を更迭するなど、懲戒処分を実施しなければ、「個人の尊重」や「あらゆる差別の禁止」等の理念を掲げる東京オリンピック・パラリンピックを開催することは不可能なのではないでしょうか。

もちろん、本ブログは、以前より新型コロナが日本と世界で大流行が続くなかでの東京オリンピック・パラリンピックの開催には反対してきました。この小山田圭吾氏の件で、多くの参加選手や参加国などからボイコットが起きて、もし東京オリンピック・パラリンピックが事実上中止となれば、それは世界や日本のためであると思われます。

■追記(7月19日)
報道によると、7月19日夜、小山田氏が組織委員会などに対して辞任を申し入れ、組織委員会はそれを承諾したとのことです。
・小山田圭吾さん 東京五輪作曲陣から辞任 大会組織委が正式発表|NHK

BBCなども小山田氏の件を報道しています。
・Tokyo Olympics: Composer Keigo Oyamada resigns over bullying at school|BBC

■関連する記事
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西村大臣金融機関
(ABEMAより)

産経新聞などの報道によると、西村康稔大臣は、7月8日、新型コロナウイルスの基本的対処方針分科会で、酒類提供を続ける飲食店との取引停止酒類販売事業者に要請する意向を明らかにしたとのことです。
・政府、酒類提供店との取引停止を要請 販売事業者に|産経新聞

また、日経新聞の報道によると、西村大臣は、同日、休業要請拒否をしている店舗などの情報を金融機関に情報提供する方針も明らかにしたとのことです。
・休業要請拒否店、金融機関に情報提供 経財相|日経新聞

さらに、同日、加藤官房長官は記者会見で、東京オリンピックについて「国民の協力」を求めたとのことです。
・加藤官房長官、緊急事態宣言下の東京五輪「成功のためには国民の協力も必要」|ABEMA TIMES

加藤官房長官の発言は、まるで戦時中の「一億総火の玉」などの軍国主義・全体主義の日本政府・軍部の主張のようです。

また、とくに金融機関に対して、西村大臣は、「金融機関は飲食店などと日常的に取引があるから、国・自治体に従うよう指導してほしい」という意向のようですが、それはつまり、銀行などの金融機関に対して、飲食店などに「国・自治体に従わないと融資をストップするぞ」等と脅迫・強要をすることを要求しているわけですが、そのようなヤクザ暴力団のような真似を政府がやるよう命じていいのでしょうか? 日本はこれでも一応、法治国家のはずですが。

西村大臣は中国や北朝鮮、あるいはナチス時代のドイツのような全体主義・国家主義の国の大臣にでもなったつもりなのでしょうか?

しかし、西村大臣の酒類販売事業者や金融機関への方針は、今後、飲食店等から国が取消訴訟であるとか、国賠法上の損害賠償請求などが裁判所に提起されたら国は負けてしまうおそれがあるのではないでしょうか?

国のコロナに対する緊急事態宣言や、それを受けた自治体の企業や住民・国民などに対する指示や要請などは、新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)に基づいています。つまり、特措法32条に基づき国は緊急事態宣言を発出し、特措法24条9項に基づき自治体は企業や住民・国民などに対する具体的な指示や要請などを出せるとされています。しかし、特措法24条9号の条文はつぎのようになっています。

新型インフルエンザ等対策特別措置法
(都道府県対策本部長の権限)
第24条
9項 都道府県対策本部長は、当該都道府県の区域に係る新型インフルエンザ等対策を的確かつ迅速に実施するため必要があると認めるときは、公私の団体又は個人に対し、その区域に係る新型インフルエンザ等対策の実施に関し必要な協力の要請をすることができる。

すなわち、国の緊急事態宣言を受けた都道府県は、コロナ対策の実施に関し「必要な協力の要請」を、「公私の団体または個人」に対して行うことができるとされているだけです。

このような法律の条文からは、例えば自治体が飲食店やホテル、百貨店などに対して休業や酒類の提供の停止などを要請することは読み取れるとしても、自治体が飲食店等に酒類の提供の停止を求めることに対して、さらに酒類販売事業者や金融機関などに対してまるで、あるいは戦時中の陰湿な「隣組」の相互監視の奨励のような「必要な協力の要請」を行うことができると読み取ることは、通常の判断能力を有する一般人の理解(最高裁昭和50年9月10日判決・徳島市公安条例事件)からはさすがにちょっと無理なのではないでしょうか?

政府・自治体の行政は、国民が国会を通して行政を民主的にコントロールするために、「法律による行政の原則」適正手続きの原則(憲法31条)が要求されますが、特措法24条9項の条文自体が漠然としており、都道府県などに対して実施できることを白地委任に近い形で認めてしてしまっています。

そしてさらに、今回の西村大臣の金融機関や酒類販売事業者への要請は、この白地委任的な特措法24条9項をさらに幅広に解釈し、飲食店など以外の事業者に対しても、酒を販売するな、融資を停止して飲食店に国・自治体に従うよう指導しろなどと、戦時中の隣組のような相互監視や密告を推奨するかのような「必要な協力の要請」を行うわけですが、これはあまりにも法律の解釈や適用があまりにも大雑把であり、適正手続きの原則法律による行政の原則(憲法31条)に照らして違法・違憲なのではないでしょうか。

しかも、相互監視や密告のようなことを国が国民や企業に法令に基づいて命令したり奨励することは、中国のような国家主義・全体主義国家ならともかく、個人の尊重基本的人権の確立という目的のために国・自治体などの統治機構が手段として存在する(憲法11条、97条)という自由主義・民主主義の国である日本では、この憲法が定める国家の自由主義・民主主義という基本構造そのものに抵触していると思われます。憲法99条は、国務大臣や国会議員、公務員などに憲法尊重擁護義務を課していますが、西村大臣の主張はこの憲法尊重擁護義務に反していると思われます。

加えて、たしかに銀行・保険などの金融機関は、銀行法保険業法などの監督業法(監督法)により、金融庁の監督下にありますが、しかしこれは、国が頭で銀行、保険会社など金融機関が手足の関係にあるというわけではまったくありません。

西村大臣などが「銀行は融資を盾に飲食店に国・自治体に従えと命令しろ」「国に逆らっている飲食店などに対しては融資をストップし資金を引き揚げろ」等と命令し、銀行や保険会社などの金融機関がそれに手足のように従う関係ではありません。中国などの社会主義国家とは違い、日本では、国と民間企業とは別の法人格なのですから。銀行や保険会社は警察署やハローワークなどの国の出先機関とはまったく違います。

それに、銀行法や保険業法などの監督法も、一言でいえば、「顧客である個人・法人に迷惑をかけないように業務を行え」「顧客を公平・中立に公正に扱うこと」「金融機関が倒産したら多くの顧客に迷惑をかけるのだから、倒産しないように健全な会社運営を行え」等などの事柄が規定されているのであって(例えば保険業法300条や100条の2など)、「銀行、保険会社から融資などを条件に、取引先の企業などに対して国に従うよう指導・助言する」などの権限は銀行法・保険業法などの監督法には規定されていません。

それにもし銀行・保険会社などがそのような「国へ従え」という指導・助言などの行為を行ったら、逆に「融資をする金融機関としての優越的な地位を濫用し、取引先・顧客に対して不当な要求をしている」として、銀行法、保険業法などに基づき金融庁や財務局などからの行政指導・行政処分の対象になるであるとか、最悪、公正取引委員会独禁法に基づき銀行・保険会社などに行政指導・行政処分などを実施する展開になってしまうような気がします。

このような社会の仕組みは、社会生活を送っている高校生や大学生、若手の社会人などであればごく自然に身についている社会常識・一般常識であると思うのですが、西村大臣加藤官房長官など政府の幹部達は、このような社会常識が欠けたまま、政府の運営を行っているのでしょうか?非常に疑問です。

また、国などの行政機関の行為に関する行政訴訟では、行政庁の裁量権の逸脱・濫用があったかどうかが争点となることが多いわけですが、コロナの感染拡大を防ぐ目的で、国・自治体が飲食店などに対して酒の顧客への提供の禁止を命じることは、仮に目的は正当と評価されるとしても、規制の手段として社会的相当性があるといえるのでしょうか。

スーパーやコンビニ、自動販売機などでは酒・アルコールは普通に販売されているのに、飲食店だけ全面一律に酒の提供を禁止するというのは、飲食店営業の自由(憲法22条、29条)に対して、狙い撃ち的であり平等原則に反し、比例原則にも反しているように思われます。つまり、国・自治体が飲食店だけ全面一律に酒の提供を禁止するというのは、行政の裁量権の逸脱濫用があるとされる可能性があるのではないでしょうか。

また、そもそも国や東京都は、コロナの感染拡大に最も悪影響であろう東京オリンピック・パラリンピックについては開催を強行する方針です。6月下旬から、コロナワクチンの不足により、職域接種や自治体の接種が中断や予約のキャンセル、新規予約の停止などにより、国民の不安が高まっているにも関わらずです。

東京オリンピックの開催を強行して、「国民をコロナの感染拡大から守る」という国の公衆衛生上の任務(厚労省設置法3条1項、4条4号、19号、憲法25条など)を国・東京都などが事実上放棄しているのに、その国や東京都などが民間企業の飲食店に対しては「コロナ感染拡大防止のため」と酒の提供を規制するのは大きな矛盾であり、信義則禁反言の原則などの法律上の一般原則に反しており、やはり国・自治体の飲食店に対する規制は、行政の裁量権の逸脱濫用となるのではないでしょうか。

さらに、7月8日に西村大臣が公表した、酒類販売事業者に国の要請を守らない飲食店との取引停止を命じることや、金融機関に対してこれも国の要請を守らない飲食店に融資などを行わないように命じることは、あまりにも幅広に、飲食店以外の他業界に対しても営業の自由に対して規制を行うものですが、これはあまりにも幅広で、あいまい漠然としたものであり、国が「なんとなく有効そうだから」となんとなく民間企業の酒類販売事業者や銀行などの金融機関の営業の自由などを規制するものであって、これは手段としてあまりにも不適正であり、つまり行政の裁量権の逸脱濫用があると裁判所に評価される可能性が高いのではないでしょうか。

憲法から考えても、二重の基準論であると、コロナ対策は公衆衛生の目的ですので、警察目的・消極目的なので、厳格な審査基準によることになるわけですが、上でみたように、飲食店の営業の自由そのものに対する酒提供規制も厳格な審査基準をクリアできているか疑問ですし、さらに、酒類販売事業者や金融機関の営業の自由に対する規制は、あまりにも幅広漠然としたものであって、厳格な審査基準をクリアできず、国・自治体の酒類販売事業者や金融機関に対する規制は違法・違憲と裁判所に判断される可能性があるのではないでしょうか。

また、最近有力に主張されている三段階審査論からも、酒類販売事業者や金融機関などへの取引禁止との営業の自由の規制は、これもあまりにも幅広でばくぜんとしたものなので、比例原則などの観点からアウトであり、違法・違憲と裁判所に評価される可能性があるのではないでしょうか。

さらに、このように西村大臣ら国・自治体の言動がここまで法的にぐだぐだであると、それを受けた酒類販売事業者や金融機関がそれに仮に素直に従った場合、逆に酒類販売事業者や銀行・金融機関などは、飲食店などから損害賠償責任を追及されるリスクや、株主総会などで不当あるいは違法な行為であると株主から追及されるリスクがあるのではないでしょうか。

加えて、最近の世論調査でも、国民の5割から8割は東京オリンピックに反対であり、オリンピック開催を強行しながら飲食店の営業の自由を大きく規制している国・東京都などに無批判に従うことは、酒類販売事業者や銀行・金融機関などにとって、国民やマスメディアからの批判不買運動などの風評リスク、レピュテーション・リスクなどが発生してしまうのでしょうか。しかも酒類販売事業者や金融機関などにこうした風評リスクなどが発生しても、国・自治体がその尻ぬぐいをすることはおそらくないでしょう。

このように、国の酒類販売事業者や金融機関などへの国に従わない飲食店への取引停止などの要請は、法的にいろいろと無理筋であると思われます。

そもそも論として、国や東京都などは、国民主権の国家として、国民の生命・健康をコロナから守るために、日本のコロナの感染拡大に一番悪影響であると思われる東京オリンピックを中止すべきであると思われます。国が経済政策などによる金銭でコロナによる国民・法人の損害などを事後的に回復することはできても、コロナで亡くなった国民の命を金銭でよみがえらせたり、失われた国民の健康を金銭で回復させることをはできないのですから。

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6月7日の報道によると、菅首相は国会で五輪開催について「東京オリンピックの主催は私ではない」と発言したとのことです。これを受けてネット上では、「主催者はIOCであり、全ての権限はIOCにしかない」という意見も見受けられます。しかし、これは正しいのでしょうか?

・五輪判断を問われた菅首相「私は主催者でない」|朝日デジタル

そもそも東京オリンピック・パラリンピックは、日本に大きな経済効果があるとして、菅首相の前任者である、当時の安倍首相が国をあげて誘致活動を行い、2013年に開催が決定したものです。また、2016年のリオデジャネイロ・オリンピック閉会式でマリオの恰好をして登場し、世界に東京オリンピックをPRしたのもやはり安倍さんです。にもかかわらず、日本政府は東京オリンピックに関係ないというのはちょっと無理ではないでしょうか? E3RgWxrVcAI4piV (1)
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また、スポーツ基本法は2条6項で、「オリンピック等で優秀な成績をあげること」を目標の一つに掲げ、同3条は国に対して「スポーツに関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する」と規定しています。また国は五輪担当大臣も設置しています。そのためやはり国は無関係というのは無理筋でないでしょうか?
https://www.mext.go.jp/a_menu/sports/kihonhou/attach/1307658.htm

さらに、最近はIOC幹部のディック・パウンド氏「菅首相がNOと言っても東京オリンピックは開催される」と発言しました。
・IOC重鎮委員が独占告白「菅首相が中止を求めても、大会は開催される」|文春オンライン

しかし、東京五輪では選手・五輪関係者・メディア関係者等約9万人来日するそうですが、それに伴い新型コロナウイルスが日本に入ってくるおそれがあるのではないでしょうか。これは日本の公衆衛生上の大問題です。

この点、厚生労働省設置法4条職掌事務には、「感染症の発生、蔓延の防止、検疫」(19号)、「原因の明らかでない公衆衛生上重大な危害が生じ、又は生じるおそれがある緊急の事態への対処」(4号)等と明記されています。

厚労省設置法4条

つまり、新型コロナなどの感染症の発生の防止・検疫などはやはり国の仕事であり、公衆衛生の問題は日本という国家主権大問題です。そのため、日本という国がコロナのリスクの高い東京オリンピックの開催の判断に関与できない、「菅首相がNOと言っても東京五輪は開催される」というのは、やはり日本主権重大な侵害です。つまりこれは菅首相などが判断すべき重大な政治問題です。(もしそれが本当なら、IOCのオリンピック憲章や、IOCとJOCや組織委員会などとの契約書などの国際法的な問題はさておいて、日本は場合によっては警察や自衛隊などによって、まるでGHQマッカーサーのように振る舞うIOCやバッハ氏から、日本を防衛する必要があるのではないでしょうか?)

このように少し考えてみても、菅首相の「東京オリンピックの主催は私ではない」という発言は、まったくの責任逃れの発言といえます。

菅首相は、日本の最高責任者として、東京オリンピックについて「夢と希望」を語るのではなく、新型コロナの世界と日本における大流行などの現実をみて、日本と世界における新型コロナの蔓延防止を行い、それにより日本と世界の国民の命と健康を守るために、東京オリンピックの中止決断すべきです。

■追記
弁護士で政治家の宇都宮健児氏が、東京オリンピック中止のネット署名を行っています。
・東京五輪の開催中止を求める署名はこちら | 宇都宮けんじ公式サイト

■関連する記事
・新型コロナ・尾見会長「五輪何のためにやるのか」発言への丸川五輪大臣の「別の地平の言葉」発言を考えた
・川渕三郎氏の東京オリンピックに関するツイートが戦時中の政府のように根性論の思考停止でひどい件









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東京オリンピック
政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の医師の尾身茂会長が、6月2日に国会で、「普通はオリンピック開催はない。このパンデミックで。」、「そもそもオリンピックをこういう状況のなかで何のためにやるのか。それがないと、一般の人は協力しようと思わない」と発言したことが大きな社会的注目を集めています。

・尾身氏「普通はない」発言、自民幹部反発「言葉過ぎる」|朝日

ところが、この尾身会長の発言に対して、丸川珠代・五輪担当大臣は6月4日に「我々はスポーツの力を信じて今までやってきた。別の地平から見てきた言葉をそのまま言っても(我々、政府・五輪関係者には)なかなか通じづらい」と記者会見で発言したとのことです。

・丸川五輪担当大臣 開催意義「スポーツの持つ力を」|テレ朝News

また、同じく4日には、菅首相は記者団からの質問に対して「夢と希望を届ける」と東京オリンピックの今夏開催の意義を書面で回答したそうです。

政府の首脳陣達のこのようなお花畑というかポエムのような回答にはさすがに呆れてしまいました。

(さらに、田村厚労大臣は、尾見会長の発言について、「自主研究にすぎない」と記者会見で発言したとのことです。菅首相らはコロナに関しては二言目には「専門家に相談する」と発言するのに、自分達に都合の悪い専門家の見解については「自主研究」とは呆れてしまいます。反知性主義もいいところです。)

朝日新聞が5月15日、16日に実施した東京オリンピック・パラリンピックに関する世論調査では、「今夏に開催」は14%、「中止すべき」が43%、「再び延期すべき」が40%と、東京オリンピックの中止・延期を求める国民の世論が実に83%となっているところです。

・五輪「中止」43%、「再延期」40% 朝日世論調査|朝日

Yahoo!Japanの新型コロナ特集サイトにおいても、6月4日現在の新型コロナの日本の新規感染者数は2593人、死者は13470人、世界の新規感染者数は約47万人、死者は約369万人と現在も大変な数字となっています。

コロナ世界の感染状況

このような状況下での丸川大臣の発言を意訳すると、「私達、政府や五輪関係者や選手達は皆、スポーツや金儲けしか関心のない脳ミソ筋肉のアホなので、医者の医学的・科学的な意見は理解できないので受け付けません」ということなのでしょうか?

あるいは、丸川大臣や菅首相は、日本全国の病院やホテル、自宅などで病気と闘っているコロナ患者や、1万3千人を超えるコロナの死者の遺族の前でも「スポーツの力」とか「夢や希望」などの薄っぺらい発言ができるのでしょうか?

しかし「別の地平から見てきた言葉をそのまま言っても、なかなか通じづらい」という発言はすさまじいものがあります。

丸川氏は東京五輪担当の国務大臣のはずであり、内閣の一人です。政府つまり行政は、国民の「全体の奉仕者であつて一部の奉仕者ではない」(憲法15条2項)のであり、「内閣は行政権の行使について、国会に対し連帯して責任」(66条3項)を負うのですから、丸川大臣や菅首相ら内閣は、政府与党側の意見だけを考えるのではなく、国民の反対派の意見や専門家の意見を十分考慮して国会(国民)に対して責任を持って国政(行政)を実施しなければならない立場です。

にもかかわらず、丸川大臣らは、「別の地平から見てきた言葉をそのまま言っても、なかなか通じづらい」として、専門家の意見や反対派の意見を受け止め検討することを拒否していますが、これは国務大臣任務の放棄であり、内閣の東京オリンピックに関する国政の、国会・国民への責任放棄です。

このような今夏の東京オリンピック開催に拘泥し、医師などの専門家や8割を超える国民の反対意見をシャットダウンする政府・与党の態度は、わが国の近代立憲主義憲法に基づく民主主義制の観点からも言語道断なのではないでしょうか。

生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については…立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」と憲法13条に明記されているとおり、近代憲法の自由主義・民主主義の国家においては、国民の生命や健康は、国民の基本的人権のなかでも一番守られなければならないものです。そして近代憲法の国家においては、政府などの国の統治機構は国民の個人の尊重や基本的人権の確立のために存在します(11条、97条)。

日本国憲法
第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。


したがって、日本政府は世界的な新型コロナの大流行という状況を鑑み、今一度、医師など専門家の意見や主権者たる国民の声を十分に検討し、日本国民および世界の人々の生命・健康を守るために東京オリンピックの中止あるいは延期を決定すべきです。

また、わが国の憲法の前文第2段落は、「われらは、平和を維持し、専制と隷従圧迫と偏狭地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。」と国際協調主義を規定しています。

日本国憲法
前文・第二段落後段
われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。

新型コロナの蔓延という世界的な災厄を地上から永遠に除去しようと努力している国際社会において、日本が「名誉ある地位」のためにまず実施すべきことは、カネの亡者のバッハ・IOC会長やオリンピック選手達、スポンサー企業、テレビ局などのカネ儲けや名声のために東京五輪を開催するのではなく、東京オリンピックの中止または延期を決断することより他にないと思われます。世界の人々の生命と健康をコロナの感染拡大から守るという、これ以上の国際貢献は他にないと思われます。


■追記
弁護士で政治家の宇都宮健児氏が、東京オリンピック中止のネット署名を行っています。
・東京五輪の開催中止を求める署名はこちら | 宇都宮けんじ公式サイト

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