なか2656のblog

とある会社の社員が、法律などをできるだけわかりやすく書いたブログです

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1.はじめに
「犯罪予防や安全確保のためのカメラ画像利用に関する有識者検討会報告書(案)」に関するパブコメが2023年1月12日から2月12日まで行われていたところ、その結果が3月23日に公表されたので、誤登録の問題の部分を中心にざっと読んでみました。

・犯罪予防や安全確保のためのカメラ画像利用に関する有識者検討会報告書を公表しました。|個人情報保護委員会

結論からいうと、本パブコメ結果は、個人情報保護委員会の回答をみると、つぎの回答7にあるような「本報告書案では、顔識別機能付きカメラシステムを導入する際に、個人情報保護法の遵守や肖像権・プライバシー侵害を生じさせないための観点から少なくとも留意するべき点や、被撮影者や社会からの理解を得るための自主的な取組について整理を行っています。 まずは、事業者において、本報告書を踏まえて適切な運用を行うことが期待されます。」という形式的な回答が多く、誤登録の問題にあまり前向きでないと感じました。どこか他人事のように見えます。

【意見7】
(略)ガイドラインやQ&Aに示されていても改善されない。よって、第三者機関によるチェック体制が必要である。 運用基準は国会で議論し立法化して欲しい。 【個人】

【PPCの回答7】
本報告書案では、顔識別機能付きカメラシステムを導入する際に、個人情報保護法の遵守や肖像権・プライバシー侵害を生じさせないための観点から少なくとも留意するべき点や、被撮影者や社会からの理解を得るための自主的な取組について整理を行っています。 まずは、事業者において、本報告書を踏まえて適切な運用を行うことが期待されます。

2.誤登録の問題
とはいえ、いわゆる「誤登録」の問題、「防犯カメラの万引き犯の冤罪被害者」の問題について、つぎの個人情報保護委員会(PPC)の回答は比較的丁寧に回答しています。

すなわち、誤登録された本人は、「個人情報取扱事業者に対して、法第33条に基づく開示請求、法第34条に基づく訂正等請求及び法第35条に基づく利用停止等請求を行うことができ」るとし、そして「個人情報取扱事業者は、これらの条文に従って対応する必要があります。」としています。またPPCは、本報告書案においては、「自らの個人情報が誤登録されていると考える者から、開示等の請求やその他問合せがあった際に、請求者の請求に応じた対応や、誤登録の有無を直ちに確認し、誤登録の場合には消去するための体制をあらかじめ整えておくことが望ましい。」と明記したとしています。

【意見272】
防犯カメラの顔認証登録について、誤登録の可能性と、登録された本人には認知も抗議もできない一方的な現状に抗議する。(略)【個人】

【PPCの回答272】
照合用データベースに登録されているデータが保有個人データである場合には、当該保有個人データの本人は、個人情報取扱事業者に対して、法第33条に基づく開示請求、法第34条に基づく訂正等請求及び法第35条に基づく利用停止等請求を行うことができ、個人情報取扱事業者は、これらの条文に従って対応する必要があります。 また、本報告書案においては、「自らの個人情報が誤登録されていると考える者から、開示等の請求やその他問合せがあった際に、請求者の請求に応じた対応や、誤登録の有無を直ちに確認し、誤登録の場合には消去するための体制をあらかじめ整えておくことが望ましい。」と示しています。

3.施行令5条の問題
個人情報保護法施行令5条各号に該当すれば当該データは保有個人データではなくなり、個人情報取扱事業者は保有個人データに関する義務を負わなくてよい(個情法16条4項)と現行制度がなってしまっているところにはつぎのように多くの意見が寄せられていました。

施行令5条
(個人情報保護法施行令5条。PPCの本有識者検討会議の資料2より)

しかしこれに対してもPPCの意見は形式論が目立ちます。PPCは「なお、施行令第5条の該当性は個別の事案に応じて慎重に判断されるべきものであり、防犯目的であれば直ちに施行令第5条に該当するということを述べるものではありません。」と説明していますが、しかし誤登録の人々がスーパーや警備会社などに申し出を行っても「当店ではそのようなDBはない」等と回答されてしまっている実務を変えるものとはなっていません。

【意見45】
(意見内容)
定義コに以下の注釈を加える。 注釈:誤検知は本人が認識できない可能性があることも考慮されるべきである。また、防犯目的では省令5条で保有個人データとして扱わなくて良いと書いてあるが、問い合わせに対して該当なしとの回答を安易に返すべきではない。

(理由)
本人が誤登録されていることをどのような手段で認識するかは大きな問題であり、指摘すべき項目である。 また、防犯目的では省令5条で保有個人データとして扱わなくて良いと書いてある。そうすると、該当なしとの回答になってしまい、誤登録された場合の濡れ衣被害が継続することになる可能性がある。 【一般社団法人MyData Japan】

【PPCの回答45】
第2章は用語の定義を行っているものであり、顔識別機能付きカメラシステムの利用の在り方について述べるものではありませんので原案どおりとさせていただきます。 なお、施行令第5条の該当性は個別の事案に応じて慎重に判断されるべきものであり、防犯目的であれば直ちに施行令第5条に該当するということを述べるものではありません。


【意見94】
32頁7行目以下について、個情法第4章の個人情報取扱事業者の顔データの取扱いの各義務が検討されているが、そのような法の運用をするためには、個情法16条4項や個情法施行令5条の改正が必要なのではないか。 個情法第4章の個人情報取扱事業者の顔データの取扱い等が検討されているが、しかし顔識別機能付き防犯カメラによる顔データは、個情法施行令5条のいずれかの号に該当し、当該顔データは保有個人データではないということになり(個情法16条4項)、結局、顔識別機能付き防犯カメラを運用する個人情報取扱事業者は個情法を守る必要がないということになってしまうが、そのような結論はいわゆる「防犯カメラの万引き犯の冤罪被害者」の被害との関係で妥当とは思えない。そのため個情法16条4項や施行令5条の法改正などの法的手当が必要なのではないか。 【個人】

【PPCの回答94】
施行令第5条の該当性は個別の事案に応じて慎重に判断されるべきものであり、防犯目的であれば直ちに施行令第5条に該当するということを述べるものではありません。 また、保有個人データには該当しない場合であっても、個人情報取扱事業者は、個人情報又は個人データを取り扱う場合は、個人情報保護法の定めに基づき取り扱わなければなりません。

4.個情法19条
なお、スーパーや警備会社等が誤登録の人々からの申し出に誠実に対応しないことは個情法19条(不適正利用の禁止)や個情法23条(安全管理措置)違反となるのではないかとの意見に対してもPPCは答えをはぐらかしてゼロ回答です。

個人情報保護法
(不適正な利用の禁止)
第十九条 個人情報取扱事業者は、違法又は不当な行為を助長し、又は誘発するおそれがある方法により個人情報を利用してはならない。

(安全管理措置)
第二十三条 個人情報取扱事業者は、その取り扱う個人データの漏えい、滅失又は毀損の防止その他の個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければならない。

【意見112】
誤登録された人、いわゆる「防犯カメラの万引き犯の冤罪被害者」の人からの苦情や開示請求・削除等の請求に個人情報取扱事業者が誠実に対応しないことも個情法19条違反または法23条違反となることを明記すべきではないか。 誤登録された人、いわゆる「防犯カメラの万引き犯の冤罪被害者」の人からの苦情や開示請求・削除等の請求に個人情報取扱事業者が誠実に対応しないことも「違法又は不当な行為を助長し、又は誘発するおそれがある方法」による個人情報の利用または安全管理措置違反であるといえる。 【個人】

【PPCの回答112】
照合用データベースに登録されているデータが保有個人データである場合には、当該保有個人データの本人は、個人情報取扱事業者に対して、法第33条に基づく開示請求、法第34条に基づく訂正等請求及び法第35条に基づく利用停止等請求を行うことができ、個人情報取扱事業者は、これらの条文に従って対応する必要があります。
また、第5章6(3)において、法令上の開示等の請求に該当しないような法令上対応する義務がない問合せについても、信頼醸成の観点から、できる限り丁寧に対応していくことが重要であると示していますので、原案どおりとさせていただきます。

5.共同利用の問題
さらに、個人データの共同利用(個情法27条5項3号)においてどの範囲までを認めるのか、全国レベルの共同利用も認めてよいのかについては、本有識者検討会でも長く議論がなされ、「全国レベルでの共同利用には事前に個人情報保護委員会への相談を求めるべき」などの意見が出されていたにもかかわらず、本報告書はその点をスルーしてしまっています。この点に関するPPCの回答も木で鼻をくくったような形式的なものとなっています。

【意見210】
顔識別機能付きカメラシステムによる顔データの共同利用については、全国レベルや複数の県をまたがる等の広域利用を行う場合には、事前に個人情報保護委員会に相談を求めることを明記すべきではないか。そのために必要であれば個情法の法改正等を行うべきでないか。 第6回目の「犯罪予防や安全確保のためのカメラ画像利用に関する有識者検討会」の議事録5頁に、「そういった観点から、一つ地域というのがメルクマールになると理解している。広域利用に関しては相当の必要性がなければできないとしつつ、個人情報保護委員会に相談があったような場合に対応していくのが1つの落としどころかと感じた。」との議論がなされているから。 また、宇賀克也『新・個情法の逐条解説』275頁、園部逸夫・藤原静雄『個情法の解説 第二次改訂版』187頁などにおいても、共同利用が許される外延・限界は「一つの業界内」、「一つの地域内」などと解説されており、全国レベルの共同利用や県をまたぐ広域利用、業界をまたぐ共同利用などは法が予定していないと思われるから。

【PPCの回答210】
個人情報保護法には、個人情報取扱事業者における個人情報の取扱いについて、事前審査に係る規定は設けられておりません。(後略)

6.防犯カメラについて立法を求める意見などについて
さらに防犯カメラの運用に関して規制法を国会で立法すべきとの意見も非常に多く寄せられていましたが、これに対してもPPCは「本報告書案では、顔識別機能付きカメラシステムを導入する際に、個人情報保護法の遵守や肖像権・プライバシー侵害を生じさせないための観点から少なくとも留意するべき点や、被撮影者や社会からの理解を得るための自主的な取組について整理を行っています。 まずは、事業者において、本報告書を踏まえて適切な運用を行うことが期待されます。」という形式論で退けてしまっています。(本有識者検討会のメンバーの一人の山本龍彦・慶大教授は「防犯カメラについて事業者等や行政にガイドライン等を遵守させるための枠組み立法が必要」とのお考えだったのですが、残念です。)

7.まとめ
このように本パブコメ結果はおおむね、NECや全国万引犯罪防止機構などの防犯カメラの利活用を行う事業者や団体の意向に沿う一方で、誤登録の被害を受けた個人や、これからそのような被害を受けるかもしれない国民の意思を不当に軽視したものといえます。

EUでは2021年にAI規制法案が公表され、警察当局等による公共空間での防犯カメラの利用は禁止となっています。またEUのGDPR22条はコンピュータの個人データの自動処理のみによる法的決定等を拒否する権利を規定しています。日本でも近年、情報法制研究所の高木浩光先生が、個人情報保護法(個人データ保護法)の立法目的は「データによる人間の選別・差別」を防止することであると主張し、注目を集めています。(防犯カメラの誤登録の問題は「データによる人間の選別・差別」の問題そのものと思われます。)このような世界や日本の近年の動向に、誤登録の問題に消極的な日本のPPCの本パブコメ結果は大きく逆行しています。顔識別機能付き防犯カメラの問題は、引き続き国会などで議論が行われてほしいと思います。

※なお、本パブコメ結果後のPPCの予定が不明だったので、PPCに電話にて問い合わせを行ったところ、「本パブコメ結果を踏まえて、個人情報保護法ガイドラインQ&Aの見直しを行う」とのことでした。

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■関連するブログ記事
・個人情報保護委員会の「犯罪予防や安全確保のためのカメラ画像利用に関する有識者検討会報告書(案)」に関するパブコメに意見を書いてみた
・JR東日本が防犯カメラ・顔認証技術により駅構内等の出所者や不審者等を監視することを個人情報保護法などから考えた(追記あり)

■参考文献
・宇賀克也『新・個情法の逐条解説』275頁
・園部逸夫・藤原静雄『個情法の解説 第二次改訂版』187頁
・成原慧「プライバシー」『Liberty2.0』187頁
・高木浩光「高木浩光さんに訊く、個人データ保護の真髄」 | Cafe JILIS



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1.備前市が学校給食無償をマイナンバーカード取得世帯のみに
備前市が現在学校給食が無償であるところ、今後マイナンバーカードを取得した家庭のみに給食無償とする方針を明らかにし、ネット上で話題となっています。これに対して総務省は「自治体にそのようにするよう指示したことはない」とする一方で、河野太郎デジタル庁大臣は「そのような政策もありえる」と国会で回答しているようです。

・給食無償 マイナカード取得者のみ 備前市方針、保護者らに戸惑いも|山陽新聞
・給食費免除はマイナンバーカード取得世帯に限定 国会で賛否|NHK

このような国や自治体の政策の変更によるマイナンバーカードの事実上の強制をどのように考えるべきなのでしょうか。

2.なぜマイナンバー法16条の2はマイナンバーカードの取得を任意としているのか?
マイナンバー法16条の2第1項は、「機構(=地方公共団体情報システム機構)は、(略)住民基本台帳に記録されている者の申請に基づき、その者に係る個人番号カードを発行するものとする。」と規定しており、マイナンバーカード(個人番号カード)は国民本人が申請を行いそれに基づいて発行されると規定しており、マイナンバーカードの発行はあくまでも個人の任意であることを規定しています。

マイナンバー法
第16条の2 機構は、政令で定めるところにより、住民基本台帳に記録されている者の申請に基づき、その者に係る個人番号カードを発行するものとする。
(略)

マイナンバーカードはマイナンバーが記載されているだけでなく、ICチップ部分に公的個人認証サービスの電子証明書(署名用電子証明書と利用者署名用電子証明書)があり、この電子証明書によりe-TAXやマイナポータルや民間企業によるネットショッピング等による利用ができるようになっています。またICチップの空き領域は、行政機関や自治体が図書館利用カードや公共施設予約などに利用できることとなっています。

マイナンバーカードの図
総務省「個人番号カードの普及・利活用について」3頁より)

この点、元内閣官房社会保障改革担当室参事官補佐でマイナンバー法の立案担当者の水町雅子先生の『逐条解説マイナンバー法』258頁以下は、このようにマイナンバーカードはメリットとして、その普及を目指して利便性の向上のために多目的カード化のさまざまな政策が検討されている一方で、「カードや番号が幅広く多目的化すると、万一、カードや番号が悪用された場合に、さまざまな情報を名寄せ盗用される危険性があるなど、プライバシー権を始めとする個人の権利利益の侵害のおそれが高い。」というデメリットがあると解説しています。

そのため同書は、「個人にとっては、(略)自らが個人番号カードを持つのか持たないのか選択し、また個人番号カードの機能について選び取るという意識が必要」であると解説しています。 この点は、日本が中国などとは異なり、自由な民主主義国家であることに照らせば(憲法前文第1段落、1条)、国や自治体が強制するのではなく、国民個人が自由意思により判断することは当然のことと思われます。

そして同書は、「また政府が政策判断するに当たっては、国民利便性の向上、個人番号カードの可能性のみを検討するのではなく、多目的化を脅威と感じる国民の素朴な感情を受け、国民が個人番号カードを選択するかどうか、どの機能を選択するかどうか、自身で十分な情報を得た後に選び取れるような周知が必要である」と解説しています。

つまり、マイナンバーカードは国民一人一人が自らが個人番号カードを持つのか持たないのか選択し、また個人番号カードの機能について選び取るものであり、そのためにマイナンバー法16条の2はマイナンバーカードの発行を任意としているのであって、政府や自治体は、「政策判断するに当たっては、国民利便性の向上、個人番号カードの可能性のみを検討するのではなく、多目的化を脅威と感じる国民の感情を受け、国民が個人番号カードを選択するかどうか、どの機能を選択するかどうか、自身で十分な情報を得た後に選び取れるよう」にする必要があるのです。

したがって、備前市がマイナンバーカードの取得を住民に事実上強制し普及を促すために、学校給食費無償はマイナンバーカードを取得した世帯だけに限るとの政策は、マイナンバー法16条の2がマイナンバーカードの取得は任意であると規定している趣旨・目的に反しています。

(同様に、国はマイナンバーカードの取得を国民に事実上強制するために、紙の健康保険証を廃止し健康保険証をマイナンバーカード化する政策を推進していますが、これもマイナンバー法16条の2に違反しているものと言えます。)

3.個人情報と本人の同意
また、マイナンバー法はマイナンバーに関しては同法9条で個人情報の利用目的を税・社会保障・災害対策の3つに関連するもののみに限定列挙して法定しています。

一方、マイナンバーカードのICチップ部分の電子証明書や空き領域を利用して取扱われる個人情報は同法9条などには利用目的を法定されていないので、これらの個人情報については個別の国民の本人の同意によって、目的外利用や第三者提供などが有効なものとなります(個人情報保護法18条1項、27条1項)。

この意味でも、マイナンバーカードの取得は国民個人の任意による同意に基づきなされるべきであり、国や自治体が事実上の強制でマイナンバーカードを取得させることは、マイナンバー法の一般法である個人情報保護法18条、27条などとの関係でも妥当ではありません。

4.まとめ
このように、マイナンバーカードは国民が自らが個人番号カードを持つのか持たないのか選択しするものであり、そのためにマイナンバー法16条の2はマイナンバーカードの発行を任意としているのであり、政府や自治体は、「政策判断するに当たっては、国民利便性の向上、個人番号カードの可能性のみを検討するのではなく、多目的化を脅威と感じる国民の感情を受け、国民が個人番号カードを選択するかどうか、自身で十分な情報を得た後に選び取れるよう」にする必要があります。また備前市などの自治体や国が、国民にマイナンバーカードを事実上強制することは、個人情報保護法18条、27条の本人同意を没却するものでありこれも問題です。

したがって、備前市や国が国民・住民にマイナンバーカードを事実上強制するような政策を行うことは、マイナンバー法16条の2や個人情報保護法18条、27条などに反して違法なものといえます。

■追記・憲法26条2項・14条1項について(2023年2月24日)
憲法26条2項後段は「義務教育は、これを無償とする。」と規定しています。この「無償」を「教育に必要な部分」まで含むと解すると、給食費もこれに含まれることになります。

日本国憲法
第26条 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。

第14条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

本件では備前市は教育費の無償の判断にマイナンバーカードを使って世帯の所得調査を行う等のことをしているわけではないので、マイナンバーカード取得の有無で学校給食費の無償の有無を判断することは憲法26条2項との関係でも違法ということになります。

また、備前市がマイナンバーカードを取得している世帯の児童にしか給食費無償を適用せず、マイナンバーカードを取得していない世帯の児童の給食費を有償とすることは、あらゆる差別を禁止する法の下の平等(憲法14条1項)と教育の機会均等を定める憲法26条1項に抵触しており違法なものと思われます。

※この憲法26条、14条の部分については、専修大学名誉教授の石村修先生(憲法学)にご教示をいただきました。石村先生誠にありがとうございました。

■追記(2023年3月18日)
47NEWSの「マイナカードないと給食費有料、市の方針に「違法性の疑い」指摘 岡山・備前市、人口超える反対署名」に、名古屋大大学院法学研究科の稲葉一将教授(行政法)のつぎのようなコメントが掲載されていました。

「条例案の『特に必要がある』か否かの法的基準は、給食費などの場合、教育基本法にのっとったものでなければならない。信条で差別してはならず、子どもの教育条件は同じようにするのが行政の責任だ。また、全国で無償化が広がる中であえて(条例案で定めた)有償が原則ならば、例外を認めることが教育の機会均等のために必要だという理由でなければ法的基準から逸脱する」

「学校給食の無償化は本来教育制度の中で行うべきもので、仮にマイナカード取得が無償化の目的達成のために必要な手段ならば、そのように説明すべきだ。しかし実際の目的はデジタル化の推進。目的である無償化と手段であるカード取得に対応関係がなければ、行政法上、問題になる。また、自治体が公金を支出して行う無償事業の対象者を恣意的に扱うことは、平等原則の観点から許されない。無償化する対象者を区別する場合には正当な理由が必要だが、給食無償化にはカードを使わなければならない理由はない。違法性が疑われ、住民監査請求などを起こされる可能性もある」

「自治体は国の出先機関ではない。住民の期待に応えるためには国から距離を置き、政策に問題点がないか確認しなければならないが、備前市はむしろ国のカード普及政策を国よりも一歩先んじて進めようとしていないか。その背景には地方財政の問題がある。自治体は国の政策の方針に沿って予算を勝ち取る競争に敏感にならざるを得ず、自治体間の財政調整と均衡を理念とする地方交付税法の趣旨も曲げられている」

■追記(2023年3月23日)
報道によると本日、備前市でマイナンバー関連の条例が可決したようです。
・備前市議会 マイナンバーカード関連条例すべて可決|NHKニュース

このNHKの記事によると、吉村武司・備前市長は「個人情報の漏えいなどまったく危惧はなく、何の問題もないと考えている」と主張しているそうですが、マイナンバーカードの任意性(マイナンバー法16条の2)や平等原則(憲法14条1項、26条1項)、個人の自己決定権(憲法13条)などは無視なのでしょうか?ずいぶん横暴な気がします。

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■関連する記事
・マイナンバー訴訟最高裁判決を読んでみたー最高裁第一小法廷令和5年3月9日判決
・マイナポータル利用規約と河野太郎・デジタル庁大臣の主張がひどい件(追記あり)
・デジタル庁「教育データ利活用ロードマップ」は個人情報保護法・憲法的に大丈夫なのか?
・スーパーシティ構想・デジタル田園都市構想はマイナンバー法・個人情報保護法や憲法から大丈夫なのか?



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dai_byouin2

厚労省が「がん対策推進基本計画(案)」に係るパブコメ(2023年1月20日~2月18日)を実施していたので、つぎのような意見を書いて提出しました。

(該当箇所)
50頁「全ゲノム解析等の新たな技術を含む更なるがん研究の推進」について
(意見)
全ゲノム解析などの研究開発を行う前提として、患者本人が進学や就職、保険加入などのさまざまなライフステージで遺伝子データによる差別を受けないための遺伝子差別禁止法を、日本も欧米のように早急に立法すべきである。


(該当箇所)
56頁「がん登録の利活用の推進」について
(意見)
がんの情報は病歴であるので要配慮個人情報である。そのため、その収集や目的外利用、第三者提供には本人の同意が必要であることを明記すべきである(個人情報保護法18条、20条2項、27条1項)。また、自分の病歴データを国・自治体や製薬会社等に利活用されたくない患者も多いのであるから、自己情報コントロール権(憲法13条)の一つとして、オプトアウト手続きを制定し明記すべきである。


(該当箇所)
60頁「国民の努力」について
(意見)
「国民の国・自治体・関係者への協力義務」が規定されているが、日本は自由な民主主義国家であり(憲法前文、1条)、中国やロシアのような国家主義・全体主義国家ではない。国が国民に協力義務を課したり、努力を要求することは自由な民主主義や立憲主義の観点から明らかに間違っているので、この部分の全面的な削除・見直しを求める。




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bouhan_camera

個人情報保護委員会の「犯罪予防や安全確保のためのカメラ画像利用に関する有識者検討会報告書(案)」に関するパブコメ(2023年1月12日~2月12日)に、つぎのような意見を書いて提出しました。

1.「2 本報告書の対象範囲について」について
(該当箇所)
2頁8行目
(意見)
「2 本報告書の対象範囲について」に、本報告書30頁に記載のある「ドローンやロボット」、トヨタなどのコネクテッドカー・「つながる自動車」の車載カメラ、職場やリモートワークの業務用PCのカメラなども対象として含まれることを明記すべきではないか。
(理由)
記載が抜けているため。


2.「(2)顔識別機能付きカメラシステムを利用することの懸念点」について
(該当箇所)
11頁15行目
(意見)
「(2)顔識別機能付きカメラシステムを利用することの懸念点」の部分に、顔識別機能付きカメラシステムによる誤登録や、いわゆる「防犯カメラの万引き犯の冤罪被害者」の問題を明記すべきではないか。
(理由)
顔識別機能付きカメラシステムに関する一番の問題点・課題であると思われるから。


3.「エ 撮影の態様」について
(該当箇所)
17頁・12行目
(意見)
「エ 撮影の態様」の部分に、⑦⑭の裁判例などに関連し、「防犯カメラが追跡的か、被撮影者のプライバシー侵害が強度か」などの「手段・方法の相当性」の観点も明記すべきではないか。
(理由)
⑭、⑦などの裁判例は、違法性の判断において、防犯カメラによる被撮影者のプライバシー侵害が強度か否かなどにより防犯カメラの手段・方法の相当性を検討しているため。また、GPS捜査事件判決(最高裁平成29年3月15日判決)も「継続的・網羅的」な情報収集はプライバシー侵害となり個別の立法が必要である旨判示しており、手段・方法の相当性の検討も、顔識別機能付き防犯カメラシステムを検討する上で重要であるため。


4.住基ネット訴訟の最高裁判決の「判旨」について
(該当箇所)
28頁・3行目
(意見)
住基ネット訴訟の最高裁判決の「判旨」に、「裁判所は、①システムの技術上の安全性、②十分な法的手当の存在などの構造審査により住基ネット制度を適法とした」等の記述を置くべきではないか。
(理由)
情報システム上の十分な安全性および十分な法的手当が施されていない情報システムを、裁判所は違法と判断することを本判決は示しており、このことは顔識別機能付き防犯カメラシステムを検討する上で重要であるから。


5.「顔画像とそれに関する情報の例①」および「顔画像とそれに関する情報の例②」の図について
(該当箇所)
31頁・1行目と9行目
「顔画像とそれに関する情報の例①」および「顔画像とそれに関する情報の例②」の図
(意見)
図に顔特徴データを加えるべきではないか。
(理由)
重要なのは顔画像でなく顔特徴データなので。


6.個人情報保護法第4章の個人情報取扱事業者の顔データの取扱いの各義務と法16条4項や個人情報保護法施行令5条について
(該当箇所)
32頁7行目以下
(意見)
個人情報保護法第4章の個人情報取扱事業者の顔データの取扱いの各義務が検討されているが、そのような法の運用をするためには、個人情報保護法16条4項や個人情報保護法施行令5条の改正が必要なのではないか。
(理由)
個人情報保護法第4章の個人情報取扱事業者の顔データの取扱い等が検討されているが、しかし顔識別機能付き防犯カメラによる顔データは、個人情報保護法施行令5条のいずれかの号に該当し、当該顔データは保有個人データではないということになり(個人情報保護法16条4項)、結局、顔識別機能付き防犯カメラを運用する個人情報取扱事業者は個人情報保護法を守る必要がないということになってしまうが、そのような結論はいわゆる「防犯カメラの万引き犯の冤罪被害者」の被害との関係で妥当とは思えない。そのため個人情報保護法16条4項や施行令5条の法改正などの法的手当が必要なのではないか。


7.本報告書はテロ防止、万引防止というひとまとまりの目的のための顔識別機能付き防犯カメラの遵守すべき事柄を検討していることについて
(該当箇所)
33頁15行目
(意見)
本報告書はテロ防止、万引防止のための顔識別機能付き防犯カメラの遵守すべき事柄を検討しているが、「テロ防止のためには~」「万引き防止のためには~」と場合分けをして個人情報取扱事業者が遵守すべき事項を検討すべきではないか。
(理由)
テロ対策や鉄道等の重大事故対策等に関しては、もしテロ等が発生してしまうと発生してしまう被害は重大なので、反対利益となる個人のプライバシー権などの権利利益はある程度侵害されてもやむを得ないという判断になりやすいと思われるが、その一方、万引き犯等は反対利益となる個人の権利利益が侵害されてもやむを得ないという幅はテロ対策などに比べれば小さいと思われ、テロ対策や鉄道の重大事故などと万引き対策を一まとまりにして検討するのは適切ではないのではないのだろうか。そのため、「テロ対策のためには~」「万引き対策のためには~」と場合分けして対応を検討する必要があるのではないか。


8.いわゆる「防犯カメラの万引き犯の冤罪被害者」の人からの苦情や開示請求・削除等の請求に個人情報取扱事業者が誠実に対応しないことと個人情報保護法19条、23条について
(該当箇所)
37頁8行目
(意見)
誤登録された人、いわゆる「防犯カメラの万引き犯の冤罪被害者」の人からの苦情や開示請求・削除等の請求に個人情報取扱事業者が誠実に対応しないことも個人情報保護法19条違反または法23条違反となることを明記すべきではないか。
(理由)
誤登録された人、いわゆる「防犯カメラの万引き犯の冤罪被害者」の人からの苦情や開示請求・削除等の請求に個人情報取扱事業者が誠実に対応しないことも「違法又は不当な行為を助長し、又は誘発するおそれがある方法」による個人情報の利用または安全管理措置違反であるといえるから。


9.脚注の「なお、顔識別機能付きカメラシステムにより個人情報を取り扱う場合は、取得の状況からみて利用目的が明らかであるとは認められない(法21条4項4号)。」について
(該当箇所)
38頁注56
(意見)
「なお、顔識別機能付きカメラシステムにより個人情報を取り扱う場合は、取得の状況からみて利用目的が明らかであるとは認められない(法21条4項4号)。」という一文は非常に重要であるため、脚注ではなく本文に明記すべきではないか。
(理由)
顔識別機能付きカメラシステムの運用を考える上で非常に重要な法的な事項であるから。


10.データの保存期間について
(該当箇所)
42頁8行目以下
(意見)
保存期間について個人情報保護委員会が具体的な目安を示すべきではないか。例えば「万引き対策のためのデータの保存期間は最長で1か月」など。
(理由)
保存期間について個人情報保護委員会などから具体的な保存期間の例示がないため、個人情報取扱事業者の実務上、その設定に困ることがあるため。なお、たとえば自治体の防犯カメラ条例のデータの保存期間をみると、静岡県は1か月、千葉県市川市は7日間、東京都三鷹市も7日間などとなっている。


11.データの共同利用について
(該当箇所)
47頁17行以下
(意見)
顔識別機能付きカメラシステムによる顔データの共同利用については、全国レベルや複数の県をまたがる等の広域利用を行う場合には、事前に個人情報保護委員会に相談を求めることを明記すべきではないか。そのために必要であれば個人情報保護法の法改正等を行うべきでないか。
(理由)
第6回目の「犯罪予防や安全確保のためのカメラ画像利用に関する有識者検討会」の議事録5頁に、「そういった観点から、一つ地域というのがメルクマールになると理解している。広域利用に関しては相当の必要性がなければできないとしつつ、個人情報保護委員会に相談があったような場合に対応していくのが1つの落としどころかと感じた。」との議論がなされているから。
また、宇賀克也『新・個人情報保護法の逐条解説』275頁、園部逸夫・藤原静雄『個人情報保護法の解説 第二次改訂版』187頁などにおいても、共同利用が許される外延・限界は「一つの業界内」、「一つの地域内」などと解説されており、全国レベルの共同利用や県をまたぐ広域利用、業界をまたぐ共同利用などは法が予定していないと思われるから。
さらに、共同利用についても、例えばテロ対策なのか、万引き対策なのか等で許容される共同利用の範囲は異なってくるのではないか。場合分けをした検討が必要なのではないか。


12.「⑦東京地判平成27年11月5日判タ1425号318頁」の【事案の概要】について
(該当箇所)
24頁9行目以下
(意見)
「⑦東京地判平成27年11月5日判タ1425号318頁」の【事案の概要】について「建物1階にカメラを設置」とあるが、これは「Yは共有建物の共有部分の屋根の支柱などにカメラ4台を設置したところ、裁判所はそのうちのカメラ1台の撤去と損害賠償を認めた」等が正当ではないか。
(理由)
判例タイムズ1425号318頁に掲載された判決文によると、「建物1階にカメラを設置」との記載はないので。


13.「防犯カメラの万引き犯冤罪被害者」の人々については施行令5条から除外する方向で、施行令5条や個人情報保護法16条4項の法改正等を行うべきである
(該当箇所)
48頁18行目
(意見)
個人の権利利益の救済のために、誤登録された人や「防犯カメラの万引き犯冤罪被害者」の人々については施行令5条から除外する方向で、施行令5条や個人情報保護法16条4項の法改正等を行うべきである。
また、誤登録された人や「防犯カメラの万引き犯冤罪被害者」の人々が事業者に苦情申し出や開示等請求をした場合に事業者側が誠実に対応しなかった場合には、誤登録された人や「防犯カメラの万引き犯冤罪被害者」の人々が個人情報保護委員会に申し出を行い、個人情報保護委員会が当該事業者に助言・指導を行うなどの対応を個人情報保護委員会に法的に義務付ける方向で個人情報保護法を法改正すべきである。
(理由)
個人情報保護法施行令5条各号のいずれかに該当すると保有個人データでないことになり(個人情報保護法16条4項)、個人情報取扱事業者は本人からの開示・訂正等の請求や苦情への対応に応じなくてよくなってしまう。
この点、誤登録された人や「防犯カメラの万引き犯冤罪被害者」の人々はスーパーや警備会社などの事業者に苦情申し出や開示訂正等の請求を行っても、事業者から「当社にはそのようなデータベースはない」「当社は顔識別技術つき防犯カメラを導入していない」等と拒絶されてしまっている。個人情報保護法33条以下には開示・訂正等請求の手続き規定があるにもかかわらず、施行令5条が悪質な事業者の免罪符になってしまっている。そのような「防犯カメラの万引き犯冤罪被害者」はまともな日常生活・社会生活が送れなくなってしまい、権利利益や人格権の侵害は重大である(個人情報保護法1条、3条、憲法13条)。
そのため、個人の権利利益の救済のために、誤登録された人や「防犯カメラの万引き犯冤罪被害者」の人々については施行令5条から除外する方向で、施行令5条や個人情報保護法16条4項の法改正を行うべきである。
あわせて、誤登録された人や「防犯カメラの万引き犯冤罪被害者」の人々が事業者に苦情申し出や開示等請求をしたにもかかわらず事業者側が誠実に対応しなかった場合には、誤登録された人や「防犯カメラの万引き犯冤罪被害者」の人々が個人情報保護委員会に申し出を行い、個人情報保護委員会が当該事業者に助言・指導・報告徴求・立入検査・命令を行うなどの対応を個人情報保護委員会に法的に義務付ける方向で個人情報保護法を法改正すべきである。


14.民間事業者・業界団体および行政機関に防犯カメラに関する指針やガイドライン等を遵守させるための枠組み立法を国会で制定すべきである
(該当箇所)
全般
(意見)
民間事業者・業界団体および行政機関に防犯カメラに関する指針やガイドライン等を遵守させるための枠組み立法を国会で制定すべきである。
(理由)
防犯カメラに関する個人情報保護委員会のガイドライン等や、民間事業者や業界団体などによる自主的なガイドラインが策定されたとしても、それが遵守されなくては国民個人の権利利益が侵害される。この点、2021年夏の朝日新聞社主催の個人情報保護法に係る市民講座において、本有識者検討会の構成員の山本龍彦教授は「民間事業者および行政機関に防犯カメラに関する指針やガイドライン等を遵守させるために枠組み立法を設けるべきである」とのご見解であったため。
また、海外をみてもEUではGDPR22条に「プロファイリング拒否権」を規定する条項が置かれ、警察などによる公道などにおける防犯カメラの利用を禁止するAI規制法案も公開されている。海外の動向に照らして日本でも、防犯カメラに関する立法が必要なのではないか。
さらに、現在、個人情報保護委員会の個人情報保護法ガイドラインと経産省・総務省の商用カメラ利用ガイドラインは分離しているが、重なり合う部分も多いため統一化すべきである。


15.今後の方針やスケジュールについて
(該当箇所)
全般
(意見)
個人情報保護委員会は本報告書のパブリックコメント後、顔識別機能付きカメラシステムについて何らかのガイドライン等を策定するのか、あるいは何らかの立法を行うのか等、今後の方針やスケジュールを具体的に公表すべきである。また、ウェブサイト等をみても個人情報保護委員会は議事録や資料が非公開とされていることが多いが、個人情報保護委員会は国民のための公共の行政機関なのであるから、原則公開とすべきである。
(理由)
本報告書に係る議事録などを読んでも、今後の方針やスケジュール等が全く公表されていないので。個人情報保護委員会は国民の税金で運営される公的な行政機関なのであるから、内輪で物事を決めるのではなく、もう少し情報公開に努めるべきである。同様の理由で議事録や会議資料などの情報公開に努めるべきである。


16.「顔画像とそれに関する情報の例②」のデータベースBについて
(該当箇所)
31頁1行目
(意見)
「顔画像とそれに関する情報の例②」のデータベースBは、「含まれる発生日時や状況、特徴単体だけでは特定の個人を識別することはできない」とあるが、「特定の個人を識別することはできる」のではないか。
(理由)
「顔画像とそれに関する情報の例②」の事例でも、データベースBに含まれる、発生日時や状況、特徴単体などのデータだけで当該個人の氏名はわからないとしても、「その人」と特定の個人を識別できるのだから、データベースBはデータベースAとの容易照合性をまつまでもなく単体で個人情報(個人情報データベース等)であり、データベースBに含まれる各データも個人情報(個人データ)である(個人情報保護法2条1項1号、岡村久道『個人情報保護法 第4版』75頁)。


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■関連する記事
・PPCの「防犯予防や安全確保のためのカメラ画像利用に関する有識者検討会」の資料を読んでみた(第3回まで)
・JR東日本が防犯カメラ・顔認証技術により駅構内等の出所者や不審者等を監視することを個人情報保護法などから考えた(追記あり)
・防犯カメラ・顔認証システムと改正個人情報保護法/日置巴美弁護士の論文を読んで
・ジュンク堂書店が防犯カメラで来店者の顔認証データを撮っていることについて



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そくやく
1.オンライン診療アプリSOKUYAKU
ネット上でオンライン診療アプリSOKUYAKUというサービスを見かけました。スマホアプリを通じて患者が医者に診察を受けることができて、処方箋ももらえ、会計もできるサービスのようです。

2.プライバシーポリシーを見ると・・・?
便利そうなアプリですが、プライバシーポリシー(「個人情報取得における告知・同意文」)みると少々不安になってきます。

プライバシーポリシー
(SOKUYAKUのプライバシーポリシー。SOKUYAKUサイトより)

プライバシーポリシーの「b.2.取得・利用目的」をみると、「氏名、電話番号、メールアドレス、問い合わせ内容を…利用します」とありますが、医師・病院を受診するのですから住所や生年月日、健康保険証の情報、性別などの情報も必要と思われますが、記載がないのは不十分な気がします。なにより、医師・病院に患者が診察をオンラインで受診するためのサービスなのですから、「傷病データ」・「医療データ」、「問診表の情報」などの要配慮個人情報に関する記載がないことは個人情報保護法との観点からアウトな気がします(法20条2項)。

また、プライバシーポリシーの「c.3.第三者提供」をみると、「頂いた個人情報は第三者提供はいたしません。ただし法令による場合は提供することがあります。」とあるのですが、本サービスは医師・病院に患者が診察をオンラインで受診するためのサービスなのですから、患者から取得した個人情報を本アプリが医者・病院に第三者提供するスキームであり、この記述も正しくないと思われます(法27条1項)。

このようにプライバシーポリシーが非常におおざっぱであると、SOKUYAKU社内で患者のセンシティブ情報である医療データなどがしっかりと安全管理されているのか心配になります。

3.届出電気通信事業者
なお、このようなメッセージアプリは通信のやり取りを媒介するサービスなので、総務省に届出電気通信事業者の届出が必要となります。しかしSOKUYAKUを運営する会社サイトの会社概要をみると、届出電気通信事業者の届出番号が記載されていないのですが、これも電気通信事業法との観点からアウトなのではないかと思われます(電気通信事業法164条1項、16条1項)。

会社概要
(ジェイフロンティア株式会社サイトより)

3.まとめ
SOKUYAKUはオンラインで患者が医者を受診できるサービスであり、コロナ時代にとても有用なサービスだと思われますが、管理部門や法務部門はもう少し頑張ったほうがよいのではないかと思いました。

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